皆さんは「パキスタン」という国がどんな国か知っていますか?
筆者は移住する前はどんな国なのか全くわかりませんでした。
パキスタンに移住してから2年以上になります。ここで初めて経験したことなどを踏まえて、「パキスタン」という国の生活を紹介したいと思います。
パキスタンは多言語・多民族の国、国面積が広く人口も多い
正式名称は「パキスタン・イスラム共和国」。
宗教はイスラム教
文字通り、イスラム教の国です。
人口の約97%がイスラム教徒、他にキリスト教、ヒンドゥー教、シーク教徒などもいます。
国内イスラム教徒の約90%がスンニ派と言われています。その他、シーア派、シーア派イスマイリなどもいます。
連邦共和制国家で、4つの「プロヴィンス」と呼ばれる州で分けられています。
筆者の住む北部地域のギルギット・バルティスタンは、プロヴィンスには入ってはおらず北部地域と呼ばれ、カシミール地方と同じ特殊扱いで、インド・中国と国境を接する政治的に複雑な地域です。
言語 〜ウルドゥー語と英語がメイン〜
日常生活では、3種類の言語を使っています。
パキスタンの国語であるウルドゥー語。
英語はパキスタンの公用語でもあります。
主人とは英語で、家族とは地元ギルギットの言語であるシナ語を話します。
公文書は英語表記がほとんどかあるいは英語とウルドゥー語の両方です。
シナ語には文字が存在しません。
話し言葉で古くから伝わってきた言語であり、シナ語のテキストなどは全く存在しません。
ギルギット・バルティスタン北部地域だけで、
- シナ語
- ブルシャスキー語
- バルティー語
- ワヒ語
- クワール語
が話されています。
子供の学校教育や公文書は、ウルドゥー語と英語がメインなので、パキスタンに移住しようと思ったら、この2言語を習得することをお勧めします。
しかし、英語が公用語だからといって、英語を流ちょうに話せる人は多くありません。
政府関係者、教育関係者、観光関係者などは英国英語を話します。
米国英語を勉強した私は、たまに単語が聞き取れなかったり、戸惑うことがありますが、全く話せないよりはましです。
気候 〜四季がある〜
国面積が広いことから、気候、文化、人種・言語も多種多様です。
四季があり、北部に行けば日本の東北・北海道のように寒い地域もあれば、シンド州のカラチなどは、海沿いでもあることから、夏は中東圏並みに熱く、冬でも気温が高いです。
同じ国ではあるが、地域差が非常に大きいのも一つの特徴です。
パキスタンの物価や食
パキスタンはアジアの特徴を持っていて、
- 買い物が楽しい
- 物価が安い
- エキサイティングな町
- 美味しい食べ物
を感じる国です。
皆さんは東南アジアの国々やインドを訪れたことがありますか?
これらに共通して言えるのは、町に活力があること。
交通量が多く、リキシャが走る。バザールには買物する人であふれ、客引きの声、物乞いの老若男女、そしてニューハーフ。
物価はとにかく安いです。
中国からくる安い品物(質は悪いです)、近隣諸国(サウジ・トルコ・UAEなど)からくる質のいい製品や中古品など、様々です。
執筆時点のレートが1円=1.54PKRくらいなので、日本からパキスタンにきて生活する分には、経済的に苦ではありません。
物価はかなり安いですが、ガソリンや小麦粉などは地方ですと運輸費がありますので、地域差があります。
パキスタンの物価一例
例えば、
- 玉ねぎ3キロ 200PKR(308円)
- 鶏肉(1羽)1キロ 500PKR(770円)
- 小麦粉(全粒粉)40キロ 650PKR(1001円)
- お米(バスマティライス)25キロ 2000PKR~5000PKR(3080円〜7700円)
- にんにく1キロ 300PKR(462円)
パキスタンの収入事情
一般的な公務員の月給は、60代の定年間近の男性で約15~20万PKR(約23万円〜30万円)ほどだそうです。
新卒や一般公務員ですとぐっと下がり、約2~7万PKR(3万円〜10万円)だそうです。
この月給で家族全員を養うのですから(とにかく多い)、物価は相当安いとお考えください。
パキスタンの食
また、料理には必ずスパイスが使用されていますので、本当に美味しいです。
食事も地域差が激しいのです。
ものすごく辛いチリをふんだんに使う料理もありますし、そのままチリにかぶりつく人もいるくらいです。
私の住む地域は中国国境に近いことから、蒸し餃子(マントゥ)がよく好んで食べられています。
スパイス、またハーブは民間医療にも取り入れられており、これらは毎日の食事にも使われていることから、日本や中国のように「医食同源」の考えがここにもあります。
その他
アクセサリー類も、かつてパキスタンとインドは一つの国であったからか、心惹かれるかわいらしいものが沢山あります。
ご存じでしょうか、日本で都内にある有名なアジア洋品店にあるような、魅力的なアクセサリーや小物がいっぱいです。
パキスタンに日本人はいる?生活は?
私はいつも中国人に間違えられます。
パキスタン人も、日本人と中国人又は韓国人の区別がつかないようです。
日本は中国の一部あるいは同じ国だと考える人もいるようです。
在パキスタン邦人の方は沢山おられると思いますが、私のように、パキスタン人と結婚して滞在している場合、宗教的な理由から外部との接触はありません。
ネット内で日本人の情報を得るくらいです。
大都市であれば日本食レストランもあります。
が、よく言う「日本人街」のような地区は、残念ながら聞いたことがありません。
なので、日本人同士で集まったりする機会などはほとんどないのではとも思われます。
お仕事でパキスタンに滞在している方もおられると思いますが、残念ながらお会いしたことはありません。
在パ日本大使館から、新年祝賀会のような招待のお知らせがきますが、こういう時こそが日本人に出会えるチャンスだと思います。
もし住むなら、利便性を考えて都市部をお勧めします。
地方や山間部は景色や自然が美しかったりなどの利点も多いのですが、ライフラインが整っていないため、電気・水の供給が十分ではない場所もあります。
停電などはしょっちゅうです。
道路も凸凹、インフラ整備がもっと必要なところも多いです。これらを不便とは思わず楽しめる人であれば、地方山間部の暮らしもなかなか面白いです。
パキスタンでの家賃や移住の補足情報
家賃
家賃も、ピンキリです。
都市部のいいお家に住もうと思ったらそれなりの家賃になります。
例えば筆者が住んでいるギルギット・バルティスタンでは、市内で、6人家族が部屋2つ、キッチン、バスルーム1つの家を借りようとすれば、月約6000PKR~(9200円〜)といったところでしょうか。
その他(銀行口座開設や携帯電話)
また、土地の所有や銀行口座開設などできることとできないことがあります。
携帯電話のSIMカード購入にもIDカードが必要です。
もし配偶者がパキスタン人なら、POC(Pakistan Origin Card:5年間有効)カードを作ることをお勧めします。
家族ビザは1年間の発給のみなので、更新しなければなりません。
更新の際も、書類を準備して、内務省へ行って、パスポートセンターに行って、など面倒なことが多いので、POCカードを一度作ってしまえば再入国も楽、要はビザフリーのIDカードなのです。
カードの申請や更新は全てオンラインで行えますし、パキスタン人が持っている物と全く同じです。
詳細はNADRAのHPまで↓
古代の遺跡がある。イスラム以前の歴史もきちんと保存されている。
パキスタンにはインダス川が流れています。
昔、歴史で習いましたよね、「インダス文明」。
ハラッパーやモヘンジョダロといった地名を聞いたことがある人も多いと思います。
また、中国、ヨーロッパ、中東との交流の歴史も長く、シルクロードの一部であった場所もあります。
イスラム以前、仏教が信仰されていた証として、山の断崖絶壁にブッダが彫られていて、地元政府により管理されている場所もあります。
ストゥーパ(仏塔)などの看板も目にすることがあります。
昔、日本の歌手「ゴダイゴ」が歌って「孫悟空」の主題歌にもなった「ガンダーラ」。
ここは一体どこなのか?歌詞では「インドにあると言われている」と歌われていますが、もしかしたら、アフガニスタンの国境にほど近いある街、という説もあるほどです。
インド文化との共通性、ウルドゥー語とヒンディー語
皆さんは、ウルドゥー語とヒンディー語がほとんど同じ、という事実を知っていますか?
文字は全く異なるのですが、話し言葉、会話にするとほぼ同一です。
例えば、
ヒンディー語の数の数え方
https://www.youtube.com/watch?v=E5Zurkq8KKY
ウルドゥー語の数の数え方
https://www.youtube.com/watch?v=eEEexhs11UQ
両方の音声を聞いてもらえると、
1⇒ek エック
2⇒dou ドオ
3⇒tin ティン
4⇒chaar チャー
5⇒paanchi パンチ
6⇒chee チェー
7⇒saat サァートゥ
8⇒aat アァートゥ
9⇒nou ノウ
10⇒das ダス
と言っているのが聞き取れます。
宗教的・文化的理由でお互い存在しない単語などもありますが、インド人とパキスタン人は問題なく会話できます。
歴史的背景によるもので、かつて共に英国連邦の一部であり、英国から独立したことが大きな理由であると思われますが、詳細などは研究する価値があるでしょう。
言語学を専攻した私にとっては、非常に興味深いです。
インドは歌や映画、テレビ番組の製作が非常に盛んで、もちろんパキスタンにも流入しています。
歌などはもちろんパキスタンにも有名な歌や連続ドラマなどありますが、インドからのものはさらに人気があります。
こうしてヒンディー語の歌を通してウルドゥー語を覚えることもできます、その逆もまた然り。面白いですね。
イスラム教の特徴と生活
皆さんの興味の一つでもあると思われます、「イスラム」的生活。
イスラム教って、実はとってもシンプルで、質素で、平和的な宗教です。
イスラム過激派と呼ばれる組織や団体がいるのも事実ですが、敬虔にイスラムを実践している人もたくさんいるのもまた事実です。
イスラムに関しては、内容を知らないことから生じる偏見や誤解が、イスラム嫌いを生んでいると思います。
一度コーランを読んでみたり、イスラム教指導者、学者、説教者等の話をyoutubeなどで聞いてみたりするのも良いでしょう。
ご存じの通り、女性は皆髪の毛を隠すためにスカーフを被ります。
外出時は特に、体型を隠すため大きなブルカと呼ばれるワンピースを着ます。私も着用します。
女性も男性も体型を隠すカミース(長いシャツ)とシャロワール(サイズの大きいズボン)を着用します。
しかし時代がたつにつれ、服など西洋化しています。大都市などに行くとそれが顕著です。
地方の小さい都市では保守的なムスリム(イスラム教徒のこと)が多いです。
先に述べたシーア派イスマイリーの女性たちは、スカーフを着用しませんし、SNSなどにも躊躇することなく自分の顔やビデオを投稿したりします。
伝統的で保守的な多数派のスンニ派ムスリムとは大違いです。
観光で訪れたとしても、イスラムに敬意を表してスカーフを被ると喜ばれるでしょう。
女性は一人で外出できませんし、夫や父などのいわゆる男性に対しては逆らえません。
結婚前の女性は携帯電話すら持つことを許されません。
「女性を守る」という大義が前提にあるのですが、時代と共にその解釈も少しずつ変わってくるのではないか、とも考えます。
とにかく日本人にとってイスラム教は遠い存在だと感じます。
いつの日か、イスラムに対する誤解と偏見が少しでもなくなって、もっと世界が平和になるよう、数少ない日本人女性ムスリムとして奔走したいと考えています。
最後に
最初はイスラムの生活についていくのがやっとでした。
一日5回のアザーン(礼拝の時間)、特に早朝のアザーンなどはびっくりして飛び起きるほどでした。
今では、アザーンの時間までに家に帰ってくるようにと子供達に教えたり、アザーンのおかげで、現時刻がわかるようになりました。
ただ、一人で自由気ままに外出できないのには、未だに慣れません。(苦笑)
私のようにパキスタン人の主人と結婚してムスリムになりパキスタンへ来たケース、自分からムスリムに改宗しパキスタンが好きでパキスタンに来た人、仕事でパキスタンに来た人、色々なケースがあると思います。
しかし、どんな国でも文化でも、宗教でも、自分がその一部になる場合、「適応する能力」がないと、長くは住んでいけないでしょう。
あとは、置かれた場所で自分が何ができるかを考え実践し、楽しむことです。
海外移住生活、羨ましいと思われる方も多いと思いますが、苦労や孤独も経験しますし、現実と理想のギャップはどこの国にいても存在します。
それを乗り越えて、どんな状況でもくじけない精神を持ち、やはり、楽しみを見つけることが、海外生活においての秘訣ではないでしょうか。