前回の記事「約70万円で叶うオランダ起業!〜起業準備その1〜」では、オランダで労働許可を得るための手段、個人事業主として移住する際の具体的な手続きやそのステップ、大まかなスケジュール、そして一番気になりかつ把握しておきたい準備費用についてご紹介してきました。
起業準備その2では手続き上、日本人が一番苦労したというエピソードが多い住まい探しの詳細と、個人事業主として必要なビジネス口座開設についてより具体的にご紹介していきたいと思います。
(ビザ取得手続きの全体概要を知ってからのほうが下記具体的な内容も把握しやすいかもしれないので、〜起業準備その1〜をご覧になっていなければぜひそちらを先にご覧下さい。)
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1.オランダにおける賃貸事情とその種類
個人事業主として居住許可を得るために、最初のハードルとなるのが住居確保(賃貸契約)です。
前回の記事でもご紹介したとおり、住居確保をどのタイミングで完了できたかによって居住許可取得までの期間も変わってきます。
また住居確保が完了しないとその後の手続き(一時滞在許可証取得や会社登録など)を進めることも出来ません。
とはいえせっかくのオランダ移住、素敵な住居で生活を送りたいものです。まずはオランダの住居・賃貸事情の概要をご紹介します。
記事の写真にあるようなオランダのイメージを彷彿とさせるレンガ造りの建物は16〜18世紀に建てられたものが多く、歴史的に地震や空襲もなかったオランダ(一部地域除く)では当時の建造物や居住物件がそのまま残っているということも珍しくありません。
オランダには約42,000km²の国土に約1,680万人が住んでおり、オランダの国土は日本の九州と同等の面積、九州には約1,320万人が住んでいます。
せっかくオランダに住むのであれば、風情のある住居物件に住みたいと思うところでありますが、特に首都圏であるアムステルダムは人口密集地域であり、慢性的な物件不足という状況が続いています。
結果、首都圏であるアムステルダムの家賃相場は非常に高騰しており、外国人が物件を探す難易度は上昇傾向です。
そんなオランダでの賃貸物件の種類は下記の通りです。
アパートメント(Appartement)
いわゆる日本でのアパート・マンション。
都市の中心部を離れるとたくさんある現代的な高層マンション。エレベーター付きで日本と同じような生活を送れる。
ローハウス(Rijtjeshuis)
日本でいうところの長屋。いくつかの住宅が連なる1階建てのアパートメントというイメージ。
それぞれに庭がついていたり、3階建てだったりとリッチな造りなものも多い。
トウェー・オンデル・エーン・カップウオンニヒ(Twee-Onder-Een-Kapwoning)
ひとつの建物を階をわけて使用したり、ひとつの建物を2世帯にわけて使用するタイプの住居。入り口はひとつであったり、ふたつあったりと様々。お隣さんとの交流をする機会が多いことが最大の特徴。
ボートハウス(Woonboot)
その名のとおり、日本ではなかなか考えられない水上住宅。
オランダのシンボルのひとつでもある。現在、新規の登録が認められていないので、通常の物件よりも高く、ステータス的な物件。外国人が住めるケースは非常に少ない。
ハウス(Huis)
文字通り一軒家。都市部では賃貸契約物件が少なく非常に高額であるが、地方都市であれば借りられ物件も多数ある。
2.日本と比較したオランダの賃貸契約のメリット
日本では何かと面倒な賃貸契約。
保証人をたて印鑑証明をとったり、契約書に割印をしなくてはならなかったりと複雑な手続きになっています。
一方オランダでは契約自体は非常にシンプル。
また日本と比較してメリットも多数あります。その一部をご紹介します。
賃貸契約書にはサインのみ
上記にあるとおり、日本では保証人をたてたり印鑑証明が必要など面倒なステップをふまないといけませんが、オランダの賃貸契約はすごくシンプル。
契約書に貸主であるオーナーと借主であるご自身がサインするだけで契約は完了します。
家具付き物件が多数
オランダの賃貸物件は家具付き物件が非常に多くあり、家具をすべて揃えなくても身ひとつですぐ生活をスタートできるケースも多いです。
しかも洗濯乾燥機や食洗機、大型ソファ、ダブルベッドなど豪華な家具がついている物件もたくさんあります。
礼金なし
これはオランダに限ったことではありませんが、日本特有の礼金というシステムはもちろんオランダにもありません。
デポジット(保証金:日本でいう敷金のような位置づけ)は存在しますが、通常1ヶ月分であり、退去するときは返金されます。
特に契約書手続きが簡単でオーナーが合意すればすぐにでも住むことができるということが、移住する日本人にとっては一番メリットとして大きいことかもしれません。
※契約内容はオーナーによって様々、まだ最終的な居住許可がおりてない外国人との契約はオランダ人のそれと比較し条件を追加されるケースもあります。(例えばデポジットを3ヶ月分にしたり、家賃を半年分前払いなど。1日でも早く住居確保をしたい日本人にとってはその追加条件をのんで契約するケースも多いようです。)
3.個人事業主が移住している代表的な都市の特徴と家賃相場
実際、外国人である日本人の私たちが、この住居確保で苦労したという話もたくさんあります。
一方で予想以上にすんなり賃貸契約が完了したという話ももちろんあり、住む都市や住まい探しのタイミングによってまちまちな状況です。
日本人が移住先として選んでいる代表的都市と大まかな家賃イメージ(70㎡前後での1ヶ月家賃、オランダには70㎡未満という物件が逆に少ないです)をご紹介します。ぜひ移住前に候補を見つけてみて下さい。
①アムステルダム(Amsterdam)
ご存知、オランダの首都であり、オランダ最大の都市。商業および観光が盛んです。物件供給がおいついていなく、家賃相場もオランダ国内で圧倒的に高い。希望の条件にそった物件を見つけることもなかなか難易度が高い。
家賃相場:1500€前後〜
②アムステルフェーン(Amstelveen)
オランダ国内で日本人が居住する都市として有名。
同都市に居住する外国人の中で日本人が一番多く、日本人コミュニティが存在する。
同都市および隣接地域には多くの日本企業が存在し、日本人駐在員の家庭も多い。アムステルダムから近く、以前はアムステルダムと比較して家賃相場も低かったが、近年は上昇傾向。
家賃相場:1100€前後〜
③デン・ハーグ(Den Haag)
アムステルダムとロッテルダムに次ぐオランダの第3の都市。
行政機関が集中しており事実上の首都機能を担う。
居住許可取得の手続きで訪れる日本大使館や外務省、商工会議所なども同都市に集中しており、手続きのことを考えると非常に便利。近年デン・ハーグを選ぶ日本人移住者も多い。アムステルダムと比較すると家賃は割安。
家賃相場:900€前後〜
④ロッテルダム(Rotterdam)
アムステルダムに次いで第2の都市。
世界屈指の港湾都市。第二次世界大戦での爆撃により旧市街が破壊されてしまったため他の都市と比較し、近代的な建築物が多いことも特徴の1つ。
外国人の移民も多い。
家賃相場:900€前後〜
⑤ユトレヒト(Utrecht)
オランダ第4の都市。
アムステルダムからも30㎞と近く、また各都市までのアクセスも非常によい。
オランダの宗教の中心的な街だった歴史から歴史的建造物や古き良きオランダの街並みが残る。また国内で最大級の大学であるユトレヒト大学もあり学生が多い。ミッフィーの作者が生まれた街として日本では有名。オランダ人の中でも居住エリアとして人気が非常に高く、第4の都市ながらアムステルダムに次いで家賃相場は高い。
家賃相場:1400€前後〜
※家賃相場はもちろん条件によって差がありますので、あくまでも都市ごとの差をつかむイメージとしてご活用ください。
オランダに到着してからの家探しの流れとしては日本と大きく変わらず、候補都市に宿泊、候補都市の不動産屋を訪れ物件紹介、下見、契約という流れになります。
4.個人事業主に必要なビジネス口座開設の手続き
賃貸契約が完了し、住む都市の市役所でBSNナンバー(Burger Service Nummer:住民登録番号)の発行が完了すると銀行口座を開設できるようになります。
個人事業主として居住許可を取得するためには、プライベートの銀行口座の他に、ビジネス口座の取得も必須になりますので、ここで銀行口座開設についてご紹介します。
オランダではメジャーな銀行が3つあります。「ING」「ABN AMRO」「Rabobank」の3行です。
念のため3行の名前をご紹介しましたが、結論を先にお伝えすると個人事業主としてビザを取得する場合は上記の「ING」を選択する必要があります。
理由としては個人事業主としてビザを取得するためには「ビジネス口座」を開設することが必須であり、ビジネス口座を容易に開設できる銀行は「ING」のみだからです。
とはいえINGは最大手でありセキュリティがしっかりしており、また他行が口座開設手続きに際し窓口予約が必須であることに対し、予約が不必要である点など移住者にメリットも多いので特に問題はありません。
口座開設に必要な準備物は下記のとおり。
- BSNナンバー
- パスポート
- 賃貸契約書のコピー
- 携帯電話番号(プリペイドSIMでも可)
銀行でプライベート口座を開設後、オランダ商工会議所にて会社登録手続きを行い会社登録証明書を発行します。
上記準備物に加えて会社登録証明書を持参して手続きを行えばビジネス口座を開設できます。(ビザ取得までの全体の流れに関しては「約70万円で叶うオランダ起業!〜起業準備その1〜」をご確認下さい。)
なお口座維持費として年間約17€ほどかかりますが、プライベート・ビジネス口座共に開設する際に費用はかかりません。
また日本とは違い口座維持費が発生するかわりに、オランダ国内であれば他行であっても振込手数料が無料であり、ATMでの引き出し手数料も一切発生しません。
まとめ
個人事業主として必要なビジネス口座を開設するにしても、手続きを進めるにしてもまずは住む場所を決めることが大きなポイント。その分大変で面倒なことも多いですが、良い住まい探しは移住の醍醐味の1つでもあります。ぜひポジティブな気持ちで移住前の準備としてイメージしてみて下さい。
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