オランダでは2007年より外国人に対する「市民化プログラム」が義務化されました。

定められた期限内に「市民化テスト」に合格し、「市民化ディプロマ」を取得しなければなりません。

市民化ディプロマの取得はオランダ永住権・国籍の申請要件でもあります。

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1．市民化テストの試験科目と受験料

オランダで滞在許可証を取得すると、市民化プログラムを管理する「De Dienst Uitvoering Onderwijs （以下DUO） 」 から「市民化期間」が通知されます。

この市民化期間（通常3年）内に市民化テストに合格しなければなりません。

市民化テストは3教科6科目です。

「オランダの労働市場へのオリエンテーション」は2015年1月に導入されたテストのため、それより前に市民化の義務を課された移民は受験する必要がありません。 

「オランダ語」テストの選択肢

オランダ語のテストは「オランダ語国家試験（NT2）」に替えることができます。

市民化テストよりも難易度が上がりますが、オランダでの就業や教育機関への入学資格を得るために、計画的にNT2を受験するのも得策です。

NT2に合格すると「オランダ社会に関する知識」と「オランダの労働市場へのオリエンテーション」のみを受験しますが、2015年1月より前に市民化の義務を課された移民は、この2科目の受験も必要ありません。

2．市民化テストの実施要項 

市民化コース

DUOの指定校で市民化テストに向けての「市民化コース」を受講できます。

自主学習よりも効率的に勉強でき、オランダ人教師や世界各地からの移民とも知り合えます。

オランダの社会見学を兼ねた遠足を実施する学校もあります。DUOのHPには市民化テストの練習問題もあります。 

受験申込み

市民化テストは5都市（アムステルダム、アイントホーフェン、レイスウェイク、ロッテルダム、ズヴォレ）で実施されています。

DUOのHPにある申込書またはオンラインで受験を申し込みます。DUOの指定機関による診断書が必要ですが、身体的・視覚的な問題がある場合は特別な受験方法をリクエストできます。

受験と結果発表

身分証明証を持参し、試験開始30分前には会場に到着しなければなりません。

当日受験できなかった場合、受験料は返金されないので気をつけてください（受験日の変更は14日前まで）。合否は試験日から8週間以内に書面で通知されます。合格すると市民化ディプロマを受け取る場所や日時も通知されます。

3．テストの傾向と対策：オランダ語

リーディング

問題は全25問あり、所要時間は65分間です。150～250語のテキストを読み、設問に対する回答を3つ（または4つ）の選択肢から選びます。

1つのテキストにつき、設問は2つ（または3つ）用意されています。

会社の同僚からの一斉メールや近隣住民からのお知らせなど、実生活でよく目にするテキストが出題されます。

店舗の営業時間や料金体系など、表やグラフの読み取りを含むものもあります。テキストを読む前に質問と回答の選択肢に目を通しておくと、注意するポイントが分かるので時間を節約できます。

1つのテキストにかけられる時間は約6分半なので、普段から制限時間を決めてリーディング問題を解く練習をしておきましょう。

上図：リーディングのテスト画面。左にテキスト、右に設問と選択肢。

リスニング

問題は全25問あり、所要時間は45分です。

シチュエーションを説明するナレーションに続いて、音声またはビデオが再生されます。

設問と3つ（または4つ）の回答を聞いて適切な答えを選びます。

1つのシチュエーションにつき、設問は2つ（または3つ）用意されています。音声・ビデオ問題を再生する前に、設問と回答の選択肢に目を通しておくと、リスニングのポイントが明確になります。

音声問題ではラジオ放送や留守電などを、ビデオ問題では数人の会話を聞き取ります。

ネイティブの会話のスピードなので、かなりの集中力が必要です。

一言一句を漏らさずに聞き取るというよりは、話の大筋を追っていくリスニング方法が効果的です。オランダ人との会話やラジオ・テレビ番組などを利用して「オランダ語耳」を鍛えておきましょう。

上図：左側のウィンドウにビデオが流れる。音声・ビデオ・設問は繰り返し再生が可能。

ライティング

問題は全8問あり、所要時間は35分です。

ライティングテストのみ筆記試験（他のテストはパソコン上で実施）です。前半2問は与えられたテーマに沿ってメールや手紙、書類などを作成します。後半6問は接続詞で結ばれた重文の後半部分を完成させます。 

前半の問題例

• 歯医者の予約をキャンセルするメールを書きなさい。予約日時とキャンセル理由を伝えること
• 注文した本が届いていない旨を、本屋に対して苦情フォームで伝えなさい。

後半の問題例

• Rosa moet naar het ziekenhuis. Zij gaat met de bus, want___

     ローザは病院に行かなければならない。彼女はバスで行く、なぜなら___

• De fiets van Aziza is kapot. Ze wil graag een nieuwe fiets kopen, maar___

     アジザの自転車は壊れている。彼女は新しい自転車を購入したいが、しかし___

• Martha werkt in de slagerij. Ze werkt daar nog niet zo lang, dus___

     マーサは肉屋で働いている。彼女はまだ長く勤めていない、そのため___

いずれも、オランダ語特有の枠構造など、基本的な文法をマスターすれば解答できます。

問題の意味さえ理解できれば、あとは自分の知っている単語と表現を総動員して作文するのみです！

ただし前半の問題については、手紙・ビジネスメールの定型文、苦情や資料請求の書き方を学んでおく必要があります。履歴書（志望動機や職歴）の書き方も予習しておきましょう。

後半の問題については、特に接続詞の語彙を増やしておくと役に立ちます。

スピーキング

問題は全24 問あり、所要時間は35分です。

前半の12問はビデオに登場する人の簡単な質問に対して、パソコン上で音声を吹き込んで回答します。質問者は1人なので、会話形式のリスニング問題よりは大分聞き取りやすくなっています。

回答を2～3文でまとめてから、大きな声ではっきりと音声を吹き込みましょう。

問題例

• “Wat leest u graag? Zeg ook hoe vaak u leest.”

     何を読むのが好きですか？どれくらいの頻度で読むかも教えてください。

• “Wat voor werk doet u nu? Vertel ook wat voor werk u vroeger deed.”

     現在どのような仕事をしていますか？以前は何の仕事をしていましたか？

• “Wat gaat u morgen doen? Vertel ook hoe laat u dat ga doen.”

     明日は何をしますか？何時にするのかも教えてください。

後半の12問はシチュエーションを説明するナレーションに続いて、音声またはビデオが流れます。

設問と3つの回答を聞いて、適切な答えを1つ選びます。テスト形式はリスニング問題と同じですが、出題テーマは短い日常会話に限定されています。

日常会話でよく使われるフレーズや慣用句を覚えておきましょう。

4．オランダ社会に関する知識

問題は全39問あり、所要時間は45分です。

オランダ社会における典型的なシチュエーションに関する設問と3つの回答を聞いて、適切な答えを1つ選びます。

出題テーマは、公共マナーや仕事や育児といった日常的なものから、オランダの歴史や地理、政治経済といった学術的な分野まで多岐にわたります。

写真によって状況把握がしやすくなっているものの、日常会話ができる程度のリスニング力と、オランダ社会に関する広範な知識・語彙力が求められます。

問題例

Q 初等教育の後に進学できるのは？

 a) 大学

 b) 高等職業訓練校（HBO）

 c) 一般中等教育（HAVO） ◎正解

Q 週末、ハウスアーツが閉まっていたらどこに電話するか

 a) ハウスアーツポスト ◎正解

 b) 専門医

 d) 病院

Q 隣人の犬がうるさい時の対処法

 a) 警察に通報する

 b) 住宅協会に苦情を申し立てる

 c) 犬の飼い主の隣人と話し合う ◎正解

Q 自由民主国民党（VVD）が最も重要だと考えているもの

 a) キリスト教の価値観

 b) クリーンな環境

c) 底堅い経済 ◎正解

5．オランダの労働市場へのオリエンテーション

 オランダの労働市場への参画を目的として、就労・求職に関する知識とスキルを身につけます。

筆記試験ではなく、8ページの「リザルトカード」を完成させるという課題が与えられます。

希望職種や就職に必要な資格をリストアップしたり、本国での学歴・卒業証書が、オランダではどのレベルで扱われるものなのかを査定してもらったりします。

リザルトカードの中には就職活動の報告をする項目もあり、実践に重きが置かれています。完成したリザルトカードとカバーレター、履歴書、これまでに取得した卒業証書がDUOによって審査され、最終的に40分の面接試験が実施されます。

リザルトカードの見出し

1. 職業オリエンテーション：希望の業種・職種／卒業証書・資格・実務経験
2. 現実的な就業状況：希望職種の仕事内容／就労条件
3. 自己の資質と能力を知る：希望業種に必要な資質・能力
4. 就業機会：求職情報／就職活動の報告
5. 技術的・専門的能力：職業訓練・コース
6. ネットワーク構築：就労支援のネットワーク・人脈
7. 就職活動：就職活動の方法／履歴書
8.  労働文化：本国とオランダの労働文化の相違点 

まとめ

市民化テストに向けて身につけた知識と語学力は、オランダ生活で必ず役に立ちます。

テストに合格すれば達成感も味わえますし、将来のキャリアも広がります。オランダ生活を楽しみながら合格をめざしましょう！

※試験の内容は2016年8月のものです。

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