ロシアに家族で移住、または現地で出産となると、気になるのは子育て事情ですよね。
ただでさえ文化や習慣の違う異国で暮らすのに加えて子供を育てなければいけない場合は、健康面や精神面、学習面と色々な角度からフォローしていかなければならないので、かなり心配だと思います。
そこで今回は、ロシアの子育て環境、習慣、常識、ちょっと興味深い日本との違いなど、現地でたくましく子育てをしているお母さん方の生の声を反映しつつご紹介していきます。
ロシアの寒い冬はどうやって過ごすの?極寒日は家で遊ぶ?
これは、日本で子育てをしている知人からも質問されたことがあります。
2020年は記録的な暖冬だったので、若干物足りなさを感じたくらいなのですが、通常はー10℃を下回るのも珍しくありません。
ー1℃程度だと、「今日は暖かいな」と思ってしまう感じです。
では、ー10℃を下回ると「今日は寒いから家に居ましょうね」となるかというと、これは違います。
雪が降っても寒くても、外の公園では子供達が遊び回り、さらには赤ちゃんをベビーカーに乗せたお母さんが散歩をしています。
主要な公園や赤の広場など、主要な場所にはスケートリンクが設置され、これも子供達の冬の楽しみになっていますね。
さすがに赤ちゃんはまずいんじゃないかと思ったのですが、これはロシアでは当たり前の光景。とにかく毎日散歩が必須です。
日照時間が短いロシアでは、子供達の成長に必要な太陽の光が圧倒的に足りません。ですから新鮮外気に触れさせて、できるだけ太陽の光を浴びさせることが重要なんです。
子供達の冬の普段着
下の写真はスキー場ではありません。冬のロシアの子供達にとって、スキーウエアは定番の普段着です。
やはり防寒はバッチリですね。
特に頭の防寒はとても重要なので、大人も子供も帽子は必須アイテム。
子供達は顔の部分だけ開いた帽子をすっぽりかぶって完全防備です。これがとっても可愛い!
こんなスタイルなら、雪の中でも濡れたり汚れたりはお構いなしに、自由に遊び回れますよね。極寒の中でも、子供達は毎日元気に飛び回っていますよ。
ロシアは雪が多いからこそのイベントも楽しい!
極寒の雪国ならではのイベント、雪だるまコンテスト。
特に雪を集める必要もなく、ひたすら降り積もる雪を利用しての楽しいイベントです。
ロシアの雪はさらさらで、しかも気温も低いので変に溶ける心配もなく、雪だるまを作るには持ってこいの環境なんです。
このコンテストには、大会のホームページから予めチームでエントリーすれば参加できます。
大人も子供も一緒に、家族、友人、色々なチームが様々なテーマの雪だるまで競います。
こんな風に、皆で協力しながら楽しむイベントは、コミュニケーションを学ぶ大切な子育ての場にもなっているんです。
子育ての強い味方。ベビーシッター「ニャーニャさん」
特にモスクワでは、子育て世帯が共働きで、祖父母が近くにいないというパターンも多いので、「ニャーニャさん」を雇うことが多いです。
「ニャーニャさん」とは、ベビーシッターさんのことで、学校や習い事の送り迎えから食事の支度、宿題や勉強のチェックまで、その家庭によって仕事は多岐にわたります。
ニャーニャさんの1時間あたりの相場は500ルーブル(1ルーブル=1.7円計算で850円)前後です。
これは、家庭の事情や担う役割によっても変わってきます。
ロシア人家庭ではもう少し安く雇えるようですね。
どうやって探すかというと、この仕事は信用第一ですから、信頼している知人からの紹介が多いですね。
日本人家庭や日露夫婦の家庭などでは、特にロシア語で対応しなければならない問題や、学校の宿題はニャーニャさんに任せた方が慣れているので、その点も助かるポイントですね。
特にシングルマザーや遅くまで仕事がある家庭の場合は、住み込みのニャーニャさんもいるんですよ。
この場合、子供が小さいときからずっと同じニャーニャさんにお願いしていて、信頼関係が確立されている場合に限りますが、本当のお婆ちゃんのような存在になっていますね。
筆者の知人でロシア人の母子家庭ですが、ニャーニャさんごと海外留学している家庭があります。
健康面、精神面について幼少期から全て知り尽くしている本当に頼りになるニャーニャさんなので、彼女がついていれば心配なしという感じです。
ロシアの教育ってどんな感じ?
幼稚園
ロシアの保育園には1歳半から入ることができます。
特別な事情があれば1歳から可能ですが、おまるに座れることが条件とされます(オムツ禁止の園もある)。幼稚園は3歳から通うことができます。
日本と大きく違うのは、朝昼晩の食事付きだというところ。
働くママにとってはかなり便利なシステムですが、週末以外は幼稚園の食事で育つというのは、もしかしたら日本人にとっては違和感があるかもしれませんね。
でも、忙しく働いて、迎えに行って、食事を作って食べさせるという過酷なルーティーンから解放されることで、少し心に余裕を持って子育てができそうですよね。
食事は、ロシアでポピュラーなお粥の朝食から始まり、散歩前の第2の朝食にはフルーツにジュースなどの軽食が出ます。
ここが1番ボリュームがあり、スープ、野菜料理、肉か魚料理と付け合わせ、パン、飲み物という具合です。
そして、昼寝の後のおやつにも何かしらのおかずと付け合わせ、飲み物が出るので、おやつというより第2の昼食ですね。
ロシアの食事のメインは昼食なんです。
また、長い時間を過ごす幼稚園では、自分で出来ることは自分でする、ということを学びます。
上着の脱ぎ着や靴の履き方、身の回りを清潔に保ち、身だしなみを整えることなどが教育されます。
そしてこれはロシアならではですが、ロシアの冬は、屋内外の気温差が激しく、また、外気に触れた服は清潔ではないということから、来園時の服から室内着に着替えます。
これは家庭でも同じで、小さい頃から着替えの習慣が身につくんですね。
日本の幼稚園と同じく、絵や音楽、体育、ダンスなどのレッスンがあり、もちろん外での散歩や遊びも欠かしません。
幼稚園でも外の新鮮な空気の中で活動することが大切とされていて、ー15度くらいまでなら必ず散歩に出かけます。
小学校
ロシアの学費は基本的に無料です。
国からの費用でまかなえない部分は、親からの寄付を募ります。
それぞれの学校はソ連時代から番号で呼ばれていて、それは現在も変わりません。基本的に小学校から高校までの約11年間、同じ敷地内で過ごします。
インターネット社会の現代では、タブレットで教科書を使う学校も多いようです。
でも、学校によっては、紙の教科書を代々受け継いで使っている学校もあり、その場合はビニールのブックカバーをつけ、書き込みはせずに大切に使うように教育されます。
ただ単に新しい物を与えるのではなく、複数名でひとつの教科書を大切に使うというのも、このご時世には良い教育ですよね。
現在は、日本でも連絡事項などはSNS上でやり取りされるのが普通になっていると思いますが、ロシアでも連絡はネットです。
宿題も親と学校で共有しているので、子供が宿題をやらなかった場合、親が知らなかったという言い訳は通用しないわけです。
また、電子成績表があり、毎日の成績をネットで確認できます。ロシアでは1から5の5段階で評価されます。
ちなみに5が最高で、1が最低ですが1をとることはまずないので、実質2が最低のようです。
3がついてもかなり皆さん危機感を覚えるようで、親は成績を確認して評価が低い場合は、宿題を再提出させたり、学習を強化して改善をはかります。
もともとかなり詰め込み型の教育なので、きちんとついていくには帰宅してからの宿題や予習復習が必須です。
中学に上がったら、もっと勉強量が増えるので、スポーツや音楽などの習い事が出来なくなってしまう子もいるようですね。
子供達も厳しい世界で生きているんですね。
ロシアの子供達の習い事は?
日本の子供達も同じだと思いますが、ロシアでも習い事で大忙しの子供達が多いです。
ただ、これは最近に始まったことではなく、ロシアでは現在の親世代でも大体の人が何かしらの楽器が弾けます。
ピアノ、バイオリン、ギター、アコーディオンなどは幼少期に習得することが多いですね。
ロシアでは楽器を習うのは高くないですし、もともと音楽が盛んで優秀な教師が多いことも影響しています。家族全員が楽器を弾けるという家庭も多いんですよ。素敵ですよね!
楽器が好きでなければ、サッカー、バスケットボール、テニス、水泳など、スポーツを習う子供も多いです。
ロシアらしいところでは、アイスホッケー、フィギュアスケート、バレエ、シンクロナイズドスイミングなどを幼少期から習い、素質のある子供達は専門的に学べる学校に進みます。
もちろん語学も盛んで、英語はもちろんドイツ語、フランス語、イタリア語などなど、子供達は複数の習い事を掛け持ちしています。
これからの時代に必須のプログラミングも最近は人気があります。とにかく、子供達は大忙しなんです。
日本もロシアも同じですね。
子供が病気になったら?
ロシアでは往診医療が盛んなので、子供が病気になった場合、登録してるかかりつけ医に連絡をとって家に来てもらうことができます。
特に冬などは、子供に防寒着を着させて、出かける準備をするだけでも一苦労。
さらに体調の悪い子供ともなると、そう簡単に出かけることはできませんし、病院での待ち時間も苦痛ですよね。
ですから、このシステムは子育てをする親にとって強い味方なんです。
また、病気で3日以上休んだ場合、病院から回復を証明する診断書をもらって提出する必要があります。
その場合、休んだ期間の給食費を翌月の支払いから日割り計算で引いてくれるシステムになっています。
ロシアならではの子育て・3つの常識
1. ロシアの決まり
小学校(10歳)まで、単独行動禁止です。
登下校や習い事など、全てにおいて親やニャーニャさんなど、大人が必ず付き添います。
もちろん公園でも必ず大人が付き添い見守っています。中学校(11歳)からは一人で登下校するようになります。次項でもご紹介しますが、遠足でも先生だけでなく親が付き添いますし、いつも親の見守りの元で活動しているんですね。
2. 学校での親の役割がたくさん!
日本でも親は学校での役割が色々あって、共働きの家などは結構大変ですよね。ロシアの場合はどうでしょうか。
この、親の役割については、もちろん、全ての学校が全く同じというわけではありませんが、日本とかなりかけ離れているので驚かれると思いますよ。
まず、親の学校運営活動は入学と同時にスタートします。
始めの保護者会で、小学校生活4年間を通して使用する教室の壁の塗り替え、ソファや本棚、教師が使うプリンターなども手配します。さらに授業のために必要な教科書の買い出しも親がすることがあります。
まずは、親が子供達の教室環境を整えてスタートです。ちょっとビックリですよね。
さらに学期ごとの遠足では、博物館の予約からバスの手配まで親が行います。そして教師と親数人が付き添います。
学校のイベントがあれば、ジュースやピザなどの食事を手配し、子供達に食べさせます。とにかく子供達のより良い学校生活は、親のサポートが鍵を握っているようですね。
3. 先生への贈り物
ロシアでは、先生へのプレゼントがとても多いです。
3月8日(国際婦人デー)、10月5日(教師の日)には、先生への贈り物を持って出かけます。
これは恒例の行事で、特に3月8日は先生に限らず、女性は皆プレゼントをもらう日なので、街中に花束を持った女性があふれます。なかなか華やかで良いですよ。
また、先生の誕生日や学校行事、習い事の発表会など、事あるごとに贈り物をする習慣がありますが、個人的にする場合と、グループでまとめてする場合があります。
贈り物が多いコミュニティに所属してしまうと、かなりの出費になります。特別な習い事の先生にはお礼としてお金を渡すこともあるようですが、先生もそれを生活の足しにしていたり、もらい慣れていますから、突然やめるわけにもいきません。
先生との円滑なコミュニケーションのためにも、続いていく習慣なんですね。
ロシアの休暇の過ごし方
ロシア人はたいてい郊外にダーチャ(別荘)を持っていて、休暇は自然の中で過ごすのが一般的です。
子供達も学校が休みになると、祖父母が待つダーチャで過ごすのを楽しみにしています。
庭の畑には野菜が、木には果物が実り、バーニャ(ロシア式サウナ)があります。
夏場は長い休暇以外にも、週末をダーチャで過ごす人も多いんです。ただ、週末ダーチャだと、土日ゆっくりリラックスできても、日曜日の夜に大変な渋滞に巻き込まれて疲弊することもあるので、少し微妙ですが・・・。
それ以外にも子供達には、色々なアクティビティの選択肢があります。
ボーイスカウトに入って自然の中で団体行動を学んだり、モスクワ市内でも美術館や博物館のエクスカーションや、コンサート、演劇、人形劇、サーカス、バレエなど、子供向けの企画がたくさんあるので、親の気力さえあれば、退屈することなく過ごすことができます。
美術館や博物館を訪れると、必ずと言って良いほど子供達を引率したエクスカーションを見かけます。
先生や学芸員の説明を熱心に聞いて質問したり、小さい頃から芸術に触れる機会が多いんですね。団体でなくても、親が子供に歴史や芸術について説明している姿も頻繁にみかけるので、これは代々受け継がれていく知識なんですね。
ロシアの子育て事情まとめ。親の出番は多い
日本と違う部分がかなりあって、面白いですよね。
小学校では、かなり親の出番が多くて大変なこともあるようですが、幼稚園までは朝昼晩の給食のおかげで、日本よりよっぽど楽だという話もありました。
ロシア人にとっては全て常識だと思いますが、日本人がロシアで子育てするなら、これらの基本的な常識をしっかり把握しておいた方が良さそうですね。
でも、基本的にロシア人は親切ですから、きっと皆で子供達を育てていこうという気持ちで子育てに協力してくれるはずです。
急速に変わりゆく現代社会で、新しい物を取り入れつつ、それぞれの国の伝統を組み合わせて、より良い子育てをしていければ素敵ですね。
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