オランダは日本人が働きやすい国としての知名度が上がってきています。
そのため、ここ数年で二千人規模の日本人がオランダに移住してきていると言われています。
移住するということは生活を成り立たせなければならないため「就職」の問題は必須項目です。(金銭的に問題がない人を除いて)
オランダで就職ができるのか、オランダに日本人が働ける場所があるのかなど、様々な疑問や不安があると思います。
ここではオランダに移住を考えている日本人に向けて、オランダで働く方法をご紹介しながら、その上で気を付けなければならないことなどを盛り込みながらご紹介させていただきます。
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なぜオランダは日本人が働きやすい国なのか?
先にも述べたように、オランダが日本人にとって働きやすい国であるということの知名度は上がってきています。
実際に日本のバラエティー番組などでも紹介されるまでになっていますし、この類いのブログや記事などもインターネット上にたくさん出ています。
この事情を細かく説明すると、とても長くなってしまうので、詳しく知りたい方は「オランダ 松風館裁判」と調べてみると、経緯を知ることができます。
その裁判の判決をきっかけに、日本が明治時代にオランダと交わした日蘭通商航海条約の効力がまだ生きていることが判明しました。
この条約のもと、日本人がオランダの労働市場では労働ビザを有せずとも、自由に働くことができるということで、日本人は働きやすかったのです。
なぜ、「働きやすかった」という過去形でお話ししたかというと、現在でもその効力は存在するのですが、「解釈」が変わったために日本人の労働条件が変わりました。
2017年の1月から、日本人は労働ビザを持っていなければ、オランダで働くことはできなくなりました。
筆者は2016年にオランダに来ました。
そして滞在許可が下りる際にもらうIDカードの裏にはオランダの労働市場に自由にアクセスができることが示されていました。
しかし今年、滞在許可の更新をしたところIDカードの裏面から、「オランダ労働市場に自由にアクセスできる」という内容の文言が消えていました。
これがどういうことなのか?
オランダでの労働条件が変わったことによる影響
オランダの労働市場に自由にアクセスできなくなったことは、その特権を利用して働いていた方にとっては、とても大きな影響を及ぼしています。
また、この変更は労働市場で日本人を雇っていた側にも大きな影響を及ぼしています。
本来であれば、労働ビザを獲得することはとても難しいことです。
なぜなら、雇用側のリスクがとても大きいからです。
オランダで企業などが一人の人間を雇用するために、様々な申請だけでなく社会保障、税金などを負担しなければなりません。
そしてオランダは雇用に関して平等でなければならないため、就職した労働者は守られる立場にあります。
その一つとして、一度雇用した労働者を解雇することは顕著な理由が無い限りとても難しく、解雇する際にもリスクを負うことになります。
ですから、オランダの企業や個人事業主は簡単に人を雇うことはしないのです。
しかし、労働ビザが無くても自由に働くことができた日本人は、雇用主からしても、労働ビザの申請手続きなどの煩わしさがなく、人手不足であれば即雇えることなどに魅力がありました。
筆者の知っている限りでは、日本人経営者の会社でそのような特権を活かして就職している日本人が多いです。
また、オランダで生活をする上で、最初から個人事業主として起業し、オランダの労働市場で働く権利を得ている方もたくさん居ますが、労働条件が変わる前までは自営業とは別に、アルバイト程度で別の職に関わることもできました。
しかし、労働条件が変わった現在では、それは許されません。
オランダで働く3つの方法
- オランダ現地の企業や職場に、「この仕事は日本人のあなたにしかできない。」という理由で雇用してもらう
- オランダ人と結婚してから就職する
- 個人事業主として規定の金額で起業し、オランダの商工会議所に登録をされる
現時点でオランダの労働市場で働くためには、上記の3つがクリアに働ける方法と考えられます。
一番現実的な項目は、1)と3)なのですが、1)をオランダで認めてもらうことは容易ではありません。
そもそも「松風館裁判」で論点となった内容でもあります。
ですから、3)の個人事業主として起業することが一番現実的で、今でも日本人がオランダの労働市場で有利に働けると言われている理由でもあります。
日本人の個人事業主はどの様な商売をしているのか?
実際にオランダで個人事業主として登録している日本人の職種を、筆者が知っている範囲内でご紹介します。
起業するのですから、今まで自分が培ってきたスキルを活かすことは大前提と思いますが、これからオランダに渡って起業しようと考えている方の参考になればと思います。
・海外移住サポート事業
これを仕事としている日本人は日蘭通商航海条約の内容が現在も有効であることが分かってから、本当に増えました。
多いだけあり、その質もさまざまということです。
オランダの社会の仕組みや人脈、経験、実績、時に法律にも精通していなければならないので、それぞれの精通する分野の人々に協力してもらいながら起業するという形が多いようです。
・日本食を提供する飲食店経営
「日本食」なので日本人に頑張って欲しいところなのですが、日本人が経営者の日本食店はまだ少ないのも現状です。
逆に言えば狙い目かもしれません。
店舗を構える、マルクトへの出店、移動販売と様々な事業形態があります。
ちなみに「居酒屋」は日本では有名な飲食店の一種とされていますが、ここオランダではこの「居酒屋」をある個人事業主(外国人)が商標登録しているようで、「居酒屋」を店名の中に使用することができません。
びっくりなオランダ飲食業界事情です。
・現地プロダクトなどのバイヤー
オランダは新しいものが次々に生み出される国でも知られています。
またヨーロッパの中の国であることも影響し、ブロカントの種類も豊富です。(ブロカントはフランス語で、意味は「美しい古道具」)
自転車大国であるため、見たことのない自転車もたくさんあります。
その様な商品をバイヤーとして仕入れ、日本の個人や企業に卸す仕事です。
日本とオランダを行き来できる職種でもありますが、貿易や税金の知識なども必要です。
・サッカー関連の仕事
これはサッカーに関する専門知識と、日本とオランダ間での人脈が必要とされますが、オランダは世界的に知られたサッカー王国。
オランダのサッカーチームはまだ日本では知名度が高くないので、市場の可能性としては開かれた事業だと考えられているようです。
・日本酒、米、味噌、海苔などの日本食材をオランダに輸入して卸す仕事
これは中国人経営の大きなアジア食材スーパーがいくつか有りますが、日本人が個人で行なっているものもあります。
こちらも貿易知識や税金知識は必須のようです。
・マッサージ、整体師
店舗を持たずに顧客の家を訪問する事業形態や、店舗を構えて経営する人といるようです。
・仕出し弁当屋
日本人が行うさまざまなイベントやオランダ人にお弁当を作って配達する仕事です。
・花屋
オランダは花大国。花の最先端を利用するアイデアのある方や知識、技術のある日本人には魅力的かもしれません。
・アクセサリーデザイナー
プロのデザイナーさんからアマチュアまで幅広いですが、センスが武器となる分野なので、ある意味可能性がある職種かもしれません。
その他にもプロダクトデザイン、建築士、音楽関係、WEBデザインなどを仕事にしている日本人もいらっしゃいます。
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日本人が海外で働ける職種一覧(体験談付き)!有望分野や変わり種も
オランダで働く際にあると役立つ技術を紹介します
寿司を握る技術
一つは寿司を握る技術です。
日本の寿司屋で職人として働いた経験のある方などは、オランダで働く方法で述べた①の「日本人のあなたにしかできない職業」として、有名ホテルの寿司職人として就職したり、外国人経営者の日本食料理店で重宝されます。
オランダでも寿司は人気の日本食です。
しかし本格的な寿司を食べられる場所は少ないのが現状です。
日本でいうところのチェーン店展開している持ち帰り寿司のような寿司屋や、回転寿司レベルの寿司が、なんちゃって日本食に紛れて存在するような状況です。
余談ですが、筆者が一番驚いたのは、オランダのある飲食店のいなり寿司です。
お揚げが細長く切られシャリの上に乗っていました。
オランダ語のスキル
もう一つは、言語スキルです。
オランダ人は基本はオランダ語で話しますが、話し相手が英語で話し掛けると、話途中であったとしても、すぐに英語に切り替えて話し始めます。
オランダ語、英語だけでなくドイツ語、フランス語、スペイン語を同じく理解する人も多いのです。
そんな中で日本人の言語スキルは、やはり武器にできるレベルの人は少ないのです。
日本の文化がなかなか広まらない原因の一つに、日本人の言語スキルの問題が大きいのではないか、とオランダで生活していて感じます。
日本特有の習い事
番外編としては、日本特有の習い事を極めておくことです。
書道、華道、茶道、剣道、柔道、着物の着付けなど、なんでも良いと思います。
オランダでワークショップやお教室を経営することなども可能ですし、駐在員の家庭の子供たちや奥様方にレッスンすることも可能です。
オランダの求人募集を探すには
オランダで求人募集を探すためには、個人レベルで話せば様々な方法があるのですが、ここでは日本人が探しやすい求人募集の見つけ方をお話ししたいと思います。
「オランダ掲示板」というインターネットサイトがあります。
こちらにはオランダ現地の情報がたくさんあります。
募集広告を出す側も、職を探す側も無料で情報掲載ができるため、利用しない手はありません。
求人広告を出しているのは、個人事業主が多いように感じられます。
こちらのサイトには習い事やワークショップ、イベントの情報や日本人コミュニティの情報も盛りだくさんですので、それらのイベントに参加し、人脈を構築することもオランダで就職するのに役立ちます。
日本からもインターネット上で確認することができるので、見てみると良いでしょう。
「在蘭日本商工会議所」のホームページでも、オランダでの求人が分かるようになっています。
こちらの求人募集は大手企業の募集が多く、個人スキルもある程度要求されるものが多いです。
求人募集だけでなく、セミナーのお知らせやオランダ国内で日系企業がどのような活動をしているのかなども分かるので、見ておくと良いです。
おわりに
オランダで日本人が働くことは実際には簡単なことではありません。
しかも滞在許可を得られる、更新できる条件を満たして働き続けることが必要とされます。
しかし、オランダの労働市場では、アメリカ、スイス、日本国民はまだ恵まれているのが実情です。
他国の人々はもっと厳しい条件下で求職をしなければなりません。
個人事業主として事業登録を行う際にも、ビジネスプランをプレゼンしなければなりません。
要するに、計画の段階でしっかりとビジョンがなければスタートすることも継続することもできません。
逆にそれらを満たせていれば、オランダで働きながら生活していくことができるかもしれないのです。
日本とは生活文化が全く違うので働き方や職に求められる物も違います。
そんな部分に新しい発見をしたり、他国の人々の働き方を知ることは自分の中の「働く」という価値観をも変えるきっかけになるはずです。