イスラエルって、治安の悪いイメージが強いですよね。旅行で行くのも少し躊躇される方、いらっしゃるかもしれません。
でも実は、日本よりも安全で快適な「キブツ」というイスラエル独特の社会主義コミュニティーがあるということをご存知ですか?
「え?なにそれキブツって」
「謎のキブツについて知りたい!」
「キブツで生活してみたい!」
「イスラエル人と生活してみたい」
と言う方へ向けて、キブツの元住民が詳しく解説します。
キブツとは?
紀元70年、ユダヤ対ローマ戦争で敗北したユダヤ側はパレスチナの地(現在のイスラエル)を追われて、世界中に離散しました(ディアスポラ)。
何百年もの間難民となったユダヤ人は、逃亡先の国でも迫害に遭います。
1909年、ロシアで迫害を受けていたユダヤ人は、パレスチナのガリラヤ湖周辺に帰還しました。そこでそのユダヤ人たちは、自分たちの共同体を作ります。
これが今のキブツの原点となりました。
自分たちの力で生きて行くために、自給自足を始め、農業を充実させるための土地開発も始めました。迫害の歴史から、彼らの共同体では「平等」を掲げみんなで生きて行くための「強い団結」が生まれました。
やがて、パレスチナに帰還するユダヤ人の数が増大し、キブツの数も増えて生きました。
現在は261のキブツがイスラエル中にあります。
100人規模の小さなキブツから大きいところでは2000人がキブツに住んでいます。
キブツ=「大きな家族」
キブツについて辞書等で調べると、「集合」「集結」と出てきます。ヘブライ語でキブツは「集合」と言う意味です。
この共同体としてのキブツについてネットで調べると、理想主義とか資本の共有なども出てきます・・・なんのことだか、さっぱりわかりません。
私も実際に暮らすまで、キブツとはなんのことなのか全く理解できず、
「その場所の固有名詞?」
「その地域の地名?」
と思っていました。
キブツに住んでいた私なりの表現をするとしたら、キブツとは「大きな家族」のイメージです。
キブツとは、場所の名前でもないし、行政区分の一つでもありません。人々が集まり、みんなで生産して暮らしていく、人々の集合状態です。
この大きな家族=キブツには、それぞれ名前がついています。
例えば、自分がキブツに住んでいるといえば、どのキブツに住んでいるのかそのキブツの名前を言います。
私の場合は、Maagan Michael という名前のキブツに住んでいました。ある友達は、Yagurというキブツ、別の友達はHeftibaというキブツなどなど。
キブツの暮らしはどんなもの?
さて、共同体とか、コミュニテイーとか、キブツに住むイスラエル人がどのような生活をしているのかをみていきましょう。
なんでも揃うキブツ
食料用品店、生活用品店、保育園、学校、老人ホーム、郵便局、バー、ジム、プールなどキブツの中だけで全て揃うので、外に行く必要がありません。
※キブツの大きさによって、あるものが変わります。
洗濯場では、キブツ中の住民が、無料で大量の洗濯物を洗濯できます。その日に集まった洗濯物全てをまとめて洗い、乾燥させ、たたまれた状態で持ち主の洗濯物用ロッカールームに運ばれます。
ダイニングルームでは、バイキング形式になっていて、好きなものをとって、ホールにあるテーブルで食べることができます。
家で作ると面倒なおかずを、ダイニングルームから持ってきて家で食べたり、ちょっと作るのが面倒なときもダイニングで食べたりします。
キブツに住む人たちは、友達と会って一緒にご飯を食べて、ダイニングルームは常に賑やかです。
祝日や安息日の食事はとても豪華で、ホールの大きなテーブルで親族と一緒に食事を楽しみます。
働き方
キブツに住む人の働き方は様々です。
キブツの外に会社員として働きに行く人、医者、先生もいれば、キブツの中で働く人もいます。
例えば、ダイニングで料理をする人、洗濯場で洗濯機を回して畳む人、キブツの農場管理、キブツの保育士。
私が住んでいたキブツでは、イスラエルシェアのトップをしめるプラスティック工場があるため、キブツ内外から労働者がいます。
お金
社会主義を掲げるキブツでは、職業による給料の差は存在しません。
キブツ内で働いても、キブツの外で働きに行っても、最終的にもらえる額は家族の大きさによってきめられます。家族や子供の数によってキブツから支給される額が公平に決まっています。
キブツ内では現金での売買がなく、すべてここに割り当てられたキブツ内での番号で、コンピュータ上でお金が動きます。
例えば、キブツの中にあるお店で物を買うときは、現金やクレジットカードは使わず、キャッシャーに自分の番号を伝えて、キャッシャーが番号を打ち込み、パソコン上で自動精算される仕組みになっています。
自然いっぱい
多くのキブツは、山や海、砂漠のある自然が多いところに位置しています。
もちろん、都会近くのキブツもありますが、キブツの中に入ると、まるで同じくに似るとは思えないほど自然豊かになっています。
キブツ内の移動
キブツの中では、自転車か徒歩が基本的な移動手段です。
大きな荷物を運ぶときや、お年寄り、小さな子供を連れて家族で移動するときにクラブカーも使いますが、普通の乗用車はキブツ内では走っていません。
住居
キブツの住民は、子供の人数に応じてキブツから家を与えられます。人数が多ければ一軒家。
少なければ、2階建マンションの1部屋が与えられます。
キブツによっては、入隊した青年たちに彼ら専用の部屋を与えるところもあります。
キブツのメリットって何?
キブツに住む人は、そこで生まれ育った人もいれば、キブツに住むことを選んできた人もいます。
みんな知り合い
キブツのいいところは、お互いがお互いのことを知っているということ。
孤独になることはありません。例えば、家から郵便局に行くまでに必ず誰かに会い少し立ち話になります。
イスラエルでの生活は、より多くの人を知ってることがとても重要です。色々な情報は、人を通じて回っていきます。
自分が知らなかったことや、ネットでも載っていないことは人を知ってるだけで割と簡単にわかってしまうことが多いのです。
みんな知り合いのいいところは、ヒッチハイクがすぐつかまることにもあります。
目的地の方向が違くても、「あ〜〇〇さんの孫のお友達の△△君だね」
と、自分とは全く関わりのない人でも乗せてくれます。
キブツの住民=家族です。
子供を育てるのには安全
自然豊かで、車もなく、お互いを認知しているキブツでは、安心して子育てができます。
キブツ内で殺人事件や誘拐事件は起きていません。
キブツの住民みんなで子供達を見守って生活しています。
仕事が楽しい
キブツにいれば、無職になる心配はないし、自分たちの知り合いが同じ場所で働いているため、仕事が辛くなりません。
仕事場の人間関係って大事ですよね。
キブツで働けば、昔から知ってる人と働くわけですし、変な緊張感もありません。
お金には困らない
職種に限らず、最低限の給料は保証されています。子供を育てる分も十分にあり、毎年家族旅行に行けるほどの額をもらえます。
経済格差がない
キブツに暮らす人は、みんな公平にお金を受け取り、日頃からあまり贅沢な暮らしをしていません。裕福から生まれる妬み、貧しさがもたらすイジメはありません。
イスラエル人も語るキブツ3つのデメリットとは
キブツで生まれ育ったイスラエル人に、キブツでのデメリットを聞いて特に多かった意見を3つまとめました。
1. 噂がすぐ回る
みんなが知り合いで、常に一緒に遊び、勉強し、働く中で、一瞬で噂が回ってしまうそうです。外国人によくあるのが「話の誇張」。回ってきた噂が真実と全く違うことがよくあります。
特にゴシップネタがキブツ内で広がるとかなり面倒くさいようです。
2. お金持ちにはなれない
キブツの外でバリバリ働いても、もらえる給料はキブツでそこそこ働いている人と同じになります。
大学教授だろうが、医者だろうが、キブツでもらう給料は公平になります。
キブツの住民である以上、お金持ちになることはできません。
3. マイカー・マイホームは持てない
キブツでは、車は全て共有です。
キブツにある駐車場には大量の車があり、機械を操作して自分が乗る車を選びます。
走った分だけコンピューター場で自動精算されます。
家も同じく、キブツから家族の大きさに合わせて借りているものです。購入はできません。
キブツで暮らす方法
ビザ場の問題で期限はありますが、外国人がキブツで暮らせる方法が2つあるのでご紹介します。
1. ウルパン
ウルパンとは、ヘブライ語を学ぶためのいわゆる語学学校です。
もともとは、世界中に離散していたユダヤ帰還者が、イスラエルで生活していくためにつくられたヘブライ語学校でした。
ユダヤ人とは関係なく、イスラエルにヘブライ語を学びにくる外国人もウルパンで学ぶことができます。
私もそのうちの一人で、キブツのウルパンで10ヶ月ヘブライ語を学びました。
ウルパンは、イスラエル国内のいたるところにありますが、キブツのウルパンのいいところは、イスラエル人と一緒に働きながらヘブライ語を学べるということです。
1週間の半分が授業、半分は仕事になります。
仕事はヘブライ語のレベルによって振り分けられます。
※この就労に給与は伴いません
さらに、ウルパン生専用の共同寮があるので、全く未知のイスラエルでアパートを探す必要はありません。
ウルパン:https://kibbutzulpan.org/
2. ボランティア
キブツでボランティアをするプログラムも人気です。
現在イスラエルにいる日本人で、初めはキブツでボランティアをして、それを繰り返して長期滞在をしている方や、ボランティ
アをしているときにイスラエル人と結婚して市民権を得た方が大勢いらっしゃいます。
キブツボランティアの魅力は、ウルパンと違い初期費用がほとんどかからないということです。さらに、微々たるものですが収入があります。
就労時間は8時間前後のものが多く、キブツによって収入は異なりますが、月給は1〜2万円です。
キブツの寮で生活し、キブツ内で食事が取れるため、給料の貯金は可能です。
注意:あくまでボランティアですので、「海外での生活を経験したい」「キブツで暮らしてみたい」という方にはオススメですが、ワーホリのように稼ぐことが目的の一部にある人には向きません。
ボランティア:https://kibbutzvolunteers.org.il/
社会主義コミュニティー・キブツまとめ
歴史上の苦しみをもとに、自分たちの力で、差別や不平等がなく生きていこうとしたユダヤ人のキブツ。
イスラエルって物騒なイメージを持たれがちですが、キブツほど安全で、のどかなところはないと思います。
この記事で、キブツについての理解が深まれば幸いです。
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