「ロシアで学ぶ」といえば、バレエや音楽の留学が思いつく方が多いかもしれませんね。
それはそのとおりで、世界各国、もちろん日本からも芸術系の留学に来ている学生さんは多く、ダンサーや音楽家を目指す若者が日々技術を磨いています。
そしてもちろん芸術だけでなく、ロシアの大学でも国内外の学生がさまざまな分野の勉強に励んでいます。
今回は、ロシア国内の大学の現在のランキングや人気の秘密、キャンパス内の様子などを合わせてご紹介していきます。
ロシアの大学生
筆者の経験上でお話しすると、ロシアの学生は将来のビジョンを持って、とてもよく勉強している印象です。
現実的に冷静に将来の職業を考えて大学に入学し、良い成績を取るために日々勉強しています。
もし特に興味がある分野が見つからない場合は素直に親の勧めを受け入れることも多いようです。
両親からの勧めで分野を決めてその道に進んだという経緯が、ロシアの学生何人かに共通しています。
父親や歴代の家族に多い職業に進むという話も聞きました。
また、比較的お金に余裕がない家庭の学生は特に、トップクラスの成績を取って授業料や留学費を自分の力で勝ち取るための努力を惜しみません。
交換留学プログラムがある大学でも、優秀な学生のみ奨学金で行くことができるので、その狭き門を争うのです。
世界各国からの留学生もとても多くいるので、さまざまな国からの留学生に出会うことができます。
交換留学生も多いですが、自力で奨学金をもらいながら勉強している学生も。
日本の留学生は比較的少ないので、出会えると嬉しいし応援したくなりますね。
大学ランキング
それでは、2020年版ロシアの大学ランキングをご紹介します。
一概にランキングといっても専門分野には幅があり、これが正解というものはありません。
今回ご紹介するランキングは、国立・私立・歴史・障がい者対応・奨学金・寮などのさまざまな要素を総合してランキングを決定しています。
参考までに、大学ごとの年間平均学費を合わせて記載しました。
これは、学部によっても変わるので、あくまで平均値としてお考えください。
ランキング トップ10
大学名 | 所在地 | 年間平均学費 | |
---|---|---|---|
1 | モスクワ大学 | モスクワ | 約64万円 |
2 | ノヴォシビルスク大学 | ノヴォシビルスク | 約26万円 |
3 | 国立研究大学経済高等学院 | モスクワ | 約75万円 |
4 | サンクトペテルブルグ大学 | サンクトペテルブルグ | 約45万円 |
5 | 国立研究トムスク工科大学 | トムスク | 約24万円 |
6 | 国立核研究大学 | モスクワ | 約38万円 |
7 | サンクトペテルブルグトムスク大学 | トムスク | 約24万円 |
8 | 国立研究大学 | サンクトペテルブルグ | 約38万円 |
9 | モスクワ物理工科大学 | モスクワ | 約43万円 |
10 | サンクトペテルブルク工科大学 | サンクトペテルブルグ | 約26万円 |
参考サイト:https://russiaedu.ru/rating ・ https://vuzopedia.ru/region/city/59
主な大学の紹介
ここでは、ランキング上位4校について紹介していきます。
1 モスクワ大学(モスクワ)
- 学部数 39
- 学生数 約40,000人(内20%は留学生)
- 1755年創立
ロシアの大学といえばモスクワ大学(МГУ:エムゲーウー)。
歴史も深く、人気の高いとにかく有名な大学です。
この大学は全体的に有名ですが、特に力学・数学部が最も人気があり、志願者が集まります。
どうしてもこの大学、このキャンパスで勉強したいと憧れる学生がとても多く、ロシアの学生が入学するのはかなり大変とのことです。
雀が丘という見晴らしの良い場所に位置する本館は、スターリン建築を代表する建造物としても有名です。
雀が丘から本館までは広々とした広場になっており、とても開放的な気持ちの良い場所なので、見学に行くだけでも価値がありますよ。
サイト:https://www.msu.ru/en/index.html
2 ノヴォシビルスク大学(ノヴォシビルスク)
- 学部数 6
- 学生数 約7200人
- 1959年創立
天然資源が豊富なシベリアは、国にとって大変重要な地域といえます。
ノヴォシビルスク大学(НГУ:エヌゲーウー)は、この地で資源を活かした産業を発展させる目的で、国立の研究大学として必要な科学者を育てるために創立されました。
特に工学・数学部、物理学部、情報科学部など、理系分野が有名な大学です。
1959年創立と、モスクワ大学やサンクトペテルブルグ大学などと比べて歴史は浅いですが、現在はロシア有数の優秀な大学へと急成長を遂げました。
3 国立研究大学経済高等学院(モスクワ)
- 学部数 14
- 学生数 約44,000人
- 1992年創立
国立研究大学経済高等学院(Вышка:ヴィシュカ)は、経済に特化した大学として他と一線を画し、とても高い評価を受けています。
実際のところ、学生人気ではNo.1かもしれないというぐらい勢いがあり、大学の名前からもわかるように経済学部が有名です。
メインキャンパスはモスクワの中心部に位置し、サンクトペテルブルグ・ニジニノヴゴロド・ペルミにもキャンパスがあります。
ロシアでの共通認識として、モスクワ大学・サンクトペテルブルグ大学に次ぐ大学という感じです。
しかし経済に特化していることもあり、一概にランキングを決めるのは難しいところです。
学生の中では、歴史のある大学とカラーが違い、自由で革新的な雰囲気が現代社会に合っているというイメージがあるようです。
4 サンクトペテルブルグ大学(サンクトペテルブルグ)
- 学部数 24
- 学生数 約30,000人
- 1724年創立
ピョートル1世の命令で作られた帝国科学アカデミーから、1819年に独立したサンクトペテルブルグ大学(СПбГУ:エスぺーべーゲーウー)は、モスクワ大学と並んで歴史の深い名門校です。
法学部・哲学部・数学部・力学部が強く、特に政府関連にはこの大学の卒業生が多く従事しています。
ネヴァ川沿いに建てられたキャンパスの近くにはペトロパブロフスク要塞、川を渡るとエルミタージュ美術館と宮殿広場、イサク聖堂など。
近隣に歴史のある建造物が立ち並びます。
こんな環境で勉強ができるのはとてもうらやましいですね。
あのウラジーミル・プーチン大統領や作曲家のストラヴィンスキー、作家のツルゲーネフもサンクトペテルブルグ大学の卒業生。
その他にもロシア最多数のノーベル賞受賞者を輩出していることで有名です。
何語で勉強するの?
基本的にはロシアですから、勉強に使うのはロシア語です。
しかし、大学によっては英語での授業を選ぶこともできます。
これは留学生だけでなく、ロシアの学生にとっても同じ。
英語で専門分野を学ぶことで、同時に英語のブラッシュアップもできるので、ロシアの学生も積極的に選択しているようです。
また、ロシア語で学ぶ留学生は、本科に入る前にロシア語の準備クラスに入ってひと通りのロシア語を学び、それから本科の勉強をロシア語で勉強します。
しかし、やはりロシア語を習得するのはかなり大変なので、初めから英語での授業を選ぶ学生も多いみたいですね。
気持ちは分かります。
その場合、何年住んでいてもロシア語は勉強しないと絶対に上達しないので、生活面で少し苦労するかもしれません。
それでも、スーパーではほとんど会話することなく商品が買えますし、ロシア語を話す友人もできるでしょうから、何とかなります。
ロシアのシステム
ロシアでは、基本的に4年のコースで学士号の取得、5年学ぶコースで修士号が取得可能です。
その後はロシア独自のシステムとなりますが、準博士号、博士号を取得するために進学する学生もいます。
学士号や修士号を取った後は自分の希望に合わせて学習を続けるので、在学年数にもかなりの開きがあるようですね。
また、とても興味深かったのは、最終学年になっても必死になって就職活動をしないこと。
卒業したらどこで働くのか聞くと、決まって「まだ決めてない」という答えが返ってきたのです。
ちょっとゆっくりして考えるという感じなので、とても驚きました。
そして気づいた時には「先生の紹介で働いています」という感じで、必死な感じが全くしないんです。
それでもきっと、あちこちに種はまいてあるんだな、という感じはあります。
日本よりは自由でのんびりした雰囲気ですよね。
ロシアの大学で学ぶには?
ロシアの大学で学ぶ方法をここでは3つご紹介します。
交換留学
ロシアの大学で勉強する方法としては、ロシアとの交換留学カリキュラムが組み込まれている大学に入学して、1年程度ロシアで学習するというのが一般的。
基本的に数の少ない日本人の留学生は、やはり交換留学で来ている学生が割合的に多くいます。
大学の成績優秀者や試験の結果などで奨学金を貰える学生もいれば、自費で来る学生もいるようです。
ロシア政府奨学金制度
交換留学以外でロシアの大学で学ぶ場合、このロシアの奨学金制度を使うことができます。
以前は大使館に連絡を取って手続きをしていたようですが、2020年からはサイトでの申し込みに切り替わりました。
不明な点は、大使館に確認しながら進めると間違いないでしょう。
この奨学金制度を使うと、次のようなメリットがあります。
- 学費が無料
- 毎月3000ルーブルの生活費支給(2020年9月現在)
ロシアのルールは突然変わることもあるので、奨学金を利用する際にはご確認ください。
筆者が聞いた話によると、支給された3000ルーブルの中から寮費を支払い、残りを自由に使えるとのことでした。
寮費も免除だという方の話もあるので、確認が必要です。
それにしても、学費が無料というのはとても魅力がありますね。
ただし注意が必要なのは「希望大学に必ず入れる補償がない」ということ。
以前は5校まで、現在は6校まで希望できるようですが、その中から選ばれます。
そして、モスクワとサンクトペテルブルグの大学は2校ずつまでしか希望できないなどのルールもあるので、注意しましょう。
もし、第一希望に必ず入りたいということであれば、自費での留学を考える必要があります。
ロシア政府奨学金申し込みサイト:https://future-in-russia.com/
語学留学
大学の本科で言語学を学ぶということではなく、純粋にロシア語を学ぶための留学を少しご紹介しましょう。
ご紹介するのは、本科に通う前のロシア語の準備学習をする場でもあります。
純粋にロシア語だけを学ぶ場合、語学学校に留学する他に、大学にある外国人向けのロシア語コースへの留学という手段もあります。
ロシアでキャンパスライフを送ってみたい!という方にはおすすめです。
ここでは、外国人向けロシア語コースがある大学を3校紹介します。
- モスクワ大学 ロシア語・ロシア文化コース https://www.en.irlc.msu.ru/
- プーシキン記念ロシア語学大学 http://www.pushkin.institute/en/
- 国立研究大学経済高等学院 ロシア語コース https://www.hse.ru/en/rfl/
実は、筆者も大学ランキング3位の国立研究大学経済高等学院のロシア語コースに通っておりました。
この大学はかなり人気も高く注目されている大学なので、その大学に本科ではなくとも通えるのは、なんだかとても嬉しかったです。
学食や自習室を利用するなど、ロシアのキャンパスライフを体験できて良い経験になりました。
大学の施設はどんな感じ?
キャンバスの中には、講義室や視聴覚室などの受講スペースのほかに、快適なキャンパスライフを送るためのさまざまな施設が整えられています。
大学によって内容・価格は違いますが、スタローバヤと呼ばれる食堂ではコンプレックスというランチセットの設定があります。
大体130ルーブル程度(約200円)で、サラダ・スープ・メイン・つけ合せ・ドリンクのセットが食べることができるのです。
これは、学生にはありがたい価格設定。
その他にも、カフェではコーヒーやケーキ、ピロシキやブリヌィ(ロシアのクレープ)などの軽食をいつでも食べることが可能です。
また、各階一定の間隔でウォーターサーバーが設置してあるので水やお湯を自由に使うことができますし、自動販売機も設置されています。
あらゆる場所にテーブルや椅子があり、それぞれ自由時間を過ごしたり、勉強したりといった形で利用できるようになっているのです。
もちろん自習室、図書館などもあります。
あと、ロシアに欠かせないものがあとひとつ。
それは冬場コートを預けるクロークです。
ロシアの大学では、劇場と同じようにクローク係がいることも珍しくありません。
写真はカードを使って自分で管理するタイプです。
入館証をかざすと番号が表示され、その番号のところにコートなどを掛け、ロープをコートの袖などに通してロックします。
帰る時には、またカードをかざせばロックが解除される仕組みです。
ロシアは屋内が非常に暖かいので、コートは邪魔になります。
でも、入り口で預けて身軽になって行動できるのでとても楽なんです。
雪用のブーツをここで履き替える学生もいます。
まとめ
ロシアの大学はいかがでしたか?
日本からロシアに留学する人数は、欧米に比べてかなり少数派です。
でも、だからこそ、未知の世界を体験できるサプライズ感もあります。
ロシアならではのハプニングにかなり頻繁に見舞われるので、問題解決能力や生きる力がグンとアップすることは間違いありません。
これは、この先の人生で、ちょっとやそっとでは動じないという精神力を鍛えられるので必ず役に立つと思いますよ。
今回の記事が、ロシアに行ってみたい、ロシアで勉強してみたい、という方の参考になれば幸いです。