年金受給資格をクリアすれば、国籍に関係なくオーストリアの年金をもらうことができます(2020年9月時点)。
ここでオーストリアの年金制度について把握し、オーストリアでの生活プランにぜひお役立てください。
※2020年9月レート 1ユーロ=125円
2つの年金制度:法定年金保険と任意年金保険
オーストリアでは年金をPension=ペンシィオンといいます。
オーストリアの年金制度は大きく分けて法定年金保険と任意年金保険の2つに分けられます。
日本にあるような国民年金は存在しません。
◆法定年金保険(Pflicht Pensionversicherung)
法定年金保険は日本でいう厚生年金にあたります。
つまり雇用者となった時点で強制法定保険加入の義務となり、その内訳に年金保険も入ります。
※強制法定保険については保険の記事を参照してください。
◆任意年金保険(Freiwillige Pensionversicherung)
任意年金保険は、法定年金とは別もしくは追加で加入する保険で、数種類あります。
加入には別途拠出金が必要です。
例えば、配偶者もしくはパートナーのみが法定年金保険の拠金をしていて、あなたは専業主婦/夫で年金拠出金はないとします。
そうするとあなたの分としての年金はありません。
そういった場合に将来不安を感じるようでしたら、収入に依存しない拠出金を通じて任意年金保険に加入すると、その分の年金受給資格が得られます。
◆その他
任意高等保険・自己保険・継続保険は、法定年金保険もしくは任意年金保険の加入の上で、さらに追加で加入する保険です。
下記で簡単にその概要をご紹介します。
保険の種類 | 保険の概要 |
---|---|
任意高等保険(Höheversicherung) | 任意の追加保険で被保険者が将来の年金受給額を増やすための任意保険 |
継続保険(Weiterversicherung) | 任意で年金保険の数ヶ月分を取得するための任意保険 |
自己保険(Selbstversicherung) | 障害児の介護などのため一般社会保険法(ASVG)に基づく任意保険 |
法定年金保険(Pflichtpensionversicherung)について
任意年金保険に関しては、かなり多岐にわたる状況や事情と個人のそれぞれの価値観で変わりますので、ここからは主に法定年金保険について解説していきます。
法定年金保険は、オーストリアで就労するにあたって必ず関わる制度なのでその概要を把握することが大切です。
◆法定年金保険の義務
オーストリアでは、雇用の開始と同時に年金保険の拠金が義務づけられています。
オーストリアはすべての雇用者を対象とする強制保険システムがあり、この保険内に法定年金保険も含まれているのです。
ただし、月収が460.66ユーロ(約57,600円)より下回る場合はこれに該当しません。
◆年金受給資格の条件
年金受給資格があるのは最低通算で180ヶ月=15年の拠出金が必要です。
年金拠出期間は合算になりますので、同一の職場に限らず、職種・職場問わずに通算することができます。
この条件を満たさない場合はオーストリアでは年金受給資格はありません。
逆にこの条件をクリアすれば、国籍を問わず年金受給資格を得られるのです。
ちなみにオーストリアでは大学就学期間と徴兵制度の期間が年金拠出期間にカウントされます。
徴兵制度は、18歳になる男性に対し、10ヶ月前後の間軍隊もしくは社会福祉活動につくことが義務付けられている制度です。
社会保障協定とは?
社会保障協定とはどのような協定か
社会保障協定とは、自国の年金加入期間と国外居住国の年金加入期間を相互に通算できるという協定です。
この協定が結ばれているか否かで、オーストリア年金受給資格をクリアするハードルは大いに違ってきます。
ですが残念ながら、日本とオーストリアは現段階(2020年9月)で協議準備中となっており、協定は結ばれていません。
近年中に結ばれることを期待しましょう。
ちなみにオーストリアと協定が結ばれている国は以下を参照ください。
参照サイト:oesterreich.gv.at
https://www.oesterreich.gv.at/themen/arbeit_und_pension/pension/Seite.270218.html
社会保障協定の年金受給への影響
ではこの社会保障協定が年金受給にどのように影響するか解説していきましょう。
雇用主がオーストリア内の企業か外資企業かによって雇用形態が変わりますし、その協定自体も今後改訂されることも十分にあり得ますので、非常に複雑です。
現時点では、オーストリア内の企業で雇用された場合は、その就労期間は日本の年金システムとは全く関係のないものとなり、逆もしかり。
つまり、オーストリア就労期間は日本の年金も国民年金を収め続けるか、渡航就労期間中の免除手続きをして帰国後にまた引き続き年金を納めていく形になります。
例えば10年の期間オーストリア内の企業で就労し、その後日本へ本帰国、日本でそのまま定年まで就労した場合、オーストリアの年金受給資格はありません。
さらに現時点ではオーストリアで拠金していた年金保険は返納もされないのです。
ですが上記の例で日本へ本帰国せず、その後オーストリアと社会保障協定を結んでいる国へ移住3年間就労してその国の年金拠金をしたあと、またオーストリアに戻り3年就労すれば通算で16年になります。
これですと180ヶ月以上の受給資格条件をクリアでき、オーストリア国籍でなくても年金を受給することが可能になるのです。
受給できる8種類の法定年金とは
- 老後年金(Alterpension)
- 早期退職年金(Vorzeitige Alterspension bei länger Versicherungsdauer)
- 廊下年金(Korridorpension)
- 重労働年金(Schwerarbeitspension)
- 障害/傷害年金(Berufsunfähigkeits,Invaliditäts und rwerbsunfähigkeitspension)
- 寡婦/夫年金/遺族年金(witwenpension)
- 孤児年金部分年金(Waisenpension)
- 部分年金、延長部分退職(Teilpension,erweitere Altersteilzeit)
上記の年金それぞれに要件があります。
ここからは、オーストリアでも日本でもまず大部分の人が受給するため比較または参考にしやすい老齢年金についてご紹介しましょう。
老齢年金について
オーストリアでの平均的な定年退職は男性65歳、女性60歳です。
老齢年金受給額は、勤労期間中の平均所得から「平均月額の60〜80%」で計算されて年金額が決まります。
老齢年金の平均値は以下の表のとおりです。
老齢年金受給月額 | |
---|---|
全体平均 | 1,635ユーロ(約204,375円) |
30〜40年間の年金拠出金期間 | 1,256ユーロ(約157,000円) |
40年以上の年金拠出金期間 | 2,064ユーロ(約258,000円) |
日本の厚生年金平均受給額は国民年金を含めて14万5000円なので、40年納めた場合はオーストリアの方がちょっと余裕のある老後を過ごせるのかもしれませんね。
参照サイト: AK(Arbeiterkammer)/オーストリア労働局
https://www.arbeiterkammer.at/pension
オーストリアの今後の課題とプラン
老齢年金受給額の平均的数値だけで見ると「オーストリアって年金が多めでいいな」と思うかもしれません。
ですがあくまでも平均であって、さらに詳しくデータを見ますと、男女の差が明白に出ています。
- 女性の平均老齢年金受給額は1,133ユーロ/月(約141,625円)
- 男性の平均老齢年金受給額は2,232ユーロ/月(約279,000円)
なんと約2倍の差があるのです。
この背景には、やはり子育てによる勤労年数やまた収入の格差などがあげられます。
イメージ的に欧州諸国は男女平等であり、女性も仕事で重要なポストについて男性と対等に活躍していると思われているかもしれませんが、実情は違うのです。
大部分の女性がパートタイムでしか働いていません。
オーストリアの現状としては、特に片親世帯(母子)は貧困リスクが高いとされており、今後の対策に注目すべきところ。
現在公表されている年金制度計画は、女性の退職年齢の引き上げが2024年から始まり、徐々に男性の定年(65歳)に近づけていくようにし、2033年までに完了するそうです。
参照データ: meinbezirk.at
まとめ
世界中でグローバル化・高齢化が進み、年金制度もそれに伴い、いろいろと改定されているところです。
特に社会保障協定は近年中に協定加盟国が増えることは大いにあり得ます。
現時点(2020年9月)でのオーストリア年金制度についてご紹介しましたが、実際に渡航が決まりましたら、ぜひ各機関にご自身でご確認ください。
年金情報参照サイト: oesterreich.gv.at/オーストリア行政サービス
https://www.oesterreich.gv.at/themen/arbeit_und_pension/pension.html
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