現役で保育士をされている方、または、現在は働いていないけれど保育士資格を持っている方、「日本の保育士資格を活かして、海外でも働けたら…」と考えたことはないでしょうか。
結論から言うと、ドイツでは日本の保育士資格の書き換え手続きを経て、ドイツの保育士資格を取得する方法があります。
ここではドイツ在住3年目、現地保育園で保育士として働いている筆者が、ドイツに渡り保育士になるまでの道のりを紹介します。
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最初はオペア留学制度を利用してドイツへ渡航
オペア留学制度、なにそれ?そもそもこの制度を聞いたことがない方も多いと思います。
オペア(Au-pair)留学とは、ホストファミリーの家でホームステイをしながら子どものお世話・簡単な家事などの労働力を提供することで、住居と食事、健康保険、語学学校の補助、月ごとのお小遣いをファミリーから支給してもらい、その土地の文化や言語を学ぶ、という国際交流プログラムです。
日本ではまだ認知度が低い制度ですが、先進国、特にアメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアでは有名なこの制度。
短期の留学プログラムと捉えて1年間異国の生活を謳歌する若者もいれば、政情不安など様々な理由から母国を出て、先進国と呼ばれるこれらの国々へ移住するための足がかりとしてこのオペア制度を利用する若者も多くいます。
これ以上の詳細は割愛しますが、筆者はこの制度を利用して、2019年夏にドイツに渡航しました。
ホストファミリーをあらかじめ見つけた上で渡航するので、ひとまず1年間の住居の心配がないこと、そして困ったときに頼れる人が現地にいる、というのは心強いものです。
ホストファミリー宅にお世話になったドイツでの最初の1年間は、1歳児と3歳児、2人のホストキッズのお世話とその合間の語学学習、そして渡航から約半年、突如としてやってきたコロナパンデミックに翻弄される形でバタバタと毎日過ぎていきました。
ドイツ語学習
渡航から1年、2020年の夏。
パンデミックの影響で、オペアの仕事と並行しながら語学学校に通えたのはドイツに渡航してから最初の半年だけでした。
そこで、ホストファミリー宅を出た後は、語学学校の寮に入り、ドイツ語学習に集中することにしました。
毎日授業が開講される集中コースに登録し、午前は3時間授業を受け、午後に宿題をする、という生活を3ヶ月続けました。
その後、ドイツ語のレベルを測る公式テスト(英語で言うTOEFLのようなもの)を受け、中上級(B2)試験に合格しました。
保育士資格の書き換え手続きの申請
ドイツ語のB2試験に合格をした後に、本格的に保育士資格の書き換え手続きの準備にとりかかりました。
実はドイツでは、保育士の他にも看護師や理学療法士など、ドイツ外の国で取得した専門資格を、国の審査の上、必要な条件を満たすことで書き換えることができます。
(公式のホームページ:https://www.anerkennung-in-deutschland.de/html/de/index.php)
審査の申し込みのために必要な書類は職種ごとに異なります。
筆者の申請した保育士資格の場合は、大きく分けて3種類の書類が必要でした。
- 身元を証明する書類(パスポート、滞在許可証、住民登録証など)
- 学業を証明する書類(日本の大学または専門学校の成績表、卒業証明書、学んだ科目や内容がわかる書類、ドイツ語レベルの証明書など)
- 職務経験を証明する書類(保育士証、在籍証明書、職歴の載った履歴書など)
これらの書類を認定の翻訳者のもとでドイツ語、または英語に翻訳してもらった上で、指定の機関に郵送します。
書き換えのための必要条件は人により異なる
そして待つこと約2ヶ月。審査の結果が届きました。
ちなみに審査にかかる時間というのは、時期や役所の担当者によってバラバラのようです。公式情報では最大4ヶ月かかると記載がありましたが、筆者の知り合いには半年以上待ったという人もいました。
確かに、ドイツでは夏や年末は長期休暇を取る人々が多いので、役所での手続きはとても時間がかかる印象があります。
そして、資格の書き換えの審査の結果はというと、返信の手紙には、審査の内容が細かく説明されて載っていました。
結論から言うと、筆者がドイツの保育士資格を取得するには、以下の2つの条件のどちらかをクリアする必要がある、とのことでした。
- 保育園や幼稚園などの保育施設で、保育士見習いとして6ヶ月実習を行い、施設長からの修了書と、自分で記載したレポートを提出する
- 教育大学で毎年おこなわれる、適性試験を受けて合格する
筆者の場合はこの条件が提示されましたが、書き換えのための必要条件は人によって異なります。
日本の保育士資格を持っていれば誰もが同じ条件を提示されるというわけではなく、大学または専門学校でどのような内容を学んだのか、実際の保育施設での職歴など複数の要素を、ドイツの保育士資格取得までの教育内容と照らし合わせた上で審査の結果が出るとのこと。
実習とレポートの作成
提示された2つの条件をそれぞれ詳しく調べてみると、2つ目の適性試験は筆者のドイツ語キャパ的にどうやらかなり難しそう…ということで、1つ目の条件にチャレンジすることにしました。
こちらは、6歳以下の子どもを保育する施設(保育園や幼稚園)に
「資格の書き換え手続きのために実習をする必要があります。こちらで受け入れてもらえませんか?」
と自分で実習先を探す必要がありました。
実は当時の筆者は、審査の結果が届く前にボランティアとして、とある保育園で働き始めたところでした。
ダメもとでこちらの保育園に依頼をしたところ、ボランティアとしての受け入れを変更し、実習生として受け入れてもらえることになりました。
実習期間はというと、フルタイム(週40時間)で働けば6ヶ月で終了。
パートタイムで働きたい場合は、フルタイムで働いた場合と同じ時間数に到達すれば実習期間終了とのこと。
筆者はフルタイム契約の実習生として、新たに保育園と契約を結びました。
そして2021年初夏、いよいよ6ヶ月の実習がスタート。
まだ不慣れなドイツ語を使っての保育園での仕事は毎日パニック状態。愉快でパワフルな子どもたち、理解ある同僚、親切な保護者に助けられながら、徐々に日々の仕事に慣れていきました。
そして実習期間終了の約2ヶ月前から、休日を使って今度はレポートの作成にとりかかりました。
レポートの規定はというと、幼児教育や保育に関する9つのテーマから一つを選び、10~15枚のレポートを作成。
実習終了後、そのレポートと、施設長からの実習修了書をセットにして指定の機関に送ります。
そして最終審査が通れば、晴れてドイツの保育士資格取得、となります。
最終審査を経て、ドイツの保育士資格取得
実習終了後の2021年の年末、まさにクリスマスイブの日にレポートと実習修了書を郵便局から郵送しました。
「サンタさん、クリスマスプレゼントに資格をください」
と念じながら送った記憶があります。
そして約1ヶ月後、無事に最終審査が通り、ドイツの保育士資格を取得することができました。
現在は、実習した保育園の系列園に異動し、新たな同僚、保護者、子どもたちに囲まれながら保育士として働いています。
以上、日本で保育士をしていた私が、ドイツ渡航、そしてドイツで保育士として働き始めるまでの道のりを紹介させていただきました。
「海外の保育園で働いてみたい」
「ドイツの保育園に興味がある」
「持っている資格を使ってドイツで働けないかな」
そんな方々の参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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