中南米の優等生!アルゼンチンの教育制度とその特徴

アルゼンチンの教育制度

アルゼンチンは中南米の中でもキューバ、ウルグアイ、チリ、コスタリカ、メキシコに並び教育水準の高い国と言われています。

国民全体の識字率は98%、若者の識字率に関しては99.7%と極めて高く、大学の進学率も首都では37%を超えています。

世界大学ランキングに登場する名門国立大学も何校かあります。

これからアルゼンチンで出産される方や、お子さんを連れてアルゼンチン移住を考えている方にとって、現地の学校事情は心配事の一つでしょう。

ここではアルゼンチンの教育制度と、日本とは異なる特徴についてご紹介します。

アルゼンチンの基本的な教育制度

義務教育について

アルゼンチンの義務教育は4歳児クラスから始まります。

4歳、5歳児クラスはPrescolar(プリスクール)と呼ばれ、Primaria(小学校)は6歳から13歳までの7年制となります。

中学・高校は一貫教育でSecundario(中等学校)と呼ばれ、普通校であれば5年制、技術系の学校なら6年制です。

この14年間、もしくは15年間が全て義務教育であることから、日本の12年間の義務教育よりも長くなります。

学校年度とお休み

アルゼンチンの学校年度は3月に始まり12月に終了します。

  • 1学期:3月~5月
  • 2学期:6月~8月
  • 3学期:9~12月初旬

となっています。

南半球に位置するアルゼンチンでは日本と季節が逆になるため、冬休みは7月中旬の2週間、夏休みは12月中旬から翌年3月までの3ヵ月間にも渡ります。

日本と大きく違う点の一つとして、この長い夏休みの間、たとえば公立小学校ではほとんど宿題らしきものを出しません。

休みの間は思い切り遊んで休んで、新学期が始まる直前の2週間でプリント1枚分の宿題をして、昨年の学習項目を思い出すように、というコンセプトでプリントがペラっと渡されるだけです。

このものすごいゆとり教育を良しとするか、だから基礎が学力レベルが低いのだと嘆いて、もっと厳しい私立学校へ転校させるかは、それぞれの親の方針によります。

学習項目について

教育省が基礎的なカリキュラムを作成し、それに基づいて各州や市がカリキュラムを編成します。

教授言語はスペイン語で、小学校、中等学校まで外国語一言語は必修となっています。

学校によっては、授業内に英語が組み込まれているところもあれば、任意で受講することが可能な放課後の英語教室として導入されている場合もあるなど、方針はさまざまです。

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アルゼンチンの小学校

小学校の種類

公立小学校

アルゼンチンの公立小学校のほとんどは、午前コースと午後コースに分けられた半日制で、午前午後で教師も生徒も全て入れ替わります。

午前コースは8時~12時、午後コースは13時~17時といずれも4時間しか授業がなく、給食や掃除の時間はありません。

4時間の中で15分休憩が2回あり、子供たちは自宅から持参したおやつを食べたり、学校内のキオスクで飲み物や食べ物を買って食べることができます。

公立学校は学費無料で、どんな社会階層の子供でもアクセスできることから、平等や社会正義の象徴にもなっています。

貧困地区からの子供も多いことを嫌がって公立学校を避ける親もいますが、逆にあらゆる階層の子供たちと共に学ぶことで、アルゼンチンのリアルな現実に触れさせたいと考え、私立に通わせる経済的余裕があってもあえて公立を選ぶ親たちも多くいます。

公立小学校の最大の問題点は、教員給与をめぐる政府との対立から、毎年特に3月は多くの教員ストライキが行われ、その都度学校が休校になることです。

また平日でも教員研修などが頻繁に行われ、休校が日常的であるため、共働き家庭では親類縁者やシッターなどの手を借りる必要がどうしても生じます。

私立小学校

いわゆる私立の小学校は学費が高く、経済的に余裕のある家庭の子供が通うイメージです。

メリットとしては、給与をめぐる教員ストライキの影響を受けることがほとんどなく、休校が少ないことや、スポーツ施設など設備が充実していることでしょう。

また、午前午後の全日制の学校もあり、その場合は昼食も学校で取ることから、働くお母さんにとっては負担が軽くなります。

デメリットとしては挙げられることは、一部の富裕層、エリート階層しかクラスにいないため、社会格差の極めて大きいアルゼンチンの現実とはだいぶ異なる認識を持って子供たちが育つことかもしれません。

また富裕層の子供同士、親同士の過度なライバル意識も、問題視されることがあります。

私立の宗教系小学校

私立の小学校でも、宗教系であれば政府からの助成金が出ることから比較的学費が安く、中流階級の子供も多く通っています。

メリットは私立学校同様に休校が少なく、安定した学校運営を期待できることです。

ただし、授業内容も宗教色が強かったり、家族ぐるみで学校の宗教行事への参加が求められることもあるため、信仰心がないと付いて行くのが難しい面もあるでしょう。

宗教系の学校でも、子供の家族に対して求める信仰心のレベルは学校によってだいぶ異なります。

予め学校側の説明をよく聞いて認識しておくことが大事と言えます。

学区について

私立小学校には学区はありませんが、公立小学校には日本のいわゆる学区に似たRadio(ラジオ)と呼ばれる規定区域が各学校で設けられています。

ただし、日本の学区のように厳しいものではなく、ラジオ外に住む生徒でも空きがあれば受け入れてもらえます。

たとえラジオ外の子供でも、親がその学校の卒業生だったり、兄弟が既に学校に通学している場合は、ラジオ内に住む生徒と同じ資格を持つことになります。

いじめや学校の教育方針に納得がいかない、などの問題が生じたとしても、学区を気にせずに学校を変えられるのは、非常にフレキシブルで効率的と言えるでしょう。

混合教育の浸透と多様性の尊重

昨今、アルゼンチンの多くの学校では、公立私立を問わず、異なるキャパシティーを持つ子供たちを受け入れる「混合教育」が盛んに実施されています。

公立学校の場合は各学校に県が定めた養護学校が割り当てられており、それぞれの子供に見合う学習内容を推進しながら、学校側をフォローしています。

アルゼンチンでは幼い頃から、

  • 多様性の尊重
  • 男女平等
  • 子供の権利
  • 性教育
  • ジェンダー教育

などを教育上の重点項目にしている学校が多くあります。

背景には移民国家という社会基盤や、女性への性暴力が多いなどの社会問題があると言えます。

一般的に子供達の意見を尊重し、行事の際には子供たちに自由に振り付けをさせるなど、幼いころから自分の意見や考えを積極的に発表させます。

そのため、「多くの子供が恥ずかしがらずに手を挙げて意見を言えるオープンな空気が、クラス内に常にあること」はとても印象的です。

留年は珍しいことではない?

アルゼンチンでは小学生でも留年する生徒が割といます。

家庭の事情から欠席が多いことで留年になるケースもあれば、学力が足りずにテストで落第する生徒もいます。

昨年、私の娘のクラスからは4人の男子が留年となり驚きましたが、話を聞いていると珍しいことではないようです。

テストで落第した場合、新学期が始まる前の12月と2月に補習を受け、再テストに臨むチャンスがあります。

ここで規定の点数に満たない場合は留年確定となります。

ただし、クラスの中にはさまざまな理由から年齢の異なる子供も複数いるので、日本の小学校のようにみんなが同い年ということも最初からなく、留年しても特別に目立つわけでもありません。

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アルゼンチンの中等教育

中等学校の種類

13歳から始まる中等学校には、

  • 5年制のSecundaria Orientada(普通校)
  • 6年制のSecundaria Técnica(技術学校)

の2種類あります。

アルゼンチン 中等教育

普通校では最初の2年間は一般教科を受け、その後の3年間で選択した科目を中心に勉強します。

例えば、経済を選考すれば、経済学とそれに関係する科目を中心に履修することになります。

ただし、その専門性は技術学校ほどのものではありません。

普通学校を終了することで大学への進学資格が得られることから、より専門性を深めたい生徒は大学へ進学します。

技術学校では最初から専門分野をあらかじめ絞った上で、生徒たちが入学します。

最初の2年間は普通校と同様に一般教科を網羅し、3年目からは専門分野の学習を開始します。

授業時間もいわゆるDoble turno(全日制)となり、学習内容も専門性も極めてレベルの高いものとなります。

技術学校を卒業した生徒は既にTécnico(技術者)という肩書を持つため、すぐに仕事に就くことができます。

もちろん、引き続き大学へ進学する生徒もいます。

技術学校の専門コース

アルゼンチンの6年制の技術学校で学べる主な専門分野は以下のようになります

  • 社会科学、人文科学
  • 自然科学
  • 経済学と運営学
  • 言語学
  • 農学と環境学
  • コミュニケーション
  • 通信科学
  • 体育
  • ツーリズム
  • 美術
  • 文学
  • 教育学
  • 物理学と数学

Instituto Terciariaと呼ばれる専門学校

日本のいわゆる中高一貫教育が終わると、Instituto Terciarioと呼ばれる専門学校か、大学への進学というオプションが待っています。

両方とも「高等教育機関」に属しますが、大学と専門学校の違いは何でしょうか。

まずは、終了までの期間に差があります。

専門学校の場合は2~3年間で卒業できるのに対し、大学は専攻にもよりますが、4~6年間と長くなります。

学習内容も、専門学校の場合は限られたテーマに絞った専門知識を学ぶことができますが、大学ではもっと幅広く多くのことを学ぶことが求められます。

好きなことが絞られている人なら、その限られた分野の専門知識を専門学校で短期間に学ぶのも良いでしょう。

大学があらゆる分野におけるアカデミックな専門家、研究者、科学者を育てる場であるとすれば、専門学校は技術者、教師、芸術家を多く輩出する機関であるとアルゼンチンでは理解されています。

専門学校には、技術学校と同等の「技術者」資格が取れるものと、「歴史教師」「保育園教諭」など教師の資格が取れるものの2種類あります。

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アルゼンチンの大学

国公立大学

アルゼンチンの国公立大学は、入学費用も学費も無料です。

また入学試験もないため、学びたいという意思のある人なら、誰でもその門戸をくぐることができます。

ただし、在学中の勉強量は生半可なものではありません。

数日間のうちに専門書を数冊読んで自論を展開するような宿題が頻繁にあり、試験は筆記ではなく数名の教授を相手に口頭で実施されるなど、学習内容は極めて高度でハード、単位を取ることもそう簡単ではありません。

大学で受講することは誰でも始められますが、卒業までたどり着ける人は本気で勉強したほんの一握りの人となります。

特に、以下の3校は、世界大学ランキングにも登場する名門校として知られ、多くの著名人を輩出してきました。

  • 中南米で最高の大学と言われる首都のブエノスアイレス大学
  • アルゼンチン第2の都市コルドバにあるコルドバ国立大学
  • ブエノスアイレス近郊にあるラプラタ国立大学

アルゼンチンの国公立大学については、「学費無料」の噂は本当!?アルゼンチンの国立大学留学のメリットや手続きを紹介に詳しい情報を掲載しています。

私立大学

アルゼンチンでは私立大学の歴史はまだ浅く、5年間の学費総額も117万円~165万円程度になることから、学生全体の78%は学費無料の国公立大学へ進学するというデータが出ています。

それでも、世界的レベルの優秀な私立大学はいくつかあり、国立大学にはない専攻に進みたい、または卒業後の就職に有利であるという理由から、学費が支払える経済力がある学生は私立大学を選ぶようです。

アルゼンチンで名門私立校と呼ばれている大学には以下があります。

  • Universidad Austral:1991年に設立されたキリスト教系大学で、アルゼンチン国内ではブエノスアイレス大学に次いで2番目に優秀とされる
  • Pontificia Universidad Católica Argentina:1956年に創立されたカソリック系大学で、2015年のQS世界大学ランキングでは中南米全土で調査された300大学中6位にランクイン

現地企業での採用が最も多いのは、この大学の卒業生と言われています。

アルゼンチンの日本人学校

ブエノスアイレス日本人学校

昭和43年に設立された、ブエノスアイレスにある同国内唯一の日本人学校です。

Belgrano地区の緑多い閑静な住宅地の一角にあり、小学部30名弱、中学部10名前後と小規模ですが、日本からの派遣教師と数名の現地職員がきめ細やかな教育をモットーに運営しています。

日本の学校と同じように運動会があり、月曜、水曜、金曜の3日間は学校給食も提供されるなど、日本式の教育を導入しています。

ネイティブ教師によるスペイン語と英語の授業も行われ、他校との交流行事などを通じてアルゼンチンへの理解を深める活動も積極的に取り入れられています。

入学金や毎月の学費は現地の他の私立校に比べても高額で、さらに給食費とスクールバス代が追加されます。

ただし、学校の警備や学内の施設などは充実しています。

【ブエノスアイレス日本人学校】

設立:1961年
所在地:LA PAMPA 3520, (1430) BUENOS AIRES
TEL / FAX:4554-2460, 4552-1919
ステータス:文部省認定学校(小学校、中学校)
運営団体:アルゼンチン日本文化教育協会
公式サイトhttps://jpschoolarg.wixsite.com/mysite

私立ブエノスアイレス日亜学院

私立ブエノスアイレス日亜学院は、日本語教育を行う初等、中等教育機関として正式に認定されている唯一の学校とされています。

元々は日系移住者が2世以降の子供達に日本語教育を行うために設立されましたが、現在では在学生の60%は日系人、その他はアルゼンチン人と、現地の人々にも多大な支持を受ける学校となりました。

共学の幼稚園、小学部、中高等部に合計500名前後の学生を擁します。

午前中はスペイン語で教科指導、午後は週に3回日本語指導、週に2回英語指導を行うなど、トリリンガル教育を実施しています。

小学部卒業生の60%はそのまま同校中高等部に進学、残りの40%は他の中高等学校へ進学し、中高等部卒業生の99%は大学に進学しています。

清掃の時間や給食もあり、年間行事もアルゼンチンの記念行事と日本の年間行事の両方を行うなど、日本式の教育を取り入れながらも、アルゼンチンにも敬意を払う教育方針が徹底しています。

入学申請は、6月から翌年2月までの間に教育心理担当者が保護者と2回面接し、数学と国語のテストが実施されたのち、校長/教頭と面接があります。

日本からの編入の場合は、日本の学校の在籍証明書に日本国外務省認証印のアポスティーユを添付し、提出する必要があります。あらかじめ用意しておきましょう。

【ブエノスアイレス日亜学院】

所在地:Yatay 261 (1184) Capital Federal
連絡先:54-11-4983-0056/54-11-4983-0072/54-11-4983-3310
MAIL:primaria@nichiagakuin.edu.ar administracion@nichiagakuin.edu.ar
公式サイトhttp://www.nichiagakuin.edu.ar/

まとめ

アルゼンチンの学校制度が何となくイメージできたでしょうか。

実際に現地に住んで、間近で子供たちを見ていると、小学校まではかなりのゆとり教育で、子供たちにはあまりプレッシャーをかけずにのびのびと育てます。

しかし、中等教育機関に入ると突如ハードになる印象です。

このギャップが激しいため、中等教育の初めの頃は息切れする子供も多いように思います。

さらに大学になると、日本の学生以上にハードな学習内容となります。

無事に卒業して「Licenciado/a(学士)」と正式に呼ばれるには、高いハードルをいくつも超えていかねばなりません。

いずれにせよ、アルゼンチンは中南米諸国の中では特に教育に力を入れている国の一つと言えます。

今後現地で子育てを考えている方は、少なくとも教育面では安心していただいて良いでしょう。

 

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