アメリカの救急車事情。緊急事態に備えて知るべき9つのこと

アメリカの救急車事情。緊急事態に備えて知るべき9つのこと

ご存知の方も多いかと思いますが、アメリカの救急車は有料です。番号は911。

そして医療保険や病院のシステムなどは日本とは違うため、注意が必要です。

今回はアメリカの救急車事情についてご紹介します。対処法や英語でのコミュニケーションに重要なフレーズを知っておけば緊急時でも落ち着いて対応することができます。

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1.アメリカの救急車の特徴

まずは救急車の特徴から紹介していきましょう。

救急車の外観はさまざま。白基調

車種や色は地域によって様々です。車体も後方の搬送部分も大きく、日本での中型トラックのような形がよく見られます。色は白を基調に赤や青の配色が多いです。

消防と医療処置の両方ができる装置を備えた車両もあり、消防車のような外観の救急車もあります。

救急車のマーク

Star of Life」と呼ばれる救急医療のシンボルマークがついています。

救急車のマーク

蛇が巻きついた棒とその周りに放射状に突出した6つの青い柱が描かれています。

中心にある絵柄は「アスクレピオスの杖」と呼ばれ、ギリシャ神話に登場する医学の神です。

類まれな医術を持っていたアスクレピオスは死者を生き返らせることもできた、と言われており、彼の持っていた杖がシンボルに使われています。

6つの柱はそれぞれ意味があり、1番を頂点にして時計回りで順番に、救命救急のプロセスを表しています。

  1. Detection (覚知)
  2. Reporting (通報)
  3. Response (出場)
  4. On Scene Care (現場での手当)
  5. Care in Transit (搬送中の手当)
  6. Transfer to Definitive Care (医療機関への引き渡し)

元々は赤十字社のマークと区別するためにアメリカでデザインされましたが、今では人命救助に関わる職場で活躍する人々の守り神として、世界中で救急医療のシンボルマークになっています。

救急車のサイレン音。クラクションを鳴らす

消防車やパトカーのサイレンに似ています。

日本のように走行中に音声による周囲へのアナウンスはありません。代わりにクラクションをよく鳴らしています。

救急車の管轄。公営と民営に別れる

日本の医療救急車は厚生労働省の管轄下ですべて公営であるのに対し、アメリカでは公営と民営に分かれています。

公営の救急車は運輸省幹線道路安全局(NHTSA)と保健福祉省(HHS)が確立したカリキュラムや救急救命システムに基づき、各州が独自の法律や規則によって運営しています。

民営の救急車は運営している会社が各都市にあります。

救急車は有料だが、呼んだだけは費用は発生しない

公営、民営共に救急車で病院に搬送すると患者が自己負担する費用が発生します。費用は都市や会社で異なります。

一般的に基本料金と走行距離に応じた金額の合計で算出され、搬送だけで数百ドルかかります。

ここで注意しておきたいのが、救急車を呼んだだけでは費用は発生しないということです。

現場に到着した救急隊員が患者の容態を確認し、救急車での搬送が必要か判断します。搬送しなかった場合は費用が請求されることはありません。

↑消防署見学で救急車の中を見せてもらう

消防署見学で救急車の中を見せてもらう

救急車を利用できるのは本当に重症の場合のみ

日本では緊急時以外の救急車の要請が多発して社会的な問題になっていますが、アメリカでは本当に必要な状況の人が優先的に利用できるような仕組みになっています。

まず、緊急時の問い合わせを受けたオペレーターが医療的専門知識に基づいて救急車が出動すべき状況か判断します。

救急車を利用すべき場合は即刻対応してくれますが、そうでない場合は自分で対処、または病院に行く方法を指示されます。

救急車を要請すると一緒に消防車が到着することもあります。

これは救急隊と消防隊が連携して行う救急活動の一環です。

2つの緊急車両が同時に出動し、先に到着した方が救急作業に取り掛かることができるので、より迅速な対応が可能です。

次に、要請時の救急隊員の活動内容は主に以下の4段階に分けられます。

  1. 現場へ駆けつけ、患者の容態を把握する
  2. 病院への搬送が必要か判断する
  3. 必要な処置をして病院に搬送できる状態にする
  4. 病院への搬送

救急車を利用して病院へ搬送すべきと判断したら、患者側の同意を得た上で搬送します。(意識がない、呼びかけに応じないなど明らかに重症な場合は同意なしで搬送することもあります。)

一方で、緊急性が低い患者に対しては状況を説明し、民間の救急車による搬送を希望するか確認します。

患者が民間の救急車の利用を希望した場合は、民間の救急隊を要請し、引き継ぎをします。この時、現場には消防隊が残って引き継ぎをし、救急車と救急隊員は引き上げて次の出動要請に備えます。

アメリカでは公営の救急車、消防車、そして民営の救急車が連携を取りながら救命救急活動を行っています。

また、救急車での搬送は有料であること、緊急以外で救急車を呼ぶと、罰金の対象となることからアメリカで生活する人々も救急車を要請するときは慎重になっています。

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アメリカ政府の救急医療ウェブサイト(Emergency Medical Services):https://www.ems.gov/
救急車協会ウェブサイト(American Ambulance Association):https://ambulance.org/

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2. 救急車の問い合わせ

電話番号は「911」

911

緊急時の問い合わせ番号はすべて「911」で統一されています。

電話がオペレーターに繋がると、「警察」「消防」「救急」のどれが必要かの質問があり、それぞれの担当部署に電話が転送されます。

「911」に問い合わせて出動する救急車は公営です。

もし、民営の救急車を利用したい場合は各都市の運営会社に連絡する必要があります。

インターネットで「Private Ambulance Service」で検索すると地域の民営救急機関の電話番号を見つけることができます。

アメリカ政府の「911」ウェブサイト:
https://www.911.gov/
https://www.ems.gov/911-system.html

圏外でも繋がる?

公衆電話で緊急時の電話をかけるときは無料で繋がります。

しかし、昨今では携帯電話が普及しているので緊急時にも個人の携帯から連絡するのが主流かと思われます。

携帯電話の電波が圏外の場所にいても、緊急電話であれば繋がる可能性があるので、ためらわずに「911」に連絡してみましょう。

電話以外の連絡方法。テキストメッセージもある

声を出して話せない事態を想定して、地域によってはテキストメッセージで緊急時の対応をしているところもあります。

政府の方針では電話での問い合わせを推奨しているので、テキストメッセージの利用は限定的な利用にとどまっています。

テキストメッセージを普及させる声明:
https://www.fcc.gov/consumers/guides/what-you-need-know-about-text-911

アメリ政府のウェブサイト:https://www.911.gov/issue_textto911.html

通訳の利用

電話では日本語通訳サービスを利用して会話することも可能です。通訳サービスを実施しているかは地域によって異なりますが、「Japanese interpreter, Please.」と伝えてみましょう。

通訳に繋がるまでには数秒~1分程度かかります。繋がるまでの待ち時間に電話を切ってしまうとイタズラ電話として扱われて、警察が来ることになるので注意して下さい。また、通訳を介しての会話は英語のみの会話よりも時間がかかります。

一刻を争う事態に置いてはその点を念頭に置いて通訳を利用するか判断しましょう。

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3. 救急車での搬送・治療費用に保険は適用されるか

救急車は有料かつ費用も高額となると、保険が適用できるか、という点はとても重要です。

また、搬送前や搬送中の処置においても費用が発生します。

アメリカで加入している医療保険を使う場合、保険のプランによって救急車の利用が対象となるか、またどの程度保険でカバーされるのか様々です。

海外旅行保険やクレジットカード付帯の保険は治療・救援費用として対応できます。

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ただし既往症や妊娠は対象外の保険が多いので、これらのトラブルで救急車を利用した場合には適用されません。

そして保険会社からの支払い前に一旦自己負担での建て替えが必要なこともあります。

迅速な対応をしてもらうためにも、救急車を利用した場合は速やかに保険会社に連絡しておいた方がよいでしょう。

4. 搬送先の病院は選べるか?

加入している医療保険によって利用できる病院や医療費の自己負担が大きく異なるアメリカでは、どの病院に搬送するかで患者の人生を左右してしまいます。

自己破産をする人の数割は高額な医療費の請求が原因です。

中には救命救急医療処置を受けて助かったものの、保険が適用されない病院に搬送されたため、その後医療費の支払いに苦しむことになってしまったケースもよく聞きます。

公営の救急車を利用する場合、原則として一番近い病院に運ばれ、病院を指定することはできません。特定の病院を指定する場合は民営の救急車を利用することになります。

ただし、上記のように医療費の支払いが問題になることから、受け入れ可能な近い病院であればどこでもいいという訳ではありません。

まず救急隊員は患者の加入している保険の種類を確認します。そして保険会社と連絡を取りながら、保険が使える近くの病院に搬送するように手配します。医療と保険の両方において、患者にとって最適の搬送先を決定するのが救急隊員の重要な仕事のひとつとも言えます。

救急車で搬送したときの請求金額

州や地域で救急車の利用料金は異なります。搬送には基本料金プラス距離に応じて加算料金が生じ、1回あたり数百ドル~千ドル程度と考えておきましょう。

そして救急車内で行われた応急処置によって金額は大きく変動します。

更に、搬送先の病院での医療費も別途かかることを念頭に置いておきましょう。

6. 救急車を呼ぶ手順と搬送までの流れ

それでは実際に「911」に電話をして救急車を呼ぶ手順と、救急車が来てから病院に搬送されるまでの流れを説明します。

  1. 「911」に電話をかける。
  2. オペレーターが出たら、「I need an ambulance. (救急車をお願いします)」と言う。
  3. オペレーターが担当部署に電話を回す。(電話に出たオペレーターがそのまま状況を聞くこともあります。)
  4. 必要な情報を伝える。(患者の容態、氏名、年齢、住所、電話をかけている人の氏名、電話番号など)
    自宅以外の場所で正確な住所がわからない時は、通りの名前や建物、お店の名前を伝えると相手にわかりやすいです。Who(誰が)、Where(どこで)、What a happened(どうしたのか)と覚えておきましょう。
    患者にアレルギー体質や持病があったり、妊娠中、服用している薬があるときはその点も伝えます。
  5. 説明された状況から救急車を手配すべきかオペレーターが判断する。
  6. 救急隊が出動したら、到着までの間、電話は切らずにオペレーターの指示に従う。できる処置があれば対応する。
    救急車が必要ない、と判断された場合にも対処法を聞くことができる。
  7. 救急車が到着後、救急隊員が現場に移動しやすいように誘導係が建物の入口や道路脇に立っておく。(人手が足りなければ周りに協力を楽しみましょう。患者を動かす必要はありません。)
  8. 救急隊員が到着したら状況の説明をする。
    オペレーターに説明したように、アレルギーや持病、服用中の薬のことも伝えましょう。
  9. 救急隊員が患者を診察する。
    痛みのレベルを10段階で表すといくつか、という質問をされます。
    少し痛む場合は1~4、我慢できるが痛みがある場合は5~7、非常に痛む場合は8~10と答えます。
  10. 救急隊員が病院に搬送すべき状況か判断する。
    病院へ搬送する場合は救急搬送の同意書にサインします。搬送しない場合は診察したけれど搬送の必要がなかった、という報告書にサインします。
  11. 救急車で病院に搬送。
    保険証、財布、携帯電話は持参しましょう。また、誰が救急車に同乗して病院に付き添うのかも瞬時に判断します。

7.救急車を呼ぶときに使う英語のフレーズ

不測の事態ではとっさに英語が出てこない人も多いかと思われます。

救急車を呼ぶときに使う英語は単純なフレーズで十分です。体の症状や状況を説明する際のキーワードを覚えておくと相手に伝わりやすいです。以下には想定される質問と回答の例文を記載します。

最初に聞かれること

「What’s your emergency?」(どんな緊急事態ですか?)
「Police, fire or ambulance?」(警察、消防、それとも救急?)
「I’ll put you through.」(転送します)
「I’ll transfer you to ambulance.」(救急につなぎます)

「May I have a Japanese interpreter?」(日本語通訳をお願いできますか?)

場所を伝える

「What’s the address of the emergency?」(緊急事態の起こっている住所は?)
「Where do you need us?」(どこで必要とされていますか?)

「In front of Natural Science Museum.”(自然科学博物館の前です。)
「It’s on the Main Street, near Whole Foods.」(Main通りのホールフーズの近くです。)
「I can see the sign of “Bank of America”.(Bank of Americaの看板が見えます。)

状況を説明する

「Can you tell me what happened?」(何が起きたか教えてもらえますか?)
「What’s the problem?」(何が問題ですか?)

※病気であれば体の症状、事故や事件であれば何が起きてどのような状態かを説明します。

「My friend was hit by a car.」(友達が車にひかれました。)
「He/She is unconscious.」(意識がありません。)
「He/She got injured in his/her leg.」(足に怪我をしました。)
「He/She is bleeding from the head.」(頭から出血しています。)

「I burned my right arm.」(右腕にやけどを負いました。)
「My son has a terrible stomachache.」(息子がひどい腹痛を起こしています)
「He/She looks pale.」(青ざめています。)
「He/She is shaking.」(震えています。)
「It’s hard to breathe.」(呼吸が苦しいです。)

持病やアレルギーなどを伝える

「I have an allergy to ~.」(~のアレルギーがあります。)
「I have a heart condition.」(心臓に持病があります。)
「He/She has bad kidneys.」(腎臓に持病があります。)
「I got diabetes.」(糖尿病です。)
「I am pregnant.」(妊娠しています。)
「I am on medication.」(薬を服用しています。)
「He/She is on antibiotics.」(抗生剤を飲んでいます。)

救助に向かっているとき

「The ambulance/ police car/fire engine is on the way.」(救急車/パトカー/消防車が向かっています。)
「The officers will be right there.」(すぐに警官が到着します。)
「Stay on the line.」(電話を切らないでください。)
「You have to give him a first aid.」(応急処置をしなければなりません。)

救急隊員が状況を把握する

「How much does it hurt ? 1 to 10.」(1~10段階でどの程度痛みますか?)
「Is he/she awake?」(意識はありますか?)
「Is he/she breathing?」(呼吸はしていますか?)

8. 間違って911に電話してしまった場合

もしも、緊急時以外に「911」に電話をかけてしまった場合は、すぐに電話を切らずにオペレーターに事情を説明しましょう。

途中で電話が切れてしまった場合、深刻な事態であると判断され、状況を確認するために警察が駆けつけます。

オペレーターが緊急事態でないと判断するまでは電話できちんと対応します。

9. 子供に911の使い方を教える

家族でアメリカに滞在するならば、子供にも緊急時の対応の仕方を教えておく必要があります。

子供が理解できる年齢になったら、両親の名前や自宅の住所、電話番号などの重要な情報を覚えさせたり、書いた紙をわかりやすい場所に貼っておくと万が一の備えになります。

また、いたずらで「911」に電話をかけることの危険性を教えておきましょう。

最後に

救急車を呼ぶべきかどうかの判断は難しいですが、大きな怪我を負ったり、尋常の容態ではないと思ったら迷わず「911」に連絡しましょう。

そしてアメリカの医療費は高額なので、アメリカに滞在する際には短期間でも保険に加入しておくことは重要です。

緊急時の対処法としてこのコラムが参考になれば幸いです。

外出先で救急車に遭遇したら…

運転中に救急車に遭遇した場合、対処法は日本と同じです。自分と同一進行方向に救急車が走っていれば、道路脇に車を寄せて止まり、道を譲ります。

交差点に差し掛かる際に救急車に遭遇したら、停車して道を譲りましょう。

買い物や食事をしている時に救急車に遭遇したら、救急隊員が活動しやすいように配慮しましょう。

もしも救急活動の協力を指示されたら、その指示に従って行動して下さい。

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