陽気なエジプト人は東洋人を見ると「日本人?中国人?」と声をかけてきます。
日本では、知らない人に「何人?」などと聞きにくいものですが、長い混血の歴史と広大な土地により、一口にエジプト人といっても、日本人のように画一的な体型や名前ではありません。
どこの出身かを聞くのは彼らにとって挨拶の一部のようなものです。
「日本人」と答えると、ものすごく歓迎されます。
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エジプトでは日本人が素晴らしい民族だと信じられている
エジプト全土で盲目的に日本人が素晴らしい民族だと信じられているのは、1984年に放送された、NHKの連続ドラマ「おしん」を抜きに考えられません。
貧富の差に関係なく、エジプト中の人々が何度も再放送を見ました。
今の日本がある日突然できたのではなく、貧しい農村があり、奉公先でいじめられる少女などはエジプトの下層階級の人々にとって、自分たちと容易に重ね合わせることができました。
広島を一瞬で灰にされ、アメリカに戦争で負けても、決して諦めることなく、文句も言わずに国民が一丸となって頑張ることで世界トップクラスの国に、戦後約20年でなったことは、彼らに「やればできる」という希望を与え、実際やり遂げた日本人を尊敬に値すると評価しました。
高くて壊れない日本製と安くてすぐ壊れる中国製
エジプトでの日本人像は「おしん」で作り上げられました。
そしてトヨタなどの日本車やSonyなどの電化製品は、エジプト人にとってはとても高価ですが、頑丈で壊れないことからとても人気があると同時に、「いいものを妥協しないで作る」日本人は信用がおけると思われています。
人口が爆発しており、慢性的に仕事がないエジプトで安い中国製品は必要不可欠です。
エジプトで売れる値段設定で原価を考えると、中国人商人は、エジプトに質の良い物を輸出できません。
そのため、エジプト人が満足する中国製品が市場にないわけですが、エジプト人はそこを判っていません。中国製=すぐ壊れる=信用できないという縮図が出来上がっています。
日本のアニメが伝える日本像
日本のアニメはキャプテン翼やカリメロなど、エジプトでは20年以上前から放送され、子供たちに影響を与えてきました。この子供たちが原作の漫画に興味をもち自分たちでも漫画を描くようになりました。
本といえばコーラン。
偶像崇拝を禁止するというイスラーム世界で、アニメや漫画を取り入れるだけでなく、自分たちでも描いてみようとするのは、古代からの芸術文化が影響しているかもしれません。
アニメや漫画は日本のものが素晴らしいと考えているエジプト人は、日本人漫画家から漫画の描き方を習う人もいます。
また翻訳では飽き足らず、原語で理解したいと考える若者が急増しており、日本語を学ぶ人が増えています。
2011年の革命以前のエジプトで日本語学習者といえば、英語ガイドよりも給料の良い日本語ガイドになりたい人達でした。
現在では富裕層の子供たちが、日本のDVDや漫画を買い、日本語を勉強しています。
インターネットの普及で日本のアニメファンの様子を知ることも容易になりました。その為、コスプレ大会などもカイロで開催されています。
オシャレな食べ物SUSHI
日本の漫画に出てくる食べ物にも、人々は注目しました。
年中食べているラーメン、良いことがあると食べるお寿司とはどんなものか、若者たちの想像は膨らむばかりです。
昨今は欧米でも寿司ブームで、海外でお寿司を食べるのは容易になりました。
海外で味を覚えたエジプト人が出資した寿司屋ができ始めると、ヨーロッパにチェーン展開する寿司屋もエジプトに上陸しました。
日本人からすると「なんだこりゃ?」というフュージョン寿司など怪しげなお寿司がほとんどですが、お寿司が食べられることを在住外国人が歓迎していることもあり、寿司屋は定着傾向にあります。
憧れの日本人の大好きな寿司を食べられることができると言うのは、エジプト人にとって自慢です。
またエジプト人は基本的に生魚を受け付けないことから、お寿司が食べらるのは一種のステイタスになっています。
日本を知ると見えてくる現実
インターネットの普及でエジプト人は、エジプトでは知られざる日本を発見しようと、自分たちでサーチをしています。見えてくるのはすべての物が素晴らしく、正直者だけがいる夢の国ニッポンではないと言うことです。
人々の注目が高くなると、報道でも日本のニュースが多く取り上げられるようになりました。
東日本大震災での人々が助け合う様子は、さすが日本人!素晴らしいと感銘を与えました。
しかし、その後の原発問題や、政治、事件を知るにつれ、日本にも自分たちと同じ様に、問題がいろいろあることを理解してきました。戦争をしていないのに殺人事件が起こる、家庭内や病院での殺人などには衝撃を受けています。
日本人はお金持ちという思い込み
エジプトはまだ文盲の人もいます。
新聞を読んだり、テレビのニュースで日本に注目している人たちの日本像は変わりつつありますが、多くの庶民層にとって日本はまだまだ夢の国です。
日本人が嫁に来れば一族が救われると思っている人たちもいます。
日本人であれば多額の現金を持ち、クレジットカードで何でも買える、日本に行けば平等に扱われ、いつでもファストフードが食べられると幻想を持っています。
緑茶を飲んでいるから健康で長生きな日本人?
エジプト人は一杯のお茶に砂糖を何杯も入れて飲みます。砂糖を入れないお茶は飲めないと考えていました。
かつてのエジプト人は死ぬと来世は新しい人生が始まると考えており、それほど長生きに固執していない節がありました。
ところが最近は医療も進歩し、多くの人が長生きを望むようになりました。
憧れの日本人はとても長寿の民族です。観光で来る日本人を見ていると、お茶に砂糖を入れることを極端に嫌がります。
日本人観光客は何も言わないと極甘のお茶が出てくるので、それならば砂糖なしの方がましだと思って入れないでくれと言いますが、エジプト人はそこに長寿の秘密が隠されていると考えました。
国民病ともいえる糖尿病予防やダイエットに緑茶を医者も推奨するようになってきました。
紅茶に砂糖を入れないことは考えられないが、緑茶は砂糖なしで飲んでみようとするエジプト人が増えてきました。ただし、そう簡単にはいきません。
そこで「日本人みたいに健康で長生きするためだ」思うことで我慢が我慢でなくなってきました。現在カイロなどの都市部の人々は砂糖のあるなしはともかく、緑茶を恒常的に飲むようになりました。
高級カフェでは玄米茶や煎茶を選べるところもあります。
エジプトで売られている緑茶は基本的に中国緑茶で、色は黄色っぽいです。日本産の緑茶が入ってきて、抹茶アイスなども売られるようになると「日本のお茶は緑で本当にグリーンティだ。中国茶は黄色くて緑茶とは言い難い。日本の物は本物で中国の物はよくない」と、思う人がいます。
製法が違うだけで、中国緑茶も緑茶ですが、エジプト人の日本贔屓がお茶一つとっても見えます。
日本は良いものをくれる、ありがたい国
日本がプレゼントしているわけではなく、円借款で、エジプトはそのお金を返さねばならないのですが、どうも勘違いしているエジプト人が少なくありません。
バスや救急車の車体に「Present from Japan」と書かれていることがあり、誤解を生んでいると思われます。
地下鉄は東芝が関わっています。
日本の技術は素晴らしいと思って乗車する人々や、ギザの浄水場の水を「日本の浄化槽の水は格別だ」と言って飲む人達がいます。
そして、大博物館建設など日本が関わっている事業で、自分も働きたいと思っている人が沢山います。
職場環境がいいであろうと言うことの他に、自分の経歴に日本の仕事にかかわったことがプラスされると転職後も有利であると考えるからです。
又一族の中に日本の仕事にかかわった者がいると、一族の自慢になります。
日本はいつまでもエジプト人に尊敬される国でありたい
日本信仰ともいえる日本ひいきに在住者は少なからず恩恵を受けています。
ホテルなどの荷物チェックでも「日本人ならOK」と、ろくに確認しないで通してもらえることがあります。
エジプト人は日本人も中国人もほとんど区別がつきませんが、日本人が優遇されていると中国人も感じているらしく、レストランなどで背中合わせになった中国人が「日本人です」と言っているのを聞くと、非常に気まずい思いをします。
日本大好きエジプト人は折り紙を習ったり、 鯛焼き型をネットで探して鯛焼き屋を始めたりと、日々日本をもっと知ろうとしています。
いつまでもエジプト人に尊敬される日本人でありたいものです。
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