南アジアに位置する発展途上国であるバングラデシュは特に、先進国・日本に住む私たちの常識とは大きく違うところが多く、日本にはない良い部分に感銘を受けることもあれば、理解に苦しんだり戸惑いを感じる文化や習慣が多いと思います。
ここでは、バングラデシュ人と結婚し、移住して3年になる筆者が「バングラデシュに住む上で知っておきたい習慣やマナー」について、特に日本とギャップがあると感じた
- 生活
- 仕事
- 家族感
という3つの観点から紹介します。
良い面もそうでない面も、個人的見解を交えながら、お伝えします。
知っておくだけで、現地滞在もきっと楽になるでしょう。
1. バングラデシュ生活で押さえたい仕草やマナーなどの慣習
海外で自分にとって馴染みのない仕草やマナーなどに触れ合うことは、海外に旅行に行ったり住んでみたりすることの一つの醍醐味でしょう。
バングラデシュでも、住む上で、知っておいて損はしない慣習がいくつかあります。
「YES」の意思表示は首を傾げる。
日本や他の多くの国でも、YESと意思を表示したいときは、首を縦にふる動作をすると思います。
それが、バングラデシュでは、 YESのときは首を傾げて表現するのです。
日本的な感覚だと、首を傾げられると「あれ?NOってことなのかな?」と心配に思うこともあるかもしれませんが、「YES」の意味なので、ぜひ慣れるようにしてくださいね。
結婚しているか?のステータス確認は当たり前。
初めての人に会った時の最低限の自己紹介と言ったら、何を紹介しますか?
日本人的な感覚なら、「名前」や「職業」、場合によっては「年齢」もあるかもしれません。
バングラデシュは、このベーシックな自己紹介に、「既婚か未婚か」という項目がかなりの高確率で追加されます。
日本だと、結婚のステータスを聞くのは失礼に当たる場合がある(特に女性に対しては)と思いますが、バングラデシュでは聞くのが普通です。
それもそのはず、バングラデシュでは20代後半以降になると、お見合いなどで結婚することが当たり前の習慣があるのです。
そのため、「既婚か未婚か」という質問は特に失礼には当たらず、普通に聞いてきます。
更に、まだ30代くらいの人であっても、まだ結婚していないと答えると、「なんで結婚していないの?」と無邪気な質問を、悪意なくされる場合もあります…苦笑
人によっては不快かもしれませんが、バングラデシュ人にとっては普通なんだと思って、さらっと答えてあげましょう。
2. イスラム圏で生活をする上で知っておいたほうが良いこと
仏教国といえど、無宗教の人が多い日本に住んでいると、なかなか宗教のことについて感じる機会が少ないのではないかと思います。
そんな日本と違って、バングラデシュはイスラム教の宗教色が強い国です。
日本では気にしないようなことも、バングラデシュでは留意した方が良いこともあるので、何点か紹介したいと思います。
女性は肌が隠れる服を
暑い気候の南国バングラデシュでは、性別関わらずタンクトップやTシャツ、短パンやミニスカートなど、涼しげな夏の格好をしたくなることでしょう。
しかしながら、イスラム教では、女性の肌見せはタブー。
現地の女性はサロワカミューズと呼ばれる伝統的な日常着や、サリーと言った、必ず胸元や足首までが隠れる服を着ています。
サロワカミューズの場合は、服の上に更にオムナと呼ばれるストールを着用したりします。
「私はイスラム教ではないから、服装のルールに従う必要はない」と考えるのはごもっともですが、肌を露出している服装で街を歩いていると、周りの人からジロジロ見られる事になり、なんだかんだ不快な思いをすることも予想されます。
現地では最低限でも、Tシャツや長ズボン、もしくはスカートとスパッツなど、肌が隠れるような服装を心がけましょう。
ラマダン中は、断食中の人に配慮を
イスラム教の有名な慣習として、約1ヶ月間、日中だけ水分や食事を取らない「ラマダン(断食)」というものがあります。
現地の人でもラマダンを行う人と行わない人、様々ですが、やはりしっかり行う人の方が割合は高いです。
ラマダン中にバングラデシュに滞在する場合は、日中は外で歩きながら水を飲まない、断食中の人の前では食事をしない、など、厳格なルールとして定められている訳ではありませんが、配慮が必要です。
3. バングラデシュで仕事をする上で知っておいたほうが良いこと
バングラデシュに住むのであれば、現地で仕事をする方も多いでしょう。
私もバングラデシュで日々働いていますが、仕事をしている中でも、日本と全然違う感覚であることが深く感じられます。
時間を守らない人が多い
出社時間は会社で決められていますが、大抵30分〜1時間は遅れてきます。
言い訳としては、道路が混んでいた、や、家族の都合、など。
それらを見越してもっと「早く出社準備を。」という日本人的な論理は通用しません。出社時間でなく、会議の開始時間も同様です。
私が働いている会社では、30分以上遅れた人には給料を少し減額するというペナルティを課すルールを作り、それにより遅刻は少し減りました。
大丈夫、と言われていても、大丈夫じゃない
基本的に自己評価が高く、プライドも高いバングラデシュ人たちは、自分たちの仕事の成果や見通しについて、なぜか絶対的な自信を持っています。
バングラデシュで働いていると、
「ショモシャナイ(問題ない)」
「インシャーラー((肯定的な意味で)神が望めば)」
という言葉をよく聞こえてきますが、その言葉を聞いても、それを鵜呑みにしないことです。
大抵何かしら問題があるので、できるだけ細かく確認する必要があります。
どんなに簡単な作業でも、ミスを頻発する
例えば書類コピーのような、どんなに単純な作業を頼んだとしても、
- ページがバラバラのままホチキスで留められていたり
- ページが抜けていたり
- そもそも印刷されていないページがあったり
することも、バングラデシュのあるあるです。
どんなに簡単で小さな作業にも、絶対どこか間違っているはず、と常に疑いをかけることが必要になってきます。
嘘をよくつく
大前提として 、人によるというのはもちろんありますが、自分の学歴や職歴を簡単に詐称したり、やっていないタスクをやったと嘘ついたり、すぐにバレるような嘘を簡単につくようなところも理解に苦しむところです。
こういった人たちは思い切って切り捨てるか、どうやって嘘をつかせない仕組みを作るか、という努力が必要になってきます。
その他
仕事における人為的な苦難ばかり書いてきましたが、他にも、環境的な要因で苦労することは多々あります。
例えば、
- 渋滞が激しすぎて車で20分で行ける所まで1時間かかったり
- 銀行の突然のポリシー変更や煩雑な手続きのせいで突然お金が下ろせなくなり、スケジュール通りに送金などできなかったり
- 毎日のように起こる停電やインターネット断線で仕事を中断せざるを得なくなったり
など。
脆弱なインフラや未熟な公共機関のせいで、物事がスムーズに進むということがあまりない国です。
ここはもはや不可抗力の部分が大きいので、大変ですが自分たちで二重、三重にもバックアッププランを作っておくと、トラブルを最小に抑えられる確率が高くなります。
4. バングラデシュの家族感について
最後に、バングラデシュ人と結婚している筆者だからこそ間近で見ることができる、バングラデシュの家族感について紹介したいと思います。
大家族で支え合って生きるのが当たりまえ
バングラデシュ人の家族の雰囲気は、良くも悪くも戦後の日本のような感じで、3世代同居は当たり前、家族や親戚間のつながりが強い、ご近所さんとも顔見知りでみんなで仲良く協力しあって暮らしている、と言った感じです。
休日の主な過ごし方といえば、親戚のお家に遊びに行って一緒にご飯を食べる、ということが多いです。
一世代前は、5~8人兄弟など普通だったので、その分親戚の数も多く、訪れる家もたくさんあります。
現代の核家族に慣れた日本人の感覚からすると、助け合える部分があるのは頼もしい反面、家族や親戚との距離が近すぎてうんざりすることも多いです。
頼り頼られるのが当たり前
更にこれはバングラデシュの宗教であるイスラム教が背景にあると思いますが、イスラム教の「喜捨(きしゃ)」という、貧しいものに分け与えて助けるという考え方に即して、基本的に人に頼ることを良しとしている雰囲気があると感じます。
金銭の貸し借りや、トラブルの仲裁など、とにかく親戚を頼りまくる。頼られた方もそれが当たり前なので、普通に助けてあげる。
これだけ聞くと、美談に聞こえるかもしれませんが、まずは自分でできるだけ頑張ってみるという姿勢を一切排除し、最初から他人任せ、トラブルの原因も自責ではなく他責、というスタンスが、私は未だに受け入れられていないところがあります。
こういった側面は、バングラデシュ人とかなり深くお付き合いをしないと見えない部分ではあると思いますが、奥深い、許容が難しい部分でもでもあります。
この問題に対する、バングラデシュで3年間ほど暮らして行き着いた私なりの結論は、「話し合っても絶対に分かり合えないので、こちらはなるべく関わらないこと、忘れること」です。
彼らにとっての普通の文化に、私にとっての普通を押し付けてもなんにも変わらないため、距離をとることから始めています。
バングラデシュ生活を楽しむために
バングラデシュに住むと、浅いものから深いものまで、様々なカルチャーギャップに衝撃を受けたり、イライラが止まらないこともあると思います。
それでも、慣れというのは怖いもので、少しずつ乗り越え方もマスターし、自分の人間的な深みを持てたり、人生の経験値も着実に詰めるはずです。
次々と押し寄せるトラブルをうまく乗り越えつつ、バングラデシュでの生活を謳歌してほしいと思います。
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