日本人の移住先としてランキング2位のタイの中でも、日本食レストランも豊富で何でも揃う首都バンコクはもっとも人気の高い街ですが、都会の喧騒を離れ、多少の不便さはあっても、自然を大いに満喫できるビーチリゾートも多くの日本人移住希望者が憧れる場所。
ここでは、そんなタイの美しいビーチの近くに暮らしてみたい!という方のために、タイの島を中心に、生活の場所としてのビーチのある街や地域をちょっとシビアな目線で比較してみたいと思います。
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サムイ島
地域:南タイ東部・タイランド湾
物価 ★★☆☆☆
治安 ★★★★☆
病院 ★★★★☆
日本食 ★★★☆☆
アクセス ★★★☆☆
( Photo by https://www.flickr.com/photos/gchun/1372123021/ )
日本人に人気のビーチリゾートとして知られる南タイ東部のタイランド湾に浮かぶサムイ島は、移住先としても注目度が急上昇中。
車で2時間もあれば一周できるほどよい大きさと、サムイ空港ではバンコク便が1時間に1本ありアクセスも良好(★3つの理由の但し書きは後述)。レストランやバー、ショッピングセンターがある一番人気のチャウエンビーチから、静かで落ち着けるビーチも島の周囲に点在し気分によって選べるビーチ生活が楽しめます。
サムイ島の物価
物価も上昇しているとはいえ、橋で地続きのプーケットと比べると海上輸送費がかかる分、生活物資は高めですが、レストランや借家の家賃は比較的安く、島内の交通も乗り合いピックアップのソンテウを利用すれば150B以内で移動可能。
ただ、サムイ島のタクシーはメーターを使わないのが有名で、ちょっとした距離でも200B〜400Bとふっかけてくるので気軽に利用できませんでしたが、最近警察の指導が厳しくなり、メーターを使っていないと罰金を課せられるようになり、この点も改善されつつあります。
本格的な日本食レストランも数件あり、また2014年にチャウエンにオープンした大型のシティショッピングモールの「セントラルフェスティバルサムイ」には、「大戸屋」や「やよい軒」といった比較的手頃な値段で日本食を楽しめるお店もあります。
モールの食料品売場には日本食材も一通りそろっており、近辺にはショッピングセンターの「テスコ・ロータス」やこじんまりとした日本食材のお店もあり、納豆や豆腐なども手に入ります。
サムイ島の治安
また、治安もタイの中では良い方で、最近はタイ警察が地元マフィアの一掃に力を入れているので、小規模なテロ事件はありましたが、安心して暮らせる島だといえます。道路もメインストリートはバンコクよりも舗装の状態もよく、アップダウンも少ないので、自動車やスクーターで走る際にもラクに運転できるでしょう。
インフラ面では、電気の供給にやや不安があります。
12月から始まる観光ハイシーズンの時期や4〜5月の酷暑の時期には、電力需要が供給をオーバーして停電になることがあります。
また海底ケーブルのダメージによりクリスマス前に3日間連続で電気の供給がストップし、観光業に大打撃を与えた事件もありました。自然災害の面では、最近の異常気象の影響か、ストームが強力化している傾向があり、ビーチ沿いのリゾートが高波による床下浸水にあうといった被害が出ました。
また、幸いタイランド湾は地殻が安定しており、アンダマン海と比べると大地震や津波の心配は少ないようで、ここ数十年体に感じる地震はまったく起こっていません。
サムイ島の病院
高齢者の方が気になる病院の状況ですが、先端医療を行っているバンコクホスピタルをはじめ、医療設備が充実しているプライベートホスピタルが数件あります。
ただし、医療の質や入院設備が充実している分、医療保険や海外旅行保険がないとかなりの高額を請求されます。公共医療機関のサムイホスピタルは、比較的安い医療費ですみますが、それでも長期に入院するとかなりの金額になるので留意してください。
サムイ島へのアクセス
サムイ島のアクセスは、バンコク便はバンコクエアーの独占状態となっており、タイムテーブルは利用しやすく便利ですが、国内便ではタイの中でずば抜けて高い値段設定になっています。
この点からアクセスを★3つにしましたが、時間はかなりかかりますが、内陸のスラタニー空港でLCCのAir Aia のバンコク便を利用できますので、スピードボートやフェリー、空港までのバスを乗り継ぐことで安い値段でのアクセスも可能です。
また、隣りのパンガン島では、毎月満月の日にはフルムーンパーティーが開催され、サムイ島を利用する観光客が急増するので、その数日間はバンコクエアーの便や船も満席になることがあります。
プーケット島
地域:南タイ西部・アンダマン海
物価 ★★☆☆☆
治安 ★★★☆☆
病院 ★★★★☆
日本食 ★★★☆☆
アクセス ★★★★☆
( Photo by https://www.flickr.com/photos/8382111@N02/5792625930/ )
サムイ島の浮かぶタイランド湾と正反対の西側のアンダマン海に位置するのが、「アンダマン海の真珠」と呼ばれ、古くから日本人観光客にも人気のタイ最大の島プーケットです。
周囲には映画「ビーチ」の撮影現場となったクラビやピーピー島といった島や非常に美しいダイビングスポットや国立公園などがあり、プーケットを拠点としてそれらのスポットや島々を巡ることが可能です。
開発の歴史が古いだけあって、日本人の移住者も多くコミュニティもあります。最近では、ミッキー・カーチスさんが、77歳で妻と愛犬との移住先に選んだというトピックスがありました。ただし、意外とタイ在住歴の長い人でもプーケットは嫌い、おもしろくないという人も少なくありません。
世界遺産に登録されたマレーシアのペナン島を彷彿とさせるポルトガル様式のオールドタウンの町並みは風情がありますが、高層建築もある市街地は、リゾート化によって古き良きタイのゆったりとした素朴さや人情が失われているというのがその理由のようです。
最近では、欧米の旅行者の人気トレンドでもサムイ島に抜かれ、周囲の美しい観光スポットにめぐまれているにも関わらず、ランキング上位に入らなくなった理由もそのあたりにあるのかもしれません。
2004年のスマトラ島沖地震の際には、プーケットでも津波により多くの犠牲者が出ました。スマトラ島北西沖は、インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートがぶつかり合うスンダ海溝(ジャワ海溝)があり、世界有数の地震多発地帯となっています。この海域では2004年以降もマグニチュード7以上の地震が9回も起こっています。
アンダマン海は、タイの中でももっとも美しい水質の海と素晴らしいサンゴ礁群のある地域ですが、「地震や津波の来ないところで暮らしたい」という日本人の方には、移住先としてお薦めするのは少し躊躇してしまう方もいるかもしれません。
プーケットの日本食
日本食レストランや日本食材については、サムイ並に利用できますので、日本食が恋しくなった場合でも大丈夫でしょう。
プーケットの病院
また、病院についても同様にバンコク・プーケット病院をはじめとした質の高いプライベートホスピタルがいくつかあります。また、語学学校やマッサージスクール、インターナショナルスクールなど学校機関が豊富なので、プーケットでタイ語のみならず英語を学習したり、お子様をインターナショナルスクールに通わせることも可能です。
プーケットへのアクセス
プーケットの国際空港は、市街地まで距離はありますが、LCCも乗り入れており、バンコクはもとよりマレーシアやシンガポールへのアクセスも容易でタイ南部のハブ空港といってもいいくらいです。また、橋で内陸部と接続されているので、地上を通ってバスや自家用車で直接バンコクに行くことも可能です。
パンガン島
地域:南タイ東部・タイランド湾
物価 ★☆☆☆☆
治安 ★★★★☆
病院 ★★☆☆☆
日本食 ★☆☆☆☆
アクセス ★★☆☆☆
( Photo by https://www.flickr.com/photos/travelfreak_/15444893202/ )
フルムーンパーティで世界的にも有名なのがサムイ島のお隣の島パンガン島です。
パーティーキッズ御用達の騒がしい島という印象があるかもしれませんが、開発が進んだとはいえ、サムイ島に比べるとまだまだのんびりとした昔ながらのタイの田舎の良さと、緑豊かなジャングル、パンガン島の村民の人情味は残っていて、リピーターとして何度も訪れる旅人が少なくありません。
日本人でも、長期滞在から半移住生活に移っていく人たちがいて、まだ数は少ないものの定住先としてパンガン島を選んでいる方も増えつつあるようです。
欧米人のリタイヤ組と比べると、年齢層が低く、ビジネスビザを取得してカフェやレストラン、アクセサリーショップなどを営んでいる方もいます。日本食レストランも数軒ありますが、日本食材の揃うスーパーはなく、輸入食料品店で僅かに手に入る程度です。
語学学校があり学費も安価なので、長期滞在者の中には学校に入学してEDビザを取得し滞在している方もいます。
島の大きさは、ほぼサムイ島と同じくらいの面積ですが、アップダウンが激しく、舗装のされてない場所も多いのでスクーター等のバイクでの事故が多発しています。特にフルムーンパーティが行われる南部のリンビーチへの道は傾斜が非常に急で、死亡事故が何度も起きていますので注意が必要です。
サムイ島のように周回道路はその地形上なく、東海岸のいくつかのビーチへのアクセスは、今でもボートのみとなっています。インフラ面の整備は年々進んではいますが、電気の供給に関してはサムイ以上に不安定です。電圧も安定せず、ストームの時や酷暑の電力需要が増える時期には停電が頻発します。また一部の地域では、渇水によって水道の供給がストップすることもあります。
パンガン島では最近はスピリチュアルブームが来ていて、非常に多くの場所にヨガスクールがあります。ベジタリアンフードを出すレストランも増えていて、パーティを楽しむイケイケな旅行者とのコントラストがおもしろい感じです。リンビーチから離れた北部や東部は、静かに生活したい外国人に好まれており、長期滞在者にはそういった場所に貸家を借りている人が多くいます。
では、最後に内陸部のビーチについて簡単にご紹介しましょう。
パタヤ
( Photo by https://www.flickr.com/photos/infanticida/7023550407/ )
バンコクの東南160kmあまりに位置し、タクシーで1時間半程度、バスで2時間〜2時間半程度でアクセスできるので、バンコクを頻繁に訪れる必要のある長期滞在者に人気です。
ビーチそのものはきれいとは言いがたいのですが、古くから歓楽街として発展したため、ナイトクラビングなどの夜遊びな好きな方は楽しめる場所かもしれません。ただ、その分治安は悪く、タイの街の中でも犯罪発生率は群を抜いています。日本人の移住組も多くいますが、その雰囲気に溶け込めるかどうかは、タイプによるかもしれません。
実はパタヤは、イミグレの賄賂が有名で、「何でもアリのパタヤ」と呼ばれるように、お金次第でリタイヤメントビザがすんなり取れたり、自動車免許が無試験で取得できたりという話もあるようです。いざとなったらそういう業者を検索し利用するのも裏ワザとしてアリかもしれません。
フアヒン(ホアヒン、フワヒン)
( Photo by https://www.flickr.com/photos/10857883@N05/11293764615/ )
バンコクから南へ車で3時間ほどの東海岸の王室御用達の別荘がある整然とした上品な雰囲気の街がフアヒン。
日本企業の社内旅行で、社員たちが海岸で素っ裸になって大ヒンシュクをかった事件があった場所です。
当時「王室ゆかりの地でなんてことを!」と大騒ぎになりましたが、その後、タイのお正月のソンクラーンの時期に、イギリスから観光に来た老夫婦を酔っ払ったローカルのタイ人たちが集団で暴行するという事件が起こり、フアヒンの評判をいきなり地の底に沈めました。
日本人のシニア層の人たちの中には、ここを大変気に入って長期滞在先に選ぶ人も少なくなく、富裕層も多く落ち着いた街と定評があったフアヒンの評判に傷がついたことを残念がっているのではないでしょうか。
チュムポーン
( Photo by https://www.flickr.com/photos/julespec/14651066401/ )
バンコクから南へ500kmほどのマレーシアとバンコクのちょうど中間辺りに位置する漁業の街がチュムポーン。
最近は、ダイビングスポットで大人気のタオ島行きのボートが出ていることで注目度が上昇中。地形上ビーチは少ないものの開発途上の元漁村の街は、まだまだローカル色が強く残っており、物価も安く、空港もありバンコクからのアクセスが比較的便利なので、今後は長期滞在先として選ぶ外国人も増えるのではないかと予想します。ただ、標高が海抜0mに近く、雨季には頻繁に洪水に見舞われる地域でもあります。
まとめ
タイの島には、まだまだオススメのところは多いのですが、たとえば、旅先としては未開発の手付かずの自然は非常に魅力的ですが、定住・移住先という視点で見方を変えると、それはインフラが未整備、アクセスが不便で、病院、ショッピング、外食先が限られるといったデメリットと表裏一体だということです。
それでも辺境な孤島で静かに暮らせることが何より!というバイタリティのある方もいるかもしれませんが、おそらくそんなに遠い将来じゃなく、ドラスティックに開発されていく運命にあると思ったほうがよいです。
タイの定住・移住先を考える際には、その場所が今後どのような変遷をたどるのだろうか?という長期的な視野で眺めてみることも必要ではないでしょうか。
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