海外で生活するうえで最初に思い浮かぶ不安材料は「言葉の壁」でしょう。
しかし実際は、文化や習慣の違いから不安になったり、意図なく失礼なことをしてあとから恐縮してしまったりということもよくあります。
ここでは、トルコ歴18年の現地在住者が日本とトルコの文化や習慣の違いを実感した経験から、滞在前に知っていると安心な10の暗黙のルールをお伝えします。
1. タブーな動作はしない
日本のOKマークはNG
親指と人差し指で丸を作り残りの3本の指を立てた状態は日本では「OK!」という意味です。
そのためオーケーの返事をするときについこの指の形を作ってしまいそうですが、トルコでは絶対にやらないでください。
これは相手を侮辱したいときに見せる仕草と見られ、いくらにこやかでもオーケーと言いながらこの指の形を差し出したならきっと怪訝な顔をされてしまいます。
侮辱を表現するしぐさ2
親指を人差し指と中指の間に挟み込むようにして拳を握ると、西洋での中指を立てる意味と同じことになります。
横柄な態度と見られるしぐさ
足の裏を見せる
腰に手を当てながら話す
人を指差す、
などの行動は相手を見下げていると思われますのでしないようにしましょう。
2. 路上では常に危険回避のシミュレーション状態をしよう
トルコでは「歩行者優先」という常識は通用しないことがほとんどです。
道路を横断する時に歩道で立っているだけでは、まずどの車も止まってくれないとお考えください。
それどころかスピードアップして渡らせないようにする車もあるくらいです。
ここ数年、政府は「歩行者優先」というスローガンを発しているものの、まだまだ全国的に浸透しているわけではありません。
信号のないところで車の流れの間を素早く通り抜けて横断するのは至難の技です。
時間がかかっても車が来ないことを確認してから十分に注意して渡ってください。
3. いつも顔写真付き身分証明書の所持が必要
交通検問、病院の手続き、郵便局の受け取りなど、生活のさまざまな場面で写真付き身分証明書の提示が求められます。
提示できなければ手続きができません。
特に交通検問(同乗者でも身分証明書の提示要求の場合あり)や警察検問の場合には時間がかかったり面倒なことになりかねませんので、顔写真付き身分証明書は必ず携帯してください。
免許証、滞在許可証があれば十分ですが、まだ受領していない場合などはパスポートのコピー、または少なくともパスポートの顔写真のあるページの写真を携帯電話で撮っておけば日常生活で携帯するのには十分でしょう。
4. 国歌やアタチュルクなどトルコ人の愛国心を理解する
トルコ人の愛国心は大変高く、トルコ人であること、そして祖国トルコ共和国を誇りに思っています。
共和国建国の父・アタチュルクを中傷することはトルコを侮辱することと同じと考えられています。
もともとトルコでは政治の話はタブーですが、アタチュルクに関しても中傷するようなことは絶対に避けてください。
また、さまざまな行事や式典でトルコ国歌が聴こえてくることがあるかも知れません。
トルコ国歌が流れてきたら、歩いていても、何か仕事をしていても、直立不動で国歌を斉唱する習慣があります。
トルコ人でなくても国歌が聞こえてきたならば、直立不動で終わるまでおしゃべりしないように敬意をお払いください。
5. 断食期間中はイスラム教徒に敬意を払う行動を心がける
トルコのほとんどの人はイスラム教徒です。
イスラム教の教えによりイスラム暦355日のうち30日間ラマザンと呼ばれる断食月となり、この期間中は日の出から日の入りの間は飲食を断つ教えがあります。
イスラム教徒であってもラマザン月に断食をしない人もいますが、たとえイスラム教徒でなくても断食をしている人達には敬意を示しましょう。
断食期間中でもレストランやカフェは営業しているので普通に食事やコーヒタイムを楽しむことは可能ですが、できれば日の入りの時間までは歩きながらの食事や街頭で堂々と食べたり飲んだりする行為は控えるのがマナーです。
知人宅訪問時の心得
6. 手土産編
トルコ人は仲良くなるとすぐに家に招待してくれます。
招待された場合は遠慮せず招待を受け入れて訪問してみましょう。
初めての訪問の際は手土産を持っていくのが習慣です。
一般に家で使えるようなもの、例えばカップやちょっとしたデコレーションまたは置物などが一般的です。
7. 家の中の案内
初めて来たお客さんには、家の中のすべての部屋を見せて回ります。
一つ一つの部屋を説明しながら、トイレはもちろんお風呂場まで案内してくれます。
通常、誰かの家に招待されたなら、後日また招待し返すのが礼儀。
すなわち、そのお友達が家にきた時には自分の家の中もすべて案内してあげるということもお忘れなく。
8. 知人宅でティータイム 〜 紅茶の断り方
トルコの国民的な飲み物チャイと呼ばれる紅茶はいろんな場面で飲まれています。
小さなチューリップの花の形のグラスに入っていますが、飲み終えたなら、まさに椀子そば状態でチャイがつぎ足されます。
もう結構と言ってみても又アツアツのチャイがつぎ足される場合もあります。
そんな時は手のひらをグラスの上に乗せて蓋のようにかぶせるか、またはスプーンをグラスの上に置いておくと、「もういりません、ごちそうさまでした!」という意味になります。
9. 知人宅で食事に招待された場合 〜 必ず空腹で!
トルコでは食事に招待し合う習慣があります。
食事に招待された時にも手土産を持参することをお勧めします。
その場合は、例えばチョコレートやワインなどちょっとした食べ物や飲み物を持参するのが習慣です。特別な場合はお花なども喜ばれます。
トルコ人の手厚いホスピタリティはとても有名ですが、特に食事となるとお客様にできるだけたくさん食べてもらえるように、ものすごい努力をしてきます。
最初からお皿にたくさん盛ってくるのはもちろんですが、食べ終わったら必ずおかわりを強要してきます。断っても遠慮していると思われまた強要してきます。最低2〜3度はほぼ無理矢理おかわりを入れようとしてくるので覚悟してください。
お皿の上のものを少しでも残したままにしておくと、気に入らなかったのかと心配して、他の料理を提供してきます。
とにかくなんとか満腹にしようと一生懸命ですので、お食事に招待された場合は必ず空腹で行き、たっぷり食べてお友達を喜ばせてあげてください。
10. お見舞いは入院初日や手術の当日に行くべし
入院初日や手術当日は患者の家族だけでなく親戚や親しい知人など大勢の人達がお見舞いに訪れます。
日本の感覚ですと、手術後数日して患者が落ち着いてからお見舞いに行くというがほとんどですが、トルコではとにかく初日から見舞客が病院に溢れます。
手術の場合は手術が始まる前から終わるまでみんなで待ち続けるという習慣があり、患者が目を覚ますと大勢の人に囲まれます。これは患者を見舞うということだけでなく、手術を待つ近親者が待っているあいだ心細くならないように付き添って一緒に手術の終了を待ってあげるという意味も含まれています。
親しい方が入院や手術をする場合は数日後のお見舞いではなく当日またはなるべく早くお見舞いに行きましょう。
さもなければ薄情な友人だと思われかねませんのでご注意ください。
トルコの文化・慣習まとめ
納得いくルールもあれば不思議なルールもあったのではないでしょうか?
トルコで生活している間にいろんな場面で驚いたりとまどったりされることがあるかとは思いますが、最低限この10の項目を頭の隅に入れておけばきっ役立つことがあると思います。
どこの国に行ってもカルチャーショックを受けるのは当然です。カルチャーショックを楽しむくらいの気持ちでトルコの文化や習慣を受け入れながら生活してみてください。