ヨーロッパは、税金が高い国が多い地域として知られていますが、オランダも例外ではありません。
生活や事業を始めたいけれど、一体どれくらいの税金がかかるのか不安に思っている人もいらっしゃるでしょう。
ここでは筆者がオランダで生活する上で実際に納めている税金のこと、それらがどの様なことに使われているのかについてお話ししたいと思います。
オランダにはどんな税金があるのか?
筆者がオランダで生活している中で実際に支払っている税金です。
- 個人所得税(inkomstenbelasting)
- 付加価値税(VAT)
- 市民税
- 犬税(Hondenbelasting)
- ごみ税
- 堤防保護税(Waterschapsbelastingen )
- 環境税
- 水道税(BOL)
- エネルギー税(電気税・ガス税)
オランダの各税金についての説明
個人所得税(inkomstenbelasting)
収入に対して課せられる税金のことです。オランダ政府の税金収入の1位です。
所得税は様々な条件により、三つのBOXと呼ばれるカテゴリーに分類されています。
当てはまるBOXによって税率が変わってきます。
雇用者や自営業者の所得税計算は、BOX1のカテゴリーによって計算されます。
オランダの税金も、基本は個人で申告することによって発生します。
申告は絶対にしなくてはなりません。気を付けなければならないことは、たとえ収入がなくても申告をしなければならないという点です。
個人の納税状況などを確認するためには、BSNナンバーが必要になります。日本でいうところの、マイナンバーに近いものです。
オランダに長期滞在するためには、住民登録を済ませた後に必ずBSNナンバーを取得します。
取得は各自治体(gemeente)でします。
一年に一度、個人の総資産、全ての収入、全ての支払い、控除額などを算出して個人の税金を決めるために確定申告があります。
確定申告を怠る、納税が遅れるとペナルティが発生し、罰金を支払う必要があります。
移住者の場合、納税を怠ると居住許可証の更新などにも影響が出てくるので気を付けたいところです。
確定申告の期限は3月1日から4月30日となりますので、忘れないように気を付けましょう。締めは前年末となります。
そして申告の際にはDigiDというデジタルのIDも必要となることをお忘れなく。
申告は税務署のWebサイトから行うことができます。
付加価値税(VAT)
消費税のことで、0%、9%、21%と三つの分類があり、付加価値を付けられるものにより、税率が変わります。
9%のカテゴリーは、2019年1月1日に6%から9%に変わったばかりです。
値上がりに伴い、そのカテゴリーの商品を提供している商売では価格が値上がりしています。
値上がった例としては、NS国鉄の運賃が値上がりしています。
市民税
市民税は住民登録をしている自治体(gemeente)の徴税事務所から通知が来ます。
こちらはオランダ国内一律ではなく、住んでいる場所によって税金の額が変わってきます。
犬税(Hondenbelasting)
こちらは犬をペットとしている人に課せられる税金です。一年に一度の支払いとなります。
住んでいる地域のgemeente(自治体)の徴税事務所から通知が来ます。
筆者の地域では住民税と一緒に徴収されています。
日本人からすると驚く税金ですが、オランダでは犬を飼っている人はとても多いです。
この税金のお陰で、地域の散歩コースの様々な場所に犬のフン用のビニール袋と頑丈なゴミ箱が設置されています。
しかし、こんなにありがたいものをきちんと利用せず、排泄物をそのままにする人も見受けられるのが現状です。
とても残念に感じますし、税金の無駄遣いではないかと思わずにはいられません。
ちなみに、猫には税金は課せられません。
ゴミ税
市民税と一緒にgemeenteの徴税事務所に納める税金です。
オランダのゴミ収集も日本に負けないくらい、しっかりと回収をしてくれます。
なおかつ、地域の道路なども定期的に清掃車が走って掃除をしてくれています。
破棄物などは処理をする企業が、政府に対して廃棄物税というものを支払うことが決められています。
堤防保護税(Waterschapsbelastingen )
税金の内訳は水道料金に対する額の固定費用と、汚染単位あたりの額に分けられています。
オランダは海面よりも地面の高さが低い場所が多く、そういった地形は北海沿岸地域に多くみられます。
多くの堤防が作られており、メンテナンスなども定期的に行なわなくてはなりません。
そのために徴収される税金が、堤防保護税です。
固定費用は毎年その額が上昇しています。汚染単位あたりの額は一人あたり90ユーロちょっとで据え置かれている状況です。
堤防保護税=固定費用+同居人数×汚染単位あたりの額
税金の計算方法はこちらで確認することが出来ます。
堤防保護税は住んでいる家屋の規模、人数、住んでいる地域によって変わってくるものです。
オランダに居住するということは、どこにいても必ず汚染単位あたりの額である90ユーロちょっとが住民一人あたりにかかるということになります。
堤防保護税は、銀行引き落としにすると、年支払いの合計金額を最大で11回で割った金額での毎月ごとの支払いにすることもできます。
公共料金は年払いですと額が大きくなるため、分割払いにできるのはありがたいです。
また、銀行引き落としにすることで、僅かですが割引などもあるのでお得です。
一括払いか銀行自動引き落としかを登録する際には、RGBにログインして登録をします。
登録の際にはDigiDが必要となります。
環境税に分類されるもの
水道税(BOL)
年に3回支払います。水道税は使用量に対して課せられる税金となります。
水道税の他にこれにかかるVATも支払います。水の供給会社に支払ったVATは供給会社からオランダ政府へと支払われます。
最初は水道料金の請求と勘違いしやすいので気を付けましょう。
BOL(Belasting op Leidingwater)=年間の水道使用量(㎥)×1㎥あたりに課せられる区分毎の税金額(€)
という計算で水道税は算出できます。
自宅の水道メーターを毎月確認して、年間の使用量が分かれば、おおよその税額を自分で算出することもできるので、見当をつけておくためにもお勧めします。
ちなみにオランダ人の年間水道使用量の平均は一人あたり50㎥といわれています。
こちらにて水道使用量を使用した水道税の算出が行えます。
エネルギー税(電気税・ガス税)
エネルギー税はそれぞれの供給会社から通知される請求金額に税金が含まれているので、利用者が供給会社に支払います。
その税金分はエネルギー供給会社によって、税務当局へ支払われます。
オランダの光熱費は、そのものの料金よりも税金が高いために、支払額が高額になります。
内訳は電気料金なら、電気料金+税金+VAT(21%)になります。
ガスは、ガス料金+税金+VAT(21%)です。
エネルギー税に対するオランダ政府の考え方が面白いので、少し触れさせて頂きます。
ガスに関しては天然ガスの採掘をしている影響で、オランダでは起こらなかった地震が発生するようになったなどの少し有名な話も存在するのですが、オランダ国土にとってあまり良い影響を与えていないため、政府はガスから電気へのエネルギーシフトを国民に促すような取り組みをしているのです。
それが顕著に表れているのが、ガス税なのです。
オランダ政府はガス税を引き上げ、電気税を引き下げる措置を行ったりしています。
ガス税はEU平均額よりも30%も高いです。
ガスそのものの値段はEU平均額を下回っており、EUの中では20位とかなりの低価格をマークしているのです。
しかし、ガス税はEU内で3位。VATは4位。税金がガスの値段と同じほどの割合を占めているため、オランダのガス料金はとにかく高額であり、EU内5位をマークしています。
オランダ政府のサイトにも明確に記載されているのですが、「エネルギー税を高額にしているのは、人々がなるべくエネルギーを使わないようにするため」との理由からだそうです。
環境税について
水道税、エネルギー税(電気税・ガス税)は一般的に「環境保護税」と呼ばれるものです。
通常、環境保護税には税金そのものに加えて21%のVATの支払いも必要になります。
政府に支払われる税金の一部ですが、水・原材料費・燃料などを効率的に使用することを促すために使われています。
そして、環境汚染を防ぐために使用されています。
環境税に関するパンフレットのPDFをこちらのサイトからダウンロードすることが可能です。
※オランダ語です。
人によっては、車を持っていれば購入時に車両取得税、使用する上で道路税が必要です。
持ち家であれば固定資産税、投資などで得た利益などがあれば、所得税のBOXの該当項目が増えたりします。
個人事業主と会社員での違い
基本的に個人事業主は、年に一度の確定申告と年に4回のVAT(付加価値税)の申告を行う必要があります(VAT支払い1月~3月までを4月に支払う。4月から6月までを7月に支払うといったように四半期において支払います。)。
企業に雇用されている会社員は、毎月の給与から所得税が天引きされますが、一年に一度、確定申告を行う必要があります。
個人事業主の場合、申告関係の諸々を公認会計士にお願いすると、オランダの税金などに詳しくない場合には安全だと思います。
オランダでは移住してきても、「生活の決まり」のようなものを親切に教えてくれることはありません。
そして、毎年のように法律が変わります。
税金を納める際に気を付けなければならないこと
オランダでは税金について親切に教えてくれる場所はありません。
でもそれは当たり前で、オランダ人は子供の頃に学校で税金についてしっかりと勉強しているのです。
移民に対してだけ知らされないと言うわけではなく、居住許可を継続させるためや永住権を取得する際に勉強が必要になる、市民化プログラムの中で社会の仕組みが勉強できます。
オランダ語と併せて勉強する必要があるのですが、筆者もそうだったように、ゆっくりとその勉強をしてから生活を始められるというような余裕を持った方は少ないはずです。
その場合はオランダの法律や税制に詳しい人を雇うか、自分で調べながら痛い目に遭いながら学んでいく道しかないのです。
そんな筆者が痛い目をみて知ったことの中で、皆さんに知っておいて欲しいことがあります。
エネルギー税に関しては、必ず家のメーターを一ヶ月毎にチェックしておくこと。
オランダのエネルギー税は高額ですが、たまに驚くような請求が来ることもあります。
その時に使用量をチェックしておけば、エネルギー会社にきちんと話をすることが出来るのです。
疑う心を持つことも必要な社会
オランダのエネルギー会社は実際に計測値を間違えることもあります。
オランダ社会全体の暗黙の了解のようなものですが、その経緯が分かる証拠がなければ対処はしてもらえないことがほとんどです。
ですから、慣れないうちこそ、証拠を残せる対処をしておきましょう。
エネルギー料金や水道料金は、1年間の暫定金額を12ヶ月で割ったものが最初に請求金額に記載されます。
日本人の感覚ですとその金額が毎月の使用料金と思い込んでしまうのですが、オランダでは違います。
一年経過した時点で本計算がされます。
そして月々の使用料金を支払い過ぎている時には払い戻しが行われ、不足していると追加支払いの請求がきます。
この仕組み、オランダ在住の日本人の中でもトラブルになる確率が高い項目でもあるようです。
支払いをしないでいると、ペナルティで罰金が課せられ、大変なことになります。
支払料金に関して疑問やおかしな点があるのであれば、速やかにエネルギー会社に問い合わせて調べてもらいましょう。
調べることもなかなか前に進まなかったり、時に忘れられていたりすることもあります。
そのよう状況でも証拠がなければ「あなたが悪い」で終わってしまいます。
問い合わせした際には、難しくてもスペルチェックをして担当者の名前を確認し控えておくなど、とにかく「証拠」を残しておくことが大切です。
ちなみに、税務署でさえ、かなりの頻度で税金についての書類を間違えて発送したり、必要のない罰金を徴収してしまったりしています。
オランダの税務署のホームページを見ると、お知らせ欄に数々の間違いと訂正という項目があります。一度見てみて下さい。
おわりに
オランダ人の間でも税金については「高い」「無駄がある」と言う声が上がっているのですが、移住している日本人の筆者からすれば、税金が何に使われているのか目に見えるので、高額の税金であっても「支払わなければ」という義務感が生まれるように感じています。
移住者にも税金の恩恵をきちんと受けさせてもらえること、日本と比べると困った人に、足りない場所に、社会をよくするために、税金が使われている国だと実感できるオランダです。
当たり前のことですが、疑問に感じたことや分からないことは問い合わせをして、納得をした上で納税をしましょう。
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