スペインに長期間くらしたいと思っている日本人が最初に直面するのが、ビザの問題です。
スペインでは、学生ビザでは基本的に就労は認められていません。
(※ただし、週に40時間までなら、就労が認められることもあります。)
スペインに支店(あるいは本店)を持つ企業が日本人向けに求人を出す可能性もありますが、それも運とタイミング次第です。
さらに、日本に住む人がスペインにある企業の求人情報を得るのは、言葉の問題などもありかなり難しいのが現実です。
つまり、日本人が仕事を見つけたうえでスペインに滞在するのはかなり難しいといえます。
しかし、スペイン政府は2016年から滞在・労働ビザつきの起業家プログラムを発足させました。
その名はRising Startup Spainプログラム。
今回は、スペインで起業を考えている方のために、このプログラムの概要を説明します。
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Rising Startup Spainプログラムとはどういうもの?
スペイン政府機関の一部であるスペイン輸出投資機関(España Exportación e Inversión :ICEX)が、2016年から主催する『奨学金およびスペインでの労働・滞在許可証つきの起業プログラム』がRising Startup Spainプログラムです。
スペインで起業したい人が、文字どおり世界中からこのプログラムに応募します。
その応募者の中からICEXによる審査を通過したグループのみがこのプログラムに参加する権利をえることができます。
2016年には155件の申し込みの内10件が合格しRising Startup Spainプログラムを通じてスペインで起業しました。
また、2017年には採用件数が15件にまで増えました。
ちなみに過去2年間で日本からの申し込みはゼロとのことです。
「このプロプログラムに参加してスペインで起業してみたい日本人の方、ご連絡をおまちしております」とは、ICEX担当者のお言葉でした。
Rising Startup Spainプログラムの目的 〜スペインの競争力アップのため
ICEXがこのプログラムを作った目的は3つあります。
- まず第1に、海外からの起業家を通じてスペインの競争力を上げること。
- 続いて起業家をスペインに招くことで、国際社会に「スペインは起業するのに適した場所である」ということを国際社会に伝えること。
- 最後はICEXの起業家をバックアップする能力を向上させること。
参考URL:www.elreferente.es/tecnologicos/entrevista-icex-rising-startup-spain-31449
つまり、スペイン政府がスタートアップ企業をバックアップする用意があることを他の国に示すことで、
- 外国のスタートアップ企業をスペインに呼び込むこと
- そして彼らの力を利用して、スペインの産業競争力を高めること
というのが、Rising Startup Spainプログラムの目的です。
Rising Startup Spainプログラムで得られる嬉しいもの
ICEXによる審査に合格した企業は、プログラムを通じてスペインでの起業に必要な、以下のことを得ることができます。
- スペインで起業家としての活動するための、1年間有効な労働および滞在許可証(いわゆる労働ビザ)
- コワーキング・スペース(マドリードかバルセロナ)
- 10000ユーロの資金援助
- コーチング・プログラム
特筆すべきなのは、やはり、ビザについてでしょう。
Rising Startup Spainプログラムに合格すると、自動的にスペインでの労働ビザを得ることができます。
ただしこのビザの有効期限は1年間。
これは、1年後にビザの更新を申請する必要があることを意味します。
加えて、スタートアップ企業にはうれしいのが、10,000ユーロの資金援助(約140万円)。これは返還の必要のないものです。
マドリードあるいバルセロナにあるコワーキング・スペースで、スペインでの活動するための拠点としてのオフィスを持つことができます。
そのようなコワーキング・スペースで、スペインで活動するためのコーチングも受けることができます。
この条件を見ると、おそらく起業1年目必要なものはほぼ一通りそろっているような印象を受けます。
プログラムに応募するための2つの条件
ICEXが具体的に指定しているRising Startup Spainプログラムの応募条件は次の2点です。
- スタートアップ時の資金のうち、少なくとも10%は外国人によるものか、あるいはスペイン国内に住んでいない人物のものであること。
- 会社としてはまだ正式に活動していない団体であること。もしも、すでにスペイン国内で会社組織として活動していた場合には、設立から1年以内の企業であること。
この2つの条件から、基本的にこのプログラムは、外国人がスペイン国内で起業するためのものであることが確認できます。
そして重要なことは、このプログラムはヨーロッパだけではなく、全世界から応募を受け付けているということです。
スペインに限った話ではありませんが、ヨーロッパ連合の加盟国の多くでは、何らかの対外政策を発表する場合など、EUの市民権を持っている人に便宜を図る場合が多くあります。
しかし、このRising Startup Spainプログラムにはそのような国籍条件やEU条件などはないので、日本人が応募することも可能ですし、審査に通りさえすれば、スペインでの滞在・労働許可を得ることができます。
ICEXによる4つの審査基準について
Rising Startup Spainプログラムの参加者を決める際、ICEXが用いる審査基準は以下の4点です。
- プロジェクトに計画されているテクノロジーが革新的なものであるかどうか。
- 事業計画書とファイナンス・プランが妥当なものであるかどうか。
- 生産する商品は適当なものかどうか。また、その製品に潜在的な需要ががあるかどうか。
- マネージメント・チームに計画を管理・実行する能力があるかどうか。
以上の条件を総合すると、審査にあたって重要なものは商品詳細を含めた事業計画書であることがわかります。
スペインにおいて、事業計画書を提出する場合、できることなら「すぐ明日にでも事業ができるような状態」のものを提出するのが、スペインでの成功のコツです。
つまり、契約が必要なものなら、本契約前の「仮契約」の書類を提出したり、あるいはすでに契約が成立している場合には領収書のコピーを提出するなど、とにかく、企業が具体的に動いていることを示す書類を一緒に提出した方が、審査を通過しやすいのが実情です。
事業計画書については、ICEXでも個別に相談を受け付けています。
スペイン語が話せない人でも、英語で問い合わせすることができますので、この記事の最後に書いてある問い合わせ先に連絡してみることで、一番確実な情報を入手することができます。
過去Rising Startup Spainプログラムに採用された企業のプロフィール
前述のとおり、このRising Startup Spainプロジェクトは、2016年から始まり、2016年には10件の事業が、2017年に15件の事業がこのプロジェクトに採用されました。
そのうちの3つの企業の簡単なプロフィルをここで見てみたい思います。
87 SECONDS (ベルギー)
アニメーションやビデオを製作する、映像制作の会社。
マドリードにオフィスを構える一方で、ブリュッセル・パリ・リオン・ジェノバにも支店あります。マドリード支店の従業員数は2人ですが、全5支店の従業員数合計は50名(犬1匹含)。
JOINCUBE-HIBOX(アメリカ+アルゼンチン)
一つの会社内のみで利用できるSNSシステムやビデオ会話等のシステムがこの会社の商品です。
たとえて言えば、FACEBOOKやInstagramにSKYPEが追加され、そうしたシステムが特定の会社内でのみ利用できるサービスが、この企業の商品です。
BIOME MAKERS (アメリカ+スペイン)
ワイン産業に特化したDNA解析を事業とするバイオテクノロジーの企業です。
従業員は約20名。そのうちの40%が博士号取得者とのこと。
さいごに
Rising Startup Spainプログラムにおいて、IT関係やバイオテクノロジー関連の事業が採用されることが多い模様です。
このプログラムの情報を得るためのサイト
Rising Startup Spainプログラムの詳細は次のアドレスから見ることができます。
URL:http://www.investinspain.org/invest/en/rising/index.html(英語サイト)
英語でも対応が可能ですので、スペインで起業に挑戦されたい方はICEXまでぜひ相談してみてはいかがでしょうか?
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