イギリスで生活するにあたり納税は義務であり、年金も然りです。
しかし、年金として老後いくらが支給されるのか、月々の支払い方法は、またもし定年を迎えるまでに日本に帰国した場合はどうなるのかと疑問を抱える人も多いでしょう。
そこで本記事ではイギリス在住歴の長い筆者がイギリスの年金制度について解説していきます。
イギリスの社会制度は「揺り籠から墓場まで」と言われ、国民の生活、健康がしっかりと守られていることで有名な国家です。
しかし年金についてはそのシステムが複雑で、2016年に年金制度が改正されたものの、未だイギリス国民ですら戸惑うことも少なくはありません。
ここで紹介するイギリスの年金についてしっかりと理解することができ、不安を払拭することができるでしょう。
※本記事は2020年4月時点の情報です。
イギリスの年金制度
1)3種類の年金
イギリスの年金には
- 政府が支給する公的年金(state pension /ステイトペンション)
- 雇用者が支給する職場年金(workplace pension/ワークプレイスペンション)
- そして個人で手配する個人年金(self-invested personal pension/セルフインヴェスティドパーソナルペンション)
の3つがあります。
イギリスの年金制度は2016年に大きく改正され、それ以前の複雑な仕組みから簡素化されました。
しかし詳細が度々改正され、イギリス人でも戸惑うことが少なくなくありません。また不満を抱えるイギリス人も少なくないのも事実です。
2)年金受給開始年齢
2020年4月時点、年金受給開始年齢は65歳となっています。
しかし今後段階的にその年齢が引き上げられ、2034年から2036年の間に67歳となる予定となっています。
なお、2011年に法改正され、現在イギリスではいわゆる「定年退職年齢」は設定されていません。
公的年金(state pension /ステイトペンション)
1)財源は社会保険
公的年金の財源は国民、イギリス居住者が支払う社会保険が財源となっています。
つまり日本では社会保険・国民健康保険の他に、国民年金・厚生年金の支払いが必要となりますが、イギリスでは保険料の中に年金の支払いが含まれているため、年金を別途支払う必要がありません。
なお、社会保険料は16歳以上で、一定の収入額がある人には支払いの義務があります。
2)支払い金額は収入次第、受給金額は一律
社会保険料は収入によりその支払い金額が異なりますが、受給金額は一律となります。
年金を満額受け取るには35年間の社会保険料の支払いが必要となっており、満額受給の金額は2020年4月時点、175.20ポンド/週となっています。
3)年金を受給できない人がいる?
2016年に改正された制度では、年金は社会保険番号(ナショナルインシュアランスナンバー)の履歴によって、受給額が決定されるため、社会保険番号を取得したことがない人は年金を受給できないということになります。
たとえば、配偶者の渡英に伴ってイギリスで生活を始め、イギリス滞在期間に職業を持たない日本人の専業主婦などは受給対象者外となります。
ただし、子どもがいて児童手当を申請している場合は、社会保険番号の履歴があるとみなされ、子どもが12歳になるまでの期間分を、社会保険を支払った年数とみなされ、受給が可能となる場合もあります。
4)学生ビザで滞在している人の場合は?
学生ビザで滞在している人の場合、ビザの種類によっては、就業時間数に制限があるものの、就業が認められる場合もあり、アルバイトをする人も少なくはありません。
ただし学生であっても就業をする場合は社会保険番号の取得が必要になり、またその給与が社会保険料の支払い対象となる額を超える場合は、社会保険料分が給与から差し引かれ、つまり年金を支払っているということになります。(アルバイトをしない場合は社会保険番号の取得は必要ありません。)
5)年金受給のためには10年間の社会保険料支払いが必要
先の項目で述べた通り、年金を満額受け取るには35年間の社会保険料の支払いが必須となります。
しかし35年に満たなくとも、10年間の社会保険料の支払いを行なっていれば、受給対象となります。
6)10年未満の滞在でイギリスを離れた場合
現在多くの日本人がイギリスで生活をしていますが、日本を完全に離れ永住権を取得して生活をしている人もいれば、日本企業からの転勤などで、数年間の期間限定でイギリスで生活をしている人も多くいます。
期間限定で生活している場合、ビザなどの関係で3から5年前後の滞在期間を経て日本に帰国する人がほとんどです。
イギリスで収入を得ている限り、社会保険料の支払いが必須となりますが、先の項目で述べた通り、年金を受け取るためには10年以上の社会保険料の支払いが必要となります。
そのため、原則イギリス滞在期間10年未満で帰国した場合は、年金の受け取りが不可能となります。
ただし、社会保険料は日本に帰国してからも任意で支払いを継続することは可能となっており、少なくともイギリスにおいて3年間就業し、その後任意の支払いを継続すれば、年金受給年齢に達した際に、日本でイギリスの年金受け取りが可能となっています。
7)日本の年金に影響なし
上記の通り、日本にいながらイギリスの年金を受け取ることは可能となっています。
またイギリスの年金を受給することで、日本の年金受給額に影響が出ることもありません。
職場年金(workplace pension/ワークプレイスペンション)
1)雇用者は職場年金に加入の義務あり
イギリスでは雇用者つまり企業や団体は社員に職場年金を提供することが義務付けられています。
対象は22歳以上、月収が833ポンド以上の社員です。
毎月の支払い額は月収の8パーセント以上となっており、そのうち雇用者は最低3%を支払うことになっており、残りは社員各自が支払います。
なお、企業や団体はイギリスに複数ある年金機構に管理を依頼しており、また企業によって利用する年金機構が異なります。つまり転職を複数回繰り返していると、複数の年金機構から年金が受給できるということになります。
なお受給額は、年金機構、支払い期間、支払い額によって異なってきます。
2)脱退が可能
雇用者は社員に職場年金を提供することが義務付けられているものの、社員は通常加入後1ヶ月以内であれば自由に脱退も可能となっています。
3)帰国時に返還を求めることが可能
職場年金は年金受給年齢に達した際に、イギリスを離れていても受け取りは可能ですが、支払っていた期間が短い場合、受け取り金額がかなり限られます。
そのため、イギリスで定年後を過ごす予定がない場合は、日本へ本帰国が決まった際に返還を求めることが可能となっています。
手続きや返還される金額等については年金機構や支払い期間、支払い額によって異るため、年金機構への問い合わせが必要となります。
個人年金(self-invested personal pension/セルフインヴェスティドパーソナルペンション)
1)大手保険会社が提供
自営業の場合は、職場年金を受け取ることができないため、独自で個人年金を手配する人がほとんどです。
個人年金は大手保険会社が提供しており、直接申し込みが可能です。
2)ファイナンシャルアドバイザーに手配依頼も可能
個人年金の手配はファイナンシャルアドバイザーに相談、代行も可能です。
ファイナンシャルアドバイザーは個人にあった最適なプランを探し出し、また将来的な計画も見積もってくれるため、イギリスでは多くの人がファイナンシャルアドバイザーに個人年金の手配を依頼しています。
イギリスの年金制度を正しく理解
イギリスの年金制度は2016年に大改正され、比較的シンプルなシステムに改善されました。
また日本の年金制度と比べわかりやすい点は、公的年金は社会保険が財源となっているため、月々の健康保険料と公的年金の掛け金を別々に支払う必要はないということです。
さらに個人年金は独自で手配が必要になるものの、職場年金は雇用者が手続きを行ってくれるため、独自の手配の必要はありません。
そのため、イギリス移住直後に年金の手続きに翻弄されることはありません。
イギリスの年金制度を正しく理解し、自身の長期的な生活を計画してみませんか?
なお、イギリスの年金制度についてはイギリス歳入庁が管轄しており、また公的年金についてはイギリス政府のホームページで詳細を確認してみてください。
参考URL
- 公的年金:https://www.gov.uk/check-state-pension
- イギリス歳入庁:https://www.gov.uk/government/organisations/hm-revenue-customs
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