日本のシステムと一見似ているようで、よく見るとかなり異なるもののひとつが、スペインの教育システムではないでしょうか。

特に、スペインでお子さんと一緒に暮らしている方にとって、この教育システムの違いというのは、非常に重要な問題となります。

この記事では、スペインの教育制度について取り上げたいと思います。

ただし一点注意しなくてはいけないことは、スペインの各地方によって教育制度に若干の違いがあるということです。

この記事で説明することは、本当にスペイン教育制度の概要だけになりますので、お住まいの地域の詳しい教育制度をお知りになりたい方は、ぜひ地元の教育関係のWEBサイトにアクセスすることをお勧めいたします。

スペイン教育制度の概要

スペインの教育システムは、年齢別におおよそ次のようになっています。

1. 幼児教育 (Educación infantil:エデゥカシオン・インフアンティル)（0歳から5歳）
2. 初等教育 (Educación primaria: エデゥカシオン・プリマリア)（5歳～12歳）
3. 中等教育 (Educación secundaria: エデゥカシオン・セクンダリア)　(12歳～16歳)
4. 高等教育 (Educación superior: エデゥカシオン・スペリオール)（16歳以上）

スペインで義務教育に相当するのが、2.初等教育 と 3.中等教育です。

しかし、今はほとんどの子供が幼稚園で幼児教育を受ける形になっているので、実質的には幼児教育も義務教育化されているといってもよいでしょう。

次の章からは、スペインの教育制度の各段階について、説明します。

幼児教育（0歳から5歳）

いわゆる、保育園（グアルデリア:Guardería）や幼稚園に行く年齢の子供たちの教育期間です。

日本同様、保育園は0歳から行くことができますが、幼稚園に行くことができるのは子供3歳になってからです。

スペインでは、幼稚園のことも学校（コレヒオ:colegio）と呼びます。

なので、3歳の子供もが、「明日、幼稚園に行くの」と言う時も “Voy al cole (colegio) mañana(ボイ・アル・コレ（コレヒオ）・マニャーナ).”　と言います。

そして、スペインの幼稚園は小学校と同じ敷地や建物内にあることが少なくありません。そのため、幼稚園と小学校あわせて9年間を同じ学校に通う子供も多いのです。

6歳になっても、幼稚園の頃と同じ「学校」に通うことになるため、日本で言うところの「小1ギャップ」というのも、スペインではあまり多くない印象があります。

初等教育（5歳～12歳）

スペイン語でPrimaria(プリマリア)と呼ばれるのが、この世代。いわゆる小学校です。

この6年間で学ぶ主な基本的な科目は次の通りです。

スペインの初等教育で特徴的なことは、「落第」の制度がある、ということです。つまり、小学校でも、担任の先生の判断により、同じ学年を2回やらなくてはならなくなるのです。

そして、あまりにも成績などに問題があると、小学校から「退学」扱いにされることもあります。

小学校から厳しい、スペインの教育制度なのです。

中等教育(12歳～16歳)

スペインで、義務教育となっている中等教育は ESO（エソ: Educación Secundaria Obligatoria）と呼ばれています。

ESOは1年生から3年生までは同じ教科を勉強しますが、4年目になると、

• 大学入学準備コース　(Enseñanzas académicas: エンセニャンサス・アカデミカス)
• 職業準備コース (Enseñanzas Aplicadas: エンセニャンサス・アプリカーダス)

に分かれます。

ESOで学ぶ教科は、地方によって若干異なりますが、基本的には以下の科目を学びます。

1. ESO1年目から3年目

2. ESO4年目　大学入学準備コース

3. ESO4年目　職業準備コース

高等教育（16歳以上）

スペインで、高等教育以上は義務教育ではなくなります。

高等教育から、大学進学準備コースと職業人用コースがはっきりと分割されます。

大学進学準備コース

大学進学準備のコースはバチリェラート（Bachillerato）と呼びます。

バチリェラートの学生は、以下の3つの専攻から自分の専門分野を選び、大学入試に向けて勉強します。

• 芸術コース（Artes plásticas imagen y diseño; o artes escénicas, música y danza)
• 科学・テクノロジーコース（Ciencias y Tecnología）
• 人文・社会科学コース（Humanidades y Ciencias Sociales）

2年間この専攻を勉強し、大学受験の時には、それぞれの専攻に沿った学部を選ぶことになります。

職業人用コース

職業人コースでバチリェラートに相当する資格は、中級職業人コース（Ciclo Formativo de Grado Medio:シクロ・フォルマティーボ・デ・グラド・メディオ）と呼ばれます。

この中級職業人コースで学ぶことができる職業は全部で約60種類。農業関係や牧羊関係、商業や建築業など、幅広い分野の職業を学ぶことができます。

このコースの勉強機関は、職業によって異なりますが、だいたい1年から2年ほど。

そして、このコースを終わってからも、もっと専門的な職種に進みたい人は、上級職業人コース（Ciclos Formativos de Grado Superior: シクロ・フォルマティーボ・デ・グラド・スペリオール）という資格を得るための学校に通うこともできます。

このCiclos Formativos de Grado Superiorを終了した人は、プロ中のプロの職業人として認められることになります。

大学以降の教育制度

大学以降の教育制度は、日本とほぼ同様です。

大学に入学すると各学部で学ぶことになり、学部を卒業すると学位（Grado）を取得することができます、

その後、大学院に進むと、修士号（Máster）や博士号（Doctorado）を取得することになります。

スペインの大学で取得できる学位（Grado）・修士号（Máster）・博士号（Doctorado）はスペイン文部省の規定に則った公式の資格となります。

特に博士号の取得証明書にはスペイン国王の署名がされており、正式にスペイン政府が認めた資格という扱いになります。

その他の教育機関

スペインの教育機関は上記のようなものだけではありません。

以下のような特殊な分野には、各々の協会や団体が設立した独自の教育機関が存在します。

このような教育機関ではそれぞれ独自の入学条件がありますので、ご注意ください。

1. 芸術・デザイン（Artes plásticas y Diseño）
2. 文化財保護・保存（Conservación y Restauración de bienes culturales）
3. 音楽（Música）
4. ダンス（Danza）
5. 舞台芸術（Arte Dramático /Teatro)
6. 言語学（Idiomas）
7. 軍隊関係（Carrera Militar）
8. スポーツ指導（Enseñanzas deportivas）

スペインの教育システムまとめ

スペインと日本の教育制度を比較した場合、大きく異なるのは中等教育のシステムです。

16歳時点で職業人コースと大学進学コースに分かれますが、職業人コースに進んで数年働いた後に、大学に入学する人も決して少なくはありません。

様々な選択肢のあるスペインの教育制度なのです。

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