日本から遠く離れたウルグアイは、文化や習慣、考え方など多くの面で日本とは異なり、来た当初は毎日がカルチャーショックでした。
日本の常識はウルグアイでの非常識の場合もあり、マナーの違いもあるのです。
今回はウルグアイで実際に生活するにあたって知っておくべき常識やマナー、気をつけることなどをご紹介します。
コミュニケーション方法
◆挨拶は気軽に
当たり前のことを言っているようですが、ウルグアイでは日本よりもさまざまなシーンで気軽に挨拶をします。
アパートのエントランスはもちろん、スーパーのレジやレストラン、バスの運転手にも「オラ」と挨拶。
知り合いだと「ケ・タル?(元気?)」などと続けますが、その答えは必要としません。
すれ違いざまに聞き合うけれど答えは聞かずに去るという、完全に挨拶の一部として使われています。
◆ほっぺにキス
家族や友人、同僚など会ったときや別れるときは、ほっぺにキスをします。
最初は戸惑うと思いますが「郷に入っては郷に従え」精神でやっているうちに慣れるでしょう。
顔見知り程度だとしない場合もあり、その線引きが筆者にとって難しいところです。
◆至近距離で話す
明るくおしゃべり好きなウルグアイ人は、とにかく近い距離まで来て人と話します。
道端で話している男性同士でもかなりの至近距離です。
年配になると更に近くなります。
日本じゃカップル同志でもこんなに近づいて話さないでしょう。
パーソナルディスタンスは存在しません。
◆「ありがとう+名前」
知人を手伝って路上でチラシを配っていたときのこと。
ほとんどの人が「グラシアス(ありがとう)」と言って受け取ってくれました。
日本だと煙たがられ無視されるだろうに、お礼まで言ってくれたことに驚いたものです。
また、日本では対面しているときにはあまり人の名前を呼ばないですよね。
ウルグアイでは家族や知り合いに会ったとき、「オラ、 〇〇〇(名前)元気?」のように、挨拶に名前をつけて呼ぶのが普通です。
「コーヒー飲む?」などの質問は、イエス・ノーのあとに「ありがとう、○○(聞いてくれた人の名前)」と言います。
真似しようとすると意外と照れ臭いのですが、いつか自然にできるようになりたいものです。
◆家族を褒める
日本では、他人の前で旦那さんや子供を褒めることがあまりないかもしれません。
ウルグアイでは「彼女は料理上手なんだ」「彼はなんでも修理できるのよ」など家族のことを人前でよく褒めます。
ウルグアイ人と話すときは堂々と家族の良いところを話しましょう。
◆政治やお金の話はタブーではない
ウルグアイでは政治の話を積極的にし、選挙前は喧嘩並みにヒートアップします。
自分の支持する党の旗を車やバルコニーに飾ったり、非常にオープンです。
投票に行くのは義務であり、行かないと罰金が発生します。
そして国民の声が国を動かしている実感があるのです。
また、仕事の契約の際に給料に関しての話を雇用者からしてOK、問題ありません。
日本ではお金の話はしづらいですが、こちらでは遠慮する必要がないのです。
賃金を得るために働くのですから、お金の話は一番大切なこととして普通に話します。
◆自由主義
周りとの協調よりも自分の幸せを第一に考えて、自由にのびのびと生きているウルグアイの人々。
仕事のキャリアやお金の心配をあまりせず、結婚や出産に対する認識も日本と大きく異なります。
長年ただ同棲をしているカップルも多いようです。
あくまで人生は本人のためであり、親や誰かのために人生の決断をすることはないでしょう。
「人は人」、自分と違った考えをや生き方をしていても個人を尊重するのがルールです。
ウルグアイの社会的文化
◆仕事は定時で終わる
職種にもよると思いますが、一般的には残業をせずに定時で職場を離れます。
忘年会のようなイベントはあるものの、普段は仕事後に同僚や上司と飲みに行くことはありません。
食事しながら仕事の話をする場合は勤務時間内にします。
仕事のあとは家族と家で映画を見たり、ジムに行ったり、公園で夕日を見ながらマテ茶をのんだり、それぞれゆっくりと過ごすのです。
仕事とプライベートの時間がはっきりしています。
◆対等な立場
お店の店員と客、上司と部下、全て対等です。
お客様は神様ではありません。
お店で買い物をしたときにお客さんもありがとうを言います。
たとえお店の人が言わなくても、お客さんは言います。
なぜなら、「その人が働いてくれなかったらお客さんは必要なものを買えなかったかもしれないから」です。
日本とは大きく異なりますね。
客だからといって横柄な態度は厳禁です。
そして“上司=えらい”ではありません。
もちろん友達とは違いますが、あまり気構えず接しているようです。
◆進化する考え方
ウルグアイ人はとてもオープンマインドであり、差別や権利などに対するデモ活動が活発です。
世界的に有名なLGBTプライドパレード(性差別に対するデモ)は大規模で行われ、同性婚が2013年に合法になりました。
デモは平和的で暴力的ではありません。
女性が働くのも当たり前で、政界にも女性の活躍がみられます。
データ上では平均賃金などにまだ男女差があるものの、思想の面では男女平等が常識なので、差別的な発言はタブー。
日本に比べ、ウルグアイの女性たちは元気ではっきりしていて強いイメージです。
古典的な風習にこだわらず、ウルグアイの文化は常に進化しています。
ホームパーティーに行くときは…
◆あえて遅れて行く
ホームパーティーに招待された場合は、約束の時間の15分~30分くらい遅れていくのがマナーです。
持ち寄りパーティーのことをなぜか「シュビア(雨)」と呼び、食べ物でも飲み物でもなにかシェアできるものを持っていきます。
日本では時間に遅れるのはタブーですが、ウルグアイの人々は基本的に時間や予定にルーズです。
寛容でいましょう。
◆ドレスアップをしよう
普段はカジュアルな服装ののウルグアイ人ですが、クリスマスやお正月はおしゃれをして行くのがマナーです。
普段どおりで参加すると、「自分だけ普段着」と恥ずかしい思いをするかもしれません。
ゆったりとした服は妊婦でも着ないくらい人気がなく、体のラインに合った華やかなものがおすすめです。
男性はTシャツではなくシャツを着れば問題ありません。
レストランでのマナー
◆注文時とチップについて
お水は有料で炭酸水とミネラルウォーターが選べます。
「すいませーん」と声を張り上げるのではなく、アイコンタクトをとるようにしましょう。
注文時やお料理を運んでくれたときにはお礼を忘れずに。
チップは基本的に10%で、会計時にチップ込みでカード払いすることが可能です。
◆注文ミスはよくある
食事のデリバリーが流行っていますが、かなり高い確率でミスが発生します。
2人分注文したのに1人分しか入ってないなんてことがよくあるのです。
お店側は日本のような謝罪やサービスなどはしません。
そのため、もし要望があれば遠慮せずに言ってみましょう。
同じお店で連続してミスが発生したとき、再配達時に「何かおまけして」と言ったらデザートをサービスしてくれました。
文句を言うより、どうしてほしいのか伝えるほうが効果的です。
◆食事中のタブー
麺類を食べるとき「ずるずる、ずるずる」と音を立ててすするのは厳禁です。
レストラン以外でも、うどんやそばを作ってシェアすることがあるかもしれません。
ついすすりたくなっても我慢しましょう。
日本人が爪を噛む癖を嫌うように、ウルグアイ人はずるずる音が嫌いです。
生活する中でのルール
◆イライラしない
ウルグアイの人々は日本のような忙しい生活をしていません。
そのため、スーパーや銀行で長蛇の列が出来ていても平常心で待ちます。
日本と違うところはお店側が全く急がないところです。
お待たせいたしました、なんてもちろん言いません。
しかし待てば順番は必ず回ってきます、イライラせずに待ちましょう。
また個人店は予定時間より早く閉まることもあります。
グーグルの“営業時間”は当てにしないほうが無難です。
◆一言いう大切さ
思っていることを言葉にするのは常識です。
例えばバスの中で「荷物どかしてくれたら座れるのに」と思ったときは迷わず一言言いましょう。
黙っていても察してもらえませんし、言うことが失礼にはあたりません。
座りたかったら言えばいいのです。
他にもお土産屋さんや個人店などでは、商品を手に取って見たいときは、マナーとして「permiso(すみません)」と一言言ってから触ります。
お金を払う前はあくまでお店のものです。
◆不要なものは譲る
ウルグアイの路上にはゴミ捨て用のコンテイナーが各所に設置してあります。
まだ使える不要なものはその横に置くか、袋に入れて掛けておくと欲しい人が持っていくのです。
服や大型家具、電化製品などもそこに置き、“譲った”ことにします。
誰かがそれらを持って行って直したり、パーツとして売ったりしているそうなので、人の役に立ちそうですね。
残念ながらコンテイナーの周りは多くの場合汚れています。
◆お金がなくても何とかなるときがある
モンテビデオのバスチケットは時間制で、時間を過ぎたら新たに支払わないといけません。
しかしほんの1~2分過ぎてしまったことがあって、また払うなら歩こうと思い降りようとしたら、運転手が「(こっそりと)いいよ」と乗せてくれたことがあります。
さらに八百屋で現金が足りず、「クレジット使えないよね?」と聞いたら、「明日支払ってくれればいいよ」と名前と電話番号を書き留めるだけで野菜を持たせてくれました。
常連ではあるものの特にお店の人と仲良くしていたわけでもないので、親切さに驚いたものです。
暗黙の交通ルール
◆車間距離が狭い
車同士がひしめき合っているウルグアイでは、運転中に限らず駐車時も車間距離がとても狭いです。
縦列駐車ではギリギリまで近づき、後ろの車に触れてしまうこともあります。(下の写真)
また、“車を見守っていた、安全に車が出るアテンドをする” という仕事を勝手に作り出して路上に人がいることがあります。
その場合は頼んでいるわけではありませんが、チップを渡すのが普通です。
ウインカーを出さずに車線変更や左右折することもよくあるので気をつけましょう。
◆歩行者優先ではない
信号付き横断歩道以外は車両優先で歩行者優先ではありません。
運転手がどうぞと合図をくれるとき以外は、車は止まらないものと思いましょう。
また信号が黄色になったら渡るのは諦めます。
歩行者用信号が赤になったと同時に車が走り出し、日本のように3秒差がありません。
◆車の中に荷物を放置しない
ウルグアイは南米の中で比較的治安が良い方ですが、車の中に荷物を置いておくのは危険です。
せめてトランクなど外から見えないところに隠し、車内は「何もない」状態にしましょう。
ダッシュボードをあらかじめ開けておいて、「何もありません」というメモを挟んでいる車もあります。
車にセキュリティーアラームをつけるのは常識です。
ウルグアイの文化
◆サッカー
サッカーはウルグアイ人にとって、ただのスポーツではなくれっきとした文化です。
ワールドカップの初代優勝国であることが誇りであり、試合観戦はとても熱気溢れるものになります。
また多くの少年はジュニアクラブに入り、夢はプロサッカー選手になることです。
サッカーの話題で地元の人と盛り上がるのはいいですが、一部非常に熱狂的なサポーターがいるので、公共の場では発言に注意しましょう。
◆マテ茶
ウルグアイ人は毎日いつでもどこでもマテ茶を持って出かけるのが一般的。
マテ茶はシェルバと呼ばれる茶葉をひょうたん(マテ)で作られたコップに入れ、お湯を直接注ぎ、茶こし付きのストローで飲みます。
そして、家族や友人と回し飲みをするのです。
一緒に飲むと自然と打ち解けたような気分になります。
このとき、飲み切るのがルール。
「ありがとう」と言うと「もういらない」という意味になり、何も言わずにホストにコップを返せばまた回ってきます。
まとめ
ウルグアイで生活するとたくさんの文化の違いを実感します。
受け入れがたい部分も最初はあると思いますが、いつも温厚で親切なウルグアイ人とは仲良くならない手はありません。
日本人は珍しいので興味をもって接してくれます。
ウルグアイに来て人々に触れ、のんびりと過ごすしてみると「時間の余裕は心の余裕」という言葉に納得がいくでしょう。
マテ茶を回し飲み、一緒に冗談を言い、ときには歌ったり踊ったりしてウルグアイの文化を楽しみましょう。