日本人がインドネシアの永住権を取得できるかといえば、実はそういった制度はありません。
ただ、これは厳密な意味で永住権と呼ばれるものがないだけで、実質的にそれに近い許可はあります。
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インドネシアの実質永住権・KITAPとは
インドネシアに長期滞在する場合、外国人はKITASと呼ばれる、暫定居住許可証を取得しなければなりません。
このKITASは、1年毎に4回の延長が可能で、つまり5年間の滞在ができます。(無期限の許可証もあるようですが、この情報については最後の章でお伝えします)
その後、正当な滞在許可証を所持して5年間継続居住したということで、KITAPと呼ばれる5年間有効の永久滞在許可証を申請する資格が得られるのです。
5年毎の延長手続きが必要であるものの、このKITAPの取得がインドネシアでの外国人の永住権取得に近い許可になります。
KITASからKITAPへの切り替えは、労働ビザ、配偶者ビザ、リタイヤメントビザで滞在している外国人に対し適用されますが、労働ビザの場合、あまりメリットがなく、スポンサーである会社の意向でKITAPに切り替えない場合も多いそうです。
※KITASを延長しながら5年滞在した後、KITAPに切り替えない場合はKITASを初めから申請し、取得することになります。
今回は、配偶者ビザでインドネシアに滞在している筆者が2015年にKITAPへの切り替えを行った際の経験および、2017年現在でのインドネシア入国管理局のホームページの記載に基づき、配偶者ビザで滞在している日本人の、実質的なインドネシアの永住権であるKITAPの申請方法について説明します。
リタイアメントビザについては後程記述します。
申請に3カ月程度かかるので、日程に余裕をもって手続きを行いましょう。断食月であるラマダン中や、レバランや年末年始の長期休暇前は、明らかに対応が後回しになったりします。
とにかくインドネシアでは頻繁にルールが変わります。また、非常に腹が立つことですが、対応する窓口の係員や気分次第で必要な書類や数量が変わったりします。インドネシアの最新のビザ要件は、変更されることもありますので、申請前に最新の情報をチェックすることを忘れないでください。
配偶者ビザ取得者のKITASからKITAPへの変更手続き
永住権KITAP取得までにまずしておかなければならいこと
- 日本から、3カ月以内の戸籍謄本を送ってもらう。
戸籍謄本を入手したら、在日本大使館または日本領事館に行き、婚姻証明書を発行してもらう。
(2017年現在、手数料はRp.150,000です) - 「KK」(Kartu Keluarga、家族証明書)と「Buku Nikah」(結婚証明書)および配偶者の「KTP」(身分証明書)のコピーを持って村役場(Kantor Kelurahan)に行き、「Surat Domisili」(住所証明書)を発行してもらう。スムーズに行けば同日中に発行してもらえますが、担当者不在や停電などで、翌日以降になる場合もあります。
費用は無料らしいのですが、チップとしてRp.50,000ほど渡しておくといいと思います。Surat Domisiliは運転免許証の発行や更新にも必要ですが、有効期間が3カ月と短く、その都度発行しに行かなければならないため、係員と顔見知りになっておくと後々の手続きがスムーズにいきます。 - 写真を撮りに行く。背景は赤です。
入国管理局のホームページでは3×4センチを4枚と書いてありますが、念のため2×3センチ、4×6センチのものも複数枚用意しておくと安心です。 - 配偶者に「Surat Permintaan dan Jaminan」(スポンサーレター)を作成してもらい、Rp6,000の印紙を貼る。
- 「Surat Pernyataan Imigrasi」(申請における自身の身分証明および誓約書類)を作成してRp.6,000の印紙を貼る。
- 「Surat Permohonan」(KITAPの申請書)を作成する。
上記3点の書類の作成例はこちら:
上記すべての書類のコピーを各5枚ほど取っておく。
以上のことが済んだら、イミグレーションに行く準備を始めます。
必要書類
以下の書類を揃えます。
- 上記の「Surat Permintaan Jaminan」に印紙を貼ったオリジナルとそのコピー
- 上記の「Surat Pernyataan Imigrasi」に印紙を貼ったオリジナルとそのコピー
- 上記の「Surat Permohonan」のオリジナルとそのコピー
- 上記の「婚姻証明書」のオリジナルとそのコピー
- 上記の「Surat Domisili」のオリジナルとそのコピー
- 残存期間が1年6か月以上のパスポートのオリジナルと、そのコピー(写真のページとビザのページ)
- KITASのオリジナルと、そのコピー
- 配偶者のKTPのオリジナルとそのコピー
- KK(家族証明書)のオリジナルとそのコピー
- Buku Nikah(結婚証明書)のオリジナルとそのコピー
その他、予備の印紙、ボールペン、ホッチキス等を持って、イミグレーションに行きます。
イミグレーション(Kantor Imigrasi)に行きます。
窓口で申請用紙をもらえるので、すべてに記入して上記の書類と一緒に提出し、無事受理されたらその日の手続きは終わり。
この日提出した書類をもとに、イミグレーションに書類を作成してもらうのですが、帰るまえに「次はいつ来ればいいか」を確認しておきましょう。
中には、催促しないとなかなかやってくれない場合もあるので、担当してくれた係員の名前と携帯電話の番号を聞いておくと安心です。
イミグレーション職員による居住確認(家庭訪問)
申請書類を提出して数日中に、イミグレーション職員による家庭訪問があります。
これは、一時的な滞在許可であるKITASの申請にはない審査なのですが、申請された住所にちゃんと住んでいるのか、ちゃんと婚姻しているのか等、偽装結婚や虚偽の申請をしていないかを確認するために行われるようです。
このため、イミグレーションに提出する住所と現住所はきちんと一致している必要があります。
実際に我が家に来た際には、インドネシアでの居住歴や仕事をしていないかの確認等、幾つかの質問を受け、住所の番地の前で家族と一緒に証拠写真を撮られました。
カンウィル(Kantor Wilaya)と呼ばれる、州地方局へ行く
後日、イミグレーションが発行してくれた書類を持って、カンウィルに行きます。
ここでの手続きは、文書の提出のみなので、申請者本人が行かなくてもかまいません。
上記と同じく担当係員の名前と電話番号を確認し、数日後、カンウィルの発行する文書を受け取りに行きます。
これも、代理でも大丈夫です。
ジャカルタの入国管理総局(Direktorat Jendral Imigrasi Jakarta )で許可証明書発行
Jl. H.R. Rasuna Saidにある、ジャカルタ入国管理総局に、上記5にてカンウィルで受け取った書類を提出し、申請者が当該の所在地に居住するための許可を得ます。
許可証明書が発行されるまで、およそ5日程度かかります。
ここでの手続きも、本人でなくともかまいません。
地方在住の人などは、この手続きのためだけにわざわざジャカルタに行って数日滞在するのはあまり現実的ではないので、エージェントに頼むのがいいと思います。
私の場合は、ジャカルタ在住の友人に代行を頼みました。
カンウィルの書類を郵送し、申請と受け取りを代行してもらい、再度送付してもらって、この間約10日間。Rp.500,000ほどのお礼をしました。
再度、イミグレーションへ
ジャカルタの入国管理総局で発行された書類を持って、再度一番最初に行ったイミグレーションオフィスへ行きます。
ここで、指紋をとり、写真撮影がありますので、身だしなみを整えていきましょう。
ここで、KITAPの発行手数料を支払います。
また、2年間の再入国許可(re-entry permit)の手続きをすることが義務付けられているので、その分の手数料を払います。
2017年現在、KITAPの発行手数料はRp.3,500,000です。
なお、数年前からe-KITAP(電子版KITAP)の発行が進められていますが、こちらの手数料はRp.3,700,000です。
また、2年間有効の再入国許可の手数料がRp.1,750,000ですので、この合計金額を支払います。
領収書を受け取ったら、KITASおよび再入国許可のスタンプを押されたパスポートを受け取って、めでたく終了です。
インドネシア永住権取得の正規発行手数料を把握しよう
以上が、KITASからKITAPへ変更するための手続きです。
本当に煩雑で時間がかかるのがお分かりいただけると思います。
インドネシア語も必須となってきます。
語学に自信がない場合は配偶者に付き添ってもらうのが一番ですが、すべての役所は平日しか開いていないため、配偶者に仕事がある場合はまた大変です。
自分で手続きをするメリットはとにかく安く済むということですが、正規の発行手数料を把握しておかないと、ふっかけられることも多々ありますので、イミグレーションのホームページ等を確認し、最新の料金をしっかり把握しておきましょう。
私は最初、「特急でやってやるからRp.40,000,000(約33万円)払え」、と言われ、唖然として断ると、あからさまに対応する態度が悪くなったりと、かなり嫌な思いをしました。
現在は勤務態度もだいぶ改善されてきているようですが、多少費用はかかっても、エージェントに代行を依頼する方が圧倒的に楽で、ストレスも少なくて済むといえるでしょう。
なお、リタイアメントビザでの滞在の場合は、スポンサーがビザを取得時の現地身元保証人(インドネシア政府より認可を受けた旅行代理店)になっており、スポンサーレターもそこからレターヘッドがある用紙を使用し、社印を押したものを発行してもらう必要があるので、ビザ取得時の仲介業者に連絡しましょう。
永住権取得のまとめ
現在確認できているインドネシアでの永住方法は、上記の方法でKITAPを取得し、5年ごとにイミグレーションに出頭するという方法になります。
しかし、バリ島ではRp.60,000,000(約50万円)で、有効期限がなく更新の必要がないKITAPアンリミテッドが取得できるという情報がインターネットに散見されます。
また、今回参考にしたTangerang(タンゲラン)県のイミグレーションのホームページにも、KITAP(期限なし):Rp. 10,000,000 (約8万3千円)との記載があります。
もしこの期限なしのKITAPが発行されているならば、これが実質上の永住権ということになりますが、法律等を調べてみると、確かに2014年に期限なしのKITAPの発行に関する告知がでていますが、ほとんど情報が出回っておらず、実際に有効であるのかどうか真偽が不明な状態です。(インドネシアでは一度決定されてそれが覆ることもよくあります。)
インドネシアへの永住をお考えの際は、こまめに最新の情報を収集することをお勧めします。
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