セルビアと聞けば1990年代の内戦のイメージが強く、経済が低迷している印象を持たれるかもしれません。
しかし現在、首都ベオグラードの街中にはおしゃれなカフェやレストランが立ち並び、ファストファッションはじめ、さまざまなブランドの店舗も多く出店しています。
統計上のデータではこの国の経済成長率は4.3%で、かつてに比べると経済は緩やかに回復してきていると言えるでしょう。
しかし、まだまだ経済的に豊かな国とは言えないレベルで、セルビアの1人あたりのGDPは7,223USドルと、日本の数値が39,304USドルなのに比べると、5分の1以下となっています。
失業率も高く、12%を超えています。
セルビアで仕事を得ることは容易ではなく、仕事に就けたとしても低収入の場合が多くあります。
ここでは、セルビア人の年収を職業別に解説していきます。
セルビアで働くことに興味のある方、セルビアでのビジネスをお考えの方もぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
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セルビアの労働事情について
セルビア国内における産業の内訳は、
- サービス業が約6割
- 工業が約3割
- 農業が約1割
となっています。
日本において東京の賃金が他の地域に比べて高いのと同様に、首都ベオグラードの賃金は他のエリアに比べて高い傾向があります。
日本と異なる点は、かつて共産主義国家だった影響で、同じ会社、同じ職種で長く勤めることが良しとされてきたため、異業種へのキャリア転向はあまり一般的ではありません。
また現在でも水道、電気、鉄道、通信などのインフラ分野では、国営企業が未だに残っています。
セルビアでの平均年収は約66万円ほど
2019年の第2四半期の統計によると、セルビア国内の平均月収は約75,000ディナール(約7万5,000円)ほど。
そこから年金や社会福祉費などが差し引かれ、手取りは約55,000ディナール(約5万5,000円)ほどとなります。
行政職員、警察官など公務員の平均月収の手取り額は60,000ディナール(約6万円)ほどで、民間企業では50,000ディナール(約5万円)なのに比べると、やや高い傾向にあります。
月収が100,000ディナール(約10万円)を超えている人は、この国では高収入と言えます。
セルビアではボーナスはほとんどの場合支給されないため、年収で考えると月給の12ヶ月分で660,000ディナール(約66万円)が平均年収となります。
職種別のセルビアでの平均年収
それでは、以下の職種別の収入をみていきましょう。(金額は手取りの額を示しています)
- ITエンジニア
- その他のエンジニア
- 営業職
- WEB・グラフィックデザイナー
- スーパーマーケットなどの店員
- ウェイター、ウェイトレス
- 建設業
- 教職
- 医師
- 弁護士
- 銀行員
- 公務員
- 外資系企業
・ITエンジニア
セルビアでもIT業界の仕事は需要が高く、失業率が高いこの国においては仕事が見つけやすい分野と言えます。
IT分野のエンジニアとして働く人の賃金は、平均して月収約82,000ディナール(約8万2,000円)ほどです。
高学歴の場合は、組織の中でより高いポジションにつける傾向にあり、平均以上の収入が得られる可能性もあります。
年収にすると月給の12ヶ月分で984,000ディナール(約98万4,000円)ほどとなります。
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・エンジニア(IT以外)
IT 以外のエンジニアの給与は、新卒で月収50,000ディナール (約5万円)ほどですが、ある程度キャリアを積むと75,000ディナール(約7万5,000円)ほどになるでしょう。
年収だと600,000〜900,000ディナール(約60〜90万円)ほどです。
例えば生物工学の分野だと、食品を扱う工場や研究施設をはじめとした就職先がありますが、たいていの場合、ベオグラード郊外など都心から離れた場所に勤務することになります。
・営業職
企業の営業職に就いている方の給与は月50,000ディナール(約50,000円)ほどです。
売上への貢献度や組織全体の業績によって変動する可能性があります。年収だと平均して600,000ディナール(約60万円)ほどです。
・WEB・グラフィックデザイナー
IT関連だと、デザイナーも人気のある職業の1つです。
日本と同じように特にWEB業界のデザイナーの需要が高まっています。
月収は所属する会社により異なりますが、60,000ディナール(約60,000円)ほど、年収に換算すると720,000ディナール(約72万円)になります。
・スーパーマーケットなどの店員
日本だとスーパーマーケットの仕事はパートタイムのポストが多いですが、セルビアではほとんどの方がフルタイムのスタッフとして働いています。
月収は平均35,000ディナール(約35,000円)、年収にして420,000ディナール(約42万円)とかなり低めです。
・レストランやカフェのウェイター、ウェイトレス
彼らの月収は平均40,000ディナール(約40,000円)ほどです。
セルビアはチップが必須の国ではありませんが、多くの場合は少額でもチップを支払います。
そのためウェイター、ウェイトレスの給与は、彼らが提供するサービスの質や、レストランが高級レストランかどうかによっても変動します。
ちなみに一流のレストランでウェイター、ウェイトレスとして働いている人は、サービスや観光学、マナーを学ぶ学校を卒業しています。そのため誰もが簡単に就ける職業というわけではありません。
・建設業
ベオグラードの街中ではさまざまな場所で工事が進み、新しい集合住宅が建てられたり、古い建造物のリノベーションが行われている様子をよく目にします。
建設業界の仕事は安定的にありますが、工場現場従事者の給与は低めで、40,000ディナール(約40,000円)ほどです。
建設業界に限ったことではありませんが、賃金の高い他のヨーロッパ諸国へ人材が流失してしまっていることから、優秀な人材を集めるのに苦慮することもあるようです。
現場監督の月収はキャリアや経験年数によって異なりますが、70,000ディナール(約70,000円)ほど。
年収で考えると840,000ディナール(約84万円)ほどとなります。
・教職
セルビアで教職に就いている人の平均月収は下記のとおりです。
(セルビアには中学校がなく、小学校が8年間、高校が4年間です)
小学校・高校の教諭 | 45,000ディナール(約4万5,000円) |
大学教授 | 70,000ディナール(約7万円) |
大学講師 | 50,000ディナール(約5万円) |
年収で考えると、540,000〜840,000ディナール(54〜84万円)ほどとなります。
小学校や高校の教員は、仕事の内容が大変な割に給与が低く、あまり人気がある職業ではありません。
また大学教授の仕事は、高度な知識と専門性が求めれる一方、他の職種と比べて特別給与が高いわけではありません。
・医師
医師の平均的な月収は70,000ディナール(約7万円)です。
専門医となれば給与が上がる傾向にあり、100,000 ディナール(約10万円)ほどとなります。
年収に換算すると、840,000〜1,200,000ディナール(約84〜120万円)です。
・弁護士
経歴やクライアント、専門分野などによって異なりますが、高収入の場合だと、月収90,000ディナール(約9万円)、年収1,080,000ディナール(約108万円)ほど稼ぐ方もいます。
・銀行員
銀行で勤務している方の給与は45,000〜90,000ディナール(4万5,000円〜9万円)ほどです。
学歴や専門性、組織におけるポジションによって給与は異なり、窓口で働いている方の月収は45,000ディナール(約4万5,000円)程度です。
経験年数や専門性に応じて賃金が上がる傾向にあり、融資の専門的な仕事を行うポジションに就けば、月収70,000ディナール(約7万円)、金融アナリストは90,000ディナール(約9万円)です。
年収に換算すると、540,000〜1,080,000ディナール(約54〜108万円)となります。
・公務員
地方公務員の給与は、一般事務職の場合月収45,000ディナール(4万5,000円)ほどで、民間企業とそれほど差はありません。
ただし昇級し要職に就くことができれば100,000ディナール(約10万円)を超える可能性もあります。
国家公務員の給与は地方公務員よりも高い傾向にあり、平均月収は80,000ディナール (約8万円)ほどとなっています。
年収で考えると、540,000〜1,200,000ディナール(約54〜120万円)ほどです。
・外資系企業
セルビアにはイギリスやロシアなど、他のヨーロッパ系企業や、アメリカの企業も進出しています。
外資系企業で勤務している方の給与はセルビアの企業より高い傾向にあり、月収100,000ディナール(約10万円)ほど稼いでいる人もいます。
在宅ワークも人気になりつつあり、他の国で働いている同僚とチャットやテレビ電話を通じてコミュニケーションを取りながら仕事を進めている場合もあるようです。
セルビアの年収事情まとめ
セルビアの企業で働く仕事を見つけるのはかなり難しく、就職できたとしても前述のとおり給与は決して高くありません。
日本人であれば、セルビアの現地の通貨でお金を稼ぐことよりも、クラウドソーシングなどを利用し、日本円で収入を得るほうがおすすめかもしれません。
国内の経済状況はあまり良くないものの、
- 家賃をはじめ生活費が安いこと
- 治安が良いこと
- 自然災害のリスクが少ないこと
など、セルビアで生活するメリットも多くあります。
ある程度の収入があれば、のんびりと安心して暮らすことができます。
贅沢な暮らしをするのは難しいかもしれませんが、日本社会のしがらみを離れてストレスを感じない毎日に良さを見出す方もいるでしょう。
セルビアに住んでいる日本人の数は150人程度と少ないですが、セルビアは親日国ということもあり、たくさんの人が日本文化に興味を持っています。
例えば日本の食や伝統文化、日本のスポーツなどを学びたい人たち向けてインストラクターをする、というのもニーズがあるかもしれません。
セルビアでビジネスをお考えの方にとっては、労働者の賃金が他のヨーロッパ諸国と比べても低いので、人件費を抑えて優秀な人材を集められる可能性もあります。セルビアでの起業や新たな仕事を開拓することにおいては、多くのチャンスが眠っているとも言えるでしょう。
参照記事:
- セルビアのGDP:https://www.globalnote.jp/post-1339.html
- セルビアの給与額:http://www.stat.gov.rs/sr-Latn/oblasti/trziste-rada/zarade
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