イギリスのボーディングスクール体験談。費用やメリット、デメリット

イギリスのボーディングスクール体験談。費用やメリット、デメリット

みなさん、こんにちは。

私は2020年9月から2022年5月まで、高校最後の2年間に当たる時期にイギリスのウェールズにあるUnited World College of the Atlantic(以後AC)に留学しました。

そこは、世界の80もの国と地域から様々な文化的背景を抱えた320人の生徒が集まるボーディングスクールです。

ACは「世界の縮図」と呼ばれるほど多様性にあふれる場所です。

宗教的、経済的、文化的バックグラウンドの異なる320人もの若者と共に学び、生活をするというUWCでしかできない経験ができる学校です。

留学と言っても、世間では大学・大学院留学や、高校留学であっても短期の交換留学が主流です。

そんな中、ACのように2年間にわたって多様性にあふれる仲間と共に学びながら高校生活を送れる留学もあることを知っていただけたら幸いです。

この記事では、ACとはどんな所なのか、また、私が実感したACの魅力、メリット・デメリット、費用、ACでの生活などについて詳しくお伝えします。

UWC Atlantic(AC)のロゴマーク

ACとはどんな所なのか

ACはイギリスのウェールズの海辺に位置し、12世紀に建てられた石造りの城、セント・ドーナッツ城を中心とした複数の建物で構成されています。

United Worl Colleges(以後UWC)という教育機関に属する学校の一つです。

UWCは、日本を含む世界の国々に18の学校を持つ教育機関で、国際バカロレア(International Baccalaureat、以後IB)に基づいた教育を通して国際感覚豊かな人材を養成することを目的としています。

IBは、世界共通の高校卒業資格なので、取得すると世界中の大学に出願することができます。

ACなど日本国外の高校を卒業しても、大検なしで日本の大学に出願できます。

ACは、18校のUWCの中で最初に作られた学校で、1962年に創設されました。

集まっている生徒の国籍もUWCの中で一番多く、80もの国と地域から日本の高校生に当たる年代の若者達が集まっています。

また、経済状況の差も大きく、ヨーロッパの王族をはじめとするお金持ちの生徒もいれば、難民キャンプ出身で全額支給の奨学金をもらってやってくる生徒もいます。

ACを含むすべてのUWCが全寮制で、ACでは4人一部屋で生活します。

国も文化も違う多様な生徒達と生活を共にすることで、異文化理解と協調性の成長が後押しされます。

日本から進学するには、高校1年生限定になりますが、UWCの日本協会を通して応募し、選考に合格したら日本協会の派遣生としてACに行く方法があります。

ACの正門で、セント・ドーナッツ城の門

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ACの費用について

ACは私立の学校なので、学費自体はとても高いです。

また、イギリスは日本より物価が高いので、学費・生活費を合わせた留学自体の費用について心配される方も多いと思います。

ここでは、ACでの生活にかかる費用と、経済支援についてお話しします。

学費について

海外のボーディングスクールは、授業料に寮費と食費、その他必要な雑費を合わせた額を学費として請求することが多いです。

ACの学費はどのくらいなのか、その内訳と共に見てみましょう。

学費一覧(単位:英ポンド)

授業料(教科書代含む) 19800
寮費・食費 13200
補償費(学校内で物を壊してしまったときの弁償代) 250
合計 33250

これだけ見ると、経済的に余裕のある学生しか入学できないように思えますよね。

しかし、ACの良いところは、充実した経済サポートです。

ACから直接支給される奨学金の他、自国から学生をACや他のUWCに派遣する各国のUWC協会の奨学金などの経済サポートがあり、約7割の生徒が何らかの経済支援を受けてACに通っています。

私も低収入母子家庭出身ですが、UWC日本協会から給付型の全額奨学金をいただき、ACに通うことができました。

その他生活費について

ACで食事は提供されますし、洋服やタオルも日本から持っていけば大丈夫ですが、衛生用品などの消耗品はやはり買わなければなりません。

また、学用品なども必要です。

ここでは、現地で買う物の値段を見てみたいと思います。

ちなみに、表の価格はオンラインスーパーの最安値と、ACから近いパブの価格を参考にしています。

日用品の価格一覧(単位:英ポンド)

歯ブラシ 1(4本入り)
歯磨き粉 0.5(100ml)
シャンプー 0.75(500ml)
リンス 0.75(500ml)
ボディーソープ 0.3(250ml)
生理用品 0.5(12枚入り)
シェービングクリーム 1.5(200ml)
ボールペン 0.5(10本入り)
蛍光ペン 1(4本入り)
ノート 1(140ページ)
電卓 90
アップルサイダー(スーパー)(イギリスで人気のお酒。イギリスでは18歳から飲酒できます) 0.75(500ml)
アップルサイダー(パブ) 3.5(500ml)
板チョコ 0.36(100g)
フィッシュアンドチップス(パブ) 12
フィッシュアンドチップス(屋台) 5

この他、航空券代、ビザ代(約350ポンド)、街へ出るときの交通費や娯楽費など様々な経費がかかりますが、ほどよく節約しながら暮らせば、不自由ない生活ができると思います。

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ACに行くメリット・デメリット

メリット

  • 世界の80もの国と地域から生徒が集まり、それぞれの文化を尊重している
  • ジェンダーの多様性を重視している(女性、LGBTQ+など)
  • ディスカッションを中心とした活発な授業(UWCが採用するIBが、ディスカッションを重視するカリキュラムのため)
  • 国籍や文化がバラバラの3人のルームメイトとの共同生活
  • 海での海難救助活動やカヌー、ボート作りや、敷地内の森林を生かしたハイキングなど、多くの自然アクティビティが経験できる。
  • 世界の社会問題に興味がある人が多いため、彼らとのディスカッションを通して興味のある社会問題に対する知見を深められる
  • 英語力が伸びる。
  • UWC生限定の、アメリカの大学に行くための返済不要の奨学金、DAVIS奨学金があるので、学費が高いことで有名なアメリカの大学に、年間2万ドルもらいながら通うことができる。(私もDAVIS奨学金にお世話になりながらアメリカの大学に通っています。)

ACの何よりの魅力は、多様なバックグラウンドを持つ人たちとの交流です。

ACには、文化だけでなく、宗教、経済状況、ジェンダー、身体的・精神的特性など多様なバックグラウンドを持つ人たちがいます。

彼らとの交流を経て、私自身、視野を広げて大きく成長することができました。

また、環境を生かした様々なアクティビティも魅力の一つです。

ACから見える海辺の様子

デメリット

地理的に不便な場所にある

一番近くのスーパーマーケットまで、歩いて50分かかります。

街灯もない田舎の一本道なので冬などは夕方にはもう真っ暗です。

10分もかからずに行けるバスもありますが、1時間に1本しかきません。

また、ウェールズの州都で、いかにも地方の都市部と行った風情のカーディフという街に行くにも歩きまたはバス+電車で1時間~1時間半ほどかかります。

たまに訪れる春の温かい晴れた日に道を歩くと、綺麗な菜の花畑を見ることができます。

運動がてら歩くのもまた一興です。

寒くてジメジメしている日が多い

これはイギリスあるあるなのかもしれませんが、気候は全体的にどんよりしていて雨もよく降ります。

また、海のすぐ側なので海風が吹き荒れ、風の強い日は学校内に海水が吹き込んでくるほど波が高くなります。

寒さ対策と雨対策はしっかりしましょう。

ちなみに、ACにある海岸は世界で2番目に潮の満ち引きが激しい海岸だそうです。

ご飯があまり美味しくない

イギリスの食べ物のまずさは有名なのでこれもイギリスあるあるかもしれませんが、ACの食べ物は正直美味しくないです。

ご飯が固かったり、パンがパサパサしていたり、味が薄かったり濃すぎたりすることが多いです。

また、週4日ベジタリアン食で週に3日しか肉がでないので、肉好きの人にとっては辛いかもしれません。

時にはスーパーで食材を買って自炊したり、パブなどで外食したりするのも良いでしょう。

特にパブは重要なイギリス文化の一つなので、体験してみることをおすすめします。

ただ、ACの食堂はとても豪華でハリーポッターの映画のような雰囲気です。

ACのセント・ドーナッツ城内にある食堂

ACのセント・ドーナッツ城内にある食堂

私が振り返って思うACの魅力

先ほど述べたAC在学中に得られるACのメリットを、私は2年間でたっぷり享受することができました。

ですが、進学の際や卒業後もAC・UWCの魅力を感じることが多々あります。

例えば、ACや他のUWCの卒業生だと、海外の大学に進学しやすくなります。

UWCが採用するIBは世界共通の大学出願資格なので、どの国の大学にも出願できます。

また、先ほどACに行くメリットの部分でも少し触れましたが、UWC卒業生でアメリカの大学に進学する人専用のDAVIS奨学金という制度もあり、対象であれば年間2万ドルほど受け取ることができます。

私自身も、DAVIS奨学金を利用しながらアメリカの大学に通っています。

また、ACでの多文化生活で多様な人との関わりに慣れ、海外進学への不安が軽くなることも魅力の一つです。

さらに、ディスカッションの多いACの授業に慣れると、そこで培ったディスカッション力が、参加度が成績に反映される海外大学の授業で強い武器になります。

この記事を書いている時点でAC卒業後約1年経ちますが、今でもAC時代の友人達とはよく連絡を取ります。

また、現在通っている大学にも、ACや他のUWCの卒業生が多くいます。

ある会合で出会った方が偶然UWC出身だったこともありました。

自分が卒業したUWCに限らず、UWC全体のコミュニティに入れることも、UWC卒業生であるメリットです。

UWCコミュニティ内で人脈が広がり、さらに多様な人と交流することで視野が広がります。

「ACに通って良かったか?」と聞かれたら、在学中、卒業後どちらについても自信を持ってYesと答えられます。

さいごに

多様な生徒が海辺の城に集うACという場所について、ご理解いただけたでしょうか。

メリット・デメリットは色々とありますが、ACだからこそできる経験があり、ACだからこそ出会える人がいます。

未来ある高校生の皆さんが様々な挑戦をするのにこれほど魅力的な場所は無いと思います。

若い青少年のみなさんにACやUWC,留学に興味を持っていただけたら、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。

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