フランスではパティシエは職人と見なされ、周りからも一目置かれる職業だといえます。
なぜならパン同様スイーツはフランス人の生活に欠かせないものであり、誕生日だけではなくフランス人は日常的にケーキなどのスイーツを買う機会が非常に多いからです。
恋人が何でもない普通の日に彼女の好きな菓子をプレゼントする、といったような愛情表現が多いのがフランス。
日曜日に家族全員が集まる時は招く側は食後のケーキを用意しておくことが常だったりもします。
それほどフランス人の生活と菓子とは切っても切れない関係なのです。
今回はフランスでパティシエとして働いたことのある就業経験者から、フランスでのパティシエの地位、給料や向いている素質などの情報をお伝えいたします。
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フランスにおけるパティシエの存在
こういう背景もあり、フランスでパティシエとしての技術が認められた人はMOF(フランス国家最優秀職人称)という称号を与えられ、これは日本の人間国宝に当たるほど地位の高い称号になっています。
パティシエの実際の労働環境は、業務用の小麦粉や砂糖の袋など重いものを持ったり大量のクリームの練り上げなど力を使うことも多くかなり大変な仕事です。
また、オーブンを使う仕事の上、スピード勝負なので火傷も避けられません。
お店の開店時間に合わせてケーキの仕上げ等をしなくてはいけないので、パン屋ほどではないですが朝が早いのも特徴です。
ほとんどのパティスリーではパティシエは朝の6時頃には仕事を開始します。
パティシエに向いているのは朝に強い人、体力と根性のある人、周りへの順応性が高くメンタルが強い人、そしてもちろんお菓子作りが好きなことも欠かせません。
実際お菓子作りが好きでも他の理由でパティシエをあきらめた人は数多くいます。
フランスでのパティシエのお給料
肝心のお給料ですが、パティシエは学校で学んだ後見習いもしくは無給の研修生としてキャリアをスタートします。
この研修時期は人によりけりですが、基本は2か月です。
なぜならフランスでは研修という名目であっても、2か月以上無給で働かせてはいけないと決まっているからです。
しかし、実際のところ2か月よりも長い期間無給で人を働かせているパティスリーも数多くあります。
研修生としても、無給であっても働くことで自分の勉強になるということで、双方合意の元、こういった現状が多いのです。
見習いの場合は給料が発生します。
この給料の額は年齢によって変わり、
- 18歳以下だと最低賃金の約25パーセント
- 18歳から20歳で約40パーセント
- 21歳以上で最低賃金の半分ちょっと
です。
見習い期間は基本約2年間です。
個人の能力により1年で見習い期間が終わることもあれば3年ほど見習いのままということもあります。
見習い期間が終わってからの給料ですが、勤務先にもよりますが一般的な個人経営店の場合はほぼ最低賃金かそれより若干多い程度です。
有名ホテル勤務などになると個人経営店に比べ給料が高い場合もあります。
一般的に一人前のパティシエになれるのには学校を出てから最低5年、人によっては10年程かかることもあるでしょう。
もちろん本人の能力や資質の他にキャリアアップの要素としてはどういった店で働くのかや周りの人との出会いのタイミングなども関わってきます。
フランスの有名な日本人パティシエ
フランスには有名な日本人パティシエが何人かいます。
とはいっても一般的なフランス人への認知度はそれほど高いわけではなく、パティスリー業界に詳しいフランス人なら名前は知っている、というくらいの認知度になります。
なんといっても一番有名な日本人パティシエは青木定治氏でしょう。
彼は日本人パティシエとしてメディアに最初に知られた先駆けの存在で、日本の食材の良さが出るようなレシピを多く生み出し、フランスのパティスリー界に革新をもたらした人物といっても過言ではありません。
彼の生み出した抹茶味や玄米茶味のエクレアやケーキなどはフランス人にもファンが多いです。
そして最近フランス人の間で話題なのがMORI YOSHIDA氏(日本でのパティシエ名は吉田守秀氏)。
彼の斬新かつ見た目も味も共に完成度の高いケーキは2013年にパリに開店するや否やフランスでも注目を浴び今では大人気店のひとつとなっています。
実際、現地口コミグルメサイトでも非常に高い評価を得ています。
フランスへのパティスリー留学について
日本人がフランスにパティスリー留学をしたい場合、一般的なのは私立の製菓学校に入ることです。
学費が非常に高いのが特徴ですが、現地の公立校の場合だと学費は安くても年齢が25歳までと設定されていたり、基本2年間は通わなくてはいけない上、高校を兼ねているところが殆どなので普通に国語(つまりフランス語)や数学の授業などもある点で、日本で育った日本人が行く留学先として現実的ではありません。
もし登録時に30歳までなら基本の授業料はタダという製菓学校もあるようです。
授業について
実際の授業内容ですが製菓学校での授業は実習が基本になります。
講師が行う実技を見た後に各個人でテーマ毎の菓子を作っていく学校もあれば、まず講師が手順を説明してグループで分担し、仕上げていく学校もあります。
授業は基本フランス語か英語のみになりますので、入学前に最低どちらかの言語は聞いて即座に理解できるくらいのレベルにしておく必要があります。
生徒の国籍は多様ですが、値段が高いこともあり、フランス人でわざわざ私立の製菓学校に登録する生徒は少ない為、アジア人や他の国籍(アメリカ、中近東、ヨーロッパ諸国)の生徒が多いです。
異国の地に同じ目的で学びに来た生徒同士、結束が生まれて仲良くなることもしばしばあります。
学校での研修期間はきっといい思い出になることでしょう。
研修期間中はテストがあったり、個々の実力を測る場も随時あるので、1日1日を大事にし、疑問に思ったことがあればどんどん講師に質問して知識と技術を習得しましょう。
またこの時期は比較的自分の時間が取れる時期になりますので休みの日は気になるパティスリーにどんどん行って食べ比べをしてみましょう。
様々な店のパティスリーを味わうことは自分が将来どういう菓子を作りたいのかを図り知る目安にもなるのでおすすめです。
研修について
学校での研修期間が終わるといよいよ実地研修となります。
初めてパティシエとしての実務を経験することや違う国で働くカルチャーショックなどで多くの外国人研修生がこの段階でギブアップします。
もし研修先の店の希望を出せるようであれば事前に最大限情報収集をしておき、自分に合った店を選ぶことが非常に大事です。(とは言え実際に働いてみないとわからないことが多いのも事実なのですが。)
1番有効なのがその店で働いていた人からの口コミです。
もし同じ学校の卒業生との交流の機会があればどんどん実情を聞いてみましょう!
さて、研修に入ると初日は戸惑うことだらけでしょう。今まで日本でパティシエとしての経験がある人なら仕事の勝手が分かる分いくらかはよいかもしれませんが、何しろ1日中フランス語という環境な上、日本人だからというような相手からの気遣いもないので、仕事云々の前にカルチャーショックを受けるかもしれません。
1日目はあまり気負わずに、全部が分からなくて当たり前と思いましょう。
何日か経って同僚とも打ち解けてくれば仕事にも環境にも徐々に慣れてくることでしょう。
このときに気をつけて欲しいのが、分からないことは分からない、ときちんと口に出して意思表示することです。
筆者自身の経験談なのですが、指示されたことを自分の解釈で行い、本来言われたことではないことをしてしまい、結果2度手間になってしまうということが何度かありました。
自分では今から何をするか分かっているつもりでも実際は相手がやってほしいと思っている指示と違うこともあるので、疑問に思ったら臆することなく聞きましょう。
間違ったことをするより、再度何をやるのかを聞く手間のほうがずっと少なくて済むうえ、結果的にかける迷惑も少なくて済みます。
そして上にも書きましたが朝は本当に早いです。
夜は早めに寝て体調管理には十分気を付けましょう。
大きな店ならまだしも個人店だと一人いないだけでも周りの人の負担が増えることもあります。
たとえ風邪を引いた場合であっても、体調管理のきちんと出来ない人間はプロ意識に欠けると思われます。
フランスでパティシエの仕事を探す方法
研修が終わった後の仕事の探し方ですが、現地のフリーペーパーや知人からの口コミ、もしくは日本でいうハローワークのような機関に登録して探す方法もありますが、本当にやる気があれば気になるお店に直接行ってみるという選択肢もあります。
もしそこの店でその時期特に求人を出していなくても、直接出向いて履歴書と志望動機書を渡せばやる気があると見なされ後日連絡が来るかもしれません。
フランスでは職探しの際、履歴書と同時に常に提出しなくてはいけないのが志望動機書です。
書式は特に決まっておらず、手書きでもパソコンで文書を作ってもよいですが、自分のやる気をいかに相手に伝わるように書くかが勝負です。
なぜその店で働きたいのか、なぜパティシエなのか、自分にはどういう資質があって自分を雇うことがその店にとってどんなメリットになるのか等を分かり易く、かつ根拠のない自信過剰な表現にならないよう過去の実績を踏まえて書くことが大事です。
過去にパティシエとしての実績がないのであれば他の仕事やアルバイト経験などでもいいので周りから評価を得ていたというような内容を入れるのが効果的です。
これらはもちろん全てフランス語で書く必要があるので、これからフランスにパティシエ留学をし、現地で仕事を探す予定のある人は今から会話や文章力を含めフランス語の全体的なブラッシュアップをしておきましょう。
最後に
フランスでパティシエの仕事をしたいのであれば一番大事なのは結局のところメンタルの強さと言えるかもしれません。
体力ももちろん職業柄必要ですが、それ以上に大事なのが簡単には折れない強い心です。
そもそも異国でフランス人や他の外国人に囲まれて働くわけです。
環境の変化を楽しむぞ、というくらいの姿勢で困難があってもポジティブに受け止めましょう。全部自分の経験になるわけですから、嫌なことがあっても後で自分の人生を振り返ったときにあんなこともあったな、と笑って思い出に出来るくらいの気持ちの強さが必要です。
実際、研修中にリタイヤする外国人パティシエはいっぱいいますが、せっかく高いお金を払ってフランスまで来ているのでもったいないです。
学べることは全部学んでいくぞ、くらいの気持ちを持ちましょう。
もし差別的なことをされたり言われたりするのであれば現地の知り合いに臆することなく相談しましょう。
その為にも渡仏前に現地の知り合いを作っておくことをおすすめします。
この時代ですからSNSなどで事前に情報収集をしておき、気の合いそうな人を見つけたらどんどん連絡を取りましょう。
自己責任になる部分はありますが、現地在住の日本人などであればある程度信頼できそうな人かどうかはわかるはずです。
色々と書きましたがフランスで働くことは日本の良さも再認識出来るのでとてもいい経験になります。
ケセラセラ(なるようになるさ)精神でフランスでの就業を楽しみましょう。
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