南米の小国ウルグアイ。
国民の87%以上がスペインやイタリアなどのヨーロッパ系の血を引き継いでいます。
そのため言語(スペイン語)や食事、建築などさまざまな面でヨーロッパ文化の影響を受け、そこにラテンの血が混ざり、ウルグアイ人は独特な国民性を持っているのです。
日本から遠くはなれたこの国の人々は、日本人とどんな違いがあるのでしょうか。
ウルグアイ在住の筆者の目線から、ウルグアイ人の人柄や特徴、国民性についてご紹介いたします。
もちろん性格には個人差がありますので、大まかなウルグアイ人のイメージとして参考にしてください。
基本的な部分を理解して、現地の人とより楽しく快適な時間を過ごしましょう。
ウルグアイ人は「トランキーロ」な国民性
ウルグアイ人は、焦る・急かす・イライラするということはしません。
「急いでもいいことはない」と考えるからです。
「トランキーロ」とは
ウルグアイ人の性格を表すのにぴったりな言葉、「トランキーロ」。
現地にいると一日に何度も耳にする言葉です。
スペイン語で「落ち着いて」という意味になり、「まあまあいいから、ゆっくりゆっくり」というニュアンスで使われています。
例えば「今準備するから5分待って。ご飯急いで作るね。」と言うと「トランキーラ」(女性に対して語尾がaになります。)と言われるのが普通です。
お腹が空いていても、ポテチを食べながら何時間でも待ってくれます。
◆挨拶にも「トランキー」
毎日のように顔を合わせる人に会ったとき、「トド・トランキー?」と言います。
トランキーロの略で、「どう、いつもとかわりない?順調?」というような挨拶として使われているのです。
◆仕事も「トランキーロ」
仕事中もマテ茶を飲み、同僚やお客さんとおしゃべりをしながら働きます。
もちろん仕事は遅くなりますが、「急いでやらなければならない状況=人が足りない」と考え、「急いでやる=雑になる」と思っているのです。
例えばベッドメイキングの仕事について「早くきれいに仕上げるなんて矛盾している、不可能だ」と言います。
「早くやってもいいけど、きれいにはできないよ。きれいにするためには時間が必要だよ」と。
おそらく日本の1人あたりの仕事量に対し、こちらでは3人かそれ以上の人を必要とするでしょう。
仕事のために人がいるのではなく、人のために仕事があるのです。
無遅刻・無欠勤で出勤すると月ボーナスが支給される職場が多くあります。
シエスタ
シエスタ(お昼寝)をするのもウルグアイ人の特徴でしょう。
遅めの昼食後、2~3時間たっぷり寝ます。
オフィス勤めの人にとっては休日の醍醐味になりますが、八百屋さんなどの個人店は平日でも2時間ほど休憩時間をとり、店を閉めているところがあります。
シエスタの後は散歩がてらビーチに夕日を見に行くなどして過ごすのです。
時間にルーズ
トランキーロすぎて、とにかく時間や予定にルーズです。
直前の予定変更やキャンセルが日常茶飯事で、修理をお願いした業者ですら「今日は行けなくなった。」と言います。
(時間になっても来ないため、こちらから連絡した状況でもその返信です。)
悪気はないので、ウルグアイ人の性質として受け止め、気にしないようにしましょう。
いちいちイライラしているとやっていけません。
直前にこちらから確認をとることで、少しは回避できます。
ちなみに年配の方からは時間のルーズさは感じられず、むしろスマートに時間通りに予定をこなすイメージがあります。
また、「すぐ行くよ」の「すぐ」はすぐではありません。
こちらが急いで準備をすると、言った本人はそれからシャワーを浴びはじめたりします。急ぐとこちらが損をした気分になるでしょう。
ウルグアイ人の性格
「トランキーロ」なベースをもつウルグアイの人々。その性格をご紹介します。
◆おしゃべり好き
ウルグアイ人はいつも明るく、とにかくおしゃべりです。
ノンストップで話し続け、相手よりも大きな声で話すことで自分の話すチャンスを作ります。
そして冗談を言ってたくさん笑うのです。
筆者に対しても日本のことについていろいろと聞いてくれます。
スペイン語が未熟な筆者が話し出すと、前のめりにじっとこちらに集中し、耳を傾けてくれるのです。
おしゃべりなウルグアイ人たちが、唯一静かになる瞬間。優しさです。
◆フレンドリーで世話好き
顔見知りになるととてもフレンドリーに接してくれます。
ジムの受付の人が私の名前を言うと、その奥にいるスタッフが全員やってきて私の名前を連呼したり、知っている日本語を披露してくれのです。
近所のレストランの人は遠くからでも手をふってくれます。
見知らぬ人が「ニーハオ」と挨拶をしてくれること。ちょっと違うけど、いいですよね。
世話好きでもあり、いつも親身になって一緒に考えてくれます。
◆おおらかな人柄
他人の迷惑行為に寛容です。
人の勝手な行為を許し、自分も勝手にやります。
つまりお互いさま精神で成り立っているのです。
先日も、夜中に近所の住民が友人とともにバルコニーで騒いでいました。
日本だったら通報されるレベルでも、誰も何も言いません。
眠れずイライラしていたのは筆者くらいでしょう。
また、ウルグアイ人はよっぽどのことがないかぎり謝りません。
逆に責められることもないので気楽です。
わざとではない、人間だもの、間違えて当たり前。
◆自分の意見をもっている
喧嘩しているのか?と思うほど激しく意見交換をします。
違う意見は真っ向から否定しますが、人格を否定することはなく、敵対することはありません。
相手に合わせてその場しのぎで同意したり、適当に聞き流すことはしないのです。
人を傷つけずに自分の意見をはっきり述べるところは、非常に感心します。
喧嘩しているようにみえても、怒っているわけではなく、話題が変われば急に元通りの態度になるのです。
ウルグアイ人の特徴
文化や習慣の関わるウルグアイ人の特徴を見てみましょう。
◆政治とサッカーに熱い
政治に対する国民の関心が高く、積極的に支援活動に参加します。
国民と政治家の距離が近く、政府の動きも早いです。
投票は義務であり、それによって国が動いているという実感があります。
サッカーはウルグアイ人の心であり、小さい頃から親しむのが普通です。
試合後にサポーターたちの敵対心がむき出しになることも珍しくありません。
試合会場やその周辺では注意が必要です。
◆型にとらわれない生き方
ウルグアイ人は多様な価値観をもち、自由に生きているのが特徴です。
いくつになっても趣味の時間をもち、人生設計などはあまり立てません。
結婚や出産に対してのプレッシャーは自他ともになく、「結婚なんて考えたことない」という人もたくさんいるのです。
またパートナー制度や同性婚も認められています。
過去を引きずらないさっぱりとした気質も持ち合わせていて、将来に悩まず、今を楽しむことに集中します。
プレッシャーを感じず自由に生きることが、おだやかな人柄を作り上げているといえるでしょう。
◆「人は人、自分は自分」
他人と比べたり競争したりすることがなく、劣等感に悩まず自分を肯定的にとらえます。
人の批判や干渉もあまりしません。
今の状況に満足し、目標をもって上を目指すこと、自分を追い込むようなことはしないのです。
自分が好きなこと、楽しいと思うことに対しては熱中します。
◆きれい好きで几帳面
ミニマリストできれい好きな人が多く、クリーナーを雇っている家庭もあるほどです。
毎朝のベッドメイキングはもちろん、キッチンは使うたびに掃除をし、常に整理整頓を心がけています。
几帳面な性質をもっていて、アイロンがけや洗濯ものを畳むのは驚くほど丁寧です。
◆食へのこだわりがない
同じメニューを頻繁に食べることに抵抗がありません。
特にピザは非常に高い頻度で食べられています。
人が集まるときは、アサドーというリブ肉のバーベキューをするのが一般的です
食後には甘いものを欠かしません。
ウルグアイのスイーツは非常に甘く、「甘くなければスイーツではない」と言い切ります。
コーヒーにもたっぷりと砂糖をいれ、ブラックで飲む人はいません。
あまり健康への関心や知識が浸透していないのも事実です。
◆誕生日は重要イベント
1歳の誕生日は人生で一番重要と考えられていて、会場を貸し切り、親族や両親の友人を招待して盛大に祝います。
小学生の誕生日会はクラス全員を呼んで行い、別日に親戚一同で祝うのです。
大人になってからも、誕生日当日に親族で集まって祝います。
だれが何を持ち寄るという打ち合わせがなく、ケーキが5~6個並ぶことも珍しくありません。
ないのは困るけど、たくさんある分にはいいでしょ?と。
◆お金に執着しない
ウルグアイは物価が高いわりに収入が低いのですが、人々は値段をあまり気にせず買い物をします。
「あっちのお店の方が安い」とか、「安いからこっちにしよう」という選び方はせず、気に入ったものを必要な時に買うのです。
ブランド物を買うなどという贅沢はあまりしません。
募金も気軽にします。
バスの中で音楽を演奏し投げ銭を募ることがよくあるのですが、演奏の良し悪しに関係なく小銭を渡す光景が普通に見られるのです。
◆夜型生活
ウルグアイの人々は夕方6時ころにマテ茶とパンなどの軽食をとり、夕飯は夜9時から10時ころが一般的です。
食後すぐに寝ることもあります。
家に友人が遊びに来ると、一緒に夕飯をとった後に映画をみて、夜中の2時過ぎまで滞在していることも。
クリスマスは朝方まで子供も年配の人も元気に起きていて、筆者はひとりで睡魔と戦っています。
◆家族を大切にする
イベントはもちろんのこと日常的にも家族と過ごす時間が多く、仲良し過ぎて、「マザコン?ファザコン?」と思うかもしれません。
また首都モンテビデオに住む多くの人は、車で1~2時間のところに別荘を持っています。
日本では「別荘」というとお金持ちの豪華な家をイメージしますが、こちらの別荘はシンプルで、自分で建てる人もいるくらいです。
海の近くであることがほとんどで、家族と一緒にバケーションや週末をのんびり過ごします。
その反面、 家族が要介護になってしまったら施設で生活してもらうのが一般的なようです。
家族の自由を第一に考えるので、がんばって家で介護をすることはないように見受けられます。
自宅にヘルパーを雇うケースもあります。
◆豪快
量や大きさの感覚が豪快で、特に「少し」の感覚が違います。
料理をしているときに「小麦粉、少し足して」と言われて、少し足すと「もう少し」と言われ続け、結局1カップ以上足すことになるのです。
お砂糖や油の量も「少し」と言いつつ少しではありません。
フライパンに油をひくのは日本ではせいぜい大さじ2くらいでしょうが、こちらでは揚げ物か?と思うくらいの量を使います。
それがおいしいんですけどね。
◆考えや予定が変わる
よっぽど信念のあること以外は、考えや予定がすぐに変わります。
「さっき〇〇って言ったよね?」ということがよくあるのです。
それに対して、「そんなこと言ってない」と言い張るか、「あの時はそう思ったけど今はそう思わない」と言います。
こちらに影響が出る可能性を考えず、その時に思ったことを自由に発言するため、頼りにし過ぎない方が無難です。
◆気性が荒い一面も
日本で行われたラグビーの国際試合で代表メンバーが暴行事件を起こしたり、有名サッカー選手が対戦相手に噛みついたり、情熱的な気質が裏目にでることもあります。
基本的に非常に温和な性質をもつウルグアイ人ですが、まれに暴力的な行動にでることがあるので注意が必要です。
一度だけですが、実際に家の前の通りで殴り合いの喧嘩が起きたことがあります。
近所の人がグループをつくり、慣れた様子でゆっくり近づいて止めに入りましたが、同乗していた女性の制止をふりきり殴りあう様子がまるで映画のようでした。
そんなこともあるので、文句があってもむやみに言わない方が身のためでしょう。
ウルグアイ人の特徴・性格まとめ
ウルグアイ人は時間に追われず、常にのんびりしているのが特徴です。
トランキーロが口癖で、マテ茶を飲みながら、庭で鳥のさえずりを聴いている…そんなイメージが合います。
おおらかで優しくフレンドリーな性格ですが、日本人とは国民性がかなり違うため戸惑うこともあるかもしれません。
しかし違う文化や考えをもっていても仲良くなれるのがウルグアイ人なので「日本ではこう」と比べるより、柔軟に、たまにはウルグアイアン気質になってみるのもいいでしょう。
仲良くなれるはずです。