移住前に知っておきたいオランダの医療制度と医療保険

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海外に移住する際に気になるのは、健康管理や医療費のこと。

移住前に知っておきたい、オランダの医療サービスについてご紹介します。

移住したらすぐにオランダの医療保険に加入

オランダには国民皆保険制度が存在し、すべての国民と長期滞在者に医療保険加入が義務付けられています。

外国人は入国後3ヶ月以内にオランダの法定医療保険に加入する必要があります

期間内に保険を手配しない場合は350ユーロの罰金(2016年)が課せられるほか、次回の滞在許可取得が困難になります。ただし日蘭社会保障協定による適用を受け、適用証明書を取得している駐在員の方は、オランダの法定医療保険への加入義務はありません。

現在の医療保険の運営体制は、2006年施行の「健康保険法(Zorgverkeringswet)」に基づいて確立しました。

かつての医療制度は公営と民間で並立していましたが、2006年以降は政府による医療計画は行われておらず、民間の自由競争となりました。短期医療保険は民間企業が引受人となっています。

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オランダの医療保険は三層構造

オランダの医療保険は介護保険と健康保険に分かれ、三層構造のシステムです。

1. 特別医療費保険(強制保険)

1968 年施行の「特別医療費補償法(Algemene Wet Bijzondere Ziektekosten)」に基づく国営の強制保険で、日本における公的介護保険に相当します。

オランダに居住し課税所得がある者(15歳以上)、および非居住者でオランダにおいて納税する者に対して源泉徴収されます。

保険者は国ですが、給付事務は民間企業が代行しています。

1年を超える長期入院やリハビリテーション、老人長期医療、末期医療、精神医療、高齢者・障害者の施設・在宅介護など高額医療費が保障されます。

被保険者が給付を受けるためには「治療ニーズアセスメントセンター(Centrum Indicatiestelling Zorg)」の認定が必要で、介護サービスの内容により自己負担も発生します。

2. 短期医療保険(強制保険)

一般的な短期日帰り医療を対象とする強制保険で、「基本保険(basisverzekering)」とも呼ばれます。

日本における健康保険に相当します。2005 年までは低所得者と高齢者を対象にした疾病基金と、任意加入の民間医療保険に分かれていましたが、先述の健康保険法(2006年)により一本化され、同時に国民皆保険が実現しました。

オランダに居住する者(18 歳以上)、および非居住者でオランダにおいて納税する者は、短期医療保険への加入が義務付けられています。

2006年より、民間の医療保険会社が保険者となりました。被保険者は加入する保険会社を自ら選択でき、その際に適正な選択ができるよう、国が情報提供を担っています。

一般的な医療(プライマリケアを含む医療行為、処方薬、入院)、救急医療、産科ケア、リハビリテーション、18歳未満の歯科治療などが保障されます。

「自己負担金制度(eigen risico)」が存在し、年間一定額(2016年の最低自己負担額は385ユーロ)に達するまでは自己負担となります。

3. 補完保険市場(任意加入)

「補完保険(aanvullende verzekeringen)」では、18歳以上の歯科医療、代替医療、理学療法、整体などが保障され、日本における民間医療保険に相当します。

多くの保険会社が、基本保険と補完保険をセットで引き受けています。

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オランダの医療保険に加入するには

滞在許可証を取得後、保険会社のプランを比較して短期医療保険に加入します。

各保険会社のHPで希望プランの見積りができます。

保険料は成人一人当たり月額約90ユーロ(2016年)で、保険会社による価格差は5%程度です。年間の自己負担額(eigen risico)を高く設定すれば、毎月の保険料を安く抑えられます。

18歳未満の子供は親の加入した保険でカバーされます。

支払いが困難な低所得者は政府の支援が受けられます。

所得額や個々の状況に応じて、保険料がカバーされる税金控除システムもあります。外国人でも税金控除や現金還付の対象となります。

オランダの保険会社は国の規定する保険治療パッケージを、年齢や健康状態に関わらず、万人に定額で提供する義務があります。持病や病歴を理由に加入を拒絶することはできません。

民間企業による自由競争とはいえ、国の監視する規制競争であり、選択した保険会社によって大きな損得の差が生じたり、医療的に不利な扱いを受けたりすることはありません

保険選びの3つのポイント

①自己負担金(eigen risico)の選択肢

自己負担金の選択肢が、例えば385ユーロ、485ユーロ、885ユーロ…と多いほど、保険料の選択肢も多くなり、経済・生活状況に合わせた保険プランを調整できます。

②医療機関の選択肢

通常、患者は治療を受ける医療機関を選べますが、保険会社によっては稀に医療機関の選択に追加料金がかかります。

③補完保険の内容

先進医療や代替療法、整体や眼鏡など、自らの健康状態に合った保険プランを検討します。

18歳以上の歯科医療は基本保険でカバーされないため、補完保険に加入する必要があります。

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オランダの医療制度

総合診療医 「ハウスアーツ」

オランダはホームドクター制度をとっています。

全てのヘルスケアは「ハウスアーツ(huisarts)」と呼ばれるホームドクターを通して行われます。

ハウスアーツが一次医療を行い、必要と判断されれば二次・三次医療へのアクセスを許可されます。ハウスアーツの紹介を受けずに専門医や病院にかかることはできません。

オランダに移住したらまず、居住地のハウスアーツに登録します。

ハウスアーツのリストを市役所やインターネットで入手し、実際に会ったり、近隣住民から情報を集めたりして、信頼できるハウスアーツを選びます(後に変更も可能)。

ハウスアーツは短期の疾病に限らず、長期的・総合的な健康管理をサポートしてくれます。同時に、歯科医「タンダーツ(tandarts)」への登録も行いましょう。

救急医療

緊急時も、まずはハウスアーツに連絡しますが、夜間や休日で不在の場合は当番医センター「ハウスアーツェンポスト(Huisartsenpost)」または「中央医療サービス(Centrale Doktersdienst)」に連絡します。

必要に応じて診察・往診を受け、救急外来受診が必要と判断された場合は、救急車や救急病院を手配してもらいます。

「救急外来(Spoedeisende Hulp)」を直接訪れる場合も、可能であればハウスアーツに連絡します。

ハウスアーツは救急病院に対して、患者が来院する予定であることや治療方法を伝えてくれます。救急外来の対応病院は、あらかじめ下見しておきましょう。

処方箋を扱う薬局 「アポテーク」

オランダには、かかりつけ薬局制度があります。

自らの居住エリアで、処方箋を扱う薬局「アポテーク(apotheek)」に登録します。アポテーク、ハウスアーツ、病院が連携して、患者の薬剤服用歴を管理できるシステムが構築されています。

同じ薬を再処方して欲しい場合は、ハウスアーツに電話かメールで連絡をすると、薬局に処方箋を送ってもらえます。

処方箋薬以外の薬は保険でカバーされません。解熱剤のパラセタモール(paracetamol)や鎮痛剤のアスピリン(aspirine)などはドラッグストアで購入できます。

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オランダの医療制度 7つのメリット

1. 年齢や健康状態、病歴などを理由に、保険に入れなかったり掛け金が高くなったりすることがありません。保険者間のリスクは、政府による調整基金で平準化されています。

2. 自己負担金制度(eigen risico)により、一定額を超えた医療費はすべて無料です。例えば、ガン治療(入院手術・抗癌剤・放射線)や不妊治療も保障されています。ゆえに高額医療費の請求手続きは必要ありません。

3. 病院や薬局で会計の必要がありません。請求書は保険会社に直接送られます。

4. ほぼ全ての医療機関で英語が通じます。医師も看護スタッフも、フレンドリーな方が多いので安心です。

5. 病院での待ち時間がほとんどありません。予約時間になると医師が待合室まで迎えに来てくれます。診察時間が細かく管理されている分、遅刻は禁物です。

6. ハウスアーツとアポテークにより、既往歴や服薬歴が管理されているので、治療・検査をする際に、自らの記憶をたどって説明をする必要がありません。

7. ハウスアーツに気軽に健康全般の相談ができます。長期的、継続的に健康状態をサポートしてもらうことは心の支えにもなります。

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「Spoedeisende Hulp (SEH)+都市名」や「Huisartsenposten+都市名」などで検索すると、居住地の医療サービスの情報が得られます。

まとめ

オランダの医療制度は世界でも水準が高く、2015年の「ユーロ健康消費者指数(Euro Health Consumer Index)」では前年に引き続き、欧州35カ国で1位になりました。

予防療法よりも対症療法に重きを置くオランダでは、自然治癒能力や生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)も重視され、患者の意志が尊重されています。

病院にはお世話にならないのが一番ですが、万が一の場合は安心して受診できる医療システムが整っています。

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せかいじゅう編集部

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