シンガポールで先輩がこっそり教えてくれたCPFにまつわるお金のぶっちゃけトークが、シンガポール永住権(PR)取得を躊躇していた私の背中を一気に押してくれました。
同じ職場で同じような給与水準で、就労ビザ(EP・エンプロイメントパス)保持者A子先輩とPR保持者B子先輩の総所得がどう違うか、ここでは実際に試算してみたいと思います。
今回は、シンガポール永住権を取得した現地永住者から、PR保持者だけが活用できるCPFというお金にまつわる話をお伝えしたいと思います。
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シンガポールのCPFとは
晴れてシンガポール永住権(Permanent Resident, PR )を取得すると、CPF口座が開設されます。
CPFとは、The Central Provident Fundの略で、「中央積立基金」と訳されることが多いです。
CPFのウェブサイト(参照1)によると、CPFとは「総合的な社会保障システムで、勤労するシンガポール人及びPR保持者が退職のための資金形成をするための口座である。このCPFは、医療費、住宅購入費、家族のための保障、投資のためにも使うことができる」と定義されています。
CPFを日本語で説明した優秀なウェブサイトがいくつもありますので、検索していただければ理解も深まるでしょう。
(参照2)(参照3)(参照4)
CPFは、55歳までは3つの口座に分かれています。(参照1)
- Ordinary Account (OA)– 住宅購入費、投資、教育費
- Special Account (SA)– 老後の年金、定年退職後の金融商品のための投資
- Medisave Accounts (MA) – 入院費、医療保険
- Retirement Account (RA) –55歳になると、この4つ目の口座が自動的に追加
CPFの金利
次に、CPFの口座の最新の金利を見てみましょう。(参照5)
2018年1月1日~3月31日の金利は、以下の通りです。
- Ordinary Account 3.50%
- Special & Medisave Accounts 5.00%
- Retirement Account 5.00%
ちなみに、シンガポール最大大手のDBSの金利は以下の通り。(参照6)
DBS SAVINGS(普通預金) 0.05~0.1%
銀行に預けておくより、はるかに高い利率で、CPFは運用されていることが分かります。
CPFへの積立は55歳以下で、給与の20%が被雇用者の負担、17%が雇用者の負担となります。
つまり、合計37%の金額が毎月CPF口座に積み立てられるわけです。
55歳以上では、被雇用者の年齢に応じて積立金額は軽減されます。
そして、これらの積立金は、各口座の金利によって、複利で運用されていくのです。
複利とは「運用において利息に対する利息がつく」ことで、単利と比べると、その利息が、高速でまるで雪だるまのように大きくなります。(参照7)
永住権保持者と就労ビザ保持者の大きな違い。CPFの実際とは
それでは、実際に、試算をしてみましょう。
プライベートセクターで働くEP保持者日本人女性A子さん(35歳独身)とPR保持者B子さん(35歳独身)の
- 月々の給与が5,000ドル
- ボーナスが2か月分(年収70,000ドル)
と仮定します。
計算は、 CPFのウェブサイトの「CPF Contribution Calculator」を使います。(参照8)
EP保持者であるA子さんは5,000ドルが、指定した銀行口座に振り込まれますが、PR保持者のB子さんの場合は最終的に以下のようになります。
・B子さんの給与内訳
5,000-1,000(CPF被雇用者負担20%)=4,000ドル(手取り)
5,000×17%=850ドル(CPF雇用主負担17%)
1,000+850=1,850ドル(CPF口座へ)
給与総額:5,000+850=5,850
B子さんは、手取りが5,000ドルから最終的に4,000ドルになるため、かなりの生活水準の見直しが必要ですが、実質17%の所得アップとなります。1年後に、二人の年収を比較すると以下の通りになります。
A子さん
5,000×14=70,000ドル
B子さん
5,850×14=81,900ドル
およそ12,000ドルの違いが出ました。
PR取得直後にいきなり20%がCPF口座に振り込まれるわけではなく、2年をかけて、段階的に被雇用者負担が20%まで増えていくので、実際には3年目にこのような違いになると言っていいでしょうか。
CPFの実際(5年後)
次に、5年後にどのような違いが出るのか、試算してみたいと思います。
PR保持者のB子さんのCPFの内訳を見てみます。
B子さんの属性では、1,850ドルのCPF拠出金は、以下のような割合で3つの口座に振り分けられます。(参照9)
- Ordinary Account (OA)– 23%(5,000×23%=1,150ドル)
- Special Account (SA)– 6%(5,000×6%=300ドル)
- Medisave Accounts (MA) –8%(5,000×8%=400ドル)
そして、上記が、Ordinary Accountで3.50%、Special & Medisave Accountsで5.00%の複利によって、運用されていきます。
計算は、CPFのウェブサイトにちょうどいいものがないので、外部のサイトを使って試算したところ、以下のようになりました。(参照10)
- Ordinary Account (OA) 69,000ドル
- Special Account (SA) 18,000ドル
- Medisave Accounts (MA) 24,000ドル
合計111,000ドル(910万円)※1ドル=82円で計算
先輩が教えてくれたぶっちゃけトークでは、日本円で8桁の違いが出たとのことでした。
先輩の計算した当時の利率が最新の利率より良かったのだと思います。しかし、およそ8桁というのは、なるほど、そのとおりになりました。
そして、実際に私がCPF口座を持つようになって5年が経ちました。先輩の話は、ウソではありませんでした。
CPFのメリット、デメリット
CPFの経済的なメリットはもう一つあります。
メリット
CPFの積立金は控除が受けられるので、所得税がお安くなるのです。
税務局のウェブサイトにある「Tax Calculator」を使って試算してみました。(参照11)
EP保持者のA子さんの年間の所得税は、2,650ドルとなりました。
それに対し、PR保持者のB子さんは、CPF被雇用者負担分を控除することができました。
結果、B子さんの所得税は、1,670ドルとなり、その差はおよそ1,000ドルという結果となりました。
デメリット
CPFのデメリットにも目を向けてみましょう。
基本的に、CPF口座に入金されたお金は、決まった用途でしか引き出せないので、いくら高速で雪だるま式に増えていっても、触ることができません。
また、投資に明るい方で、CPFでの運用よりお金を殖やすことができる方には、強制的にお金を差し押さえられていると感じる方もいるでしょう。
そして、シンガポールの福祉は自助努力が基本のため、収入がなくなれば、CPF口座には積み立て金が入金されない事態が起こるということです。
弱者になった場合、シンガポールの福祉システムは、非常に冷酷だと言えるでしょう。
シンガポール永住権保持最大のメリット・CPFを解説まとめ
本記事では、CPFの基本情報と、EP保持者A子さんとPR保持者B子さんの総所得が5年後にどう違うか、試算してきましたが、まとめると以下のようになります。
その差は、115,900ドル(950万円)という結果になりました。
ビザ | 年収 | CPF | 所得税 | 総所得 | |
---|---|---|---|---|---|
A子 | EP | 70,000 | なし | 13,250 | 56,750 |
B子 | PR | 70,000 | 111,000ドル | 8,350 | 172,650 |
PR取得が著しく困難になっている昨今ですが、経済的メリットは計り知れないものがあります。
やはりPRは取得すべき、ですね。
なお、本試算は、私が個人的にしたものですので、真偽のほどは、CPFウェブサイトでご確認いただければと思います。
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