日本ではフリーランスと個人事業主の違いを一言で言うと、前者が「単発の仕事毎に契約を結ぶ人」であるのに対して、後者は「個人で事業を営んでいる人」と言うことはご存知の通りです。
フランスでは概ね「フリーランス = 個人事業主」と定義されており、いわゆる「個人で事業を営んでいる人」のことを指します。
ここでは、フランスで個人事業主として働くためには、何をどうすれば良いのかについてご紹介したいと思います。
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フランスで個人事業主として登録できる可能性がある2つのビザ
まず、前知識のビザ情報についてです。
入国ビザ
EU加盟諸国の国籍を有する人はEU加盟諸国内を自由に往来でき、自由に商業活動を行うことができますが、それ以外の国籍、例えば、アジア、アメリカ、オーストラリアなどの国籍を有する人は、目的に合った長期滞在ビザ、そして滞在許可証を取得しなければなりません。
個人事業主として登録できる2つのビザ
2016年11月1日に外国人のフランス入国・滞在・就労に関する新しい法律が施行されたことより、長期滞在ビザの申請手続きが大幅に変更されました。
しかし、フランスでは個人事業主ビザというのは存在しないので、就労可能でフランスの滞在許可証の取得・更新が可能な長期滞在ビザを取得する必要があります。
以下の2つの長期滞在ビザは、フランスの滞在許可証を取得・更新可能なものの中で、個人事業主として登録できる可能性が高いものです。
1)就労ビザ(OFII)
フランスの企業に採用されたり、もしくは本国の企業からフランスの企業へ出向として赴任し、フランスに3か月以上滞在する就労者に適用されます。
フランスにすでに学業目的で滞在している人、これからフランスに留学しようと考えている人の中には、卒業後にフランスに留まって働くことが可能なのかどうか知りたい人も多いと思います。
語学留学等の場合は、滞在中に就労に切り替えることができないので、もし、滞在中に仕事の契約を結ぶか内定をもらった場合でも、一旦、日本に帰国して就労可能な長期滞在ビザを取得後に再入国しなければなりません。
一方、フランスの高等教育機関卒業・修了時に取得するディプロムの種類によっては、滞在目的を就労に切り替えることはできます。
1.職業訓練専門学校修了 DUT、BTSなど |
・契約書に署名、または内定している場合、学生用滞在許可証が失効する2か月前から給与労働、または派遣労働可能な滞在許可証を申請可能。ただし、職業はフランス国籍、EU加盟諸国国籍、スイス連邦国籍でも雇用が困難と判断された場合に限定する(業種は県毎に異なる)。 |
2.一般学部の学士 Licences classiques |
・契約書に署名、または内定している場合、学生用滞在許可証が失効する2か月前から給与労働、または派遣労働可能な滞在許可証を申請可能。ただし、職業はフランス国籍、EU加盟諸国国籍、スイス連邦国籍でも雇用が困難と判断された場合に限定する(業種は県毎に異なる)。 |
3.職業系学士 Licences professionnelles |
・学生用滞在許可証の失効時、就職活動、ビジネス創造のプロジェクト開発に対し、更新不可能な12か月有効の一時居住許可証を発行。 ・税込みで月収2247,70€ 以上の契約書に署名、または内定している場合、学生用滞在許可証が失効する2か月前より給与労働、または派遣労働可能の滞在許可証を申請可能。職業は限定なし。 ・税込みで年収35963,20€ 以上を見込まれる3か月以上の契約書に署名している場合、更新可能で4年間有効の就労可能な滞在許可証 Carte de séjour pluriannuelle – passeport talentを発行。 |
4.修士、またはそれに相当する学位 Mastère Spécialisé, Master of Science, MBA など |
・学生用滞在許可証の失効時、就職活動、ビジネス創造のプロジェクト開発に対し、一時的で更新不可能な12か月有効の居住許可証を発行。 ・税込みで月収2247,70€ 以上の契約書に署名、または内定してい場合、学生用滞在許可証が失効する2か月前より給与労働、または、派遣労働可能の滞在許可証を申請可能。職業は限定なし。 ・税込みで年収35963,20€ 以上を見込まれる3か月以上の契約書に署名している場合、更新可能で4年間有効の就労可能な滞在許可証 Carte de séjour pluriannuelle – passeport talentを発行。 |
2)配偶者ビザ
フランス人の配偶者を持つ人に適用されるビザです。
配偶者がフランス人以外であってもすでに就労可能な労働許可証を所持している場合は、同等の権利を得ることが可能です。
各種ビザの説明・申請方法については、詳しく記載されている記事がありますので、そちらも併せてご確認ください。
関連記事:「フランスのビザ13種類の特徴と申請方法を徹底比較」
フランス入国後の手続きと滞在許可の取得
長期滞在ビザの中には、種類によってフランスの滞在許可証として有効なものもありますが、その場合でもフランス入国後にビザを滞在許可証として有効化する手続きを行わなければなりません。
もし、この手続きを怠ると、ビザは効力を失い不法滞在者と認識されてしまうので、ビザの種類によっては、入国から2~3か月以内に居住県管轄の移民局へ申請書を書留で郵送、もしくは居住地域県庁へ出頭する必要があります。
また、ビザの有効期限以上の滞在を希望する場合は、ビザ失効の2か月前から滞在許可証を申請することができます。
フランス入国から滞在許可証発行までのおおまかな流れ:
長期滞在ビザ | 日本出国前に取得。 |
↓ | |
滞在許可証有効化申請 | 入国後2~3か月以内に申請(ビザの種類により異なる)。 |
↓ | ビザ失効の2か月前より申請可能。 |
一時滞在許可証発行 | 1年間有効。失効する2か月前より更新手続き可能。 |
↓ | 4回目の更新時から10年滞在許可証申請可能。発行する・しないは任意。 |
10年滞在許可証発行 | 10年間有効。失効する2か月前より更新手続き可能。 |
↓ | 10年滞在許可証の2度目の更新時に永住滞在許可証申請可能。発行する・しないは任意。 |
永住滞在許可証発行 | 10年間有効・自動更新。 |
また、学業目的でフランスに滞在する場合は、学生として取得した滞在許可証の期間は滞在年数としてカウントされないので、滞在年数が4年を経過しても10年滞在許可証の申請を行うことができません。
就労可能な滞在許可証を取得してから年数のカウントが始まります。
こういう場合は要注意!
学生がまだフランスに留まりたいという理由から、大学卒業後に外国人対象の語学学校などに登録して滞在許可証更新の目的としようとしても、許可が下りないケースがあります。
その理由は、フランスの高等教育である大学を卒業できるほどの十分なフランス語能力があるにもかかわらず、それよりレベルが下になる語学学校に入り直すのはありえないというものです。
フランスで個人事業主として働くための2つの条件
フランスの個人事業主は、数年前までさまざまな名称が存在していましたが、現在は統一されて ミクロ・アントルプルネール Micro-entrepreneur と呼びます。
職業を個人事業主として登録するために必要な条件は、
1つ目:『規定の年商限度額を超えない』
限度額によって業種は大きく2つに分類されます。
上限170,000 ユーロ | 主に物品販売業など。 |
上限 70,000 ユーロ | 主にサービスを提供する業種など。 |
2つ目:外国人の場合は、職業・業種の制約がない就労可能な滞在許可証を所持していること
また、外国人の場合は、職業・業種の制約がない就労可能な滞在許可証を所持していることが条件に加わります。
この職業・業種の制約がない就労可能な滞在許可証とは、滞在許可証に「すべての職業」Toute profession と記載がある場合で、これに対して、「給与労働」 Salarié または「派遣労働」Travailleur temporaire などの記載がある場合には個人事業主の登録はできません。
10年滞在許可証には「すべての職業」と記載があるので問題ありませんが、配偶者がフランス人の場合に発行される1年間有効の一時滞在許可証でも同様に職業・業種の制約がないケースがあります。
フランスで個人事業主として登録する方法
以前は、資本金が必要だった上に、一定期間職業訓練を受けてからでなければ、実際に事業を開始できない場合がありました。
しかし、2018年6月時点では、資本金・職業訓練なしですぐに事業を開始することが可能です。
しかも、登録手続きは、オンラインでも行うことができます。
あとは、登録番号 SIRETが記載された登録完了の通知を待つだけです。
個人事業主の社会保障
毎月の売上は、個人事業主として登録した地域管轄の 社会保険庁 URSSAFに申告しなければなりませんが、月毎に申告するか3か月毎にするかを登録時に選択することができます。
医療保険、年金などの社会保障費や所得税の納付は、申告額から差し引くことによって簡略化されています。
また、年商に応じて法人税を納付します。
仮に、売上がない月であっても0ユーロとして必ず申告しなければなりませんが、この場合は差し引く元金がないので社会保障費・所得税の納付は免除となります。
もし、期限内に申告しないと、申告額の5~15%に当たる罰金を科せられるので注意が必要です。
また、万が一、継続する2年間に一度も申告がない場合や年商がない場合は、個人事業主としての権利を消失してしまいます。
フランスで個人事業主として登録するためのポイント
最後に、フランスで個人事業主として登録するためのポイントを整理してみましょう。
1)条件
- 既定の年商限度額を超えない
- 職業・業種の制約がない就労可能な滞在許可証を所持している
2)登録に必要な書類
- 身分証明書
※ EU加盟諸国以外の国籍の場合は、職業・業種に制約のない就労可能な滞在許可証 - 社会保障番号 Sécurité Sociale
※ 就労目的でフランスに滞在の場合は登録が義務なので、この時点では既に取得済み - 銀行口座証明書 RIB (Relevé d’Identité Bancaire)
※ 各種納付金の自動引き落としに使用
まとめ
フランスで個人事業主として働くために何をどうしたら良いのかについて、いくつかの関連項目をまじえながら大まかに紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
フランスで個人事業主として働くのは、決して容易なことではありません。
でも、あなたのスキルや才能がフランスにとって有益ならば、フランスでの起業だって夢ではありません。
そして、いつかあなたがフランスと日本両国の架け橋となる日が訪れるかもしれませんよ。
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