子育て予定者は要確認!オランダの教育システムを徹底解説

オランダの教育システムは初等・中等・高等教育の三段階で、初等教育を終えた12歳の時点で大きく3つの進路に分かれます。

上図に教育システムをまとめました。

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将来的に研究大学(WO)進学を目指す大学進学教育(VWO)高等職業教育(HBO)を目指す上級一般中等教育(HAVO)、そして中等職業教育(MBO)を目指す中等職業訓練教育(VMBO)です。

国家資格フレームワークを下にまとめました。

国家資格フレームワーク

オランダの国家資格・学士を入門からレベル8まで分類。欧州資格枠組み(EQF)は2008年導入の欧州共通の分類

NLQF EQF 資格・学位
8 8 WO博士
7 7 WO修士
6 6 WO・HBO学士
5 5 HBO準学士
4+ 4 VWO
4 4 MBOレベル4, HAVO
3 3 MBOレベル3
2 2 MBOレベル2,VMBO(KB/GL/TL)
1 1 MBOレベル1,VMBO(BB)

 

初等教育(BAO)

初等教育の対象は4-12歳です。子どもが4歳になると、保護者が入学時期や学校を決定します。

5歳から16歳までが義務教育ですが、16歳以上も週2日以上の教育を受ける義務(部分的義務教育)があります。義務教育は18歳に達するか、中等教育のディプロマを取得した時点で終了します。義務教育期間中は無償で教育を受けることができます。

初等教育は8年制です。最初の2年間 は日本の幼稚園に、その後の6年間は小学校に相当します。子どもの感情や知性、創造力を伸ばし、社会的・身体的能力を養うことに重点が置かれます。

学力については、すべての児童が半年ごとに発達モニター(読み・書き・計算)を受けることが義務付けられており、最終学年には国立評価教育研究所(CITO)が実施する全国共通試験を受験します。中学受験は実施されず、全国共通試験の結果が進路決定の参考になります。

オランダの初等教育10の特徴

  1. 教育内容・方法を学校が自由に決定できる
  2. 200人の子供が集まれば学校を設立できる
  3. 学区制限なし!好きな学校を選べる
  4. 全国小学校の10%がオルタナティブ・スクール
  5. 子供の個性・自律性・イニシアティブを重視
  6. 自分のレベルに合わせて飛び級・落第を選べる
  7. 障害のある子も一緒に学ぶインクルージョン
  8. 給食はなし!掃除の時間もなし!
  9. 朝・昼・夕と親が子供の送り迎え
  10. 卒業後の進路は三者面談で話し合って決定
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中等教育

オランダの中等教育は12歳から開始され、先述の大学進学教育(VWO)上級一般中等教育(HAVO)中等職業訓練教育(VMVO)の3つの進路に分かれます。

ほとんどの中等学校では、このうち2種類以上の教育を提供しており、2-3年をかけて進路を最終決定します。

最初の3年間は基礎教育課程で、3,000単位時間(1単位時間50分)を履修します。

必修科目は、オランダ語、英語、現代外国語(ドイツ語またはフランス語)、数学、物理、化学、生物、地理、歴史、政治、経済、工学、芸術(音楽、美術、ダンス、演劇のうち2科目選択)、自立のための生活技能、体育です。

総授業時間数の20%がラテン語や宗教などの選択科目に充てられます。

1. 大学進学教育(VWO)

12-18歳を対象とする6年制課程で、中等教育を受ける生徒の約20%が進学します。

研究大学(WO)への進学準備をする教育で、VWOディプロマの取得が大学入学資格となります。3つのタイプの学校に分類されます。

  • ギムナジウム Gymnasium:ギリシャ語とラテン語が必修科目
  • リセウム Lyceum :ギリシャ語とラテン語が選択科目
  • アンテネウム Atheneum :ギリシャ語とラテン語を学習しない

2.上級一般中等教育(HAVO)

12-17歳を対象とする5年制課程で、中等教育を受ける生徒の約20%が進学します。

高等職業教育(HBO)への進学準備をする教育で、HAVOディプロマを取得すると高等職業教育(HBO)または中等職業教育(MBO)に進学できます。

VWO・HAVOディプロマ

年間数回実施される定期試験と卒業試験(筆記および口述)に合格すると、VWO・HAVOディプロマを取得できます。

最終成績は、各学校で実施されるこの卒業試験と、全国共通試験の平均で示されます。

VWO・HAVO卒業試験(eindexamen)

必修科目:オランダ語、外国語(英語、ドイツ語、フランス語)

選択科目
オランダ語及びオランダ文学
英語及び英米文学
ドイツ語及びドイツ文学
フランス語及びフランス文学
歴史及び政治
地理
数学
物理
科学
生物
経済

3.中等職業訓練教育(VMBO)

12-16歳を対象とする4年制課程で、中等教育を受ける生徒の約60%が進学します。

中等職業教育(MBO)への進学準備を目的とし、一般教育と併せて職業教育が行われます。

1996年に導入された職業教育法により、それまでの中等一般教育(MAVO)と職業準備教育(VBO)が全て中等職業訓練教育(VMBO)に統合されました。一般教育と職業教育の統合により、かつては困難だった上級一般中等教育(HAVO)への編入もスムーズになりました。

前期2年間が基礎課程、後期2年間が職業訓練課程です。職業訓練課程では進路コースと専門分野を選択します。

履修時間はおよそ週30時間、年間40週間で、うち約4週間が実際の企業での研修に充てられます。

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中等職業教育(MBO)

中等職業訓練教育(VMBO)を修了した生徒の多くが中等職業教育(MBO)に進学します。高等職業教育(HBO)と併せて専門職業教育柱と呼ばれ、オランダ国民の職業能力開発を推し進める重要な教育機関です。

技術、介護福祉、経済、農学の4つの専門分野の下に700以上の学科があります。

理論学習と実地研修からなり、年間授業時間の最低基準は850時間です。

卒業後は労働市場に入るか高等職業教育(HBO)に進学します。単なる職業教育だけではなく、より高い教育レベルを求める企業も多いため、高等職業教育(HBO)修了後、さらに研究大学(WO)への進学する者もいます。

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高等教育

オランダにおける高等教育機関は、研究大学(WO)高等職業教育機関(HBO)に分類されます。

研究大学(WO)は基礎・応用の研究と理論構築に重点を置きます。一方で高等職業教育機関(HBO)は、実務に直結した専門教育を行います。

2016年現在、公的資金を受ける研究大学(WO)は14校、高等職業教育機関(HBO)は37校あります。

1.高等職業教育機関(HBO)

中等教育において上級一般中等教育(HAVO)あるいは大学進学教育(VWO)のディプロマを取得しているか、中等職業教育(MBO)を修了し所定の要件を満たしている学生に入学資格があります。

カリキュラム

4-6年制課程で、7つの専門分野(教育、芸術、農学、技術、社会と文化、医学、経済)があり、275の学科に分かれています。教育と労働市場の需要を結び付けることが目的とされ、すべての学科に、関連企業・機関の代表者が委員を務める職場委員会が設置されています。就学期間の4分の1は、企業で研修生として働く実習期間に充てられます。

単位

最低履修条件にはヨーロッパ単位互換制度(ECTS)が採用され、年間60単位、4年間で240単位を履修します。

学位と進路

2003年のボローニャ協定の導入後、学士や修士の学位を授与するようになりましたが、研究大学(WO)が「Bachelor of Arts」や「Master of Science」といった学術学位を授与するのに対して、単に「Bachelor」か「Master」と称されます。

高等職業教育機関(HBO)の学士取得後は労働市場に入るか、1-2年制課程の専門職修士プログラムへに進学、あるいは研究大学(WO)に編入します。博士課程は存在しません。

2.研究大学(WO)

オランダの中等教育において最高レベルとされる大学進学教育(VWO)のディプロマを取得した、ごくひと握りのエリート(全高校生徒の10%未満)が入学します。

大学ごとの入学試験は実施されず、無選抜で希望大学・学部に入学できます。医学部など希望者数が多い学部は抽選になります。

一方、上級一般中等教育(HAVO)のディプロマを取得した学生は、高等職業教育(HBO)に進学し、1年間の前期課程を修了した場合に限り研究大学(WO)に進学できます。

研究大学(WO)においては、3年間で学士号を取得した後、ほとんどの学生が1-3年制課程の修士課程に進学します。修士号を取得した者は、さらに3-4年制課程の博士課程に進学できます。

オランダの大学は質の高さに定評があり、英タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が毎年発表している「THE世界大学ランキング」の2015-2016年版では、オランダの大学12校が世界トップ200大学にランクインしています。

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まとめ

オランダでは、学生が自らの能力や希望に合わせて、将来の仕事に繋がる進路を選択できます。

小学生が自ら飛び級・落第を選んだり、中等教育で学校やコースを変更したりと、何度でもやり直しのきく教育システムです。

「落ちこぼれ」の概念はありません

教育と労働市場の繋がりも重視され、実務に直結した専門教育やインターン実習など、実社会で必要とされる能力を身につけられます。

高等教育においても、重要なのは大学の名前ではなく、習得した知識や経験、取得した学位です。

オランダでは、全ての学生が難易度の高い大学進学を目指す画一的な教育ではなく、実用性と多様性を重視した教育システムが整っています。

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