「オーストリア移住が日本人に魅力的な7つの理由」で紹介したように、いま、オーストリア移住の人気が上昇中です。
今回も、オーストリアに移住し子育てに仕事を楽しむサトウタクマさんに「オーストリアの仕事」についての情報を紹介してもらいました。
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1. オーストリアに移住する日本人はどんな仕事をしている?
音楽の国オーストリアで働く日本人の代表的な仕事は、やはり楽器の演奏家を始めとする音楽関係の仕事です。
オーストリアには、日本を含め世界各地から音楽家が集まっており、実際に、現地の人に日本から来たと伝えると、高い確率で「音楽関係の方ですか?」と質問されます。
音楽関係の仕事をしている日本人は、日本の音楽大学からだけでなく、オーストリアの音楽大学や海外の別の地域での音楽留学を経て、オーストリア各地のオペラハウス楽団等に在籍したり、ピアノなどの楽器の先生となっている人が多いです。
次に、あまり知られていないですが、オーストリアでは自動車下請産業や自動車製造業が輸出割合の大きい重要な産業として発展しているため、自動車業界の仕事をしている日本人も多いです。
その中には、駐在員として働いている人だけでなく、現地で就職している人も多くいます。
また、私の例を紹介しますと、私は現在、日本で言う行政法人のような機関の自然科学系の研究所で研究員として働いています。
以前は、アメリカの研究所で働いていましたが、現在の研究所に雇ってもらえることになり、オーストリアに移住してきました。
オーストリアでは、私のように研究者として働いている日本人も多く、日本からはもちろん、海外の他の国から移住してくる日本人も多くいます。
この他にも、他の欧米諸国と同様に、国際都市ウィーンを中心として、
- 会社や事業の駐在員
- 国際機関の日本人職員
- 現地企業へ就職している人
- 日本料理屋の経営者および店員
- 芸術家
など、オーストリアでは様々な職業の日本人が働いています。
2. 世界でも上位!オーストリアの仕事環境
では、オーストリアの働く環境はどのようなものなのでしょうか。
以前の記事でも紹介しましたが、世界経済フォーラムが2016年に発表した「仕事における幸福度を感じるヨーロッパの都市」ランキングで、オーストリアの第2の都市グラーツが1位を獲得し、ウィーンも4位にランクインしました。
このような働きやすさは、ストレスフリーに人生を送ることを重要視するオーストリアの国民性を反映して、老若男女が気持ちよく働けるシステムが作られていることで実現できていると思います。
例えば、オーストリアの有給休暇制度は非常に充実しており、多くの職場で年25日相当の有給休暇に加え、自身の病気および家族の看病のための休暇が別に用意されています。
また、有給休暇は全て消化することが奨励されており、実際にほぼ全ての人がしっかり消化しているため、日本とは違い後ろめたさを感じることなく休暇を楽しめます。
また、研究職に関する例ですが、国が運営する科学研究費助成事業へ研究費獲得のための申請を行う際には、参考資料として年齢・性別・役職等に対して研究費の獲得率が差別的になっていないとの詳細な調査結果が公表されているため、審査への無駄な不安やストレスを感じることなく取り組むことができています。
この他にも、子育てに対する家族手当等の手厚いサポートなど、様々な側面から、ストレスなく働ける環境が整えられています。
3. オーストリアの給与水準
続いて、オーストリアの給与水準についてですが、一つの指標となるデータとして、経済協力開発機構(OECD)が発表している各国の平均可処分所得(所得から税や保険料を引いた自由に使える額)の2013年のデータでは、オーストリアは33,907ドルでOECD加盟国中で6位と上位でした。
ちなみに、日本は、この年は29,640ドルで13位でした。
オーストリアは福祉や社会保障システムなどが充実している分、所得税や保険料の合計が給与の50%近くになることもあるなどとても高いので、この結果は、そのマイナス分を上回って平均収入が高いということを反映しています。
ちなみに、私は現地の公務員と同じような給与体系で給与を得ていますが、同じような役職で考えると給与は日本より少し低く設定されています。
ですので、オーストリアのこの平均年収の高さは、ウィーンを中心とした観光業及び企業等による経済の好調さを示していると考えられます。
4. 職場での言語環境は?
次に、職場での言語環境についてですが、オーストリアでは仕事に関して英語だけで困ることがあまりありません。
英語を外国語として学んできた日本人には嬉しい環境といえるでしょう。
オーストリアの公用語はドイツ語なので、もちろん管理職等を意識した場合はドイツ語が話せると便利ですが、オーストリアの一般的な職場は、EU諸国を中心に、アジア、中東、アフリカ、アメリカなど世界各地から多くの人種・民族が集まっているため、多くの仕事は英語を共通言語に進められています。
私は以前、アメリカで仕事をしていましたが、オーストリアでは多くの人が英語を母国語としていないため、英語が苦手な日本人にも理解があり、アメリカにいた時よりむしろ言語で困ることは少ないと感じています。
また、ドイツ語の習得を目指すにあたっても、仕事後の夕方の時間に、国立大学等の主催で格安のドイツ語コースが開かれており、ドイツ語を効率よく学べる環境が整えられています。
5. オーストリアの滞在資格は種類が豊富
オーストリアの職場にはEU内外からの移住者が多いと紹介しましたが、その大きな理由は、充実したビザ制度にあります。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
まず、短期の移住希望者に嬉しいのが、オーストリアでは、日本との2国間協定により、1年のうち最大6カ月間の無査証滞在が許可されています。この制度を利用し、6ヶ月以内の短期の仕事や留学目的で移住する日本人は多いです。
次に、6ヶ月を超えて滞在する際には滞在資格を得る必要がありますが、オーストリアでは移住の目的に合わせて様々な種類の滞在資格が用意されています。
通常の滞在許可証も一般と研究者用など種類が別れているのですが、特にユニークなのが、通常の滞在許可証とは別に2011年より始まったRot-Weiß-Rot Karte(赤白赤カード)という滞在資格です。
「赤白赤」はオーストリアの国旗の色を意味しています。
この滞在資格は、高度な資格やスキルを持つ外国人及びその家族にオーストリア移住を促すためのもので、これを得ることで、まずは1年間の期限で申請を行った企業等で働くことができます。
そしてその後、Rot-Weiß-Rot Karte plusを申請することで、就職先に制限なくオーストリアの労働市場で自由に働くことができるようになります。
つまり、オーストリア国内で一定の仕事及び収入を1年間保持することができた人は、その後オーストリア内で自由に働くことができるということです。
また、嬉しいことに、共働きを希望する移住者への配慮として、Rot-Weiß-Rot Karte保有者の家族には、1年を待たず始めからRot-Weiß-Rot Karte plusが与えられ、入国と同時に自由に仕事及び就職活動ができます。
オーストリアの滞在資格に関してもう1つ注目すべきなのが、これらの滞在資格を取得する場合に、日本へ帰る必要がなく、オーストリア国内で申請・取得・更新することができる点です。
例えば私の場合は、無査証で入国後に、研究者カテゴリーの滞在許可を家族4人分現地で取得しました。
6. オーストリア人と働くコツは?
最後に、実際にオーストリアで働いてみて感じるオーストリア人と働くコツを紹介します。
オーストリア人にももちろん色々な人がいますが、オーストリア人に見られる代表的な特徴は、これまで何回か紹介しているように、「ストレスフリー」を大事にしている点だと思います。
例えば、仕事の期日が迫っている時でも、全く焦ることなく通常通りのペースで仕事をするので、見ているこちらが焦ってしまう、ということがよくあります。
具体的には、期日へ向かって追い込む形で仕事を進める日本人のスタイルとは根本的に異なり、極端に言うと、期日までペースを変えずに仕事を行い期日が来たらその時点でできているものを提出、というスタイルなので、一緒に仕事をする場合は、このような仕事の進め方の違いを念頭に置いておくといいかな思います。
またもう1点、多くのオーストリア人に見られる特徴として、日本人に似て遠慮がちですぐに本音を話さないというシャイな面が挙げられます。
一見とっかかりにくそうでもこちらから尋ねてみると話も弾んでとても仲が深まる、という日本でもよくあるような人間関係を作れたりするのも、オーストリア人と仕事をする上で面白い点かもしれません。
しかし、シャイであることの根本にあるのは、日本人に多く見られる自信のなさではなく、他人と接する際の慎重さであることが多いので、こちらが無駄に謙遜して話してしまうと誤解を与えてしまうので気をつけた方がいいかもしれません。
まとめ
今回は、オーストリアの仕事関連の情報まとめてみましたが、参考になられましたら幸いです。
オーストリアは、働く環境がとてもよく、滞在資格制度も充実しているので、海外移住を考える多くの人にとって魅力的な国なのではないかと思います。
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