万が一、病院にかかることになった際に慌てなくていいように、居住する国の病院事情はしっかりと把握しておきたいところです。
ここではカナダ在住者から、日本とは異なるカナダの医療システムについて、詳しくご紹介していきます。
カナダにある3つの医療機関
カナダには大きく分け、3つの医療機関が存在しています。
それぞれ特徴が異なりますので、自分がかかることのできる医療機関がどれであるのかを知っておく必要があります。
ファミリードクター
ファミリードクターとは、家庭ごとの”かかりつけ医”のことを指します。
怪我や風邪をひいた場合、まずはファミリードクターの診察を受け、必要があればそのドクターから紹介状を書いてもらい、専門医に診てもらうという流れです。
家族全員の主治医が同じであるため、過去の病歴やアレルギー情報など、患者の情報を一括管理・照合しながら診察を受けられるというメリットがあります。
ただしファミリードクターは実数が少なく、患者数を制限することが許されているため、新規の患者を受け付けていない場合がほとんどです。
ファミリードクターを持てたとしても、一日の診察患者数が少ないため、予約が数週間後になることもあります。
ウォークインクリニック
ウォークインクリニックとは、誰でも利用することのできる街中の診療所です。
留学生や移民など、ファミリードクターを持たない人はこちらが窓口となります。
ファミリードクターがいたとしても、成人して地元から離れているなどの理由で利用することも珍しくありません。
予約不要の場合が多く、夜間・休日でも診察が受けられる診療所もあります。
ただし誰でも気軽にかかることができる反面、常に混雑しているので待ち時間が長くなるというデメリットがあります。
なおウォークインクリニックでは簡単な診察がメインのため、症状によっては総合病院への紹介状を書いてもらう必要があります。
ホスピタル
ホスピタルは、日本で言うところの大学病院・総合病院を意味します。
専門医が常駐しており、手術や入院に対応しています。
ただし初診外来は行なっていないため、ファミリードクターまたはクリニックの医師からの紹介状が必要です。
薬の入手方法。ドラッグストアでも手に入る!
医師の診察は不要で、市販の風邪薬や消毒薬などを買いたいときには、街中のドラッグストアを利用します。
大手チェーンであれば、薬だけでなくお菓子や生活雑貨など品揃えよく置いているので、日々の買い物で利用している人も多くいます。
そのため、カナダの街中には数多くのドラッグストアが点在しています。
ファミリードクターやウォークインクリニックで処方箋をもらった場合にも、ほとんどのドラッグストアに処方箋窓口が併設されており、受け取りが可能です。
カナダの医療保険はどう違う?日本との比較
続いて、日本とカナダの国民健康保険制度を比較してみましょう。
日本の国民健康保険制度では、患者の医療負担額は以下の様に定められています。
日本の国民健康保険制度:患者の医療負担額
3歳未満 | 2割 |
3歳~69歳 | 3割 |
70歳~74歳 | 1割(一定額以上所得者は3割) |
Medicare(メディケア)
一方カナダには、「Medicare(メディケア)」と呼ばれる国民健康保険制度があります。
この保険に加入していれば、通常の外来診療や入院などに対する患者の自己負担額は一切ありません。
つまり大半の医療サービスが、無料で受けられるということです。(ただし歯科治療、処方薬代、特別な手術や治療、入院ベッド料、食費などを除く)
医療費の財源は、州および準州の一般税と、カナダ政府の補助金でまかなわれています。
原則全てのカナダ国民がこの保険に加入できますが、州ごとに細かな規定が異なります。
今回は、首都オタワが位置するオンタリオ州の保険制度について紹介していきます。
OHIP(Ontario Health Insurance Plan)
オンタリオ州の健康保険制度は、OHIP(オーヒップ)と呼ばれるものです。
カナダの市民権、または就労ビザ(ワーキングホリデービザは不可)保持者であり、下記の条件を満たしている場合に申請が可能です。
申請条件:
- オンタリオ州の居住者である
- 居住開始1日目~183日目までのうち、30日以上オンタリオ州を出ていない
- 1年間のうち153日以上、オンタリオ州に滞在している
日本では国民健康保険に対する月々の支払額がありますが、OHIPでは毎月の負担額はありません。
オンタリオ州は税率が13%と少し高い分、税金の中からこの保険費用がまかなわれるというわけです。
ただし申請をしてから3ヶ月間は、取得までの待機期間となります。
この3ヵ月の間は未保険状態、つまり医療費は有料となるので注意が必要です。
万が一の事態に備えて、加入できるまでの期間は海外旅行傷害保険や短期医療保険サービスに加入しておくことをお勧めします。
OHIPが適応されないケース
- 歯科:病院で施される医療行為をのぞき、クリニックでの施術は不適応
- 眼科:眼科関連の疾患に対する医療行為をのぞき、1年に1度の検眼検査以外は不適応
- 美容整形
- 救急車(45ドル程度を一部負担。ただし救急対応が不必要だったと判断される場合は、240ドルの追加請求があります)
- 薬代(ただし65歳以上、もしくは低収入者には適応)
上記のような不適応ケースが一部あるものの、OHIPでは予防接種や、妊娠・出産などに関する医療サービスも無料で受けることが可能です。
OHIP加入の流れ
必要書類
- カナダでの居住を証明するもの(移民権、労働ビザ(ワーキングホリデービザを除く)など)
- オンタリオ州での居住証明(オンタリオ州発行の運転免許証、銀行口座、公共料金の請求書など)
- 登録者本人のID(クレジットカード、銀行カード、結婚証明書、パスポートなど)
申し込み方法
- 申請フォームと必要書類の準備ができたら、Service Ontarioへ行きます。
- OHIPへの加入申請を希望であることを告げ、申請フォームと必要書類を渡します。
- 申請書等に不備がなければ、その場で写真撮影をします。
- Confirmation用紙を渡されるので、名前や住所、生年月日など情報に誤りがないかチェックします。またその用紙に、何月何日よりOHIPの適用を受けられるかが記載されています。
- 3ヶ月以内にオンタリオ・ヘルスカード (保険証)が郵送で届きます。
OHIPに加入していない場合
ではOHIPに加入していない場合、医療費はどのようになるのでしょうか。
下記に一例を挙げてみます。
(例)
- 風邪でウォークインクリニックに行った場合:診察代$100(薬代別途)
- 手首の骨折:$800
- 盲腸で手術と入院:$1600
私の住んでいたトロントは、冬になるとマイナス20~30度ほどに寒さが厳しくなります。
風邪をひいてしまい、保険なしで病院にかかると、一度の通院で約1万円の出費、それに薬代が別途かかってきます。
また万が一入院ともなると、一日当たり約10万~30万円ほどかかるのが一般的です。
外務省が発表している情報として、過去に保険に入らずカナダを訪れていた日本人旅行者に対して、合計1000万円の請求がきた例もあるそうです。
「自分は大丈夫」「これまで何もなかったから」などと思わず、滞在日数に関わらず(OHIP加入予定であったとしても、待期期間を鑑みて)必ず保険には加入するようにしましょう。
緊急の場合(救急車の呼び方)
カナダの緊急ダイヤルは「911」です。
日本のように、警察(110番)と救急&消防(119番)とに電話番号が分かれておらず、事故や火事などを含め全ての緊急時は「911」に電話をします。
電話をするとまず、「警察(police)か救急(ambulance)か消防(fire)か」を聞かれますので、慌てず詳細を伝えましょう。
先ほども少し触れましたが、基本的に医療行為は国民健康保険でカバーされますが、オンタリオ州では救急車の利用代として約45ドル程度が請求されます。
また、救急車の必要性がなかったとのちに判断された場合には、追加請求がある場合もありますので、必要性を見極めるようにしましょう。
筆者が経験した医療サービスに関して
私は、カナダ(オンタリオ州)在住中に妊娠をしました。
日本では出産は保険対象外ですが、OHIPでは妊婦検診、出産、そして中絶費用までもが無料になります。
以下、私が実際に体験した流れを参考までに記載しておきます。
- ドラッグストアで妊娠検査薬を購入
- ウォークインクリニックに電話予約をしたのち診察を受ける(主人のファミリードクターは住まいから離れた実家の近くにいるため、私自身はファミリードクターがいない状態でした。また、産婦人科ではないためエコーなどの設備はなく、この時点でも尿検査のみでの妊娠判定でした。)
- 医師から紹介状をもらい、産婦人科医のいるホスピタルを紹介される
- ホスピタルにて専門医の診察を受けると同時に、初めてエコーにて妊娠を確認(自宅で妊娠検査薬を試してから専門医に診てもらえるまで、私の場合は2~3週間ほどかかりました)
- 専門医のもとでの定期検診(臨月までは月一回、臨月からは2週に1回)
なお、私は日本での出産を希望していたので、妊娠中期で帰国し、カナダでの出産は経験していません。
OHIPに加入していたため、ウォークインクリニック・ホスピタルでの医師の診察は基本的に無料でした。(ドラッグストアでの妊娠検査薬の購入は自己負担)
一方で、定期健診の内容に関しては、日本とはかなり異なるシステムでした。
まずエコー(超音波検査)についてですが、通常日本では、定期健診のたびにエコーが行われます。
しかしカナダでは妊娠発覚から出産までの間、特に問題がなければエコーは計2回ほど。
病院にもよるかもしれませんが、私のホスピタルでは定期健診といっても、特に患者からの不調の訴えがなければ、体重測定・血圧測定・問診のみで終わる回もありました。(必要な検査は随時行われます)
医療費が無料である反面、かなり簡素的な印象を受けました。
出産に関しても、特に問題がなければ翌日の退院が一般的だそうです。
カナダの医療事情まとめ
カナダと日本の医療制度には、まず「基本的な医療行為が無料である」という大きな違いがあります。
所得格差が近年大きな問題になっているカナダにおいて、誰もが平等に医療サービスを受けられるというこのシステムは大変すばらしいものであると思います。
しかしながら一方で、医療費が税金でまかなわれるからこそ、医療経費を必要最低限に抑えているという印象を受けることがあるのも事実です。
日本とカナダの医療制度のどちらが優れているという話ではなく、国が変わるとそれだけ大きな違いがあるのだということをお伝えできていれば幸いです。
居住する国の病院や医療サービスについて知っておき、万が一の際に慌てず対応できる心構えをしておきましょう。
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