昨今、日本人の移住先として注目されているオランダ。
日本人が住みやすい生活環境(言語や教育制度、安全面)が整っていることなどがその理由の1つです。しかし、移住を決断し実際に実行に移すにはいくつもの不安や懸念がつきまとうもの。
そんな不安や懸念を少しでも払拭できるよう、2016年にオランダへ移住したある日本人夫婦にインタビューを行いました。
今回はそのインタビュー内容をご紹介します。
彼らが実際にオランダ移住を決断した理由や背景、オランダで事情などを赤裸々に語ってもらうことで、読者の方々のオランダ移住の手助けや後押しになれば幸いです。
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1.2016年にオランダ移住をした今井夫妻
Q.まずは簡単な自己紹介をお願いします。
智丈)今井智丈(いまいともたけ)と申します。
現在32歳で2016年8月にオランダへ移住してきました。約10年間日本でサラリーマンとして働いてました。学生時代はバックパッカーとして中東やアジアを一人旅してました。
佳奈子)今井佳奈子(いまいかなこ)と申します。
元々は主人と同じ会社に勤めていて、主人の転勤を機に退職。日本ではフリーランスとして仕事をしてました。学生時代はドイツに2年間留学していました。現在33歳です。
Q.日本ではどんなお仕事をされていたのですか?
智丈)情報やメディアを扱う会社に勤めていました。
直近はその営業部に所属し、約30名のメンバーマネジメントを行いながら、営業戦略戦術策定・人財採用育成・商品開発などを行っていました。
忙しい場面も多々ありましたが、一緒に働いている仲間や展開しているサービスもすごく素敵で、とてもやりがいのある素晴らしい会社でした。
佳奈子)インポートジュエリーやアクセサリーのセレクトショップをオープンして小売業を営んだり、バイヤーとして卸売業をしていました。
Q.現在、オランダではどんなお仕事をされているのですか?
智丈)マーケティング・営業会社 Art Trade をオランダにて起業しました。
現在は日本やアメリカ等にある企業のマーケティング・調査・営業のお手伝いをしたり、ドイツのサッカーチームのプロモーションやスポンサー獲得のお手伝いをしたりしています。
佳奈子)Schatz − Kanako Imai Selection − というファッション小物やインテリア雑貨の卸売・小売業を継続して行っています。
オランダに移住する前に約4年ほど日本でやっていたので、お陰様でお客様も日本全国にいらっしゃいます。
日本にいた時は買付や商品選びの難易度が高かったですが、ヨーロッパに来たことによってそれがすごくやり易くなりました。
作家さんやメーカーと直接、会う機会も増やせたことも個人的には嬉しいです。
2.縁も所縁もないオランダへの移住を決断したワケ
Q.そもそもなぜ海外へ移住しようと思ったのですか?
智丈)海外にライフスタイルの拠点を移したかったというのが理由です。
私の地元に在日米軍基地があって小学生の頃にはその基地によく出入りしてたんですよ(笑)。彼らの生活様式や考え方が日本とは全く違って刺激的で、漠然と憧れのようなものを幼少期に持っていたんだと思います。
佳奈子)私は学生時代にドイツに2年ほど留学していました。
その頃からヨーロッパの文化や歴史や、考え方がすごく好きで生活の拠点を移したいと思っていました。
Q.数ある移住先の中でもオランダを選択した理由は?
智丈)30代になったタイミングでそろそろ本気で決断しないといけないと焦りのようなものがあり、よく妻と海外移住の話をしてました。
包み隠さず申し上げると、私は計画当初オランダでなくてもよかったんです。
ビザ取得の難易度や自身で立ち上げるビジネスのことを考えると、アジアが現実的だろうなと。そもそも実際に移住してくる前はオランダに一度も行ったことなかったですし、もちろん縁も所縁もなかったので(笑)。
佳奈子)私はもともとヨーロッパ志望でした。
とはいえオランダはドイツ留学中に一度だけ旅行で行ったことがある程度でしたが。
主人がアジアへの海外移住の話をしている時に、たまたまオランダの日蘭通商航海条約(日本人であればオランダの労働許可が不要※2017年より変更)の記事を見つけました。
本当に偶然にです。
私たち日本人にとってオランダはビザ取得難易度が低く、生活環境もよいことを知ったんです。
それを知った時に2人で話をして直感的に決断しましたね。そこから情報収集をしたり、オランダ在住の方々に話を聞いたりしました。
智丈)移住先をオランダに決めた大きな理由は、
- 起業ビザであれば先進国の中で圧倒的にビザ取得難易度が低いこと
- 取得のためのコストが圧倒的に低いこと
- 英語のみでも生活できること
- 生活の安全性が担保されていること
の4つですね。
一回も行ったことない国で不安がなかったと言えば嘘になりますが、期待感のほうがはるかにに上回っていた感じだったので躊躇はしなかったです。
元々、私も妻も転勤が非常に多い会社で働いていたこともあり、新しい環境に身を置くことに慣れていたのかもしれませんね。
あと、私たちには子どもはいませんが、オランダの素晴らしい教育を理由に移住されてくる日本人も多いですね。
3.夫婦別々でそれぞれの会社登録(起業)をしたワケ
Q.自己紹介でもあった通り、夫婦それぞれで起業していると思いますが、特別な理由はありますか?
佳奈子)理由は2つありました。
1つ目は主人と私とでそれぞれがやりたいビジネスがあったことです。
それぞれが自立して稼ぎましょうというノリで(笑)。
智丈)2つ目は夫婦別々で起業ビザを取得することが、もっとも確実な移住手段であるという結論に至ったからです。
私が以前勤めていた会社を退職してすぐ、住まい探しやビジネスの実施調査をかねて、まず1ヶ月だけオランダに来ました。
その視察旅行中の2016年6月、移民局が日蘭通商航海条約の解釈変更を急遽発表し、ビザが取得できるかどうか先行きが不透明になってしまったんです。
日本人は労働許可が不要という特権が条約の解釈変更によってなくなってしまうかもしれないと。
私がビザを取得してもその条約解釈変更により、私のビザに付随する妻が滞在できなくなってしまうリスクがでてきたわけです。
あまりに突然の発表だったので、オランダ現地でも情報が錯綜していました。ビザが取れなくなるってこと?オランダに移住できなくなってしまうということ?という感じでさすがに焦りましたね。結果的には大丈夫だったのですが。
佳奈子)2017年1月1日よりその解釈変更は行われていて、日本人は労働許可が不要という特権は現在なくなっています。
しかし、実際は起業ビザであれば移住難易度は低いままですし、2016年当時と条件は特に変わりません。
解釈変更によるデメリットといえば、以前であればそのビザでも企業から雇用されることもOKだったのですが、それがなくなったことくらいです。そもそも起業前提であれば特に何も変わっていないとの同じですね。
4.オランダ移住をして手にした幸福と苦労
Q.オランダ移住に際し、苦労したことやトラブルなどはありましたか?
智丈)大きなトラブルはなかったですが、ビザ取得までに予想以上に期間を要してしまったことですね。
佳奈子)役所にたらいまわしにされた感じです(笑)。
当初、ビザ取得手続き自体は2ヶ月ほどで終える予定でしたが、4ヶ月ほどかかってしまいました。
ビザの取得手続きを進める上で、市役所でBSNナンバー(住民登録)というものを取得しなくてはならないのですが、それを即日発行できる市役所もあるのに、私たちは1ヶ月以上かかってしまいました。
公的な発行物において、手続きする市役所によってそれほど要する期間が変わるなんて日本では考えられないことですよね。
私たちの取得が遅れた理由は市役所の住民登録チームが全員10日間ほどの休暇に入ってしまったり、担当者の手続きに不備があったりといったことなんですが。
日本では部署全体が休んで手続きがストップするなんてありえないですよね。こっちでは当たり前だったりします。
智丈)現地のオランダ人との人脈作りは予想よりも若干手こずりましたね。
冒頭でもお話したとおりオランダ人は非常に英語が堪能なので、生活をする上では英語のみで全く問題はありません。
ただそこから更に深い関係を築こうとするとオランダ語の必要性を感じます。
私は地元のオランダ人と週1回サッカーをやっていて、サッカーをやった後はみんなで必ずビールを飲むんです笑。
至極当然なんですがオランダ人コミュニティの中ではみんなオランダ語を話すんですね。全く何を言っているかわかりません笑。
もちろんこちらが英語で話をふったりするとその話題中は英語での会話にスピーディに切り替わるんですが、少したつとまたオランダ語の会話に戻ってしまいます。
より親密な関係を築くためにはオランダ語が必要かもしれないですね。
佳奈子)あとは一番日本と違うと感じる部分は医療制度だと思います。
ホームドクター制をしいているオランダでは、病院に行く前にかかりつけのホームドクターにまずは診てもらわないといけません。
ホームドクターが病院での診察が必要と判断してやっと病院に行くことができます。
例えば女性の場合、すぐに産婦人科にかかりたいといった場合でも基本的にはホームドクターに診てもらう必要があります。風邪をひいて処方箋と薬がほしいと思った場合も、なかなか薬を処方してくれず免疫力を高めて自然治癒力で治せと言われてしまいます。
日本人からすると、とはいえすぐよくなりたい、別の病気だったらどうしようと不安になってしまいますよね。
Q.逆に移住をしてよかったと思うことはどんなことでしょうか?
佳奈子)仕事面では買付の仕事が非常にやり易くなりました。
オランダにはヨーロッパのハブ空港(スキポール空港)があり、ヨーロッパ各地への買付が非常に便利。
ヨーロッパ各国のLCCが集まっているので、便数も多くとても安いんです。
隣国のベルギーやドイツへはパスポートも持たず電車で1時間30分もすれば着いてしまう手軽さも嬉しいですね。
あと、オランダに移住してからというもの、不規則な生活とストレスから解放されてか、主人の体調が良くなったことも嬉しいことの1つですね(笑)。
智丈)出会える方々や仕事の幅が非常に広がりました。
- 日本人が世界で活躍できる場を作る
- オランダの教育を日本や世界に輸出する
- 日本のよいものや文化を世界に広げる
- 世界のインフラをつくる
等、こちらで出会う起業家やクライアント・ビジネスパートナーはワールドワイドかつボーダレスな視点が前提でビジネスを練り上げている方々ばかりで、日本では気づけなかったビジネスチャンスも非常にたくさんあるように思います。
その方々と一緒に仕事をするだけでもとても勉強になりますし、とても刺激的です。
あと日本や日本人の素晴らしいところを日々再認識できることも来てよかったと思うことの1つです。
プライベート面では心が安らかに過ごせています。
冬は雨と寒さが少しきついですが、春夏秋は本当に快適です。
オランダ人はすごく合理的で、またプライベートの時間を非常に重視するので、うわべの付き合い的な感覚で何かを選択することが全くないんですね。
そんな空気感も自分にあっているのかもしれません。
5.最後にオランダ移住予定者の方々へ何かメッセージをお願いします
智丈)正直、私は今でも毎日Skype英会話をしているくらい語学力は高くありませんし、移住経験当初はコネも人脈ももちろんありませんでしたが、仕事も含めて何とかなってしまっています。
とはいえもちろんもっともっと頑張らないといけないですが(笑)。
問題や不安が日々皆無と言ったら嘘になりますが、それ以上に移住したことによる新しい出会いや経験が、毎日をエキサイティングでより価値ある時間にしてくれているように感じます。
ぜひポジティブな気持ちでオランダ移住という選択肢を検討してみて下さい。
佳奈子)今から15年以上前に留学した経験があるから特に思うのですが、飛行機も格段に安くなり、SNSなどの多種多様なツールで日本とのコミュニケーションもとりやすく、日本と世界の精神的な距離感がぐっと近くなっている気がします。
遠くの世界に行くというより、隣町に引っ越ししますくらいの感覚で、海外移住という選択肢を捉えてみてもよいかもしれませんね。
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