海外への移住を考える際に、オーストリアを思い浮かべる人は少ないかもしれません。
しかし現在、オーストリアのビザ及び滞在許可制度は驚くほど充実しており、日本を含めEU外からの移住がとても容易になっています。
今回は、研究者として現地で就職して働くサトウタクマさんに、オーストリアのビザおよび滞在許可制度について紹介してもらいました。
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入国に際しビザが不要!
通常、海外へ移住するには、入国の際して「ビザ(査証)」を取得し、現地での滞在に際して「滞在許可」を得る必要があります。
しかし、オーストリアへの入国に関しては、日本とオーストリアの二国間の査証免除取極により、ビザ取得は基本的に必要ありません。
例えば、私の場合は、オーストリアでの就職先を決めた後に、当初は2年間の就労目的で、家族4人で無査証で入国し、その後家族4人分の滞在許可を現地で取得しました。
ただ、査証の要否についての規定は、国際情勢などにより変更になる場合もあるので、渡航前に下記のオーストリア大使館または在オーストリア日本大使館に確認することをお勧めします。
<オーストリア大使館>
住所 〒106-0046 東京都港区元麻布1-1-20
電話 03-3451-8281
メール: tokio-ob(at)bmeia.gv.at
ウェブサイト https://www.bmeia.gv.at/jp/botschaft/tokio.html
<在オーストリア日本大使館>
住所 Hessgasse 6, 1010 Vienna, Austria
電話 (01) 531 92 0 (国外からは +43 (1) 531 92 0)
ウェブサイト http://www.at.emb-japan.go.jp/jp/
短期滞在(就学・就労のない場合)はビザ・滞在許可の必要なし
オーストリアは、シェンゲン協定加盟国ですが、オーストリアと日本の二国間の査証免除取決めにより、シェンゲン協定で定められた滞在可能期間である3か月を超えて、1年のうち6か月以内の非営利目的の滞在(具体的には、その年の1月1日から12月31日までの間の合計180日間の滞在)が許可されています。
ですので、現地での就労また就学のない場合は、無査証での入国後、滞在許可を得る必要なく最大6か月まで滞在できます。
この制度を利用して、滞在を可能にする資金を日本で確保する形で、6ヶ月以内の短期で移住する日本人は多いです。
ただ、この査証免除取決めはオーストリアでのみ有効なので、3か月を超えて滞在を行う場合は、オーストリア国内から他のシェンゲン協定加盟国へ渡ることができなくなるため、旅行や帰国の際の経由地について注意が必要となります。
6ヶ月までの短期滞在(就学・就労のある場合)は特別なビザで滞在可能
次に、現地で就職するなどオーストリア国内での就労を目的とした場合や、現地の大学に入学するなど就学が目的の場合は、6か月以内の短期の場合に限り、「短期滞在ビザ(ビザD)」もしくは「ワーキングホリデープログラムビザ(WHPビザ)」を入国前に取得することで、滞在許可を現地で取得する必要なく滞在することができます。
短期滞在ビザ(ビザD)
短期滞在ビザは、現地の学校へ通う場合、または、雇用法上に許可あるいは申告の義務のある特定の活動を行う目的で滞在する場合に取得する必要があります。
- 客員研究員
- 企業へのインターンや研修生
もこのビザの取得の必要があります。
ワーキングホリデープログラムビザ(WHPビザ)
一方、ワーキングホリデー制度とは、18歳から30歳までの年齢制限内で、就労を渡航目的としない文化観光など休暇目的の滞在期間中に、旅行・滞在の資金を補うための付随的な就労を認める制度です。
この制度は、2016年7月より開始され、これによりオーストリアは、日本がワーキングホリデー制度を導入する世界で16番目の国または地域となりました。
これらのビザを取得するにあたり必要な提出書類や申請方法などについては、場合により細かく変わってくるので、上記のオーストリア大使館または在オーストリア日本大使館のウェブサイトをチェックし、場合によっては直接問い合わせをして確認することをおすすめします。
長期滞在用のビザ(6ヶ月以上)
6ヶ月以上の長期滞在には様々な滞在許可制度が用意されています。
6ヶ月以上の長期移住の際には、目的に寄らず滞在許可(Aufenthaltsbewilligung)を取得する必要がありますが、オーストリアの滞在許可は、
- 雇用
- 自営
- 研究者
- 学生
- 家族(現地の方と結婚した場合など)
など細かく種類が分かれており、必要な提出書類も滞在許可の種類によって異なります。
これらの滞在許可の申請は、原則として入国後に現地の役所(各州政府の移民課)で行いますが、書類の提出から発行までに3ヶ月程度かかる場合があり、また提出書類の中に住民票など現地で手に入れる必要のあるものも含まれるため、無査証の滞在の許されている6ヶ月を超えない為にも、入国前から提出書類の準備を進め、入国後できる限り速やかに手続きを進めることをおすすめします。
入国前に準備のできる書類としては、滞在許可の種類を問わず必ず提出が求められる「出生証明書等の身分事項の証明書」と、多くの場合で提出の求められる「無犯罪証明書」が挙げげられます。
身分事項の証明書としては、家族がいる場合も1つの戸籍謄本で対応できるので日本を出国前に該当の役所に申請して入手しておきましょう。
無犯罪証明署は、日本で最後に住民登録のあった都道府県の警察本部で申請・取得できるので、こちらも出国前に入手しておきましょう。
また、これらの書類を含め、ドイツ語以外の提出書類については、外務省のハーグ条約(公印の認証不要条約)によるアポスティーユの付与が求められるので、書類を入手後に、外務省の証明申請窓口または郵送で申請しましょう。
詳しくは、下記の外務省のウェブサイトを参考にしてください。
外務省(日本国内)における証明(公印確認・アポスティーユ)
さらに、無犯罪証明書を除くドイツ語以外の提出書類は、下記の決められた機関また個人による認証訳文(公式なドイツ語訳)を要します。
オーストリア国内:
- 法廷翻訳者または通訳者
日本国内:
- オーストリア大使館顧問弁護士
- ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所の翻訳事務所
次に、入国後に現地で揃える代表的な書類として
- 住民票(Meldezettel)
- 住居証明
- 労働契約書など(現地での就職の場合)
現地での住民登録を証明する住民票(Meldezettel)、アパートの契約書等の住居証明、また、滞在許可の種類に応じて現地での就職であれば労働契約書などその内容を証明する書類が挙げられます。
その他の詳しい提出書類については、上記在オーストリア日本大使館のウェブサイトをチェックし、不安がある場合は、電話やメールで直接問い合わせることをおすすめします。
新たな滞在許可資格、赤白赤カードとは
もう1点、オーストリアの滞在許可制度で注目すべきなのが、通常の滞在許可とは別に2011年7月より始まったRot-Weiß-Rot Karte(赤白赤カード)という滞在資格です。
ちなみに「赤白赤」はオーストリアの国旗の色を意味しています。
この制度は、高度な資格やスキルを持つ外国人及びその家族のオーストリア移住を促すためのもので、これを得ることで、まずは1年間の期限で申請を行った企業等で働くことができます。
そしてその後、Rot-Weiß-Rot Karte plusを申請することで、就職先に制限なくオーストリアの労働市場で自由に働くことができるようになります。
この滞在資格は、通常の滞在許可からの移行も可能であり、例えば、研究者用の滞在許可を得て指定された1つの研究機関で3年以上働くと、Rot-Weiß-Rot Karte plusを申請する権利を得ることができます。
この滞在資格を得るための具体的な審査は、資格・職務経験・言語習熟レベル・オーストリア留学の有無などを細部に渡ってポイント化することで行われています。
この制度に興味がある方は、まずは下記のオーストリア政府のウェブサイト(英語またはドイツ語)で取得可能なポイントをチェックすることをおすすめします。
Help-Service for Foreign Citizenss: https://www.help.gv.at/Portal.Node/hlpd/public/en
家族で移住する場合、家族も就労が可能!
最後に、家族での移住を考える場合についてですが、ワーキングホリデービザを除く短期滞在ビザ及び滞在許可を取得する場合、基本的には家族も同時に同ビザ及び滞在許可を申請することができます。
また、共働きを希望する移住者への配慮として、家族の労働も基本的に認められており、例えば、短期滞在ビザ及び通常の滞在許可による移住については、配偶者等の家族が現地で就職先を見つけた場合に、その職場で働くことを可能にする労働許可を随時申請することができます。
さらに嬉しいことに、研究者カテゴリーの滞在許可およびRot-Weiß-Rot Karte保有者の家族には、始めからオーストリア国内の労働市場で自由に活動することが許可されています。
オーストリアのビザまとめ
今回は、オーストリアのビザおよび滞在許可関連の情報を紹介しましたが、参考になられましたら幸いです。
オーストリアでは、様々な目的の移住者を迎え入れるために、多種多様な制度が整えられているので、海外移住に興味がある多くの方に合ったビザや滞在許可制度が見つかると思います。
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