家族で南アフリカへ長期滞在、移住するとなった時、子どもの学校教育をどうするか?検討しておきましょうl。
日本と南アフリカでは教育制度が異なるため、現地に到着して慌てないためにも、教育システムを理解しておくことは重要です。
実際の現地教育事情をお伝えします。
南アフリカの教育制度と事情
南アフリカの教育制度は少し異なり7・5・4制度を採用し、7歳〜16歳までを義務教育としています。
小学校が7年生まであり、その後は高校5年生、大学・専門学校となります。
学期は1学期〜4学期まであり、新学期は1月からスタートします。
- 1学期:1月〜3月
- 2学期:4月〜6月
- 3学期:7月〜9月
- 4学期:10月〜12月
学期の間には日本と同じように9月〜10月の春休み(約10日間)、12月〜1月の夏休み(約1ヶ月)、秋休み(約7日間)、冬休み(約3週間)の学校の休みがあります。
また、80%以上がキリスト教を信仰するため、3月〜4月には1週間のイースター休暇が設けられています。
※南半球に位置するため、季節は日本と反対になります。
学校は私立と公立に分かれ、公立の学校は9つの州ごとに教育を管轄
・公立
人種差別がなくなったといっても、公立でも白人系と黒人系にわかれているのが現状です。
授業料は州や地域によって異なり、都市部は公立であっても授業料が高く設定され、決して安いとはいえません。
黒人が多く通う学校は、授業料が無料だったり低額ですが、白人中心の公立学校は、1ヶ月約5,000円(R700)〜13,000円(R1700) が目安です。
授業料は学校の運営委員会(日本でいうとPTAのようなもの)が毎年決めています。
また、学校への送迎は基本的に親が行いますが、黒人が通う公立学校はスクールバスを出して生徒の送迎を行っています。
・私立
授業料は公立の2倍ほどになりますが、運動グランドや学校内の設備が公立より充実しています。
カリキュラムは公立とは異なり、独自のカリキュラムを用い授業を行っています。
クラス内の生徒数も少人数なため、一人一人の生徒に注意が行き届きやすいのが特徴です。
授業料は約22,000円くらいからで(R3000〜)。都市部では更に高い授業料となっています。
近年では裕福な黒人も増加傾向にあるので、私立学校に通う黒人も見かけます。
授業と言語
南アフリカは11の公用語が話されていますが、学校では英語かアフリカーンス語のどちらで授業を受けるか選択できます。
アフリカーンスが分からないと授業の内容が理解できないので、日本人は英語のクラスに入ることになるでしょう。
また、英語のクラスを選択しても現地の言語であるアフリカーンスやコザ語は学ぶことになります。
学区はどのように決まる?
公立学校に入学希望の場合、現地の住所によって申請できる学校とできない学校があるので注意しましょう。
公立でも人気の学校は入学の競争率が高く、欠員待ちということもあります。
引越し先の住所が分かったら、自分のエリアの管轄の公立学校に書類を提出するようにしましょう。
申請書の「Feeding area 」という部分に自分の住んでいるエリア名を記入します。
私立学校はエリアに関係無く申請が可能です。
南アフリカの教育水準や格差は?
南アフリカの教育水準は、他の国と比較すると決して高いとは言えないのが実情です。
以前は教育水準が高く、世界的に優秀な医師やロケットサイエンティストを世の中に送り出していましたが1995年以降、政治的な背景から徐々に下がり始め、高い教育水準を保つのが難しくなりました。
大学を卒業して学位を取得している白人は約20%で、黒人の場合5%以下で高い水準とはいえません。
更に人種によって大学を卒業できる合格ラインが違うのも南アフリカならでは。
例えば、医学部卒業ラインが白人の場合80%以上だとしたら、黒人では約70%を合格としています。このように人種によって合格ラインが異なるのです。
教育格差はあるのか?
アパルトヘイトが実施されていた時代は、黒人、白人、カラード、インド人によって教育方針や制度などが違っていたため、民族によって教育レベルにも格差がありました。
現在は人種差別がなくなったため、教育制度は統一されどの民族も同じような教育が受けられるようになりましたが、富裕層と貧困層の学校では教師の質が異なり、黒人と白人によって教育レベルにも差があるのが現実です。
特にスラム街の貧しい地域にある学校は、白人地域にある学校と比較すると授業や教師の質が劣ると言われ、黒人の多くは学校を卒業できず退学になる人もいます。
幼稚園・幼児教育
就学前は義務教育ではないので、保育園や幼稚園に通わない子どももいますが、共働きの夫婦が多いため、子どもを保育園や幼稚園に預けるのが一般的です。
現地では保育園のことをPreschoolまたはPlay Schoolといい、幼稚園はPrePrymary school、Nursery Schoolと呼んでいます。
就学前の6歳以下の子どもを対象とし、主にアルファベットや数の数え方、お絵描きなど就学前に必要な事柄を学びます。
評判の良い幼稚園や小学校附属の幼稚園は人気があるので、早めに連絡をしてクラスの空きを確認しましょう。
小学校〜高校教育
初等教育(Primary School)
7歳〜13歳の7年間。現地ではGrade1~Grade7で表します。
初等教育でも学力試験があり、合格しないと進級できず留年となります。
現地で留年はそれほど恥ずかしいものではなく、ギリギリで合格した場合、親の希望で留年させることもあります。
中等教育(High School)
14歳〜18歳までの5年間。Grade8~Grade12。
中等教育の最終学年Grade12には、1年に1度の国家試験(現地ではマトリックと呼ばれています)があり、試験に合格するとHigh School卒業と同等の資格が得られます。
試験の結果により大学や専門学校への進学も認められますが、希望する学部によっては学力や能力が伴っているか試験を受ける必要があります。
これは大学に入学した時に、授業についていけるかということを意味します。
大学への進学
以前はマトリックに合格すれば入学試験なしで大学に進学ができましたが、近年では合格基準値があまりにも低いため、入学試験や補習を受けて合格した者のみが入学を許可されます。
学部についてですが、医師や薬剤師など医療系の学部は成績が優秀でないと入学が許可されません。
入学はマトリックの試験結果や学校の成績で決まるので、医療系の仕事に就きたい人は常に成績を上位にキープすることが大切です。
初等教育や中等教育で習う主要の教育科目
ここでは初等教育や中等教育で習う主要科目についてまとめました。
- 英語
- アフリカーンス語
- コザ語
- 数学
- 物理学
- 化学
- PSW(生命科学)
- 自然科学
- 社会科学
- 歴史(南アフリカの歴史や世界の歴史)
- 地理(南アフリカの地理と世界の地理)
- テクノロジー
- 体育
- 音楽
- 美術など
中等教育は、経済学や経理などオプションがあり好きな科目を学ぶことができます。
南アフリカでの学校生活はどんなもの?イメージしてみよう
では、実際の学校生活を見ていきましょう。
下校時間は学年によって違いますが、小学校3年生までは13:30くらいまでに終了する学校が多いです。
8:00までに登校。
※南アフリカは親御さんが、子どもを学校まで送り迎えするのが一般的です。学校は07:00前から門が空いています。
8:10〜10:20 授業 (2教科レッスン)
10:25〜10:40 休み時間
10:45〜13:00 授業(2教科レッスン)
13:05〜13:15 休み時間
13:20〜14:05 授業(2教科レッスン)
14:10〜下校時間
※2時間の授業時間内に数学や英語など違う教科を学びます。
親が子どもを車で送迎するので、登下校時間は車で混雑しています。
アフターケア
仕事の都合で迎えに来れない場合、子どもはアフターケアに行き、親の仕事が終わるまで待つことになります。
日本でいうと学童クラブのような位置づけになります。
学校のアフターケアは前もって申請しておかないと入ることができません。
仕事が終日で子どもの下校時間に迎えに来れないときは、早めに申請しておきましょう。
学校のアフターケアがいっぱいで入れなかった時は、個人で行っているアフターケアを探すことになりますが、費用が高いです。
プライベートのアフターケアは学校から離れているため、放課後に部活動のクラスを取っている子どもに対しては、送迎も行っています。
公立学校でも人種によって異なる。子どもが通うとしたら?
家族で長期滞在・移住の場合、どの学校に通うべきか悩みますよね。
「できれば学費の安い学校に通わせたい」というのが親の希望ですが、学費が安い学校の場合、学校の設備が不十分だったり、教師の質に不満足ということもあり得ます。
また、人種差別がなくなった現在でも、公立の学校によっては黒人系・白人系と分かれているのが事実です。
低所得の黒人家族は高い学費が払えないため、学費が安い公立学校や授業料が無料の学校に通わせています。
日本人の子どもが通う場合
日本人の子どもですが、2年〜3年くらいの予定で滞在する駐在員の家族の場合、
- インターナショナルスクールか
- 現地の日本人学校に通う
ことが一般的です。
現地の日本人学校はヨハネスブルグにあるくらいで、ケープタウンにはないのでその場合、インターナショナルスクールを選ぶ人が多い傾向です。
また、公立学校は白人の生徒数が多い学校を選ぶと安心です。
経済的に余裕があるなら私立に通わせても良いですし、公立でも評判の良い学校は多いので、移住が決まった時に、実際に見学に行ったり、現地の人から情報を得るのも選ぶ参考になります。
参考サイト:http://www.jsj.org.za/
日本とは異なる教育環境まとめ
国が違えば事情が異なるのは当然のことです。現地に引っ越してから「知らなかった」ということがないように、日本との違いについて紹介します。
これから移住予定のある方は、参考にしてください。
1.給食はない
日本の学校のように、特別に給食の時間は設けられていません。
自宅からランチボックスを持参して休憩時間に食べたり、学校内にあるキヨスクでサンドウィッチやパイを買って食べます。
ランチボックスの中身はサンドイッチやホットドッグ、ミニバーガーといった主食の他に、スナック菓子、果物類などバラエティーに富んでいます。
ランチの後はすぐ授業が始まり、教室の掃除などはありません。
教室の掃除は生徒さんが帰った後に、学校が雇っているメイドさんが掃除をします。
2.帰りが早い
日本の小学校は給食が終わった後に掃除を行い、午後に2時間〜3時間くらい授業がありますが、南アフリカは休み時間に各自でランチを済ませてしまうので、早めに終わることが多いです。
そのため、午後14時過ぎには学校が終了してお迎えの時間となります。
親の仕事の都合で迎えに来れない子どもは、学校のアフターケアで宿題を片づけたり、遊びながら親の迎えを待ちます。
学校のアフターケアに入れなかった子どもは、私立のアフターケアの迎えを待ちます。
3.宿題が多い、ほぼ毎日ある
現地では小学生低学年であっても、月曜日から木曜日までたくさんの宿題が出されます。
宿題を確認したことを親がサインして、後日担任の先生がチェックします。
宿題は算数(数学)、英語の読み書き、アフリカーンス語、読書などが主です。
4.長期休暇は宿題なし
日常的に宿題は出るものの、夏休みや冬休みなど長期の休みは宿題が出ません。
日本は漢字や算数ドリルや日記、自由研究などさまざまな課題が出ますが、現地の学校は宿題がないので長期の旅行に出かける家族も多いです。
休みの最終日に慌てて宿題を済ませる心配もないので、親は安心して長期休暇を過ごすことができます。
5.テストによって進級が決まる
日本では小学生で留年ということは滅多に聞きませんが、南アフリカは試験や成績が合格ラインに達していないと留年になることがあります。
留年は特に珍しいことではなく、親の希望で進級させない人もいます。留年してもイジメにあったり、色眼鏡で見られることはありません。
6.テスト期間が長い
日本の場合、中学生になってから中間テストや期末テストが実施されますが、現地では小学4年生から1週間〜2週間に渡りテストが行われます。
テストの成績が悪いと留年になるので、子どもは必死になり勉強に励みます。
現地で問題となっている点はある?
・子どもの登下校
日本や先進国の安全な国は公共交通機関が発達しているため、電車やバスを利用して登校することが可能です。
しかし、南アフリカはバスや電車などの公共交通機関が発達していないうえ、子どものみで公共機関を利用して学校にいくのは危険なため、必ず保護者が付き添わなければなりません。
また、自転車や歩行での登下校も事故や誘拐の危険性が高いため、日本のように子ども一人で歩かせることはできません。
学校によってはスクールバスを出していますが、多くの場合、スラム街に住む子どもたちのためや私立の学校が主になります。
一般の公立や私立学校に通う子どもは、親の送り迎えで学校に通っています。
・教員の人数や質
教師になるためには教員免許を取得する必要がありますが、学校によっては教師の免許がなくても働いているのも事実です。
学校の数に対して教員の数が少ないため、免許がなくても経験が豊富にある人や何かの分野に優れていると教えることができてしまうのです。
日本では免許がないと教員として働けませんが、経験があれば教師として教壇に立ててしまいます。
・学校に行かない
貧しい家の子どもは学校に行かず、働きに出て家計を助けたり、ストリートチルドレンになってしまうのも問題となっています。
特にこの傾向はスラム街の子どもに見られる傾向で、「お小遣いあげるから、これを売って来てほしい」と頼む大人もいます。
また、子どもは学校に行かなくてもお金儲けをできる方法を、周囲の悪い大人たちに教わり学校に行かなくなってしまいます。
南アフリカで教育をする5つの魅力
1.のびのび育つ
広々とした大地で自然が豊富で、子どもの遊び場も充実しているので、のびのびと育児ができるのが魅力です。
日本の都心部では住宅事情から、外で遊ばせるのは難しいですが南アフリカは一戸建てに住む家族が多く、どの家も庭が付いています。
芝生に寝転んで子どもと遊んだり、ランチを食べるなどピクニック気分が味わえます。
海や山など自然が豊かなので、子どもの五感を刺激するにも良い環境といえるでしょう。
動物に触れ合う機会が多いのも魅力のひとつです。
2.学業とスポーツのバランスが良い
学業と遊びが両立できるのが魅力といえるでしょう。
日本では優秀な大学進学に向けて、幼稚園の頃から英才教育に熱心な親や、学校が終わっても塾通いなど勉強漬けの毎日で、自由がないような印象を受けます。
学校が終わった後は、友達と遊んだり、スポーツ(部活動)をしたり家族と過ごすなど有意義な時間を過ごせます。
勉強ばかりでなく放課後にスポーツをしたり、プライベートが充実しています。
3.素直でマナーのある子どもに育つ
現地の人はマナーに関しては、子どもであっても厳しいといえます。
子どもの頃から良いことや悪いことを学ぶことができ、マナーや常識のある大人に成長できるのも魅力のひとつといえます。
大人は他人の子どもであっても、悪いことやマナー違反をすれば「これはダメ」ときちんと教えています。
子どもは素直に聞き入れ、反抗することはほとんどありません。
「ありがとう」「ごめんなさい」といった、基本的な挨拶はしっかり身についています。
4.柔軟なコミュニケーション能力
子どもの頃から親を通して、さまざまな人と関わり合いを持つので誰とでも仲良くなることができます。
日本人は知らない人とは極力避けたがる傾向がありますが、現地の人はフレンドリーで誰にでも話しかけ仲良くなります。
子どもは大人を見て育つので、子どもの頃から柔軟なコミュニケーション能力が備わっています。
5.いじめが少ない
現地では、日本のような陰湿ないじめが少ないといえるでしょう。
多少のいじめはあっても、大事に至ることはほとんどなく、先生が指摘したり親と先生がコミュニケーションを取り合い、深刻化する前に食い止めることができます。
教師と親が対等で遠慮なく、何でも話せるのも良い面といえるでしょう。
まとめ
南アフリカは、世界で心臓移植を最初に成功させた医師が存在したなど、教育面では優れた国でしたが、アパルトヘイトを境に徐々に変化が表れ、現在では教育の質の低下が目立つようになりました。
「子どもには良い教育をさせたい」と願うのは親の心境ですが、勉強ばかりが人生ではなくのびのびと育つことも大切です。
南アフリカは、教育面だけに捉われず子どもが自由にのびのび育てる環境があるといえるでしょう。
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