高福祉国家として知られるノルウェー。
国連開発計画(UNDP)が毎年発表する国民の豊かさを示す人間開発指数(HDI)では常に上位に君臨しています。
この順位は国民の平均寿命、所得、生活水準、教育水準、性の平等、政治的権利などから算出されているもの。
国民の幸福度も高いノルウェーですが、税金はとても高いのです。
ここでは、ノルウェー在住12年の筆者がノルウェーの税金事情と国民の本音をお伝えいたします。
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ノルウェー・税金の種類
ノルウェーの税金は
- 直接税
- 間接税
に分けられます。
直接税とは所得税、国民健康保険料、富裕税、市町村税、固定資産税、自動車税のことです。
こちらは給与から源泉徴収される仕組みになっています。
確定申告を行う春には、前年度末の最終的な金額に対する税金と、既に源泉徴収された税金の差額を計算し、不足分がある場合には国や市町村へと支払います。
支払い超過分があるケースには払い戻してもらうことになります。
直接税
①所得税(Intektsskatt)
給与所得から基礎控除額や支払利息などの控除可能額を差し引いた課税基礎額に対してかかる税金で、通常22%(国税と地方税)が適用されます。
北ノルウェーの住民には軽減税率が適用されます。
また、2019年より新たに導入された制度として外国人短期労働者の総収入の割合(源泉徴収税)は25%に決められました。(ヨーロッパ諸国から短期の出稼ぎ労働者が多く来ているノルウェーに導入された新たなシステムです。)
②所得税の累進課税部分(Trinnskatt)
給与所得の額に応じて税率が異なる税金が加わります。
日本の制度と似ているシステムで、低所得者と高所得者に税率の差を設けており、ノルウェーではこれは4段階に分けられています。
税率は1.9〜16.2%です。
なお、174,500クローネ(約2,443,000円)以下の所得には課税されません。
③国民健康保険料(Trygdeavgift)
これは国民保険、国民年金に該当するもので、税率は給与所得に対して8.2%です。
年金所得、事業所得はそれぞれ、5.1%、11.4%です。
④富裕税(Formueskatt)
資産に対してかかる税金で、国税(最高0.15%)、地方税(最高0.7%)のことです。
資産である不動産、預貯金、自動車などの評価額が課税対象になります。
借金をすることで、この税金を回避することができます。借金をする必要のない経済的に余裕のあるノルウェー人が、税金対策としてあえてローンを組んでいるというのは割と普通のお話です。
不動産の評価額は、居住用であれば25%と優遇されており、対象の物件がセカンドハウスあるいは借家の場合は90%となります。
別荘を所有しているノルウェー人が多いのですが、別荘を居住目的で所有している場合と休暇目的で所有している場合かで税額が大きく異なります。
休暇時に使うために別荘を所有している場合には不動産の評価額は最大で30%で計算されますが、居住目的で所有している場合にはセカンドハウスと同じ扱いになり、不動産の評価額は90%で計算されます。
いずれにしても、別荘の価値の0.85%に当たる額を税金として納めます。これは富裕層が居住目的の家を買い占めるのを避けるための対策です。
⑤自動車税(årsavgift)
普通ガソリン車であれば年間2820クローネ(約36,660円)です。
この税金は、自動車保険を支払う際に請求書に含まれます。バイクは年間1960クローネ(約25,480円)です。
地球環境に好ましくないガスを排出するとされるディーゼル車は年間3290クローネ(約42,770円)、電気自動車はとても優遇されており年間455クローネ(約5,915円)となっています。
年間の自動車税はディーゼル車と電気自動車では約36,855円も差がありますから、ノルウェーで電気自動車の所持率が伸びているのもうなづけます。
⑥市町村税(kommunalavgift)
市町村税は居住する地域に納める税金です。
税金額は市町村によって大きく異なります。例えば、一番市町村税が安いSørreisa県では7315クローネ(約95,095円)なのに対し、一番高いNedre Eiker県では23086クローネ(約300,118円)となっています。
首都のオスロ市では10709クローネ(約139,217円)となっています。
これには、ごみ処理、下水道処理、煙突の定期点検(自治体の方が自宅に点検に来る費用)、水道代(基本的に使い放題)、固定資産税などが含まれています。
各市町村の税額はこちらのサイトを参考にしました。
https://www.smartepenger.no/skatt/1117-kommunale-avgifter-alfabetisk
間接税
間接税とは物品税(消費税)のことです。
①物品税(merverdiavgift)
いわゆる消費税にあたるもので軽減税率を採用しています。
- 普通の物品が25%
- 生鮮食料品などの生活必需品が15%
- 交通機関、宿泊、印刷物などの税率は12%
と、3段階にわかれています。
②関税(toll + merverdiavgift)
海外から品物を送ってもらう時やオンライン通販などで海外から商品を買うときに気を付けなくてはいけないのが関税です。
350クローネ以上のものには、関税と物品税がかかり、安く買ったと思っても、後から追加の請求があるので注意が必要です。
こちらのサイトで関税がいくらになるのかを具体的に計算することができます。(英語)
https://www.toll.no/en/
<日本から何か送ってもらうときにも注意が必要>
筆者も過去に親戚が送ってくれたプレゼントに高い税金を請求されたり、オンライン通販で安く買えたと思ったら後から関税を請求されたという苦い経験があります。
税金を納める前にチェックすべきこと
所得税と富裕税については、様々な控除が適用されますので必ずチェックしましょう。
例えば、ローン、BSU(若者向け預貯金)、保育費、労働組合の会費、長距離の通勤費などが挙げられます。
日本で収入がある方は日本で支払った税金は控除できる取り決めになっています。(税金を支払った証明書を提出する必要があります)
前年度よりも収入がぐっと増えたような場合には税金も大きくなる場合がありますので、必ず細かな部分まで確認し、控除できる経費がある場合には調整するようにしましょう。
ノルウェーの税金の使い道は?
あまり知られていませんが、ノルウェーは原油輸出国です。
このオイルマネーと税金を合わせたものが国民へと還元される仕組みになっています。
医療費、教育費、出産費、育給、介護費はこちらの税金とオイルマネーで補われています。
ノルウェーの医療費と歯科費は18歳までは完全に無料です。それ以降は医療費は年額の決められた自己負担額を超えると無料です。(診療、入院、手術、薬代がそれに含まれます)
18歳以上の歯科費に関しては完全に自己負担です。
これに関してはノルウェー人も不満に思っている人が多いのですが、現時点では税金による補助は一切ありません。
教育に関しては幼稚園(保育園)費への補助、小学校、中学校、高校、大学、大学院までの教育費は無料、出産に関わる診療、入院、出産費は無料です。(自然分娩、無痛分娩、帝王切開など出産方法は問わず、全額国から費用が支給されます)
年金や老人への地域サポート(訪問看護、家事支援、電動車いすや特別ベッドの貸し出し、老人ホームへの補助金)にも税金は使われています。
ノルウェーでは家族が自宅で老人をお世話する文化ではありません。
自立できるうちは訪問看護や家事支援で生活し、それが難しくなると老人ホームへ入所します。
ノルウェーは福祉が充実しているが、それは国民が支払う高い税金とオイルマネーで補わる
ノルウェーの税金は高いですが、控除可能なものやローンを残すなど様々な方法で税額を抑えることは可能です。
妊娠中の医療費、出産費用、育児休暇費用、子供への医療費や歯科費、育児手当てなどは子供を持つ若い世代にとって大きな経済的負担となりますが、それらは国が背負ってくれるのです。
お金持ちでなくても子供を持つことによる経済負担や老後の心配をしなくてもよい社会は、安心感がありますよね。
税金は高くとも、国民にしっかりと還元されているノルウェーでは国民の幸福度や満足度はとても高いのです。
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