テレビ画面に映るヨーロッパのスタジアムや、外国の町を舞台にした物語の非日常的な雰囲気にすっかり魅了され、欧州への移住を夢める方も多いでしょうか。
今回は、ドイツの永住権取得者から、ヨーロッパ移住のきっかけや永住権の取得体験ストーリーをお伝えしたいと思います。
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憧れのヨーロッパへ。でも旅行では物足りなかった・・
ヨーロッパに住みたいと思い始めたのがいつ頃だったのか、はっきりとは覚えていません。
おそらくサッカーや映画に夢中になり始めた小学校高学年か中学生時代くらいでしょうか。
好きなテレビドラマは大抵アメリカのものでしたが、要は西洋の文化に憧れていたわけです。
大学時代の夏休みには、3週間掛けてハンガリーからイギリスまでを一人で旅しました。
それはそれで楽しく貴重な経験だったのですが、そこで感じたのは旅行だけでは物足りないということ。
いくら安い宿に泊まっても宿泊費はかさみますし、現地の人と会話を交わしてもそれが長い付き合いに変わっていくということもありません。
どうしても現地の日常生活とは一歩距離があるのが現実です。
ヨーロッパ移住への第一歩
そこでヨーロッパ移住への思いをより一層強くした私は、大学卒業後の1年間アルバイトで渡航費用を稼ぎ、イギリスなどに比べてワーキングホリデービザの取得が簡単なドイツへ。
その後、幸運にも南部バイエルン州の現地会社に正社員として採用されました。
働き始めた際に会社のサポートを受けてまずは3年間のドイツの滞在許可を取得し、その期限が切れると2年間の延長が認められました。
一時的にドイツで働くだけであればこの期限付きの滞在許可で十分ですが、例えば何らかの理由で失職するとたちまち立場が不安定になり、最悪の場合自分の意思に反して帰国を余儀なくされてしまいます。
私はあくまでヨーロッパに完全に移住したかったため、ドイツの永住権(無期限の滞在許可)取得が当初からの目標でした。
ドイツの永住権は2種類。私が選んだのは・・
昔は永住権と聞くと、死ぬまで無条件でその国に住める権利というイメージを持っていたのですが、残念ながら少なくともドイツでは国籍を取得しない限りは、永住権が失効する場合があります。
ドイツの永住権には主に
- 「Niederlassungserlaubnis(定住許可)」
- 「Erlaubnis zum Daueraufenthalt-EU(EU無期限滞在許可)」
の2種類があり、違いは前者が6ヶ月以上ドイツを離れると失効するに対し、後者は12ヶ月EU圏を離れない限り有効な点です。
つまりEU無期限滞在許可の方が好条件なので、私はこちらを申請することにしました。
将来的に例えば、フランスやイタリアなどEUの他国で働いても、ドイツの永住権をキープすることができるからです。
ドイツ永住権の詳しい記事はこちら「ドイツの永住権を取得するまでのステップ」
ドイツ永住権取得へ向けた準備
1.年金保険料を納める
申請の条件は定住許可もEU無期限滞在許可も同じで、まず一番に必要になるのが、合計60ヶ月間(5年間)年金保険料を納めていること。
一部のウェブサイトにEU無期限滞在許可には8年間の滞在が必要という誤った情報が見られますが、実際には5年で申請できます。
私はなるべく早くドイツの永住権を得るため、5年経過直後に書類を提出できるよう準備を進めました。
2.ドイツ語検定に合格する
もう一つの重要なポイントは、ドイツ語のB1レベルの検定に合格していること。
ドイツ語のレベルはA1からC2までの6段階に分かれており、B1は下から3番目ということになります。
時間のある移民の人々はインテグレーションコースと呼ばれる学習コースに通ってドイツ語を習うのですが、一回の授業が3~4時間というのが普通のため、フルタイムの仕事を持っているとなかなか厳しいものがあります。
私も当初は週3回のコースに通っていたのですが、最終的には体力が持たないためギブアップ。
個人レッスンや自宅で学習し、テストだけ受けることにしました。
テストは定員が決まっているため早めに申し込む必要があり、結果が郵送されるまでにはさらに4~8週間も掛かるため、これだけでも既に永住権申請の前に3ヶ月ほど時間の余裕を見る必要があります。
真面目でしっかりしたイメージのあるドイツですが、住んでみると基本的にいろんなことがいい加減で時間が掛かります。
テスト用の教科書で当日まで勉強し、いざ会場へ。テストのメイン部分は選択式の問題で、形式が決まっている記述式部分も慣れてしまえば簡単なのですが、個人的に不安だったのが会話テスト。
別の受験者と二人で、試験官の質問に答える形式です。
未だに日常会話に不安が残る私としては何も言えずに黙ってしまうのが一番最悪なパターン、ということで多少文法が間違っていようがとにかく喋ることを心がけました。
日本人は良いか悪いかは別として文法にかなり気を使うので、滅茶苦茶な文法でも自信満々で喋っている各国の移民の皆さんのメンタリティを少し取り入れれば、うまくいくはず。
そもそも試験官もB1レベルで綺麗なドイツ語など期待していないので、好感の持てる態度で言いたいことの要点を伝えるのが重要なようです。
恐る恐る1ヵ月後に届いた結果を見ると、なんと最高評価の「Sehr Gut(とても良い)」。
そもそも正答率60%という合格ラインが低すぎではないかと思うのですが、心配しただけ損だったようです。
いざドイツ永住権の取得申請!しかし・・
合格通知が届いたところで、過去3ヶ月分の給与明細や顔写真など他の必要書類も持って地元の外国人局へ。
担当の女性に全て提出し、あとは申請が通るのを待つだけ…と思いきや、「年金保険の支払い証明に前年末までの分しか記載されていないから、条件の60ヶ月に満たない」とのこと。
「給与明細もあるから今年も払ってるのは分かると思うんだけど」と言い訳したものの、「もう一回年金事務局に行って、先月までの記録を持ってきてね!」と言われ、翌日しぶしぶ年金事務所へ。
受付で事情を説明すると「こっちで出せるのは前年末までの記録だけだよ」。
いったい誰の言ってることが正しいのやら・・。
外国人局と年金事務所に毎日行ったり来たりしている訳にはいかないので、メールで外国人局の別の担当者に問い合わせると「前年末までの記録だけで大丈夫です」。
ここ数日の時間の無駄は何だったのかと思わないではないですが、ドイツの役所では担当する人によって違うことを言われるのは日常茶飯事なので、これくらいでイライラしてはいけません。
結局前回持って行った書類を再度提出し、1~2ヶ月で今度こそ永住権取得のお知らせが来るはず!
帰化テストの合格が必須だった
しかし1週間ほど経ったころ、突然外国人局からメールが届きました。嫌な予感。
開けてみるとドイツ語B1レベルの他に、法律や歴史などドイツの生活に関する「Einbürgerungstest(帰化テスト)」にも合格しなければいけない、とのこと。
以前に外国人局で確認したときにはB1に合格していればそれだけで良いと言われたのに、本当にドイツの役所は当てになりません。
テスト自体は310問の全ての問題と回答がオンラインで公開されており、その中から33問が実際に出題されます。ほとんどが一般常識的な問題で合格ラインも17問正解とかなり低いため、ぶっつけ本番でも合格できそうなこのテストですが、法律関係などは用語が難しく、歴史の年代や人名も暗記が必要になるものがあります。
私は念のためすべての問題に2回ほど目を通しました。
ただテスト自体は簡単でも、やっかいなのは待ち時間。受験の申込日から結果が郵送されるまで、簡単に2ヶ月は経過してしまいます。
合格通知が届いたらすぐにスキャンして外国人局へメールし、待つこと更に1ヶ月…ついに念願の永住権取得のお知らせが!
すぐに外国人局へ出向き、IDカードを受け取って支払いを済ませます。
カードのデザインは期限付き滞在許可と同じですが、確かに有効期限の欄に「無期限」と印刷してあります。ドイツ語のテストに申し込んでから実に8ヶ月、実に長い時間でした。
ドイツ永住権を取得!これから移住をしたい方へのメッセージ
これから同じようにドイツの永住権を取得したい方にアドバイスを送るとすれば、一番はまず時間の余裕を持つことでしょう。
すべてが順調に行けばほんの数ヶ月で済むはずのプロセスですが、ドイツのお役所はどこも頼りないため、予想以上に時間が掛かる可能性が常にあります。
これはドイツに長期滞在している方であれば、既に十分ご存知かと思います。
永住権の申請条件について、予め知識を備えておくことも重要です。
私もオンラインで情報を収集しましたが、ウェブサイトによって情報が異なり、どちらが本当なのか分からない場合があります。
外国人局に尋ねるだけでなく、同じ地域で永住権取得した人の実体験を聞いておくと理想的でしょう。
あとは予想外の出来事に動揺せず辛抱強くひとつひとつのステップをクリアしていけば、ドイツの永住権取得にたどり着けるはずです。
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