イタリア年金制度(INPS)の加入は義務。駐在員は社会保険料を二重に負担

イタリアの年金制度はINPSへの加入が義務。駐在員は社会保険料を二重に負担

日本人がイタリアで仕事を始めると、必ず納めなくてはならないのが年金保険料です。

イタリアは政権が変わるごとに年金制度も変わるとも言われ、イタリア人でも現在の年金制度についてすぐに答えられる人は少ないです。

ここでは日本人が移住した際に必要となってくる年金制度のところを中心に、分かりやすく簡単に説明していきます。

※この記事は2020年5月時点のものです。常に最新情報を集めるように心がけてください。

公的年金制度はイタリアで働く全ての人はINPSへの加入が義務

イタリアの公的年金制度は、Istituto nazionale della previdenza sociale、通称でINPS(インプス)と呼ばれる機関によって運営されています。

INPSは年金だけでなく、失業保険などその他の社会保障給付もしている機関です。

例えば、コロナウィルスで休業を余儀なくされた人は、INPSに給付金を申請し受け取りました。

INPSホームページ:https://www.inps.it/nuovoportaleinps/default.aspx

イタリアで働く=INPSへ加入する

イタリアで働く全ての人はINPSへの加入が義務となっています。

被用者でも自営業者でも、INPSに加入して年金保険料を納めます。

被用者は毎月の給与より自動的に差し引かれます。

保険料率は33%とかなり高く、そのうち23.81%を雇用者が、残りの9.1%被雇用者が負担します。

自営業者は、年に4回に分けて納付します。納付期限は、5月16日、8月20日、11月16日、翌年の2月16日です。

自営業者の保険料率は、年齢、居住地、所得、他の保険制度への加入状況などに応じて決まります。

大体20-30%くらいの保険料率です。

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年金の最低納付期間は20年間、受給開始年齢は2021年からは67歳から

最低の納付期間は20年間で、受給開始年齢は66歳ですが、2021年からは67歳からに引き上げ予定です。

あまり知られていませんが、最低納付期間が5年間でも受け取れる年金もあります。

ただしこの場合の年金受給開始連令は遅くなり、71歳からとなっています。

この年齢は平均余命と連動して変更になる可能性があります。

新しい制度「クオータ100」

2019年4月からは、「クオータ100」(Quota100)と呼ばれる年金を受け取れる年齢を引き下げる政策がスタートしました。

38年以上の保険料納付期間があれば、62歳から年金を受け取ることができます。

勤続年数と年齢を足して100になれば年金を受け取れるという仕組みです。

この政策は期間限定になると思われますが、現在のところいつまで続くかはっきりしたことは分かっていません。

またこのようにイタリアには暫定的な年金政策が取られる傾向があります。

年金受給開始年齢の繰り上げ

イタリアでも繰り上げて年金を受け取ることができます。

その場合の条件は、男性42年10ヶ月、女性41年10ヶ月以上の保険納付期間があることです。

イタリアの年金受給額は?

2019年にINPSから発表された統計では、次のようになっています。

平均受給月額: 1,196.98ユーロ

イタリアでは年13回に渡って年金が支給されるので、年受給額はこの数字の13倍になります。

しかしながら、61%の受給者は750ユーロを下回る金額しか受け取れていません。

またこの中で女性の占める割合は高く、74.5%にも上り、特に北部では男性と女性の格差があります。

北部イタリアの平均受給金額は1,283.52ユーロですが、女性受給額の平均は男性の半分ほどになっています。

イタリアでは年金だけに頼って暮らしていける人の数は少ないです。

参考サイト:https://www.inps.it/nuovoportaleinps/default.aspx?itemdir=52542

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日本とイタリアの社会保障協定に注意!駐在員は社会保険料を二重に負担

社会保障協定とは?

社会保障協定は日本人が海外で働く場合に、日本と海外で二重に保険料を負担するのを避けるため、両国の間で調整する制度です。

また、日本と海外での年金加入期間を通算して、年金受給に必要な最低加入期間の要件を満たしやすくします。

日本はすでに他の多くのヨーロッパの国と締結して発効済みとなっていて、保険料が二重負担にならず、年金加入期間も通算できるようになっています。

日本とイタリアの社会保障協定の現状は?

しかし、日本はイタリアと2009年に社会保障協定に署名しましたが、2020年5月時点もこの協定は発効していません。

日本とイタリア間の話し合いは続けられています。

最新の社会保障協定の状況は、日本年金機構のホームページでも確認できます。

・駐在員として働く場合

現在、日本の会社からイタリアに駐在員として派遣される場合は、日本とイタリアの両方の国の社会保険料を二重に負担している状況です。

協定が発効されれば、日本の会社から5年未満の任期で派遣される人は、イタリアの社会保険制度(年金及び雇用保険)への加入は免除され、日本の社会保険制度のみの加入で済むようなります。

・現地採用やフリーランスで働く場合

イタリアで現地採用されたりフリーランスとして働く場合には、イタリアの年金保険料を納めます。

日本で海外転出届を出してイタリアに移住していれば、日本の国民年金への加入は義務ではないので、二重負担にはなりません。

日本で海外転出届を出す際に、事前に税務署で手続きをすれば、もちろん任意で日本の国民年金保険には加入し続けられます。

海外転出届を出してイタリアに滞在している期間は、日本の国民年金に任意で加入していなくても、合算対象期間として年金加入期間には含まれます。

イタリアで働かない人は年金保険料を納める義務はなし

イタリアで仕事をしていない人は、年金保険料を納める義務はありません。

ただしINPSにも加入しないので、将来受け取れる年金もありません。

専業主婦の年金は?

日本の社会保障制度では、会社員の配偶者として扶養されている人は、保険料を自分で納めていなくても年金を受給することができます。

規定内の年収であればパートタイムの仕事をしても、扶養家族として保険料を納めずに将来年金を受け取ることができます。

イタリアの年金制度には、このような専業主婦への特別な措置はないことを覚えておいて下さい。

イタリアのその他3つの年金制度について

これまで公的年金制度について説明してきましたが、参考までにその他の年金制度も少し紹介しておきます。

1)退職一時金制度

被雇用者として働いている人は、毎月の給与から退職一時金として自動的に積み立てられます。

Trattamento di fine rapporto、略してTFRと呼ばれるこの制度は、退職するときにまとめて受け取るだけでなく、年金のように退職後に毎月少しずつ受け取ることもでき、実質的には日本の企業年金制度のようになっています。

2)専門資格職のための年金制度

イタリアでは専門資格職とされる仕事についている人は、INPSとは別のそれぞれの年金基金制度に加入します。

具体的には次のような職種です。

弁護士、会計士、開業医、歯科医、薬剤師、獣医、技術者、建築家、測量技師、経済学者、公証人、税関職員、農業被用者、科学者 など

3)私的年金制度

もちろんイタリアにも、銀行や保険会社が運営する私的年金があります。

公的年金だけでは心配なので、退職一時金制度のない自営業者などを中心に、私的年金にも任意で加入している人は少なくありません。

イタリアの年金制度のまとめ

移住を考えているときに、年金のことまで頭が回らないのは現状だと思います。

そして移住して生活を始めると、まず先にやらなくてはいけない手続きが山のようにあり、ますます年金のことを考える時間は無くなります。

実際に私もそうでした。しかし、必ずやってくるのが老後の生活です。

そのときに自分が日本にいてもイタリアにいても困らないように、ぜひ時間を見つけて日本とイタリアの年金のことについても考えてみて下さいね。

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