カナダ永住権とは「Permanent Residents」を指します。
学校に通ったり、就労したりすることが可能で、更に医療保険等カナダ国民とほぼ同等の権利が得られます。
投票権はなく、高度なセキュリティが求められるある一定の職にはつけません。
Permanent Residentsの申請には多様なプログラムがあり、メジャーなものでは、
- ファミリースポンサーシップ(Family Sponsorship)
カナダ人の家族や配偶者が、非カナダ人の家族または配偶者のスポンサーとなり申請するもの - エクスプレスエントリー(Express Entry)
カナダ国内外での職歴、学歴また英語能力などを加点方式で採点し、カナダ政府が定めたポイント以上を取得した者が申請するもの - ケアギバーズ(Caregivers)
こどもや高齢者、医療や介護が必要な人たちのケアを仕事にする者が申請するもの
などがあげられます。他にもケベック州やニューブランズウィック州独自のものなどがあります。
ここでは、エクスプレスエントリーを利用して2019年にカナダ永住権を取得した筆者の体験談をお伝えしたいと思います。
※ビザ要件は頻繁に更新されまで、ここでの情報は参考とし、最新の情報を取得するよう心がけてください。
ワーホリへの準備
筆者は高校卒業後、四年制大学に入学しましたが、美容師の道を諦めきれず、大学を卒業後、美容専門学校に入学し直し、その後都内の美容室に勤務しました。
ワーキングホリデーを活用しようと決めたのは27歳の時。
わたしがカナダ留学を決めた理由は3つあります。
- 治安の良さ
- 英語の発音の綺麗さ
- 適度な日本人の多さ
カナダ国内でも2大都市のトロントとバンクーバーで迷いましたが、バンクーバーの方が日本人が多いと聞き、英語環境も考慮してトロントにしました。
ワーホリ前に準備した書類は
- 美容師免許
- 専門学校卒業証明書、成績証明書
- 就労証明書
の4点です。
これらはオンタリオ州で美容師免許を取得するために使用しました。
カナダでワーキングホリデー中にオンタリオ州の美容師免許取得
トロントに渡航してすぐにオンタリオ州の美容師協会にメンバー登録しました。
当時、メンバー登録には上記した書類と追加で技術証明書を提出しなければいけませんでした。
この技術証明書は協会指定の用紙があり、そこに前職のオーナーまたは店舗責任者が署名し、協会に送ってもらう必要がありました。
日本での美容室のオーナーとやりとりをしてどうにかメンバー登録が完了しました。
就労ビザ取得には確実にオンタリオ州の美容師免許が必要だと言われたので、すぐに筆記試験を受け美容師免許を取得しました。
就労ビザの取得へ向けて
ワーキングホリデービザの期限も迫っていたので、美容師免許が手元に届くとほぼ同時に、就労ビザの申請をしました。
就労ビザ申請のためにわたしが準備した書類は以下の通りです。
- パスポートとワーキングホリデービザ
- オンタリオ州美容師免許
- 日本の美容師免許
- 日本での勤務経験を公的に証明できるもの
- カナダでの勤務経験を公的に証明できるもの
- 美容専門学校卒業証明証と成績証明書
- 四年制大学卒業証明証と成績証明書
- 勤務先からのEmployment Letter兼Job Offer Letter
「日本での勤務を公的に証明できるもの」として、移民コンサルタントからは源泉徴収票を希望されましたが、わたしは持っていなかったので、給与収入や所得税の記載がされている課税納税証明書を取り寄せて提出しました。
「カナダでの勤務を公的に証明できるもの」でも、同様にT4と呼ばれるカナダの課税納税証明書のようなものと給与明細を提出しました。
”勤務先からのEmployment Letter兼Job Offer Letter”は、ワーキングホリデー期間中の就労を証明し、またワーキングホリデービザが失効した後も勤務の継続を依頼したいといった内容のものです。
以上を提出して半年ほど待ち、就労ビザを取得しました。
予備知識:カナダ永住権とは。現地では移民権とも呼ばれる
取得した就労ビザの期限は2年間でした。
この2年間のうちに永住権を申請することになりましたが、ここでカナダでの永住権について簡単にご説明をしたいと思います。
カナダにおいて永住権とは”Permanent Residents”を指し、Permanent Residentsの権利として
- 健康保険を含むカナダ国民と同等の社会保障の授与
- カナダ国内における居住、就労、就学
- カナダ市民権の申請
- カナダ憲法またカナダ人権憲章による保護
が明記されています。
参考URL:Government of Canada – Understand permanent resident status
投票権はなく、納税と法の遵守の義務が課されています。
このようにしてみると、Permanents Residentsを取得することによって、日本に住むかのように、カナダで生活することが可能になるということが分かります。
永住権を取得した人たちが移民としてカナダに根付いていくことから、トロントに住む日本人の間では永住権のことを「移民権」と訳すことが多々あります。
カナダ永住権ーエクスプレスエントリーの申請方法
先に述べたように、移民国家であるカナダでは永住権の申請方法が多岐に渡ります。
ケベック州やニューブランズウィック州など、州独自の申請方法もありますが、メジャーな申請方法は
- Family Sponsorship
- Express Entry
です。
Family Sponsorshipとは、カナダ国籍保有者または永住権保持者が、配偶者を含む家族関係者のスポンサーとなり申請する方法です。
一方、Express Entryとは「Skilled Worker」として申請する方法です。
では”Skilled Worker”とは?と、なると思いますので、次にこの申請方法について詳しくご説明致します。
Express Entryとは
前述しました”Skilled Worker”ですが、技術や能力、また経歴の認められた労働者と言えば少し分かりやすいかと思います。
Express Entryでは、学歴や職歴、また英語技能等を加点方式で採点され、カナダに有益であると認められた労働者が永住権を申請できるシステムになっています。
- 年齢
- 学歴
- 英語技能
- フランス語技能
- カナダでの職務経験
- カナダ国外での職務経験
- 資格
以上が主たる採点基準となっており、未婚者の場合はそれぞれの点数が高く、既婚者やパートナーがいる場合はそれぞれの点数が低く振り分けられていますが、後者の場合は配偶者やパートナーも採点対象となり、そのポイントも加算されます。
採点方式は
参考URL:Government of Canada – Comprehensive Ranking System (CRS) Criteria – Express Entry
に詳しく記載されています。
この採点によって、点数の高い者から順に、政府からITAと呼ばれるPermanent Residents申請のための招待状(Invitation to apply)が発行されます。
この招待状を受け取れば、晴れて永住権申請の資格を獲得できます。
Express Entryの詳しい流れは以下のページ
で紹介されています。
英語技能テストは2種類ある
話はわたしの体験に戻り、いよいよ英語技能テストを受けることになりました。
Express Entryで有効な英語技能テストはCELPIPという市民権や永住権申請用に作られたカナダ独自のテストと、IELTSの二種類ありました。
Express EntryではThe Canadian Language Benchmarks (CLB) レベルが4以上ないと得点がありません。(CLBレベルとCELPIPまたIELTSスコアの換算表はこちら)
コンサルタントには最低でもCLBレベル5以上、確実に安全圏を狙うならば6以上と言われていました。
それぞれのテストに特徴があるので、向き不向きがあると思いますが、わたしはどちらも受け、IELTSのスコアで安全圏の点数が取れました。
妊娠発覚!シングルで申請へ
いざ、テストを受け始めた時に、まさかの妊娠が発覚しました。
お恥ずかしながら我々は籍を入れていなかったので、出産前に日本で入籍しようと思っていたのですが、コンサルタントからストップがかかりました。
先にお伝えしていたように、婚姻のステータスが変わると、獲得点数も変わってしまいます。
配偶者も加点対象になりますが、わたしたちの場合ではシングルの方が点数が高かったのです。
わたしのみがExpress Entryを申請し、ITA(Invitation to apply)を受け取って、永住権申請をしてからの入籍であれば問題がないとのことで、その方向で進めていました。
Express Entry申請へ
申請にあたって準備した書類はこちらです。
- パスポートと就労ビザ
- オンタリオ州美容師免許
- 日本の美容師免許
- 日本での勤務を公的に証明できるもの
- カナダでの勤務を公的に証明できるもの
- 美容専門学校の卒業証明書と成績証明書
- 四年制大学の卒業証明書と成績証明書
- 勤務先からのEmployment Letter兼Job Offer Letter
- 証明写真
- 前雇用主からの雇用証明書
- 戸籍抄本
- ILETSのスコアシート
- 警察証明書と指紋証明書
就労ビザの取得に必要だったものは、ほぼ同様に必要となりました。
「勤務先からのEmployment Letter兼Job Offer Letter」は、以前と同じくワーキングホリデービザから就労ビザ中の雇用の証明、また永住権取得後の勤続の依頼といった内容です。
同様に、「前雇用主からの雇用証明書」は日本の美容室での勤務を証明する内容でした。
「警察証明書」とは、日本での犯罪歴がないことを証明するもので、トロントにあるカナダ大使館で申請します。
「指紋証明書」は警察証明書の申請時に案内され、専用のオフィスで指紋を取り、申請します。全ての書類が揃ったところで、ついにExpress Entryを申請しました。
ITA取得、夫婦で永住権申請へ
ITA(Invitation to apply)の発行は隔週で行われており、申請から二週間ほどで受け取ることができました。
この時、当初の予定ではITAを受け取ってから、わたしのみが永住権を申請したところで入籍予定でした。
しかし、わたしが受け取ったITAが発行された日の最低点数が、既婚者となって下がった点数よりもさらに下回っていたのです。
そのため入籍してから夫婦でExpress Entryを申請し、そして永住権を申請できることになったのです。
当時はITAの発行から永住権申請の期限が90日間り、ITAを受け取った時は出産予定日の1ヶ月前だったので、出産後に永住権を申請することになりました。(現在この期限は60日間に変更になっています。)
なぜなら、申請の際に政府指定の病院で健康診断を受けなければいけなかったのですが、この中にレントゲン検査があり、妊婦の検査は推奨されていなかったためです。
婚姻のステータスが変更になり、夫婦で申請することになったので、追加で書類を準備しました。
- 改姓後のパスポートまた配偶者のパスポートと有効なビザ
- 戸籍謄本
- 二人分の健康診断書
- 二人分の証明写真
- 二人分のパーソナルヒストリー
- 二人分の残高証明書
- 配偶者の警察証明書と指紋証明書
- 子どものカナダでの出生証明書
戸籍抄本から戸籍謄本に変更になったのは、婚姻関係を証明するためです。
「パーソナルヒストリー」は来歴を記入するものですが、過去10年間の居住や学歴、職歴、また旅行の記録などを記入するため、なかなか根気のいる作業でした。
「残高証明書」は銀行で簡単に受け取ることができます。
90日は長いようであっという間で、期限の3週間ほど前にようやく永住権の申請となりました。
最終段階:永住権の取得へ
申請から永住権確約証明レターが発行されるまで約6ヶ月と政府からは明示されていました。
わたしの場合、婚姻ステータスが変わったことにより、7ヶ月ほど待ちましたが、無事に永住権確約証明レターが発行されました。
そのレターを持って入国審査オフィスで簡単な面談をし、署名することで正式に永住権が発行されます。
以前はカナダ国外に一度でなければいけませんでしたが、今は国内でも可能です。私たちは日本に一時帰国して、カナダに戻ってきた際に空港のオフィスで行いました。
とにかく時間との戦いで、提出書類も多く、また日本から取り寄せなければいけない書類も多々あります。手間もかかり、翻訳料なども合わせて金額もかかりました。
わたしの場合、余裕を持って申請できると思っていたところで妊娠が分かったので、時間は全くなくなってしまいました。
Express Entryでの申請をお考えの方たちは、十分に専門家と相談し、期限を逆算しながら余裕を持って準備することが大切です。
また金銭面でも申請料だけでなく、翻訳料や必要書類の申請料も含めて多少多く見積もっておいた方が良いでしょう。
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