スイスは地理的、人口的にも大きい国とはいえませんが、その中には多様な文化が共存しており、ひとくくりに「スイス人とはどういう人か」を定義づけるのは難しいと思われます。
よく知られているように、スイスにはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの公用語があります。
2013年の統計では使用言語の割合は
- ドイツ語(63.67%)
- フランス語(20.38%)
- イタリア語(6.46%)
- ロマンシュ語(0.48%)
- その他(9.01%)
となっており、スイス国内を旅行した場合でもそれぞれの地域で雰囲気が異なります。
このように一つの国に多様な文化を形成しているスイスですが、今回は最も多数派となるドイツ語圏でのスイス人の特徴と性格7つについてお伝えします。
スイス人は時間を大切にする
スイス人はきっちり時間を守ります。
例えば朝7時に打合せを行う場合、7時には参加者全員がきっちり集合します。
日本人も同じような行動をとりますが、5分前行動といった概念はなく、7時といえば7時が集合時間になります。
会議の場合はそれから5分から10分程度冗談を言ったりしてアイスブレークを行い、本題に入っていきます。
日本の場合、会議が始まると結論が出るまで延長し、終了時間をオーバーすることが多いですが、スイスでは打合せの終了時間が決められています。
例えば打合せが7時開始で8時終了となっている場合は、結論が出ていなくても会議は打ち切られます。
議論が残っている場合には、改めて場所と時間をセッティングします。
お店でも定められた開店時間きっかりにオープンし、閉店時間になるとお客さんがレジに並んでいてもサービス終了なので、明日来てくれという店員も多いです。
でも営業時間が過ぎていれば、文句を言わずに帰っていくのもスイス人らしい光景です
プライオリティファースト!ルールは守るが権利はきっちりいただく
スイス人はルールをよく守りますが、権利はきちんと取得しようとします。
ルールを破った場合のペナルティが細かく定められており、それを守っている限りは自分に優先権があるという考えが根底にあります。
例えば犬を飼っている人に対しては、飼い犬の糞は飼い主が始末するものとルールで定められています。
違反したら罰金です。
これを徹底するため、町のあちこちに犬の糞を集めるためのポストが設置してあり、ポストには犬の糞を取るためのビニール袋まで準備してあります。
犬を飼っている人はポストからビニールを取り、散歩紐に結びつけて散歩します。
飼い犬が糞をしたら、誰が見ていなくても処理します。
また、犬が人を噛んだ場合は直ちに警察沙汰となり、2度噛むと法的に殺生処分となりますので、犬のしつけは徹底されています。
反対の例ですが、スイスでは少し郊外にいくと公道で乗馬している人を見かけることがあります。
これらの馬の糞については、馬の飼い主が処分するルールにはなっていません。
糞を見つけた町役場の担当者が集めることになっていますので、馬が糞をしても飼い主は意に介しません。
また車を運転する場合、街の中は原則50km/hの速度制限があります。
町の中には超過速度を取り締まるレーダーが至る所に設置されており、55km/hを越えると光ります。
56km/hで走っていても光り、罰金は40フラン(5000円弱)と結構高くつきます。
しかし少し街を外れて家が少なくなると、制限速度は一気に80km/hに変わり、レーダーは原則なくなります。
このような場合、どんなに道が狭くても80km/hで走りたがる人が多く、例えば75km/hで走っていても追い越されることは珍しくありません。
会社などで同僚と話す際、もしお目当ての同僚に先客がいて話していた場合、先約がなければ絶対に割り込んではいけません。
自分にどんなに緊急の用事でも、横で先客の話が終わるのを待たなければなりません。
もし割り込むと、露骨に嫌な顔をされるので注意が必要です。
しかし、先約があれば「○○時に話す約束しているから」といって堂々と割り込むことが許されます。
スイスの人と話をしているとよく「プライオリティ」という言葉がでてきます。
複数の仕事を同時にこなすことはあまり得意ではなく、一つの仕事を終えてから次の仕事にとりかかかるよう教育を受けているためです。
まだ手持ちの仕事を抱えているときに別の話をしても拒否反応を示すことが多いので、手持ちの仕事が終わるタイミングを見計らって、次の仕事を頼むといった工夫が必要になります。
自分の仕事はしっかりこなす。人の仕事には踏み込まない。
仕事をしているスイス人は皆プロ意識を持っています。
基本的にはどんな仕事をするにしても教育を受ける必要があります。
例えばレストランでの接客などについても、日本では未経験の人や学生さんのアルバイトを採用することは一般的ですが、スイスの場合はどんな仕事であってもまず学校で職業訓練を受け、修了証明を発行してもらって初めて採用されます。
このような事情から、少し大きめの町には職業訓練校が設置されているのもスイスの特徴です。
企業の採用は、仕事内容と労働時間を記載したJob Description(JD)をベースに契約します。
仕事はJDに記載されていることがすべてで、記載されていないことについては本人も気にしません。
一方、記載以外の仕事に踏み込むことは、その仕事で採用された人の仕事を邪魔していることになります。
仮に成果が出たとしても評価されることはなく、JDに記載された内容以外に時間を使ったということでマイナス評価になることもあります。
自分のした仕事が会社全体にどのくらい貢献しているかを考慮している人は少なく、とにかく自分の責任範囲をきちんとこなすことを重視します。
会社全体の業績に関してはそれを考える人の仕事であり、自分の仕事ではないと考える人が多いです。
日本では一度就職してしまえば社内ローテーションで色々な仕事を経験することが一般的ですが、他企業への転職のハードルはまだまだ高いです。
スイスでは一度始めた仕事から他の職種に移ることはなかなか容易ではありませんが、同じ職種であれば他の企業にも割と簡単に転職することができます。
初対面の人にもフレンドリー
人口が増え続けている理由の一つかもしれませんが、スイスの人はとてもフレンドリーです。
散歩中、見知らぬ人に会っても目が合うとにっこり微笑んでスイス特有の挨拶「Gruezi(グレッツィと発音します)」で声をかけてくれます。
横断歩道に歩行者が立っていると、わざわざ車を停車して道を譲ってくれます。
狭い道を歩いていて、向こうから車が来たとき、ちょっと横に避けるとドライバーが微笑みながら通りすがりにピッと人差し指を立てて挨拶してくれます(ちなみに日本の学校で挙手するときに行う、手のひらを相手に見せて腕を伸ばす挨拶はナチスドイツでの挨拶を連想させるということでドイツ語圏ではNGです)。
この特徴は言葉の使い方にも表れています。
日本では当たり前の敬語の使い分け。実はドイツ語にも同じように敬語があります。
ドイツ語では目上の人やあまり親しくない人と話すとき、相手をSie(発音:ジー)と呼び、親しくなったときにdu(発音:ドゥー)に切り替えるルールがあります。
このルールはドイツでは結構厳格に機能しており、Sieからduに切り替えるときは「これからお互いにduで呼びあっても良いか」とお互いに合意する儀式的なイベントが持たれます。
しかし、スイス人は見知らぬ人に対してもduで話しかけることが多いです。
例えばレストランのウエイトレスやスーパーのレジの女性などがお客さんに対してduで話しかけます。
これはドイツから来た人たちには信じられない無礼な行為に見えるようです。
スイスでは最初からduで呼び合うことでコミュニケーションの垣根を最初から下げておく、もしくは「どうせ後でduに切り替えるのであれば、切り替えの儀式も億劫だし恥ずかしいから、最初からduにしておこう」という意図からこのようなことになっていると思われます。
しかし、相手をduで呼んだからといって「全部対等です」というわけではなく、相手が目上の場合、相手の立場をきちんと配慮した発言をします(でも相手の呼称はduです)。
このように中途半端なスタンスで自分と相手のポジションをうまく取りながらコミュニケーションを取る辺りは、日本の「内と外」文化を連想させ、興味深いものです。
家族との時間を大切にする
スイス人は家族と過ごす時間を非常に大切にします。
例えば海外出張に行く場合でも、週末には家に帰れるような日程を調整しますし、夕食を家族全員でとるのは当たり前です。
スイス人は基本的には朝方の生活を送っており、小学生くらいの子供ですと、夜7時もしくは8時頃には就寝です。
家族と夕食を一緒に食べることは生活の重要な要素の一つですので、通勤時間が1時間を越えるような会社に勤めることはほぼ皆無で、30分以内で通える近隣の会社を選びます。
また、日本とは異なり、会社からは通勤費が支給されないことが一般的ですので、それも近くで仕事を探す一つの理由です。
スイス人は散歩が大好きです。
特に、日曜日はお店が全部クローズしていることもあり、日曜日に天気が良いと家族全員で散歩やサイクリングを楽しむ姿をよく見かけます。
小さい子供連れの家族はもちろんですが、中学生や高校生くらいの子供たちも両親や祖父母と一緒に談笑しながら散歩する光景は心が暖まります。
強面の人と話す時も、家族の話題になると目が綻びますので、家族に関する良い質問をいくつか準備しておくのはスイスの人と仲良くなるための良い方法としてオススメです。
休暇は最優先の課題
改めていうまでもなく、ヨーロッパ人にとって休暇は最大の関心事の一つです。
スイス人ももちろん同様で、休暇のプライオリティは非常に高いです。
年が明けるといつ長期休暇を取るかを決め、上司に連絡します。
会社から長期休暇の取得スケジュールを聞いてくる場合もあります。
1年に1度は2週間続けた休暇を取ることを推奨する、と会社の就業規則に記載されていることもあります。
「今年はどこでどう過ごすのか」という質問はスイス人と良いコミュニケーションを取るための便利なツールです。
恐らく胸を張って「今年は・・・」という話を始めることでしょう。
年間の有給休暇付与日数を従業員がすべて使い切ることは会社の義務です。
日本と大きく異なるのは、有給休暇は「楽しむための休暇」であることです。
日本では有給休暇は病気やケガの場合に使うものという認識が強いですが、スイスでは病気の場合は有給休暇とは別枠で病気欠勤が付与されます。
これにはいくつか理由がありますが、
- 病院に行くと医療費が高くつくこと
- かかりつけ医制度により主担当医のスケジュールによっては診てもらいたいときに診てもらえないことが多い
という事情によります。
ともあれ、「どのように休暇を過ごすのか」を知ることで、その人が「何を大事にして生きているか」を知ることができますので、休暇に関する話題はいくつか準備しておきましょう。
コミュニティでの付き合いを大事にする
スイス人は地元のコミュニティをとても大事にします。
先に説明したように、少し都市部を離れると、仕事も生活も生まれ故郷で完結する地元志向の人たちが多いためです。
例えば地元の消防団等での活動には積極的に参加しますし、2月に各地で行われるFasnachtというお祭り(青森のねぶた祭りや広島のフラワーフェスティバルのようなイメージです)では多くの地元の人がパレードに参加します。
時間的、経済的な理由で転職する場合でも、スイスの人は自宅近くの会社を希望することが多いです。
ですので、地域における自分の評判は非常に重要になります。
転職先に自分の近所の住民が勤務していることはザラなので、自分の評判が良いとそうした個人的な付き合いから引っ張ってもらうこともあります。
近隣での自分の評判が悪いと、近くではなかなか転職先が見つからず、少し遠くに行かないといけなくなります。
そうした背景がありますので、争いごとは極力避けようとすることが多いです。
意見が対立した場合でも、相手を怒らせないようなものの言い方を工夫しますし、確約が難しいと思った場合には相手が誰であっても「トライはするが、約束はできない」とはっきり言います。
これは「今恥をかいたとしても、嘘つきのレッテルを貼られるよりマシ」という考え方からきているものです。
スイス人の特徴まとめ
スイス人7つの特徴と性格を説明しましたが、いかがでしたでしょうか?
仕事に対する考え方は違いますが、ルールをしっかり守り、他人に優しいあたりはスイス人と日本人、お互いよく似ていると感じませんか?
基本的にまじめなスイス人。日本人としても理解しあえる部分が多く、付き合いやすい人たちです。
スイス人とのコミュニケーションに参考にしてみてください。
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