海外先進国でのスタンダードと言っても過言ではない、「STEAM教育」。
筆者の子が通うオーストラリア公立現地校の幼稚園(PreP)のクラスでも、年間目標の中でSTEAM教育が掲げられており、STEAMを基軸として授業を進められています。
日本でも、最近は注目されるようになってきていますが、まだまだ知らない方も多いのではないでしょうか。
海外で教育方針として掲げられることの多い「STEAM教育」とはどんなものなのか、そして、実際にオーストラリア現地校ではどのような教育をしているのか、ご紹介します。
STEAM教育とは
STEAM教育とは、次の5つの分野の学習を通して次世代のIT社会を生き抜く人材を育てるという教育概念のことです。
- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(工学・ものづくり)
- Art(芸術・リベラルアーツ)
- Mathematics(数学)
理数教育に創造性教育を加え、分野横断的に学んでいこうという視点のことを指します。
STEAM教育と対照的なのは、暗記だけで試験をクリアできるような詰め込み型かつ縦割りの教育です。
STEAM教育では、それぞれの科目だけでの単なる「知識」を得ることで終始するのではなく、他の分野へも横断的につなげて「創造」しながら学んでいく、そのような教育のことを言います。
海外の先進国ではSTEAM教育が一般的
元々STEAM教育は、アメリカの国立科学財団(NSF)で考えられたものです。
当時は、Artを除くSTEM教育でした。
ブッシュ大統領が2006年に演説した内容において、STEM教育に関する目標が示され、2009年以降オバマ大統領によってさらに推し進められていきました。
それ以降アメリカだけでなく、カナダ・イギリス・オーストラリア・韓国など、先進国ではSTEAM教育の広がりを見せていったのです。
日本ではそれを追うようにして、昨今プログラミング教育が導入されるなど動き始めています。
オーストラリア現地校(幼稚園)での実際の例
では、オーストラリアの公立現地校(幼稚園・年長)でどのようなSTEAM教育がなされているか、実際の例を紹介していきましょう。
ボートを作ろう(Technology、Engineering)
年長が始まって間もない頃、最初のSTEAM challengeとして取り組んだのが、水に浮かぶボートの製作でした。
- どのようなものが水に浮かぶか
- どのようなときに前に進むか
- そのためには、どのような仕組みだと良いのか
子どもから聞いた話では、上記のような先生からの問いかけとディスカッションが前段としてあったようです。
そして、子どもたちなりに頭で考えてから、いざ製作にうつります。
廃材ボックスからそれぞれ素材を選び、組み合わせて製作し、そして小さなプールの上で浮かべてみたようです。
PreP(年長)なのでまだモーターを使うような高度なことはしませんが、みんな、風を受けやすい帆を作ったり、船の素材に注意したり、船の形を工夫したり。
それぞれ自分の頭で考えて工作したようでした。
なお、オーストラリアは教育現場でも非常にITが進んでおり、このようなSTEAMの取り組みを授業で行った場合は、先生がオンラインシステムで情報を即座に共有してくれるのでありがたいです。
子どもによっては学校で何をしたのか話さない子どももいると思いますが、写真付きでその日の学習の概要などを紹介してくれるため、家での会話にもつながります。
丈夫な家を作ろう(Technology、Engineering)
学校で「3匹の子ブタ」の劇をするにあたって、物語の内容を理解するだけでなく、「丈夫な家を作ってみよう」という観点での取り組みもありました。
まずは、クラスの中で先生からの以下のような問いかけから始まります。
- 丈夫な家とはどんな家だと思う?
- その家はどんな素材でできているか
- どのような作りだと壊れにくいか
そしてディスカッションをして、それぞれ設計図を書いて、製作に入りました。
とはいえ「レンガの家」を作ることは限界があるので、段ボールなどの廃材を利用しながら工作に励んだようです。
日本の保育園の発表会でも「3匹の子ブタ」の劇をしたことがありましたが、そのときは「3匹の子ブタの絵を描こう」「皆はどの家が好きかな?」などの話で終わっていました。
(年少だったこともあると思います。)
ですがそこから一歩進んで、技術・ものづくりの観点から「丈夫な家」について考えるというのは、オーストラリアに来て良い意味で驚いたことでした。
数字を用いたゲーム
日本では小学校入学前の幼稚園・保育園では、一部の園を除いてはあまり算数などを学ぶことはないかと思います。
オーストラリアでは、年長からが義務教育(プレ小学校)と位置付けられることもあり、英語(フォニックスなど)や算数はクラスの中で隔日くらいのペースで取り上げられるようです。
以下のように、遊びを通じて算数や数字にこの年齢から親しめる工夫がなされています。
- 数字を学ぶ
- 数字のボリューム感を学ぶ(数だけシールを貼る)
- サイコロで振った数だけ積み木を積む
- 数字のすごろくをする
「100」の概念を知る
算数の取り組みの中でも面白いなと感じたのが、「100」の概念を知る授業でした。
子どもが通う学校では、新学年が始まり100日目のときに「100日を祝う」イベントが学校全体であります。
その日は「100」にちなんだコスチュームを着てくるということで、みんな思い思いの格好で登校していました。
100と書かれた服を着ている子ども、100個のシールを服に貼ってきた子どもなど、さまざまです。
その日をただのイベントで終わらせるのではなく、年長のクラスではあらゆる角度から「100」について学ぶ工夫がなされていました。
- 100個のビーズを使ってネックレスと作ってみよう
- 100までの数字を手分けして書いてみよう
- 100人の生徒で一列に並んでみよう
- あと100年経ったら自分はどんな顔になっている?(アプリを使って検証)
100を数字で数えられる子どもは年長でもいると思いますが、100のボリューム感がどれほどのものなのか、実感を持って知っている子どもは少ないのではないでしょうか。
このようにさまざまな観点から学ぶ「100」の取り組みも、非常に興味深いものでした。
アートは、子どもたちが楽しむことが前提
絵を描いたり、色水を作ったり、アートの取り組みも頻繁に行われています。
そして、子どもの学校では週に1回はアートの先生が来られて、授業をしてくださるのです。
服や教室を汚すことなど気にせず、思い切り取り組ませてくれます。
子どもも楽しいようです。
また、アートの面では多様性の尊重も感じます。
これは、移民の国オーストラリアならではかもしれませんが、たとえば自画像を描く際も肌や目、髪の毛用の色がいくつか用意されているのです。
好きな色を選び、自分の肌や目、髪などを好きな色で描く。
そして、クラスメイトと見せ合って、違いを認め合う。
そのような授業を通して、多様性を学んでいるのです。
「違いを認め合う」ことを、アートを通じても、もちろんそれ以外の場面でも取り組んでいるなと日々感じます。
教室には恐竜などの壁面コーナーがある
教室には、さまざまな掲示物があります。
子どもたちのArtの作品がたくさん飾られていることはもちろんのことなのですが、たとえば一角には恐竜コーナーもあるのです。
まるで、図鑑に載っているような内容がそこの壁には書かれていました。
これは、科学に興味を持つきっかけを与えたい、というその種まきを先生がしてくださっているのだと思います。
小学校での例
小学校では、もう少し横断的なことを学びます。
私の友人の学校では、たとえばあるterm(学期)のテーマが恐竜だったとき、以下のような切り口から学んでいました。
- 恐竜の生態
- 恐竜が生きていた時代はどのような時代だったか
- (恐竜が生きていた2億5000年前から)億という数字について
- 恐竜の立体模型を作ろう
一つのものに関してでも、STEAMなどさまざまな切り口で見ることによって、横断的な理解につながります。
まとめ
以上、STEAM教育について、オーストラリア公立現地校(幼稚園年長)で実際に行われている事例も含めて紹介しました。
オーストラリアの学校では、子どもの主体性を重んじ、楽しみながら学ぶことに重点を置いていると感じます。
また授業も、映像やタブレットを使うなどITツールも日常的に活用されており、日本から引っ越してきた際はいい意味で衝撃を受けました。
このオーストラリアの取り組みの紹介が、どなたかのご参考に少しでもなれば嬉しいです。
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