オーストリアで病気になったときに、どのようにしてドクターへかかればよいのか、費用はどのくらいかかるのか、すでにご存知ですか?
ここでは病気やケガをした時に慌てないよう事前に知っておくべきことと準備しておくべきことは何かをお伝えします。
ポイントは
- 医療システムの仕組みを把握しておくこと
- ドクター探し
です。
そしてオーストリアは保険適用範囲がとても充実しています。
診察費などはほぼ100パーセント健康保険でカバーされるので医療費の自己負担額がとても少ないのです。
ここでは、システム、医療制度を項目別で解説していきましょう。
オーストリア医療事情は?
まず気になる実際の医療レベルの話です。
オーストリアの医療は技術的にも、制度的にも日本と比べ全く遜色ありません。
むしろ日本より素晴らしい点は専門分野が網羅され、それらが保険で大部分カバーされていることです。
ですのでオーストリアで生活される際、安心して病院へかかれます。
また、多くのドクターは英語を話せますので、ドイツ語では不安な場合はその旨を伝えましょう。
必要であれば日本語通訳者も紹介してくれます。
医療事情というより、お国柄事情になるのですが、分からない事は臆せずにドクターまたはスタッフに聞いてください。
聞かずにいると相手は分かっているものと捉え、説明はどんどん省かれます。
オーストリアの医療システムを知ろう
システムを把握するために簡単に分類すると、
- 開業医(Praxis)
- 病院(Krankenhaus)
とで分けられます。
開業医は一般医(Allgemeinmediziner)と各科の専門医(Facharzt)に分けられます。
病院は大学病院、公立病院、私立病院があり、病院内の救急外来(Notfall Ambulanz)は24時間受け入れています。
基本的に病院、各科の専門医は予約制です。
一般医などは予約を取らない開業医も多いですが、行く前に電話で混み具合を聞いてから出向く方が待ち時間は少なくてすみます。
オーストリアはハウスドクター制
最初に、かかりつけのドクターを決めるところから始まります。
ドイツ語ではハウスアルツト(Hausuarzt)と呼びます。これは一般医にあたります。
ハウスアルツト(Hausuarzt)・一般医の探し方
どこのドクターにするかは、やはりお住まいから近い診療所のドクターがおススメです。
具合が悪い時に出向くのですから近くて負担がかからない方が良いでしょう。
家族や知り合い、友人などから評判を聞いてみると良いですし、インターネットで検索口コミをチェックしてみるのも良いです。
オーストリアのドクターは、突如休暇を取ることもありますので、念のため2、3箇所リストをあげておくと安心です。
ハウスドクターが休暇などで診療できない場合、他の一般医へ行くこともできます。その経緯はハウスドクターへ通知されます。
特に知り合いなどがいない土地にお住まいの場合は、やはりインターネットで探すのが便利です。
以下ドクター探しに便利なサイトです。
専門医にかかる場合
ハウスドクターが専門医への診察を勧める際、紹介状(Überweisung)を出してもらい、それを持って専門医へ行きます。(初回以降は直接予約で)
専門医へかかる場合はほとんどの場合要予約です。
ご自身でどこの専門医が良いか調べるのが大変であれば、ハウスドクターに近場でお勧めのドクターがいるか聞いてみるのも良いでしょう。
検査などが必要になる場合
専門医の元で何かしら検査をすすめられた場合、もう一度ハウスドクターから検査用に新たな紹介状/委任状(Zuweisung)を出してもらいます。
その検査ができるドクターの所に予約をして紹介状を持って行きます。
検査を受けるドクターの元では診断されませんので、再び専門医へ予約を取り検査結果データを持ち、改めて診断を受けます。
治療、薬が出る場合はここで処置、処方箋をもらいます。
病院へ行く場合
手術や難しい治療が必要になれば、公/私立病院や大学病院などにハウスドクターからこの際にも紹介状をもらい、予約、診察診断確認、治療となります。
救急が必要な場合:
休日や診療時間外などに急に具合が悪くなったり、怪我などをした場合は救急外来対応の病院へ行きます。
救急対応できる病院へ行く場合も必ず事前に連絡してから行ってください。対応可能な病院の連絡先も事前に調べておくことをお勧めします。
参照:
144 緊急通話=救急車を呼ぶ場合
141 家族医療救急サービス(HAND)/救急時の対応を相談できる
ハウスドクターを介さない<紹介状なし>でかかる専門医へ行く場合
まず小児科があげられます。
もちろんハウスドクターとの連携となる事もありますので、子供の場合は両ドクターをかかりつけ医としておいた方が安心です。
歯科医と眼科もハウスドクターを介さず、直接予約をして行くことが多いです。
他、婦人科などの検診も直接予約を入れます。
開業医についての予備知識
オーストリアは分業医療制度なので意外と時間と労力を要しますが、症状によりどの専門医に行くか迷わずにすみます。
診療所探しが実は難関であることも。
集合住宅内やアパートを診療所にしているところも数多く、さらに大きな目立つ看板は掲げないので見つけにくいのです。
この写真のほうに、一つの建物に複数の開業医が入っているのは比較的探しやすいです。
そして専門医、病院などの診療から診断、治療経過など全ての経過経緯はハウスドクターへ通知されます。
ですので病歴やその経過などを知ってくれているハウスドクターはとても身近で色々と相談をしやすい存在になるのでドクターとの相性は大切です。
健康面で不安を抱えていたり、対処の仕方が分からない時はまずハウスドクターに相談です。
予防接種などもハウスドクターで。ワクチンはご自身でドクターから処方箋をもらって薬局に買いに行き、ドクターの元に持っていきます。
オーストリアの医療費を押さえよう
開業医でかかる診察費用自己負担額
日本でいう国民健康保険(=強制加入保険)/社会保険にあたる保険で医療費は大部分カバーされています。
保険の種類については次の項目で解説しますので、ここでは一般的ないわゆる強制保険(GKK)でどのようにカバーされるのかを説明していきます。
まずドクターの元に訪れる際にチェックすべきは、<Alle Kassen>と記されているかということです。
<Alle Kassen>とは診察代は全て保険でカバーされているという意味です。
<Privatarzt>と記されている場合は基本的に診察代は自己負担になります。
<Wahlarzt>と記されている場合は、自己負担で支払った後に、保険申請して一部金額の払い戻しができます。
診察代が保険でカバーされる開業医はやはり混み合います。
予約制ではない開業医はかなり待たされるでしょう。また予約制であってもかなり先の予約になることが多いです。
診察費が全額カバーされないPrivatarztやWahlarztは比較的待ち時間も少なく、対応も丁寧なところが多いとされています。
注)人気がある開業医はそれでもかなり予約が取りずらいようです。
入院時自己負担額
公立の病院ならば大体1日20ユーロの負担額が発生します。
それ以外は基本的に保険適用となります。もちろん色々なケースがありますので、飽くまでも一般的な目安です。
個室を希望されたり、標準的な治療以外で保険適用外な薬や処置をした場合も保険適用外になりますので、やはり個々に確認してください。
出産費用も保険適用となりますので、日本のような多額な自己負担もありません。
薬の受け取り方、処方箋=Rezeptについて
薬は開業医の元=診療所で買うのではなく、Apotheke いわゆる薬局に処方箋を持っていき、薬剤師から薬を受け取りその薬に応じた支払いをします。
処方箋はドクターから出してもらいます。
ドクターから出された処方箋一部に対し、6ユーロ10セントの自己負担額を払います。
処方箋に記載されていても保険対象外となる薬、軟膏などは自己負担で支払います。
処方箋が無くても買える薬、買えない薬がありますのでそれぞれ確認するようにしましょう。例えばアスピリンなどは薬局で直接買えますが保険対象外です。
薬局は休日夜間当番があり、薬局の入り口などに案内があります。Notdienstといのが休日夜間当番という意味になります。
ちなみに開業医の診療所は見つけにくいとお伝えしましたが、Apotheke は比較的見つけやすいです。
病院内、近辺はもちろんのこと、街中や地方の小さな町中にも点在していてかなり目立つ共通目印があるのですぐ見つけられます。
半年以上のオーストリア在留許可申請には保険加入が必須
半年以上の在留許可申請をするのに、保険加入は必須要項の一つになるので、大多数の人が加入するのがGKK(Gebietskrankenkasse)です。
URL:オーストリア大使館
日本でいう国民健康保険、もしくは一般企業にお勤めの場合は社会保険になります。
GKK保険料の支払額の目安として例をあげます。多種多様な加入形態があります。
- ある一般企業の従業員で、1ヶ月給料の支給総額が約3000ユーロですと、約480ユーロ保険料として差し引かれます。大まかな計算で総支給額の15〜16パーセントが保険料になります。(社会保険)
- 家族が共同保険加入という形になりますと、共有者分は基本的に無料になります。
- 学生枠用の保険で月々50ユーロ前後と割安で加入できます。
- 失業中の場合などは、諸手続後にAMS=労働者支援サービス(日本の職安のような機関)が支給してくれます。
- 年金受給者は年金の月受給額の5〜6パーセントの支払額になります。
州ごとに組合が分かれていますが、住民登録されている州か勤め先もしくは所属先の地域により決まります。
会社勤めの方は会社からの契約加入になりますが、個人で加入する場合は、住民登録がある州の組合で手続きをします。
加入手続きに必要な基本的な書類は下記を参照してください。念のため保険加入手続き担当者に確認してくださいね。
- 住民票(meldezettel)
- パスポート/本人確認書類
- 学生であれば学生証/在学証明書
GKKの前の頭文字が州の頭文字になっています。
- KGKK(ケルンテン州)
- BGKK(ブルゲンラント州)
- NÖGKK(ニーダーエスタライヒ州)
- OÖGKK(オーバーエスタライヒ州)
- SGKK(ザルツブルク州)
- STGKK(シュタイヤマルク州)
- TGKK(チロル州)
- VGKK(フォアアールベルク州)
- WGKK(ウィーン州)
GKK加入者には一人一枚老若男女問わず持つことになるカードをe-Karte/e-cardといいます。日本の国民健康保険の保険証みたいなカード。
このカードは常に携帯し、特にドクターの元に行く時(開業医、病院ともに)は必要です。受付時にカードリードを使って受付作業をします。
その他の保険/プライベート保険について
特定の職業に就く人用の保険は以下のものがあります。
- 自営業者、起業家向けの健康保険と年金保険 (SVA):http://www.sva.or.at/
- 農業従事者向けの社会保険 (SVB):https://www.svb.at/
- 鉄道業、鉱業従事者向けの社会保険 (VAEB):https://www.vaeb.at/
- 公務員向けの保険 (BVA):http://www.bva.at/
などです。
プライベート保険とは日本でいう生命保険的な保険で、その内容は多岐にわたり契約内容も保険料も様々です。
ドイツ語で保険をVersicherung、プライベート保険をPrivat Zusatyversicherungといいます。
大手の保険会社です。
- Allianz Versicherung AG :https://www.allianz.at/
- Generali Versicherung AG :https://www.generali.at/
- Muki VersicherungAG :https://www.muki.com/
などがあります。
プライベート保険に加入していると、例えば開業医などの<privatarzt>や<Wahlarzt>の表記があるドクターの元で診察費用など自己負担なしになります。
また入院の際は個室料金もこの保険でカバーされたり、私立病院での支払いも自己負担なし。注)契約内容によりこれらの限りではありません。
かなり長期滞在になる、永住を考えているようであれば、先々こういった保険を検討するのも良いですね。
ちなみに保険料は、GKKなどは収入により変動し、プライベート保険は定額の支払いになり、GKKなどよりも割高になります。
オーストリアの医療、病院事情まとめ
健康であれば医療事情についてあまり意識しないかもしれませんが、ドクターの元へ駆け込む事態というのは大抵突如やってきます。
体調が悪い状態でさらに辛い思いをしないですむように、オーストリアでの住まいが決まったらなるべく早くHausarzt=ハウスドクターを探しましょう。
救急外来受け入れ病院の連絡先と住所、薬局も場所を確認しておくと安心です。
アポテーケ(薬局)では、スキンケアグッズやファーストエイドグッズなども売っていますので、薬を買わなくてもちょっと覗いてみても良いですよ。
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