妊娠・出産をもし海外ですることになったら、あなたやそのパートナーはどうしたらいいでしょうか。
現在、妊婦生活をロンドンで送っている筆者がイギリス(ここでは主にイングランドを指します)での出産事情を実体験と一緒にまとめたいと思います。
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イギリスで妊娠発覚!出産はどうなるの?
イギリスへの駐在や滞在中に、もし妊娠したかも?と心当たりのある方はまず、薬局で売られている妊娠検査薬を試してみましょう。
陽性だったら病院へ即行きます。
しかしここから大事になってくるのは、NHS(National Health Service)という公共の医療機関に登録してNHSカードをすでに手に入れているかどうかです。
イギリスの日系病院では、妊娠に関わる診察を行なっていないので、診療はイギリス現地の病院一択になります。
ですので、イギリスで妊娠をお考えの方は速やかにNHS登録をして自分の町医者GP(General Practice)を決めておくことをおすすめします。
NHSに登録していたら、地域のGPか飛び込み診療可能なNHSのクリニックへ行き、看護師さんまたはお医者さんに妊娠をあらためて確認してもらいます。
そこで問診をまじえて妊娠が正式に確定し、「おめでとうございます!」と言ってもらえるのです。
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イギリスのNHSや医療に関しては、こちらの記事「イギリスの医療事情を徹底比較!NHSと日系プライベート病院」を参照ください。
イギリスの妊娠〜出産における医療費は全部無料です
①基本的に医療費は全部タダ
妊娠が確定して、今後NHSとは切っても切り離せない仲となります。
この後はどのような流れになるのでしょうか。
前述の通り、NHSに登録してあれば国籍問わずイギリスでの公的な医療行為を無料で受けることができます。
すなわち、妊婦健診に伴う超音波検査、血液検査、出生前診断、予防接種、出産に至るまですべての費用がかかりません。
日本で同じことをすると、保険適用外なのですべて自費診療になってしまうものばかりですが、ここイギリスではお金を請求されることはありません。
歯医者代、薬代も免除されます
本来は処方箋が伴う薬をもらったり、歯医者に通ったりすることはイギリスでもお金がかかります。
なぜかというとNHSの対象外だからです。
特に歯医者は、NHSで診てもらったとしても最低20ポンドはかかるので歯科治療は高額になりがちです。
しかし、妊婦には申請すればマタニティーエグゼンプションサーティフィケート(NHS Maternity Exemption Certificate)という特例のカードが付与されます。
これを薬局や歯医者で見せると、薬や歯科治療が無料になるのです!
このカードは産後1年後まで有効なのでこの間に歯をいろいろ治療するといいでしょう。https://www.nhs.uk/NHSEngland/Healthcosts/Pages/help-with-health-costs.aspx
タダであるが故の落とし穴…
しかし、日本とイギリスで決定的に違うのは、妊婦健診の手厚さです。
まず、基本的にイギリスで超音波検査は全2回(12週前後と20週前後)しかありません。
ですので、検査をして問題ないと判断された場合21週目以降は超音波を通して赤ちゃんの顔を見ることは無料ではできないのです。
しかし、赤ちゃんや母体に何か異常が見られた場合はこの限りではなく一回ずつ検査の回数が追加されます。
異常はないけどどうしても赤ちゃんが見たいという時には、プライベート病院へ行き自費で超音波検査を受けることができます。
そして、驚くことに妊婦健診において、お医者さんの出番はほとんどありません。
なぜなら超音波検査をしてくれるのはお医者さんではなく技師さんですし、血液検査や予防接種も看護師さんの役目だからです。
イギリスは医師不足に悩まされている国で、人数が少ないのです。
だからよほどのことがない限りお医者さんに会って話すことはありません。
このように、NHSの全てが無料である背景には医療従事者の不足、NHSの財政難が大きく関わっており日本で当たり前のように行われるきめ細かい健診がないというわけです。
妊娠したら必ずお世話になるミッドワイフって誰?
妊娠をすると、お医者さんや看護師さんのほかに必ず関わる人がいます。
それがミッドワイフと呼ばれる職業の人たちです。
日本語では助産師さんと言い、妊婦の健康指導や分娩、さらに出産後28日までの支援をしてくれます。
妊婦健診の流れの中で専属のミッドワイフの紹介がされ、妊娠中期から面談が始まります。
妊娠20週前後での超音波検査以降、病院に行くことはほとんどなくなりますが、その代わりミッドワイフと話す機会がぐんと増えます。
ミッドワイフに会った時にすることは、
- 尿検査
- 血圧測定
- 胎児の心拍検査
- 両親学級、各検査などの予約
- バースプランへのアドバイス
などです。
ですから妊娠にかかわる悩み、疑問はほとんどミッドワイフに聞くことになります。
このようにミッドワイフ、GP、総合病院で役割が違い、それぞれが連携して妊婦とかかわっていくのがイギリスでの妊婦サポートなのです。
NHS:Your pregnancy and baby guide
イギリスと日本の妊娠にまつわる5つの違い
ここでは、筆者が驚いた日英間の妊娠にまつわる違いについて説明します。
①健診がシステマティックな日本、積極性が問われるイギリス
イギリスでの健診回数・項目の少なさは前述の通りですが、そこにはイギリスと日本の妊娠に対しての価値観の違いが根底にあります。
日本では妊婦さんはシステマティックに日々設定されている健診に通い、妊娠・出産について色々教えてもらえます。
だから病院に対して受け身になっても大丈夫です。
しかしイギリスで同じことをすると診察は最小限、特に何も情報は与えられず放っておかれることもしばしばです。
これは、イギリスでは妊娠・出産は母体を主体に行われるものという考えから来ています。
だからこそ大切なのは、
- 「自分でも知識をつけてわからないことは全て質問する姿勢」
- 「自分がしたい出産をはっきりさせる姿勢」
です。
私の場合、GPでも検査をする大病院でも、疑問に思ったことは予めメモしておき解決するまで質問しました。
するときちんと答えてもらえますし、自分でリサーチすることでより妊娠・出産に関して理解が深まるのです。
出産方法も当日どうなるかは別にして、希望を基本的に聞いてもらえます。
②豊富な分娩方法
イギリスでの出産方法で驚かれるのは多様な分娩方法です。
日本では馴染みのない分娩方法もミッドワイフと相談しながら自分がしたい方法をバースプランに記録します。
具体的には以下の通りです。
- 自然分娩
- 無痛分娩
- アロマセラピー
- 水中分娩
- ヒプノバーシング
- アクティブバース
特に下の3つは日本では珍しい分娩法なので解説します。
まず水中分娩は浅いプールに浸かりながらぬるま湯の中に赤ちゃんを出産する方法です。
ヒプノバーシングとは、日本語で催眠出産と呼ばれる方法で、事前にイメージトレーニングや呼吸法を身につけて薬に頼らずに分娩することです。
アクティブバースはフリースタイル分娩と呼ばれ、出産する場所や体勢を自分で決めることができる方法です。
もちろん、医師の判断で帝王切開が行われることがあります。 (参考:NHS)
③体重制限に厳しい日本、甘いイギリス
日本の妊婦健診でよく聞くのが、体重を病院側に徹底的に管理されることです。
しかし、私はイギリスの病院で一度も体重のことを言われたことがありません。
試しに、安定期に入ってからミッドワイフに体重が少し増えてしまったことを相談したら、
「赤ちゃんが大きくなったんだから、そのぶん体重が増えることは当たり前よ。」
と笑われてしまいました。
ふと街を見ると縦にも横にも大きな妊婦さんはたくさんいます。
それもそのはず、イギリスの妊婦さんが妊娠前より大幅に体重が増えてしまうのはよくあることなのです。
さすがに体重が100キログラムを超えるとまずいそうですが、日本よりも体重制限に関して甘いのは明らかです。
(NHS:「How much weight will I put on during my pregnancy?」)
④お寿司は食べてはダメ!?日英で違う「避けたほうがいい食べ物」
筆者がイギリスで困ったのは、日本とイギリスで食べていいものとダメなものについての記載事項が少し違うことです。
イギリスには日本でなじみのない食べ物についても言及があります。
以下が例です。
・チーズ
白カビ、青カビのソフトチーズは避ける。
しかし、ハードチーズ全般とカッテージチーズ、モッツアレラチーズ、フェタチーズ、クリームチーズ、リコッタチーズ、ゴートチーズ、プロセスチーズ、ハルーミチーズ、パニールチーズは食べても良い。
・パテ
野菜のパテも含めてあらゆる種類のパテは食べてはいけない。
・レバー
ビタミンA摂取過多のリスクがあるため、たとえ加熱されたものでも食べてはいけない。
・ジビエ肉(鹿、ウサギ、猪など狩猟動物の肉)
肉に弾丸が混入されていたり鉛成分が含まれていたりする恐れがあるので食べてはいけない。
・寿司
一回冷凍されたものを解凍して、寄生虫を殺した状態で食べること。
これらはNHSが公式で発表しているものの一部ですが、日本にはない記述も含まれているので興味深いです。
⑤月の数え方の違い
日本には、妊娠の期間は十月十日という表現が使われますが、イギリスでは妊娠の期間は9ヶ月ということになっています。
これは、日英で数え方が違うからです。
日本ではWHOの考え方に基づき4週間で区切り1か月扱いになります。
ですから妊娠期間は全10か月で妊娠1か月は最終生理開始日の0週から3週となります。
一方でイギリスでは太陽暦にのっとって1か月がカウントされるので月によっては1か月が5週間ある月も出てきます。
これにより全40週の妊娠期間は変わりませんが9か月止まりになり、数え方にずれが生じてくるのです。
以下が日英それぞれの数え方です。
参照:Baby Center「How to count your pregnancy in weeks and months」
さらに、英語には「◯ヶ月目」を表現する簡便な言葉がないので9th monthというとそのまま妊娠から9ヶ月経ったと解釈されます。
ですから、誤解を避けるために月ではなく週で妊娠を数えた方が良いかもしれません。
イギリスで出産するとこんなに日本と違います
いつか訪れるのは我が子とのご対面、出産です。
NHSにおいては病院の分娩室で出産するパターン、ミッドワイフのみで構成されるバースセンターで出産するパターン、そして希望者で問題ない場合は自宅出産も可能です。
この分娩時にも日本とイギリスで大きな違いがありますのでおさえておきましょう。
最大の違いは入院の期間です。
日本では個人差はあるものの初産で1週間程度病院にいることができます。
しかし、イギリスでは通常NHSではベッドの回転率を上げるために初産婦は1泊、経産婦は日帰りでの出産が基本です。
もちろん、赤ちゃんや母体に異常があったり帝王切開が行われたりした場合はこの限りではありません。
入院する部屋もNHSの場合は大部屋一択です。
もしも個室入院を希望する時は有料になるかプライベートホスピタルでないといけません。
出てくるお食事もトーストと紅茶などとてもシンプルです。さらに日本と違うのは、新生児室がないので出産後は赤ちゃんとずっと一緒にいられることです。
現役妊婦が教えるイギリスの妊娠・出産事情まとめ
国が変われば妊娠・出産にまつわる常識も変わってきます。
日英どちらにもいいところも悪いところもあるので、産む場所は慎重に選びましょう。
これからイギリスで出産する方は、日本との違いを前もって知っておくと落ち着いて妊婦生活が送れると思います。
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