海外生活は文化の違いに触れ、受け入れるところから始まります。
今回は、2004年からフランスに住み始め、フランス人の旦那さんとの間に四人の子どもをもうけ、子育てに没頭して十三年の現地在住者から、その間に感じた二国間の文化の違いをご紹介します。
日本では考えられないことがフランスでは起きる・・驚きの連続ですよ。
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1.「園児にはチョコレートを食べさせよ」
チョコレートは、かつての筆者にとっては特別な食べ物でした。
高カロリーでしょっちゅう口にするべきではない、という認識もありました。
ある女優さんが「チョコレートは年に一度だけ、クリスマスの時に」というのを聞いてからはさらに、チョコレートとはそのくらいの頻度で口にするものなのだと思った記憶があります。
子どもが生まれてからは、おやつにはなるべくチョコレートをあげないようにしていました。
子どものうちからこんなに甘いものになれてほしくないという親ごころです。
わたしが特別なわけではなく、周りの日本人のお母さんたちも「極端に甘いもの(あるいは塩辛いもの)はなるべく遠ざける」努力をされていたと思います。
フランスへ来たのは長女が五歳、長男が三歳のときでした。フランスへ着いてすぐにふたりを幼稚園へと連れて行きました。
初日、担任の先生が園内を案内してくださり、こうおっしゃったのです。
「教室内では飲食禁止なので、もし朝、子どもがお腹がすいているようでしたら、廊下でチョコレートなどを食べさせてから教室に入るようにしてください」。
一瞬、聞き間違えたかと自分の耳を疑いました。
「チョコレートを、ですか・・・」
思わず聞いていました。
先生は当然のような顔をして「ええ、朝にチョコレートバーを食べるの好きでしょ、子どもは」。
フランスではかなり無頓着に、子どもがかなり小さいうちからチョコレートを与えるようです。
大人になってからもチョコレートは日本風にいうと一番の「お茶うけ」としてその地位を獲得しています。
フランスでは、カフェでエスプレッソを注文するとサービスの小さなチョコレートがついてくることもあります。
チョコレートはビタミンやミネラルが豊富。
日本でも話題になったポリフェノールも多く含まれているせいか、フランス人はむしろ「身体にいい食べ物」だと認識しているようです。
おかげでわたし自身も、すっかりチョコレート好きになってしまいました。
ただし、食べすぎにはくれぐれも注意が必要ですね!
2.寝る前にお風呂でリラックスはありえない。
わたしの育った家では一日の終わりには必ず、家族全員がお風呂に入りました。
365日、一日も欠かすことなく、です。
風邪をひいてお風呂に入れないときには母親が足の間を熱いタオルでふいてくれたものです。
寝る前にはその日の汚れを落とす、これがわたしの中での常識でした。
ですが、フランスには「お風呂に入る」という習慣がありません。
家族向けのアパートにもバスタブのないことがありますし、もしついていたとしてもそれをバスタブとして使う家庭はものすごく少ないと思われます。
わたしの夫はフランス人ですが、彼も例外ではなくシャワーは朝。
つまり夜は顔も洗わずにパジャマに着替えて寝てしまいます。
同じベッドで寝ますからものすごく抵抗があるのですが、最近ではすっかりあきらめてしまいました。
フランス人の友人と旅行をして同じ部屋を使ったことがあるのですが、やはり彼女たちもシャワーは朝と決まっています。
年齢に関係なく、シャワーは朝浴びるもの、という傾向にあるようです。
また二日に一回、三日に一回、という人たちもいます。人によってはもっと洗わない人も。
わたしたち日本人はお風呂に入ってリラックスし、さっぱりと清潔にして眠りにつきたいと思うものですが、その概念はフランス人にはありません。
一日の汚れを身につけたままベッドにはいるのですからシーツや布団も汚れてしまうわけですが、そんなこともお構いなしです。
フランス人を見ていると、わたしたち日本人はなんて清潔なんだろう!と思います。
あくまでも身体を清潔にするのは朝、人に会う直前に、というのが彼らなりのエチケットなのでしょう。何しろ体臭が強い人が多いですからね……。
3.台所のスポンジで靴の汚れも落とす?
わたしは大学生時代にフランス人の家庭にホームステイをした経験があります。
サラリーマンのパパ、クリニックでパートをするママ、六歳の女の子、二歳の男の子、という四人家族のお家でした。
ママは料理上手で毎晩、腕によりをかけておいしい料理を作ってくれました。
朝はカフェオレを入れてくれ、わたしはバゲットにバターとジャムをぬって食べる、というスタイルでした。
その朝もいつものように朝食を取っているとママが、パパの革靴を台所に持って来て、お皿を洗うのに使うスポンジで革靴の汚れを拭きとったのです!笑
それもわたしとおしゃべりをしながら、何気なく。いつもしているよ、とでも言うように。
これには胸が飛び上がるほどにびっくり!
今、目の前で見た光景がにわかには信じられなかったくらいです。
しかし、この、「洗ってしまえばどの汚れも同じ」という概念はほとんどのフランス人の中に根付いているように思われます。
たとえば、台所の床が汚れているとき、やはりお皿ようのスポンジを使って床をぬぐう人は珍しくありません。
また、お皿ようのふきんと、手を拭くタオルが共通、というところも多いようです。
中でもいちばん驚いたのは床そうじに使うバケツに水をためて、そこに皮をむいたじゃがいもをつけている人を見たときです。
絶対にこれは何かの間違いだ!と思ったのですが、「煮てしまえばいいということなのだな」と解釈しました。
文化の違いとはいえ、これでは何を食べさせられているか、恐怖でさえありますね。
4. ブラジャーの紐は見えてオッケー?
夏、ノースリーブの服を着るとき、どうしても気になるのがブラジャーの紐が見えてしまわないか、ということです。
どうしても見えてしまうときには紐なしのブラ、という選択枝もあります。
フランス人たちはそうは考えないようです。
ブラジャーの紐は見えるもの。見えて当たり前のもの。見えてもみっともなくないもの、と認識されているようです。
それだけではありません。
トップとボトムの間からぜい肉がはみ出していても全く問題なしです。
自分のスタイルを気にして着るものをあきらめる、ということをしないように見えます。
だってこれを着たいのだもの、しょうがないでしょ、という潔ささえ感じるほどです。
フランス人たちを見ていると、人はこのくらい自由でいいんだなあと感嘆してしまいます。
わたしたちはあまりにも自分を押さえつけてしまっているのではないでしょうか。
夏になるとこちらでは老若男女、ショートパンツの人が街にあふれだします。七十歳、八十歳と思われるマダムがショートパンツで歩いています。
日本でなら「おばあちゃん、そんな格好で」と言われるような姿です。
でもこれでいいのでは?と思うのです。もっと自由にしたい格好をしましょうよ!
5. 試験中の飲食は自由。
わたしが大学受験をしたのは1980年代ですが、時間数は確か一科目につき九十分、休憩が十五分。
試験中にトイレに行くにはものすごく勇気がいったし、そんな人はまれだったと思います。
飲食なんて問題外で、お水さえ、試験会場に持ち込む、ということを考えもしなかったと思います。
フランスにはバカロレア、というフランス全国共通試験があります。
リセ(日本の高校に相当)を卒業する前年にフランス語の試験が、卒業する年にほかの科目の試験が行われます。
哲学の試験もあって、これは世界中で、フランスだけの科目なのだそうです。
特徴的なのは科目だけではなくて、その時間数の長さにもあります。なんと哲学はぶっ通しで四時間!
バカロレアを実際に経験した我が家の長女から聞いたのですが、これだけ長いとトイレに行くのも申請すればオッケーだし、中には途中で睡眠を取る人もいるのだとか。
飲食さえも許可されており、机の上に数種類のボンボン(キャンディー)を並べている人もいるそうです。
自分のリズムを守り、普段の能力を出し切る、という点では、この長期戦な試験体制も悪くないのかもしれません。
フランスと日本の驚くべき文化の違いまとめ
わたしは日本で働いた経験があるのですが、その時に当時の部長さんに「あなたは常識がないですね」と言われて傷ついたことがあります。
しかし常識、とは一体、なんなのでしょうか。
ところが変われば常識も真逆に変わってしまうことがあります。
何が正しい、何が不正、ということではないのです。
日本とフランスは相当違っているところがある、とは知っておいていただきたいことです。
フランス生活で、ぜひ、いろんな新しい体験をしてみてください。
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