旅行で訪れたポルトガルに恋をし移住を決断して、そして実際に首都リスボンでの生活を始めてから、約3ヶ月の在住者へポルトガルへ移り住んだ理由をお聞きしました。
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ポルトガルの暮らしを紹介
南欧の風に吹かれ、美味しいご飯に美味しいお酒。ヨーロッパの端っこで見つけた大好きな国で、毎日幸せに生活しています。
そして、日々ポルトガル人と関わり、ポルトガル人が生活していく上で「何に重きを置くか」に接していくうちに、その考え方に驚いては感心し、私の考え方は確実に変わってきたなと実感しています。
「あれ、なんか、ここでの暮らし、想像してたよりも、ずっと心地いい。」
日本でのせかせかした生活に慣れた私たちがハマって抜け出せなくなっちゃうような、そんなポルトガルの人々の暮らしをご紹介したいと思います。
写真:リスボン「Rato地区」の一角で友人とお喋りするご婦人達
1.有給休暇日数が世界1位!
ポルトガルは国が保証している有給休暇の多さがなんと世界ランク1位です。
フランスやスペインを上回り、年間で35日間のお休みが貰えます。
そして、ポルトガルの人々は、家族とのバカンスでたっぷりとホリデーを使い切ります。
それに比べて日本は最低保障が年間10日間という遥かに少ない有給休暇でも使うことをためらうため、日本の有給消化率は世界ランク最下位という驚きの調査結果を叩き出したこともあります。
「有給休暇に無頓着」で知られる日本。ご自分の有給休暇日数を、把握していない方も多いのではないでしょうか。
2.ポルトガルの雇用環境
ポルトガルの雇用環境においては、有給休暇日数の多さのような労働者にとっていい制度ばかりではありません。
まず最低賃金が ¥67,735/月 と、だいたい日本の半分くらいというかなり低い金額になっています。
またその他にも近年は男女間の不平等さが問題として挙げられています。
一般的に同じ労働条件下でも男性の給与の方が多いのだそうです。ですので仕事を掛け持ちしている女性が少なくないようです。
若者の失業率も42%と高く、大学を卒業したあと就職難に陥る事が多いと聞きました。
私も実際に一度ポルトガル企業での採用試験を受けに行きましたが、カスタマーサービス(深夜帯・低賃金)という割と過酷な枠に対し、6人の聡明な女性達(全員3ヶ国以上の言語話者)との同時面接だったため、
その就職難の現場を目の当たりにした気持ちになりました。
ですので、日本からワーキングホリデービザでポルトガルへ来て、ポルトガル語を学んだとしても、「外国人でも比較的採用されやすいとされている飲食関係」以外での職探しはかなり難しいかと思われます。
3.ランチタイムはたっぷりと
ではその働き方の「内情」はというと。
先述の給与の低さも手伝い、また南欧の暖かい海風が後押しするかのように、みんな「あまり頑張んない」で仕事しています。
ですのでランチタイムはたっぷりとる事が多いです。時には2時間ほどゆっくり休んで戻ってくる事もあるようです。
ですがそこは南欧、与えられた仕事をこなしていれば問題ありません。
日本人からして見ると、この「仕事で疲れるなんて言語道断」とばかりの風潮には慣れるまでに少しだけ時間がかかるかもしれません。
ですが、お客さんと店員さんとの間に一切の隔たりを感じないので、良く言えば、大変アットホームな接客を受けることになります。
私がポルトガルで実際に遭遇した笑撃(しょうげき)な接客エピソードは、後述したいと思います。
4.物価の安さ
給与の低さに伴ってポルトガルは物価が安いです。
生活する上での出費はかなり抑えられるかと思います。
具体的な例を挙げていきます。
注意:全ておおよその金額です。またレートは1€=¥115で計算しています。(2016年10月)
家賃
都心で3~4人でフラットシェア ¥40,000 / 月
郊外で3~4人でフラットシェア ¥23,000 / 月
都心で1人暮らしのアパート ¥100,000 / 月
郊外で1人暮らしのアパート ¥60,000 / 月
食費
ースーパーマーケット
パン ¥30 / 1個
牛乳 ¥60 / 1L
桃 ¥120 / 1kg
ー外食
ランチ ¥700
ディナー ¥2,000(ボトルワイン・デザート・コーヒー付)
自炊でかなりの節約になりますが、外食しても安いです。
交通
バス・メトロ ¥200 / 片道
バス・メトロ共通定期券 ¥4,500 / 月
タクシー ¥400 / 初乗り
携帯
SIMカード5GB ( 2ヶ月間利用可能 ) ¥4,500前後。
とこのような感じで、日本と比べると圧倒的な物価の安さです。
写真:リスボンの街中いたる所で今も健在している古い建物
5.年間を通した温暖な気候
ポルトガルの気候は北に位置するポルトと南に位置する首都リスボンで多少の温度の差はあれど、基本的に年間を通して暖かくて気持ちがいいです。
夏は湿気も少なくカラッとしています。
旅行のベストシーズンは6月〜9月といったところでしょうか。
冬もそこまで急激に寒くなることはありません。
10月初旬くらいから涼しくなってきますが、11月に入っても半袖で歩いている人を良く見かけますし、私も長袖のシャツ1枚で外出しています。
12月の平均最低気温は8℃ほど。
雨は多くも少なくもなく、梅雨や台風のある日本よりは少ないようなイメージです。ただ、夏の終わりから秋にかけてのみ、スコールのような短くて激しい雨の回数が増えます。
6.ポルトガル人の人柄
さて、冒頭で「ポルトガル人あまり仕事頑張んない」と断言してしまいましたが、ここで私が遭遇した驚きの接客例を紹介させていただきます。
ある日、カフェにハンカチを忘れて取りに行った時の事です。
座っていた席に忘れたハンカチが見当たらなかったので、近くにいた店員さんに聞いてみました。
私:「ハンカチの忘れ物ありませんでしたか?」
店員さん:「知らない。だって私さっき出勤したばっかりだから。」
即答でした。まさかの展開ですね。
それでもめげずに、「バックヤードを確認してもらえますか?」とお願いしてみました。
すると、
店員さん:「私じゃなくてレジの人に頼んで」
また別のカフェでは、その日は早めに外出してカフェで朝食を済まそうと決めていました。
そして目当てのカフェに到着し、いそいそと入店すると「なにしてるの!今閉店中だから出て!」突然客席に座って携帯で電話していた女性から怒号が飛んできました。
でも、お店はどこからどう見ても開店中です。
私:「なんで?」
お腹が減っていたので、見知らぬ人の失礼な物言いに頭にきて聞き返しました。
店員さん:「私の具合が悪いの!」
その女性、なんと、店員さんだったのです。驚愕でした。
そうしてまた携帯電話で話し始める店員の女性…。
どうでしょう、日本では考えられない、ひどい接客態度です。
ですが、このポルトガルの人のプロ意識の低さに慣れてくると、だんだんお金を払うことの対価に期待をしなくなってきます。
更に不思議なことに、どれだけ雑な対応を受けても何とも思わなくなってきます。
むしろその雑さが面白くなって来てしまい、だんだん居心地よくなってしまい、終いには、そこに人生の意味を見つけてしまいます。
ここまで来たら、もう完全におしまいです。ノックアウト。これが最初に私があげた「ハマると抜け出せなくなるポルトガル」の真髄です。
写真:リスボンの川べりにて友人とラジコンボートで遊ぶ男性
7.夕飯は必ず家族で
では労力をセーブすることで仕事を早く切り上げたポルトガル人の残りの1日の過ごし方はというと。
精一杯家族や仲間と楽しみます。
ポルトガル人にとって人生において何よりも大切なものは、家族や仲間と過ごす時間なのです。
ポルトガルの一般家庭は必ず家族全員揃ってから夕飯を食べます。
共働きの夫婦や働き盛りの父親を持つ家庭、思春期の子供がいる家庭も、全ての家庭が食卓をみんなで囲む事に勢力を尽くします。家族が揃って一緒の時間を過ごすことを「当たり前の事」として、みんなで守る素朴なポルトガル人の家族愛。
「みんなで食卓を囲む」というのは、一見カンタンなことのように見えますが実はとっても難しいことで、「仕事は二の次三の次、家族との時間が一番大事」という発言が行動と完全に伴っている点が、ポルトガルの人々の素晴らしいところだなあと思います。
8.ポルトガル人は走らないってホント?何事も焦らない精神
これは知り合いのポルトガル人が話してくれたのですが、「ポルトガルで走ってる人を見かけたら、その人は確実に旅行者。ポルトガル人は焦ることを知らないからね!」と。
バスでも電車でも、次のを待てばいい、仕事に遅れたら、説明すればいい、焦ることほど無意味なことはない、という事だそうです。
「走らない。」確かに、大事なことほどそんなに簡単に変動しないし、「じゃあ、もしそれが手遅れで失ってしまったとしたら?」そんな短期間で手に入れ損ねてしまうようなことなら、きっとその内また別の機会に恵まれるはず。
そして、もしかするとそちらの方が好条件だったりするものなのかもしれません。
写真:リスボン「Alfama地区」の坂道
同じ地球上にあった全く違う生活スタイル
日本社会のような、日々スピード感のある環境に置かれているビジネスの現場では、ポルトガルのような「お気楽」な考え方・働き方はまず通用しないのは承知しています。
ですが、いつか日本に戻り、また東京の会社で働く日が来るとしても、ヨーロッパの端っこでこんな風に日々を過ごしている人たちがいるということを知れたこの経験は、今後の私の大きな宝になると感じています。
焦って物事を追いかけたって意味がない。
それよりも、大事な家族が夕飯を一緒に食べるために食卓で待っているかもしれない。
みんなでおいしいご飯を食べて、ワインでも開けちゃって、窓辺で涼みながら今日あった面白い事を話して、眠くなったら寝て、、1ヶ月後くらいに「そういえばアレやり残してたな」って思い出して、「まだアレ必要?」って連絡して、きっと向こうの人も、1ヶ月後くらいに「アレ、必要かも」って連絡してくる。
そんな地球の反対側で繰り広げられている緩やかな生活の片鱗に、人生の中休みで触れてみるのも、また人生なのではないでしょうか。
様々な国からポルトガルへ移民してくる理由
ポルトガルには、アフリカやインド、そして中国と、様々な国々から大勢の人々が移民してきています。
実際に街を歩いていると、いろんな国のレストランを見かけたり、広場で遊ぶ様々な国の子供たちの姿に出会ったりと、多国籍な風景によく出会います。
みんな、町の美しさと共に、こうした人々の生活の穏やかさにノックアウトされて住み着くんだろうなあ、と思います。
今回私が利用した「ワーキングホリデー」という制度では、たった1年間のみという条件下での移住しか許されません。
ですが、そのたった1年間をどこまで意味のあるものにしてゆけるかは、自分次第だと思います。
「何かを成し遂げる覚悟」で来るのも素晴らしいですが、日本での「走る生活」からポルトガルでの「走らない生活」へ、一旦、自分の生活リズムを変えてみる機会と捉えるのも、十分意味のある事だと思います。
目標は自由です。
ポルトガルの人々は、そこで待っていてくれると思います。
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