ドイツでは地震がないことから100年前の家が現役で使われていることも多く、古い街並みがそのまま残っている場所もたくさんありますが、その反面でどんどん開発が進んで高層ビルばかりが立ち並ぶ街もあります。
ドイツの人は今どのような家に住んでいるのでしょうか?
エリアによる違いや、ハウスルールもご紹介します。
首都・ベルリンの家事情
ベルリンの家はアパートが基本です。
中心部には日本でいう5〜6階建てほどの石造りのアパートが多く、
- アルトバウと呼ばれる築年数が古いもの
- ノイバウと呼ばれる新しい建物
が入り混じっています。
ちなみにドイツ語でアルトは古い、ノイは新しいを意味します。
アルトバウとは
天井の高さが高く、築年数が古い特徴があります。
ユーゲントスティール様式(ドイツ語で言うアールヌーボー様式)で、第二次世界大戦(1939年〜1945年)以前までに建てられた建物に使われている様式です。
石壁で、アパートの入り口や室内の天井には装飾が付いていることが多く、ノイバウに比べて大きめの窓も特徴として見られます。
バスルームはシャワーのみという家が多かったのですが、現在はリノベーションされてバスタブがある家もかなり増えています。
また、暖房システムも各家庭にそれぞれ設置されたボイラーで温めるシステムが多かったのですが、アパート全体でリノベーションをしてセントラルヒーティングを設置しているアルトバウも増えています。
セントラルヒーティングの方がガス料金がかからず電気代も多少安くなるとのことで、セントラルヒーディングにリノベーションされているアルトバウは人気のアパートの条件にもなってきています。
ノイバウとは
第二次世界大戦後、1949年ごろから建てられ始めた建築物をさしており、コンクリート製の壁で天井はアルトバウに比べて低め。
ノイバウと聞くと新しい綺麗なアパートをイメージしてしまいますが、70年前からノイバウは建てられています。
ベルリンでは苦労する家探し
ベルリンでは家が見つからないという問題が深刻になっています。
新聞でもとりあげられていましたが、なんと2016年だけでも21万人以上の人がベルリンに引っ越してきたと書かれています。
Gestrandet in Berlin – Zwei Koffer, aber keine Wohnung
そんな中、最近見られる建築として、すでにある建物の屋上にもう1フロア作る(あるいは屋根裏の空間を人が住めるよう造り変える)ことが流行っています。
これは住民が増えていながら住居が少ないという問題を解決するために、新しくアパートを建てるより簡単にできるとして考えられた建築方法だそうですが、最上階にできた新しい空間はとてもオシャレで家賃があまりにも高いため残念ながら一般市民の住める部屋ではないようです。
しかし、スーパーマーケットやデパートの屋上に部屋を作り居住スペースを増やすことで住民の家問題を解決できるように考えたのは、とても合理的でドイツらしい考え方で素敵だと思います。
参考記事(ドイツ語):Von neuen Wohnungen auf dem Dach profitieren zunächst Reiche
ドイツ木組みの家街道(Deutsche Fachwerkstraße)
ドイツには様々な街道があり(ロマンチック街道、メルヘン街道、アルペン街道などが有名ですが)の中にドイツ木組みの家街道なるものもあるのです。
これはドイツ政府観光局が作った街道なのですが、この街道はなんと全長3500kmという長さで、100を超える木組みの家の集落があるそうです。
そこからもわかるようにドイツには木組みの家が古くから建てられており、今でも残っています。
日本式の2階建+屋根裏という構造が多く、木組み柱に白い漆喰がなんとも可愛らしい見た目です。
木組みの家街道を訪問してみたい方はオフィシャルHPでご確認ください↓
https://www.deutsche-fachwerkstrasse.de/
木組みの家は一軒家?
外側からみると可愛らしい、少し大きめな一軒家のように見えますが、実はアパート!という家もかなり多く、もちろん当時の建築はみんなこのような形状ですので、市役所や博物館、レストランやお店も同じような木組みの家でできています。
一軒家のように入り口は一つですが、中には階段がありそれぞれのフロアで住人がわかれています。
木組みの家の歴史
「木組みの家」と言っても、年代によって流行りのスタイルなどがあるのをご存知ですか?
1350頃に建てられたドイツ最古の木組みの家と言われているものは、地面から屋根まで垂直に柱が通っているスタイル。
そのあとのゴシック時代にできたのは下の階より上の階が外側にせり出しているスタイル。
続く、ルネサンス時代には窓枠や壁などの装飾が施されたスタイルなど、比べて見ると少しずつ建てられた年代によって変化があります。
実はこれらの各年代ごとの木組みの家が現在も残っている場所としてユネスコ世界遺産に登録されているのQuedlinburg(クヴェトリンブルク)という街。
オフィシャルHPによると、クヴェトリンブルクほど13世紀の建物が残る場所は他にはない!とのことで、世界遺産に登録されている街の中心部は80ヘクタール(東京ドーム約17個分)の広さだそうです。
この街には1300軒もの木組みの家が残っているとのこと。
首都・ベルリンから電車を乗り継いで約3時間の場所にあります。
HPには日本語での案内もありますので、興味がある方はぜひ訪問してみてください↓
http://www.quedlinburg.de/jp/kultur_und_tourismus_jp.html
ドイツではご近所付き合いが生まれるシステム
アパートなどに住んでいると出入りも激しいですし、気づいたら隣人が引越しをしていた…ということは日常茶飯事です。
日本のマンションのように管理組合があり、順番に班長になって会合するというようなことはなく、基本的に全て管理会社にお任せします。
しかし、ドイツには郵送物の再配達というシステムがありません。
例えば通信販売で何かを買っても日付の指定ができても時間指定はできないことがほとんどで、外出中に配達されてしまうということは「普通」なのですが、不在の際は隣人、または他の階に住んでいる住民に預けられてしまうのです。
預かってくれる人がいない場合や、同じアパートで不在が数人いる場合などは近所のお店(カフェやキヨスクなど)に預けられます。
DHLなどドイツポストで送られてきたものは、家から一番近い郵便局に預けられますので大きな荷物でも自分で取りに行かなければなりません。
そんな訳で、強制的にご近所づきあいが発生します。
なんども隣人の荷物を預かるうちに顔を覚え、世間話をする程度にはなります。
一軒家に住んでいる場合も荷物に関しては同じようにご近所に預かってもらいますので、会話する機会がゼロということはありません。
ドイツ式ハウスルール
歴史的にドイツにはキリスト教徒を進行している方が多く、かつては日曜日は教会に行く習慣がありました。
日曜日は休息日なので、静かに過ごすのが基本です。ですので、日曜日は大きな音がする掃除機や洗濯機の使用は控えなくてはなりません。
また、夜は22時以降は大きな音を立ててはいけないというルールもあり、深夜にシャワーを浴びることも控えなくてはなりません。
首都・ベルリンでは外国人も多いのでこのルールを知らない人が増えてきており、また他の人も守っていないのだから…という自分勝手な解釈の元に深夜までパーティーをするような不届きものもいます。
22時をすぎても大音量で音楽を流すなどして隣人に迷惑をかけた場合には警察を呼ばれてしまうこともありますし、繰り返す場合は管理会社から退去命令が出ても文句は言えません。
冒頭でも触れましたが、ドイツの家はかなり古い家をリノベーションして使い続けていることが多いため、壁や床板が防音ではないために、自分では気づかないうちに近隣住民に迷惑をかけていることもあるかもしれません。
最近ではドイツでも家の中は靴を脱いでスリッパを利用する人も増えていますが、それも階下の住民への配慮の一つです。靴のまま床板を歩くと、自分では普通に歩いているつもりでも階下にはかなり響いて靴音が聞こえてしまうためです。
多少のことはお互いに許容しあうことも大切ですが、最低限のルールは守り配慮すべきでしょう。
WGというシステム
WGとは日本では耳馴染みのない言葉ですが、Wohnungsgemeinschaftの略でシェアハウスのことです。
ドイツではWGで誰かとルームシェアして住む人が多く、それぞれに各部屋が割り当てられてリビングやキッチン、バスルームと家具や家電をシェアすることで、経済的に無駄がないと考える人がWGで生活しています。
家賃も割り勘になり、もともと家具付きで提供している部屋も多くありますので、一人暮らしをするよりも初期費用が抑えられる利点もあります。
賃貸アパートでもリノベーションOK
ドイツでは賃貸アパートでも退去の際に元どおりにすれば自由に壁の色を塗り替えたり穴を開けても良いためDIYが得意な方が多くいます。
日本で言うドイトやビバホームのようなホームセンターは、ドイツではBAUHAUSやHELLWEGなどが代表的です。
ドイツの人は物を大切にして多少壊れた程度では自分で直して使い続けるという人が多いためか、各家庭にドライバードリルやインパクトドライバーが常備されているのではないかというくらい、需要の高い製品です。
別荘とミニガーデン
自宅には庭がないけれども畑仕事をしたい、ガーデンを作りたいという方はKleingarten(クラインガルテン)を利用することができます。
ミニガーデンを借りるという方法です。
とても人気で空きが出るのを待っているというエリアも。
週末や仕事が終わってからガーデンに行き、お花や野菜の世話をすることはとてもリフレッシュできますよね。
また、都心部に住みながら郊外に別荘を借りたり購入したりする人もいます。
Spreewald(シュプレーバルト)では川沿いに小さな家が立ち並んでおり、陸からも川からもアクセスできるというとても優雅な別荘エリアもあります。
ドイツの家事情まとめ
ドイツの家事情が少しは伝わりましたでしょうか。
隣人とのトラブルをおこさないためにも、ドイツのハウスルールは覚えておいた方が良いでしょう。
自分にはどんな家が、暮らしが合うのか見極めて快適なドイツライフをお過ごしください。
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