数年暮らしたセネガルの首都ダカールで、私の生活を支えてくれた知人たち。
日本との違いから驚いた出来事を中心に、セネガル人の基本的な考え方をお伝えしたいと思います。
純粋で明るい彼ら、日本人と同じようにおもてなしの心を持っている彼らの姿が、少しでも伝えられたら嬉しいです。
他民族が共存する社会
セネガルは、10以上の民族が共存する他民族国家です。
日本人から見ると、どの人がどの民族出身なのかは判別はできませんが、セネガル人同士では言葉や衣装によってどの民族出身か判別できるそうです。
首都ダカールは、田舎から同じ民族の親戚を頼って出てきた若者が多く働いています。
同じ言語を話す民族同士は同じ地域に住み、互いに助け合いながら生活をしています。
イスラム教:一夫多妻制
セネガル人の90%以上はイスラム教です。
よって、セネガルでは、一夫多妻制が許され、一人の男性が4人の女性を妻とすることができます。
結婚した4人の妻は平等に扱われなければならないルールがあります。
複数の妻と子供を養うだけの十分な収入がある男性は、2人目、3人目の女性と結婚し、大家族で生活しています。
知人の日本人女性は日本の大学に留学していたセネガル人男性と知り合い、結婚しセネガルに移り住みました。
彼女は結婚するにあたって、イスラム教に改宗し、その際、夫に自分以外の妻を持たないことを約束する証書にサインさせたそうです。
ただ、一夫多妻制は、宗教上許されていることなので、証書よりも神が認めたことの方が優位なのだそうです。
彼女は、そのことを十分承知の上で、仮に効力はなくても証書にサインしてもらったのは、一生二人でいたいという気持ちを理解してもらいたかったのだと言っていました。
民宿化する家:困っている人には分け与える
安定した職業につき、一定の収入のある男性の家には、親戚という名の知り合いが沢山あつまります。
妻は集まった人々に食事を提供し、寝るところがない場合は、寝床も用意しなければなりません。
妻からしてみれば他人が毎日家にやってきて、食事を提供し、広くもない家に他人が寝泊まりする状況は、まるで民宿をやっているかのような状態です。
日本からダカールに嫁いだ彼女は、自分の家でありながら、常に他人が家にいる状況に慣れず、全くリラックスすることができない、家族だけでゆっくりしたいと夫に訴えました。
すると、これがセネガル人の普通の生活だ、困っている人がいたら分け与えるのは当たり前、ましてや親せきや友人だ、他人ではない、慣れてくれと言われたそうです。
自分が手にしたお金は、神から与えられたもので、自分だけのものではない。
必要な人に分け与えるために、お金があると言われ、彼女は自分と家族だけの静かな生活を願っていましたが、その日から切り替えて、我が家は民宿で、私は民宿のおかみになったのだと考えを変えたのだそうです。
一軒家は使用人付き:安全に暮らすために
当時、我が家はペットを飼っていたので、外国人が多く住む地区にある一軒家を借りることにしました。
その一軒家には、庭師、門番、ボンヌ(お手伝いさん)がついていました。
セネガル人を雇用することは、外国人が安全に生活するために必要なことだと言われました。
実際、外国人は目立ちやすく、盗難や空き巣に狙われやすいため、周辺の家のほとんどが使用人を雇用しています。
庭の手入れがされていない家は、空き巣に入られやすい。
門番がいることで狙われない。
家を留守にした際にはボンヌが留守番になる。
新しい家族が引っ越してくると、どこかで誰かが必ず見ていて、狙いやすい家かどうか見定められているというのです。
ということで、有無を言える状況にないまま、庭師、門番、ボンヌ付きの一軒家に住むことになりました。
ちなみに、彼らの人件費は非常に安いので、安全代として、雇用する方が得策だと感じます。
1.庭師さんの場合:計画的にお金を使えない
庭師さんは貧しい村の出身で、すでに結婚して子供が数人いました。
お給料は月に1回、現金で手渡ししていました。
すると、渡した分をすぐに使ってしまうのか、お給料を渡した1週間後には、ご家族の誰かが病気になったとか、けがをしたとか、様々な理由でいくらかお金をくれないかと言ってきます。
仕事はまじめにやってくれていたので、その都度、少額のお金を渡していました。
少額でも毎週となると実質、お給料の値上げになると考えて、どうしたものかと考えました。
もしかしたら、1か月に1回の支払いだから、すぐに全部使ってしまうのではないかという考えに至りました。
そこで、1か月のお給料を4回に分けて、1週間に1回払うことにしたのです。
すると、病人が出たからお金をくれということがなくなりました。
貧しい地域に住んでいる彼は、1か月分のお給料をもらうと、お金が沢山あると思って、家族の他、周りの貧しい人々にも分け与えてしまい、あっという間にお金がなくなってしまうのです。
お金を1か月分として考えて計画的に使うことができないのです。
1週間ずつなら、なんとかそのお金を1週間で使うということができたようです。
2.ボンヌさんの場合:文字が読めない
彼女は長い紛争が続いているカザマンス地方の出身者で、既に大きな子供がいるお母さんでした。
庭の一角に小屋をたてて、そこで寝泊まりするボンヌさんも多いのですが、彼女は、毎日早朝にバスと徒歩で遠くから通ってきていました。
仕事はすごくまじめで、丁寧でした。イスラム教だったので、いつもスカーフを頭からまいていて、お祈りもボンヌさんの休憩部屋で時間になると必ず行っていました。
ボンヌさんを雇う場合は、家に入れるので、家の中のものがなくならないか、その点だけ特に注意する必要があります。
彼女はその心配は全くなく、本当に信頼できる女性でした。
彼女の夫はすでに他界していたので、彼女が言うにはお給料は全部を夫の兄弟に渡し、彼女はバス代だけもらうというのです。
これは騙されているなと直感で思ったのですが、他人の家族の生活に口を出すわけにもいかないので、正直で一生懸命働いてくれる彼女を守るために何かできないかと考えました。
そこで、お給料とは別に、特別に頼んだことをしてくれた時にチップとして渡す分を缶に入れて貯めないかと提案したのです。
すると、彼女はすごく喜んで、「お金を貯めて土地を買いたい」という夢を打ち明けてくれました。
わずかなチップを貯めただけで、果たして彼女の夢の土地が買えるかは分かりませんでしたが、彼女が自由に使えるお金を作ってあげたかったのです。
結局、私がダカールを離れることが決まり、その缶に貯まったお金を彼女に渡すまで、彼女は一度もそのお金を使うことはありませんでした。
全部貯めて、最後に缶に入ったお金と少しのボーナスをプラスして彼女に渡したところ、すごく喜んで受け取ってもらえました。
衝撃的だったのは、私が毎月メモに入金した金額を記載していたので、それを見せて、この金額が入っているか確認してほしいと言ったところ、彼女は困惑した顔をして、じっと缶の中を見つめていたのです。
彼女は、字が読めませんでした。
字が読めない人が周りにいない世界で生きてきた私は、彼女が字が読めないことに、全く気づきませんでした。
急に心配になり、この大金が入った缶を持って帰ったら、全部夫の兄弟に取られてしまうのではないかと思うと、どうしたものかと途方に暮れ、彼女に信頼できる人はいるのか、誰も信頼できないなら、このお金は誰にも見せないで保管できるかと聞きました。
大丈夫。大丈夫。
彼女の答えは、大丈夫というだけでした。
女性の教育、騙されないための最低限のこと、お金を数えること、最低限の計算と最低限の文字を読むこと、彼女のような女性を守る手段、教育の普及がもっと迅速に進むことを切に願います。
3.門番さんたち:薬は必要な分だけ渡すこと
門番は3人が時間ごとに交代でやってきます。
外国人が多く住む居住地区は警備会社と契約していました。
時間になると、警備会社がトラックの荷台にたくさんの門番さんたちを乗せて、それぞれの家の前で一人ずつおろしていきます。
よって、警備費用は警備会社に払うので、直接彼らとの雇用関係はありません。ただ、毎日同じ門番さんが来るので、少しずつ彼らの家族のことなどを知ることになりました。
門番さんの一人は少数派のキリスト教信者でした。
ある日、彼は村で友達とサッカーをしていた時に転んでけがをし、膝から血を流した状態で勤務にやってきました。
見かねて、消毒液で消毒をしてバンドエイドをはり応急処置をしてあげました。
すると、次の日は勤務がないのにもかかわらず、バスに乗って治療をしてほしいとやってきました。
うちは病院じゃないと思いながら、医薬品は彼らにとっては高額で簡単には手に入れることができないのだと知りました。
バス代を払ってまで簡単な消毒にくることは大変だろうと思い、家で自分で消毒してと言って、消毒液とバンドエイドを箱ごと渡してしまいました。
実は、のちにこれはダメなことだと知りました。
一つは、消毒液やバンドエイドを売ってしまうかもしれない。
もう一つは、村で傷がある人は山ほどいて、みんなに与えてしまうので1日で全部なくなってしまうかもしれない。
そういう理由で、もし、薬をくれと言われたら、その時必要な分だけを渡すのが鉄則なのだと知りました。
男尊女卑:家事と子育てと一日中よく働く女性たち
男性は外で働き家を支える、女性は家にいて家事をして子育てをする。
男性は偉い、そんな社会ですが、女性たちは非常にたくましく、よく働きます。
腰に布1枚巻きつけて子供を背負い、頭にたらいをのせて花や野菜などを売り歩く姿を町ではよく見かけます。
1.母乳は飲みたいだけのませる
驚いたことに、セネガルでは5歳頃まで母乳を飲ませるというのです。
飲みたいだけ飲ませるのがセネガル流。
母乳は母親の時間と体力を奪います。それでも母乳は大事だと考えるのだそうです。
2.おしゃれな若い女性たち
ダカールの若い女性たちは非常におしゃれです。
カラフルな衣装を好んで着ます。
また、ヘナを使って、手や足に模様を描いて、おしゃれを楽しみます。
エクステをつけながら髪を細かく編み込んでいく髪型は、一人に対し3人かかりで編みながら、1日かけて仕上げます。
彼女たちは、世間話や噂話をして盛り上がり、とにかく休む暇がないほどよくしゃべります。
3.妊婦は日中の外出は避ける
妊婦は日中外に出ないようにします。
妊婦が人目につくことを嫌うからです。
よって、日が落ちてから旦那さんと一緒に散歩するなどして運動するしかないのだそうです。
なぜ、妊婦が人目についてはいけないのかは、セネガルの習慣なのか宗教上の理由なのかは分かりません。
4.命がけの出産
裕福な家庭を除いて、ほとんどの女性は自宅で村の産婆さんの助けを受け、出産をします。
衛生環境が悪い中、さらに日本のような定期健診を受けることもない出産は、非常にリスクが高いです。
ある時、子供が生まれたという知人の知らせに、急いでお祝いのお金を渡しに行きました。
翌日、子供が亡くなったとの知らせを受け、なんとも言えない気持ちになりました。
生と死が日常にあり、あまり珍しくない現実を目の当たりにして、誰もが特に妊婦が最低限の医療を受けられる環境が整うことを願うばかりです。
セネガル人になることとは?
ある時、セネガル人の男性が、「日本人の妻がダカールに嫁いで何年もたつけど、妻だけいまだにミネラルウォーターを買って飲んでいる。
できれば、家族と一緒に水道水を飲んでほしい」と言ったのです。
「なせ?」と聞くと、「家族は同じものを飲んで食べて生活しなければならない。
妻がいつまでもミネラルウォーターを飲んでいると、ずっと外国人のままだ。
村では日本人は背が低いとか足が短いとか、言われたくない容姿の悪口まで聞こえてくる。
本当に家族になり仲間になる一歩が同じものを飲み食べることだと思う。」と。
彼の考え方は正しいと思う一方、茶色ににごった水道水を飲むにはなかなか勇気がいります。
安全な水で育った日本人が飲むにはかなりハードルが高い。
国際結婚は、相手の国の文化に飛び込む気持ちで受け入れてもらうために努力するべきだとは思いますが、いざ、命や健康にかかわる問題となると、どのような選択が正しいのか悩むことがあります。
セネガル人の運動能力は非常に高い
ダカールにはホテルに隣接したゴルフ場があります。
年間の会費を払い、毎回ゴルフフィーを払って利用します。
日本に比べたら非常に安いので、気軽に運動不足の解消に最適です。
海に沿った眺めの良いコースですが、かろうじてグリーンに芝生があるといった様なコンディションです。
日中は直射日光の日差しが強く暑いので、夕方から9ホール回るのが運動不足解消にはピッタリです。
ゴルフ場は手引きカートで回るので、10代〜20代の男性キャディーさんがカートを引いて一緒について回ってくれます。
彼らは、わずかなキャディーフィーとチップをもらって生活しているのですが、ゴルフの腕前はかなりのものです。
自分のクラブは持っていないので、お客のクラブをうたせてもらうくらいしか練習はしていないにもかかわらず、私のレディースのクラブでも的確なスイングでピンそばに落とすことができます。
彼らの運動能力の高さを知ると、もし、境遇が許せば、一流のゴルフプレイヤーになっていたでしょう。
日々、少額の小銭しか稼げない中、ぎりぎりの生活から抜け出せない彼らが、どうにか這い上がって、この運動能力を生かして今より豊かに生きるすべはないものかと考えずにはいられません。
帰国の時:やさしさがつまったお別れの品は、大きくて重い
帰国が決まって、荷造りをしている最中、今までお世話になったセネガル人の知人たちが、ひっきりなしにやってきて、お別れの挨拶と共に、お別れの品を持ってきてくれました。
決して裕福ではない知人たちも、思い思いの品をくれました。
どうやら彼らは大きいもの、重いものが良いプレゼントだと思っている節があります。
頂いたプレゼントは、大きくて重い鍋、ひたすら重い皿、手作りの大きな木彫り、手作りの楽器など、引っ越し前にどんどん荷物が増えてしまいました。
彼らはどうやってこれを買うお金を工面したんだろうと思うと、お別れの品を用意して届けに来てくれた気持ちが嬉しくて、全部持って帰らなければならないと段ボールに詰めて帰国しました。
セネガルの 未来に向けて
色々な民族が入り混じったダカールの人々の生活は、日本とは宗教の違いからくる習慣や価値観の違いもあり、驚くことも多いです。
しかし、一度仲良くなると、日本人と同じようにおもてなしが大好きで、田舎のおばさんのように世話好きで、心は子供のように純粋で優しいです。
もっともっと、彼らが、彼女らが、貧困から脱却して、世界で活躍できるまでに豊かになってほしいとずっと願っています。
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