日本人がスペインを旅行するときの目的として、「カミーノ・デ・サンティアゴ(通称カミーノ)を歩くため(スペイン巡礼)」という人が少なくありません。
この十数年で、日本でも一気に有名になった感じのあるカミーノ・デ・サンティアゴ。
ここでは、このカミーノについてご紹介いたします。
1. カミーノ・デ・サンティアゴの基本情報
カミーノ・デ・サンティアゴとは、スペインの巡礼の道です。
最終目的地は、スペイン北東部のガリシア州にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)。イベリア半島の西端にあります。
そもそものカミーノ・デ・サンティアゴの目的は、サンティアゴ・デ・コンポステーラのカテドラルに眠る、聖ヤコブのお墓を訪ねることでした。
クリスチャンにとっての「聖なる道」の一つが、このカミーノ・デ・サンティアゴであったわけです。
しかし、今はクリスチャンではない人も問題なく歩くことができる道です。徒歩以外でも、自転車や馬でこの道を進む人も少なくありません。
カミーノ・デ・サンティアゴを歩く旅人はペリグリーノ(peregrino)と呼ばれ、多くの場合十字架を印刷したホタテ貝を身に着けて歩きます。
ペリグリーノはクレデンシャル(la credencial)という、日本式に言うなら「御朱印帳」を持ち歩きます。
そしてルート上にある主要な街の教会等でそのラ・クレデンシャルにススタンプとサインをもらいながら、サンティアゴ・デ・コンポステーラにたどり着きます。そして、サンティアゴ・デ・コンポステーラで「巡礼証明書」を受け取ることになるのです。もちろん、ラ・クレデンシャルなしで、カミーノを歩くことも可能です。
このサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう主要なルートは4カ所あります。
次の章では、この4種類のルートの説明と、各ルートの主要都市の基本情報ににいて説明します。
ルート1:フランスの道(Camino Frances: カミーノ・フランセス)
まずは、フランスの道から始めましょう。
このスランスの道は日本でも最もポピュラーなカミーノのルートではないでしょうか。
スタート地点は、フランス・バスクの街のサン・ジャン・ピエ・デ・ポー(Saint Jean Pied de Port)。
最終目的地のサンティアゴ・デ・コンポステーラまでは約720㎞程の距離です。
一番、このフランスの道を歩く人が多く、ほかの3つのルートと比較すると、比較的短期間(30日前後)で、サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着します。
このフランスの道で主要な中継地となるのが次の4カ所です。
① パンプローナ(Pamplona)
日本でも有名な「牛追い祭り」の街が、このパンプローナです。牛追い祭りで祝われるのは、この町の守護聖人である聖フェルミン。パンプローナの大聖堂(カテドラル)に祭られており、この大聖堂をカミーノの人は訪ねることになります。。パンプローナは大都会なので、アルベルゲ(巡礼者の宿泊所)やお手頃価格のホスタルもたくさんあります。スーパーマーケットも大小さまざまありますので、ご安心を。
② ログローニョ(Logroño)
リオハ地方の州都がこのログローニョ。スペインのワインの一大産地でもあります。そんなこの町でご飯を食べるなら、ローレル通り(Calle del Laurel:カリェ・デル・ローレル)に行きましょう。この地方で生産されたワインに合うタパスを食べることができる気軽なバールが軒を連ねます。個人的には、リオハのワインは赤ワイン(Vino tinto:ビノ・ティント)がお勧めです。このローレル通りにお手軽なホスタルも多いので、この近くで一夜を明かすこともよいでしょう。
③ ブルゴス(Burgos)
カミーノを歩く人にとって、ブルゴスのカテドラルにたどり着いたときには、道中の半分以上を歩いたことを意味します。このブルゴスのカテドラルは高さ88mもある、とにかく豪華なもの。中に入るには入場料を支払う必要がありますが、外から外壁の彫刻を眺めるだけでも、十分にその素晴らしさを堪能できます。ちなみに、カミーノを歩く人のためのアルベルゲもこカテドラルの周囲にありますので、ブルゴスに入ったら、まずカテドラルを目指しましょう。
④ レオン(León)
レオンの街のカテドラルも見ものです。特にここのカテドラルはステンドグラスが美しいことで有名です。このカテドラルの内部にぜひ足を運びましょう。教会内部はけっこう暗く感じるかもしれませんが、その分ステンドグラスの美しさを十分堪能できます。
ルート2:北の道(Camino Norte:カミーノ・ノルテ)
北の道は、フランスの道とほぼ並行する形で作られているルートです。
カンタブリア海沿岸に沿って歩くことになる、海の道です。サンティアゴに向かう最も古いルートがこの北の道です。
スタート地点は、フランス国境に接するスペインの街、イルン(Irún)から始まるこのルートの距離は約770㎞。
比較的大きな街を通るルートなので、毎晩の宿探しに苦労することが少ないルートといえるでしょう。
また、このルートでは、美食で有名なバスク地方を通過します。グルメを楽しみたい人にもうってつけのルートなのです。
このルート上で主要な都市は次の4カ所。
① サン・セバスチャン(San Sebastián)
美食の街として日本でも有名なサン・セバスチャン。この街もカミーノのルートです。スタート地点のイルンからすぐ隣なので、このルートのスタート直後に訪れる街でもあります。
サン・セバスチャンでグルメを楽しむ人が行くのは旧市街のバール。しかしこの地域は最近の人気が上がり、食事のコストが急上昇しています。、もっとお手軽価格でタパスを楽しむなら、川を挟んだ向こう側のGROSという地区がお勧めです。
また、サン・セバスチャン市内でお手頃なアルベルゲを探すのは、ちょっと難しいかもしれません。宿を探すなら、もう少し歩いて郊外に出たほうがよいでしょう。
② ビルバオ(Bilbao)
スペイン・バスク地方のもう一つの大都市がこのビルバオ。グッゲンハイム美術館(Museo Guggenheim Bilbao:ムゼオ・グーゲンハイム・ビルバオ)があることで、日本では特に有名です。この街でもグルメを楽しむなら、旧市街へ行くことをお勧めします。
ちなみに、カミーノはこのビルバオを過ぎると海辺沿いの道を離れてちょっと山の中を歩くことになります。少し道が険しくなるので、要注意です。この地域は特別治安に不安がある場所ではありませんが、夜に山道を歩いたり、野宿をするのはは避けたほうがよいでしょう。
③ サンタンデール(Santander)
カンタブリア地方の美しい港町が、このサンタンデールです。この街の近くにバスで1時間ほどのサンティリャーナ・デ・マールという村があり、そこに、その昔社会の教科書に出てきたアルタミラ洞窟(La Cueva de Altamira)があります。実は、本物の洞窟は保護のために入場できませんが、併設された博物館で洞窟中にある絵のレプリカを見ることができます。
④ ヒホン(Gijón)
アストリアス地方の港町ヒホンは、市内にアルベルゲも5カ所ほどある上に、市内のツーリスト・オフィスでもクレジデンシャルを入手することが可能です。また、ヒホンを過ぎると再度、カミーノは山道に入ります。夜の移動は避けたほうが無難です。
ルート3:銀の道(Camino de la Plata:カミーノ・デ・ラ・プラタ)
銀の道は、スペインを縦断するルートです。アンダルシアのセビリアからスタートし、北上。アストルガでフランスの道と合流し、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指します。
その距離約970㎞。とはいえ、ほかのルートと比較すると意外と山が少なく平地を歩くコースです。このルートを歩く場合、1日平均30㎞弱を歩くことになります。そうすると大体36~40日ほどでサンティアゴに到着します。
このルート上にある、主要な都市は以下の3カ所です。
① メリダ(Mérida)
メリダはエクストラマドゥラにある街で、ここの名物は様々なローマ遺跡です。巨大なローマ劇場やグラディエーターが戦った闘拳場などを見学することができます。午後8時からガイド付きツアーが開催されているので、一晩メリダで過ごすなら、ぜひこのツアーに参加することをお勧めします。ちなみにメリダ市内に2件あるアルベルゲから、ローマ劇場までは徒歩で15分ほどです。
② サラマンカ(Salamanca)
スペインで最も歴史のある大学のあるサラマンカ。ここはスペインハム(Jamón:ハモン)の名産地の一つでもあります。そのため、サラマンカ市内で休憩するときには、バールなどでスペインハムをつまむことをお勧めします。サラマンカ市内にアルベルゲをはじめとして手ごろな宿が数多くあるので、宿探しに困ることはないでしょう。
③ アストルガ(Astorga)
アストルガは小さな町ですが、見どころの多い場所です。まず、豪華なカテドラルクレジデンシャルにスタンプを押してもらいましょう。そのあとは、かの有名建築家のガウディも途中まで建築に協力したというアストルガ司教館(Palacio Episcopal de Astorga:パラシオ・エピスコパル・デ・アストルガ)を訪ねましょう。そしてこの地は、スペインで最初にチョコレート工場が建設された地でもあります。おいしいチョコレートを食べて、カミーノを続けましょう。
ルート4:ポルトガルの道(Camino Portugués)
カミーノの最終目的地となるサンティアゴ・デ・コンポステーラがあるのは、スペインの北西部。その南にはポルトガルが広がります。そのため、カミーノにはポルトガルからサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かうルートもあります。
このポルトガルの道はリスボンから始まり、北上してサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指します。距離はおよそ620km。
このルートでは、サンティアゴ・デ・コンポステーラに近づくと、山越えの日々が4~5日続きます。カミーノの最終週がもっとも苦しいコースです。
ちなみにこのコースは、フランスの道に次いで、最も歩く人の多いカミーノのルートです。[1]
このコースで主要な中継地点となる街は次の4カ所です。
① リスボン(Lisboa)
ポルトガルの道はこの首都・リスボンからスタートします。「坂のある港町」の典型ともいえる街がこのリスボン。黄色い路面電車が市内を走ります。国際空港ももちろんあるので、カミーノのスタート地点としては、もっともアクセスしやすい場所でもあります。リスボンをスタートするとカミーノは海沿いを離れ、ポルトガルの山岳部へと進むことになります。
② コインブラ(Coímbra)
コインブラはポルトガルの学園都市。歴史あるコインブラ大学があります。基本的に学生街なので、物価は大都市と比べてもお安めです。アルベルゲやお手頃価格の宿も市内に数多くあります。
③ ポルト(Porto)
ポルトガル第2の都市、ポルト。この町の名前はポルト・ワインで日本でも有名です。ポルト大聖堂へクレデンシャルをもらいに行くついでに、このカテドラルのアズレージョ(ポルトガルの伝統的な装飾タイル)を鑑賞しましょう。ポルトを過ぎるとカミーノは海外沿いの道を歩くことになります。
④ トゥイ(Tui)
このトゥイはミーニョ川をはさんだスペイン国境にある街。この街からカミーノはスペイン国内に入ります。ここからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでは、山越えの道が続きます。ゴールまでもうひと頑張りしましょう。
巡礼中の注意事項。盗難には注意しよう
宿での注意点
巡礼の間は、途中の村々などに「アルベルゲ」と呼ばれる巡礼者用の格安な宿で眠ることができます。
費用は10ユーロから20ユーロぐらいが相場。
ドミトリー形式の宿で、キッチンがついているところがほとんどです。
しかし、悲しいことに、夜に泊まったアルベルゲで現金をはじめとする貴重品が盗難にあった、という話もよく聞きます。貴重品の扱いには気をつけましょう。
カミーノは長丁場。疲労やけがなどで歩くことができなくなる場合もあります。そのようなときには迷わず、バスや列車を使いましょう。
ベストシーズンは春から秋にかけて
ちなみにカミーノのベストシーズンは春から秋にかけて。
冬と真夏は、山越えがあるので、避けたほうが無難でしょう。
また、もしもスペイン国内に友人や知り合いがいる人は、カミーノのスタート前に、そうした友人たちと連絡を取っておくことをお勧めします。
また、意外とカミーノの前半戦では、夜に悪夢にうなされる人が少なくないようです。
おそらく体がカミーノを歩くための生活のリズムに慣れていないためにおこる現象だとは思いますが、食事と休養は毎日しっかりとりましょう。
巡礼費用の目安は1ヶ月750ユーロ〜
ちなみにカミーノの費用は1か月分の宿代と食費を合わせると、約25~30ユーロ/1日ほど。
1か月で750~900ユーロほどの費用になります。
もし、途中でバスや電車を利用した費用なども合わせると、1000~1500ユーロ程(日本・スペイン往復の飛行機代は除く)を準備したら、十分だと思われます。
そして、カミーノを始める前には、日本でけがや疾病をカバーできる旅行保険に必ず加入しておきましょう。
それでは、スペインでの長い旅、どうか楽しんでくださいね。
いってらっしゃい!
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