社会福祉制度が整っていることで知られるスウェーデン。
実際にスウェーデンで生活をして怪我や病気になったらどうなるのでしょうか?
異国の地で病気や怪我をするのは心細いもの。
ここでは医療システムや健康保険、医療費などスウェーデンの病院事情についてご紹介し、いざというときのためにどうすればよいかを押さえたいと思います。
スウェーデンで病気になったら
スウェーデンは豊かな社会福祉制度で知られていますが、日本人でも労働ビザや配偶者・パートナービザでスウェーデン国内に滞在している場合はスウェーデン人と同じ医療健康保険が適用されます。
短期間の留学などでスウェーデンに滞在している場合は、ビザ申請の条件に個人で健康保険に入ることが条件となっているので、国内の保健制度は使用できず、医療費は全額負担することとなります。
どうやって国民健康保険に加入するの?
スウェーデンでは、日本の個人ナンバーのようにpersonnumerという生年月日に4桁の数字を加えた番号がスウェーデンに住民登録をしている全員に割り当てられています。
日本人の場合はスウェーデンに移住する際に、スウェーデン税務局でを発行手続きを行います。
この番号で公共機関が個人情報の管理をしており、この番号を所持している限りどんな人でもスウェーデン国内で同じように医療保険制度を受けることができるのです。
スウェーデンの医療システム
次にスウェーデンの医療システムはどのようになっているのか見てゆきましょう。
地方自治体によって異なる医療制度
まずスウェーデンの医療システムで最も特徴的なのは、各医療機関は国ではなく地方自治体によって運営されているということです。
もちろん国が定めた医療制度に関する基本方針やガイドラインがあるので大きな違いが出ることはありませんが、診療所の種類や数が地域によって異なるのは確かです。
公共の診療所(vårdcentral)
どの地方自治体でも必ずあるのがvårdcentral (hälsocentralとも)です。
vårdcentralは総合的なクリニックのことで、内科や外科など各科には分けられていません。
風邪や体の不調など緊急性の低い診察を受けたい場合に電話やインターネット上で予約をして診察時間を決めるのが普通です。
スウェーデンで住民登録を済ませると地方自治体の中のどのvårdcentralを選ぶか書類が送られてくるので、かかりつけの診療所を選ぶことになります。
一度選んだらずっと同じ診療所に通わなければならないということはなく、ウェブサイトなどから簡単に変更をすることができます。
総合病院 (sjukhus/ lasarett)
各地方自治体にはもちろんクリニックだけでなくsjukhusやlasarettと呼ばれる総合病院もあります。
総合病院には緊急窓口(Akutmottagning) があり24時間いつでも診察を受けることができるほか、病院内は各専門の科に分かれています。
手術や入院が必要になった場合やより専門的な診察・治療を受けたい場合はsjukhusを利用することになります。
公共の診療所(vårdcentral)と総合病院(sjukhus)はどの自治体にもある医療機関ですが、婦人科 (barnmorskemottagning)や小児科(Ungdomsmottagning)、リハビリ専門の診療所や医療施設が整っている地域もあります。
基本的には自分の住む町が運営する医療機関を利用するものの、特別な治療などで近隣の医療機関では治療が受けられない場合は他の地方自治体の医療機関を利用することもできます。
スウェーデンの気になる医療費
日本では診察や治療にかかった費用の3割を支払うのが一般的ですが、スウェーデンでは1回の診察や入院における費用の上限金額が決められていて、vårdcentralでの診察ではワクチン摂取などを除いては300クローネ、日本円で3600円程度(1クローネ12円で換算)以上を払うことはありません。
医療費も地方自治体によって細かな違いはあるものの、入院費用や重たい病気などをしている場合などの1年間に支払う医療費、薬代の上限金額などはどこの地域でもほぼ同じように定められています。
医療費の支払い上限金額の例 (ストックホルムの場合)
vårdcentralでの診察料 | 300kr (3,600円) |
小児科・婦人科での診察料 | 350kr (2,800円) |
その他専門科での診察料 | 350kr (2,800円) |
救急窓口での診察料 | 400kr (4,800円) |
1日の入院費用 | 100kr (1,200円) |
年間医療費 | 1150kr (13,800円) |
年間処方薬費用 | 2300kr (27,600円) |
設備などの問題で治療に近隣の地方自治体の医療機関を使用せざるをえない場合は、通院にかかる旅費も保険でまかなわれることがあります。
ただし、美容外科など病気や怪我の治療以外にかかる医療費においては費用を個人で全額負担する必要があります。
処方薬であっても薬の種類によっては費用の上限金額には換算されません。
私立病院で治療を受けることも
診療所は公立のものだけあるわけでなく、私立の診療所を利用する人もいます。
私立の診療所であっても地方自治体の支援を受けている場合は、公立の診療所とほぼ変わらない料金で診察を受けられます。
もちろん歯科医院でも保険が適用できる
スウェーデンでは虫歯治療などの歯科治療にかかる費用も健康保険によって費用が補助もされており、生まれてから20歳になる年までは歯科治療代を一切払う必要がありません。
また、一般的な医療費の上限金額とは別に、歯科治療費にも年間3000kr (36,000円程度)までと支払い上限金額が定められています。
この他にも、費用が15000kr (18万円程度)を超える治療を受ける際には85%も割引されるというきまりもあります。
歯列矯正などの治療は子どもの場合は専門家の診察を受けた後、矯正を行う理由によっては無料になる場合もありますが、大人の場合は保険が適用されないケースがほとんどとなっています。
もしもの時の医療保険は?
個人で医療保険に加入するひとたちが日本ほど多いとは言えませんが、スウェーデンの保険会社にも医療保険はあります。
診察代・薬代・入院費用などが保険でまかなわれるのですが、医療費の支払上限金額が決まっているスウェーデンではそこまで保険の必要性を感じないようにも思われます。
子供がいるひとなどは入院している間働けない時のためなどに保険に加入しているのかもしれません。
病院の予約から受診まで
システムをひととおり理解したところで、実際にどのように病院の予約から受診までを行えばよいのか見ていきます。
1.まずは診察の予約をしよう
病院で診察を受けるには、電話かインターネットで予約をする必要があります。
スウェーデンで初めて病院で診察を受けるときに便利なのが1177という医療機関の案内などをしているウェブサイトです。
1177のウェブサイトから診療所を検索・予約をすることができるほか、名前と同じ1177に電話をして予約をすることも可能です。
スウェーデンでは救急車を呼ぶのに112へ電話をしますが、救急車を呼ぶほどの症状なのか迷ったときも1177に電話をして指示を仰ぐこともできます。
先述のとおり地方自治体によって医療システムが少し異なるため、1177では地域ごとにページが分けられていて、地域ごとの医療機関やシステムについての情報を網羅することができます。
また、家庭の医学百科のような項目もあり、症状からどんな病気の可能性があるか調べるのにも役に立ちます。
診察の予約を取る際にどのような症状が出ているか説明しなければならないときもあるので、1177の情報を参考にしながら説明するのもよいでしょう。
1177 Vårdguiden (スウェーデン語以外にも英語での記載もあり)
https://www.1177.se/
2. 受診と支払い
診察の予約をした後は時間通りに診療所または病院に行くだけです。
日本の病院と同じように受付があるので、そこで名前と予約の時間を伝えます。
身分証の提示も求められるのでスウェーデンのpersonnumerが書かれたIDカードを忘れずに。
予約をしたにも関わらず行かなかった場合は、診察を受けていなくても料金が請求されることがあるので注意が必要です。
都合が合わなくなってしまった場合は予約の際と同じように電話かウェブサイトから予約の取り消しか変更を必ず行いましょう。
カードでの支払いやウェブ上で請求書を支払いするのが主流になっているスウェーデンでは、医療費においても同じように支払いが行われています。
Vårdcentralなどの診療所では日本と同じように診察後にカード払いができるほか、別途料金を支払うことになるものの、後日請求書を送ってもらうことも可能です。
期限までに支払いを完了しなかった場合は1日の延滞につき60kr程度の延滞料が加算されます。
3.薬を処方されたときは
日本では病院のすぐ近くに調剤薬局があり、そこで薬を処方してもらうのが一般的ですが、どの薬局でも薬を受け取ることができます。
薬局では身分証を提示し、自分のpersonnummerを伝えれば薬剤師が処方箋をシステム上で閲覧できるので、書類などを持っていく必要はありません。
持病などで常に服用の必要がある薬などは1年分の薬が処方されることもあり、その場合は定期的に薬局で受け取りをするか、ネット注文をして配達してもらうことも出来るようになっています。
スウェーデンの医療システムの問題点
医療費や薬の費用の支払い上限金額などは良いシステムであるといえますが、スウェーデンの医療システムで問題となっているのは診察を受けられるまでの所要時間です。
風邪をひいたり、体の不調を感じて診察などを受けたいときは、通常の診察を希望する限り診察時間を予約しなければならず、必要なときにすぐに診察を受けられないのはもどかしいものです。
もちろんすぐに手当てを受けなければならない場合などは救急窓口を利用することも可能ですが、救急車で患者が運ばれてくる救急窓口に自らの力で病院に来られるひとが列をなすようなことはあってはなりません。
歯科治療の診察予約も待ち時間の長さは問題となっています。
虫歯がないか検査を受けたいので予約をしようとしたら1ヶ月先の予約しか取れなかった..などというのは決して珍しいことではありません。
新しい医療のかたち
ここ最近普及しはじめたのが、KRYという携帯のアプリを使って医者と直接話をし、いつでも診察が受けられるというシステムです。
また、私立病院などでは専用のアプリはないものの、電話やビデオ通話などで簡単な診察を行っているところもあります。
例えば、スウェーデンでは比較的広く普及している避妊用ピルの処方を受ける際などは、予約をしたり診療所で待つよりはアプリを使ったほうが簡単であるといえます。
触診や細かな検査が必要な怪我や病気の場合は遠隔診察を受付けていませんが、精神科医によるセラピーなどに通っているひとなどは家から出ることなく診察を受けるのはとても便利ではないでしょうか。
私立診療所でこのようなサービスがもっと広まれば病院の待ち時間の問題が緩和され、多くのひとが必要なときに必要な医療サービスを受けることができるかもしれません。
KRY(ビデオ通話で診察を受けられるアプリ)
https://www.kry.se
Min doktor (遠隔診察を行っている病院案内)
https://www.mindoktor.se
スウェーデンの医療システムと事情まとめ
スウェーデンの医療システムや病院事情について見ていき、実際に診察予約から受診までの手順もご紹介しました。
移住した先で初めて病気になったり怪我をした時はどうしたらよいか分からず不安になってしまうものですが、ひととおりの手順やどこで情報を得られるかを知っておくだけで、いざというときに対応しやすいのではないでしょうか。
病院に行く必要がなく健康でいるのがいちばん良いですが、今回ご紹介した内容が今後の役にたてば幸いです。
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