ヨーロッパの非英語圏の国のなかでも、英語を流暢に話す人の割合が多いスウェーデン。
そんなスウェーデン人がどのような教育を受けているのか興味がありませんか?
スウェーデンの教育制度について知ることは、将来スウェーデンに移住して家庭を持ちたいと考えている人や、スウェーデン留学を計画している人の役にも立つことでしょう。
それではさっそく、スウェーデンの初等教育から大学などの高等教育まで順を追ってご紹介します。
スウェーデンの初等教育
スウェーデンの初等教育は
- Förskolan
- Förskoleklass
- Grundskolan
の3つから成り立っています。
日本の初等教育と異なるのは、子どもの能力や親の判断によって就学の年齢を決められるところです。
親や学校側が子どもに十分な能力があると判断した場合には、決められた就学年齢より1年早く学校に通い始めることができます。
Förskolan (フォルスコーラン) | 1-6歳 | |
Förskoleklass (フォルスコーレクラス) | 6-7歳 | |
Grundskolan (グルンドスコーラン) | 7-15歳 | Årskurs 1 Årskurs 2 Årskurs 3 Årskurs 4 Årskurs 5 Årskurs 6 Årskurs 7 Årskurs 8 Årskurs 9 |
Förskola (フォルスコーラ)
日本の保育園・幼稚園にあたるものがフォルスコーラです。
自治体が運営する公立のものと私立の両方があり、私立の場合は1歳児から通うことができる一方で、公立の場合は3歳児からの受け入れとなっています。
入園の条件や費用は両親の収入や子どもの数によって異なりますが、自治体によって定められている上限金額以上を支払う必要はありません。
日本と大きく異なるのは、Skola(スコーラ:学校)と呼ばれているように幼児教育を担う要素が強く、Förskollärare(フォルスコーラレーラレ)と呼ばれる幼児教育担当の先生といわゆる保育士のようなBarnskötare(バーンショータレ)が協力して子どもたちのお世話をしているという点です。
スウェーデンの学校庁(Skolverket: スコールヴェルケット)はフォルスコーラにも指導要項を定めているため、学校はそれにしたがってカリキュラムを組んでいます。
Förskoleklass (フォルスコーレクラス)
Förskoleklass は、6歳から7歳の子どものための初等教育への準備コースの役割を果たしています。
以前は必修ではなかったものの、2018年から教育要項が変わりグルンドスコーラン就学前の6歳児の必修課程となりました。
しかし、1年早くグルンドスコーランで学び始める子どもの場合は、フォルスコーレクラスに通う必要ははないようです。
Grundskolan(グルンドスコーラン)
日本の小学校と中学校を合わせた義務教育課程がグルンドスコーランです。
義務教育なので、どの子どもも無料で教育を受ける権利があります。
秋学期・春学期の2学期制で、8月中旬からクリスマス前まで続く秋学期が新学年の始まりです。
その年の12月までに7歳になる子どもたちが新入学生となりますが、両親の希望があり能力が十分とみなされれば6歳からでも入学することが可能です。
春学期はクリスマス休暇の後(1月第1週)から6月の中旬まで続き、その後は夏休みが始まります。
正確な時期は市町村によって異なるものの、10月下旬には秋休み、2月下旬にはスポーツ休み(課外でウィンタースポーツを楽しんでもらうための休み)、またイースター休みもあります。
基本的にグルンドスコーランは公立学校が多数を占め、住んでいる場所の近くの学校に通うのが普通です。
日本のように学区の指定などはなく、公立校は同じ市内であれば自分にあったカリキュラムを提供している学校をどこでも選ぶことができます。
スウェーデンのグルンドスコーランの興味深い点は、以下の点です。
- 飛び級がある
- 義務教育課程を修了するための成績を十分に取れていない場合は1年留年する場合がある
- 共通の指導要項はあっても、学校によって異なる様々なカリキュラムを提供している
例えば、必修科目となっている英語は授業を開始する学年が学校ごとで大きく異なります。
だからこそ保護者はどの学校がいちばん子どもに合っているか授業の内容を比較し学校選びを行うのです。
グルンドスコーランの教科一覧
グルンドスコーランで子どもたちが学ぶ科目をみてみましょう。
Bild (美術) | Biologi (生物) | Engelska (英語) |
Fysik (物理) | Geografi (地理) | Hem- och Konsumentkunskap(家庭) |
Historia (歴史) | Idrott och hälsa (保健体育) | Kemi (化学) |
Matematik (算数) | Moderna språk (第二外国語) | Modersmål (母国語) |
Musik (音楽) | Religionskunskap (宗教) | Samhällskunskap (社会) |
Slöjd (図工) | Svenska (スウェーデン語) | Teckenspråk för hörande(手話) |
Teknik (技術) | Dans (ダンス) |
日本では化学や物理などは理科として一つにまとめられているものの、グルンドスコーランの教育要項では科目が細分化されていることが分かります。
英語はもちろん、語学の授業も充実していて、移民の親を持つ子ども向けの母国語のクラスや、希望者にむけた第二外国語のクラスもあります。
スウェーデンの中等教育
義務教育であるグルンドスコーランを修了後には、日本の高校にあたるジムナシエスコーランで学ぶことができます。
日本の高校とはどのような違いがあるのか見ていきましょう。
Gymnasieskolan(ジムナシエスコーラン) | 16-19歳 | Årskurs 1 Årskurs 2 Årskurs 3 |
ジムナシエスコーランには18の異なるプログラムがあり、生徒は興味のある分野や将来就きたい職業をもとに自分に合ったコースを選んでいきます。
学費は義務教育ではないので、グルンドスコーランのように無償にはなりません。
日本のような入学試験はなく、グルンドスコーランの成績を元にして入学の可否が決まります。
どのプログラムでもスウェーデン語・英語・数学においてGodkänd(日本の成績のつけかたでいうと優か良のようなもの)を取るのは絶対条件で、あとはプログラムごとに決められた科目数にGodkändを取れている必要があります。
スウェーデンでは学校での日々の積み重ねが大事ということですね。
以下がジムナシエスコーランのコース一覧です。
難易度は違うものの、学ぶ科目が中学校のものとほとんど変わらない日本の高校に比べると、学ぶ内容が専門的で将来の仕事に直結するものも多く見られるのが、スウェーデンのジムナシエスコーランの特徴だといえます。
Nationella Program (ナショネッラプログラム)
Barn- och Fritid (幼児教育) |
Bygg- och anläggning (建設) |
Ekonomi (経済) |
El- och energi (電気・エネルギー) |
Estetiska (アート) |
Fordons- och transport
(車両・交通) |
Handels- och administration (貿易・行政) |
Hantverks (手工芸) |
Hotell- och turism (ホテル・ツーリズム) |
Humanistiska (人文学) |
Industritekniska (インダストリアルエンジニアリング) |
Naturvetenskap (自然科学) |
Samhällsvetenskap (社会学) |
Teknik (テクノロジー) |
VVS- och fastighet (配管・不動産) |
Vård- och omsorg (社会福祉) |
このほかに
- Riksrekryterande utbildningarと呼ばれる職業訓練コース
- ジムナシエスコーランで学ぶのに成績が足りなかった人やスウェーデン国外で義務教育を終えて写り住んできた移民の生徒むけのIntroduktion programmというコース
も用意されています。
スウェーデンの高等教育
ジムナシエスコーランの課程を修了すると、次に待っているのは大学(universitet)やホグスコーラン(högskolan)です。
大学やホグスコーラン入学においても入学試験などはなく、ジムナシエスコーランでの最終成績と全ての課程修了後に受けるテスト(Yrkesexamen, Gymnasienexamen,, högskoleförberedande examenなどプログラムによって名称は異なる)の点数によって進学できる大学やコースが決まります。
大学(Universitet)
スウェーデン国内には全部で16大学しかないものの、一つ一つの大学の規模が大きく、学士課程から修士課程、博士課程まで様々な科目を学ぶことができます。
日本の高校生は卒業後すぐに進学をするのが普通ですが、弁護士や医師、教師など大学卒業の資格が必要な職に就きたい人たち以外は、スウェーデンでは1年間好きなことをしたり働いたりしてから大学に進学するというのも珍しくありません。
スウェーデン国籍があれば学費はかからず、教材費や生活費などの奨学金を受け取ることもできます。
奨学金は給付されるものと返済が必要なもの両方がありますが、受け取れる金額は個人の経済状況や学ぶコースなどによって異なります。
大学のある都市には学生向けのアパートなども建てられており、学生が勉強しやすい環境や制度が整っていると言えるでしょう。
しかしながら、日本に比べると大学を中退してしまう学生が少なくないのがスウェーデンの現状です。
途中で興味がなくなってしまったり、大学を卒業をしなくても夏休み中のインターンシップを通して職を得たりしまうと、勉強を続ける意味を見出せなくなってしまうのかもしれません。
ホグスコーラン(Högskolan)
スウェーデン国内に31ほどあるホグスコーランは大学と同じく高等教育機関ですが、博士課程はありません。
なかにはYrkehögskolanと呼ばれる特定の職業を目指すための職業訓練コースを主に提供している学校もあります。
日本でいう専門学校のようなもので、建設・法律・医療・ホスピタリティーなどあらゆる分野があります。
学費や奨学金についても大学に通うのと同じような仕組みとなっており、将来就きたい職業が決まっている場合にはホグスコーランは就職に有利な選択と言えるかもしれません。
スウェーデンでも日本文化を子どもに教える、補習校
スウェーデンに子どもと一緒に移住したり、移住した後に子どもをもったら、その子どもたちはスウェーデンの学校に通うことになります。
しかし、日本語の読み書きや日本文化にもきちんと学んでほしいという保護者も多いことでしょう。
スウェーデンではストックホルムとヨーテボリに日本人補習学校(Japansk skolan:ヤポンスクスコーラン)が開かれており、週に1度国語・理科・社会・音楽などの授業や文化活動を行っています。
対象年齢はストックホルムでは日本の小学1年生から中学3年生まで、ヨーテボリは幼稚園から小学校6年生までで、補習校で学ぶには入会金と学費を支払う必要があります。
もし日本人補習校のない都市に住んでいても、移民の子どもは両親の母国語を学ぶ権利があるとされているため、自治体に母国語のクラスを開くよう申し込みをすれば日本語の授業を受けることも可能なようです。
移民や成人向けの教育制度も充実
これまでご紹介した教育機関以外にも、スウェーデンには成人向け教育を行っている学校が多くあります。
日本人がスウェーデンに移住した場合にまず通うことが出来るのは、SFI(Svenska för invandrare)という移民向けのスウェーデン語のクラスでしょう。
住民登録を済ませた移民であれば誰でも無料で受けることができるのですが、住んでいる自治体の中であれば学校やコースの時間帯なども自分で選ぶこともできます。
会話はもちろん、読み書きもしっかりと学ぶコースなので、日本人はもちろん、多くの外国人がスウェーデンで生き抜くためのスウェーデン語力をSFIを通して学んでいます。
スウェーデンの教育システムまとめ
今回は、学校のしくみや履修科目、学費など、日本とは大きく異なるスウェーデンの教育制度をご紹介しました。
特にジムナシエスコーランには日本の普通科の高校では考えられないような専門的なコースが多くあり、興味深かったのではないでしょうか。
ホグスコーランなどでは、学校が職業訓練コースなど学びを仕事に繋げる手助けをしているのも日本の学校とは少し異なる点です。
意欲がある人には年齢に関係なく学ぶ環境を与えてくれるスウェーデンの教育制度。
移住するきっかけがどんなことであれ、スウェーデンで何かを学んでみるのはスウェーデン生活をよりよくする何かのきっかけになるかもしれません。
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