オランダの滞在ビザの更新が近付いているものの、次の更新手続きはどの様に行なうのか、どの様な書類が必要なのか、更新するための条件はどの様なものなのか、様々な疑問に直面している方も多いはずです。
ここではオランダの「個人事業主ビザ」を2017年に更新した筆者の経験を基に、更新の流れと気を付けるべき点についてお話ししたいと思います。
オランダの個人事業主ビザ更新手続きの流れについて
個人事業主ビザ更新手続きの流れは以下のようになります。
- ビザ更新の3ヶ月前になるとIND(法務省移民局)から更新のお知らせの手紙が届きます。
- 申請書の必要な箇所を埋めて、必要書類を添付して、INDへ提出します。
- その後、INDの指定期日までに申請費用を支払います。
- 申請手続きが完了するとINDから連絡が郵便物で届きます。
- その連絡を受け取ってから、INDにアポイントメントを取り、新しいIDカードをもらいに行きます。
最初のビザ更新から2年が経っているので、今回もIDカードの写真を撮影するものと思っていたのですが、更新の際には写真撮影は無く、その場で申請者の顔と古いIDカード、パスポートを確認して古いIDカードと新しいIDカードを交換して終了でした。
筆者には乳幼児がおり、IDカードの写真は完全な乳児の時の写真でした。
顔が変わっているので、写真の交換が必要なのではないかと考え、IDカードをもらいに行った際に「この子の写真は取り替える必要があるのではありませんか?」と尋ねてみました。
すると、「気になるのであれば交換しても良いけれど、別に必要は無いよ。」と言われました。
ちなみに写真を交換してIDカードを作り直すには有料になるそうです。
個人事業主ビザ更新の際に必要な書類について
個人事業主ビザの更新手続きの際に必要とされる、基本的な書類は以下の通りです。
- 申請書
- パスポートのコピー
- 直近の住民票
- オランダの健康保険証のコピー
- 最初のビザの更新の際に使用した家族証明書と結婚証明書
- 直近の会社謄本
- 1年目、2年目の12月31日時点の会社銀行口座の残高証明書
- 直近の残高証明書
- 1年目、2年目の直近のBSとPL
- Verklaring omtrent inkomen zelfstandig ondernemenという書類
- 申請費用
必要書類①から⑪までの補足
①申請書について
申請書は、IND(法務省移民局)にて頂くことができます。
ヨーロッパ諸国の移民局は様々な移民問題で大忙しです。オランダも例外ではありません。
ですので、申請書は移民局のホームページよりダウンロードしましょう。申請書は申請する家族の人数分が必要になります。
トップページで大きく4項目ある見出しの一番左が申請書関連の内容になります。
各自の状況についてチェックしていきながらページを更新していきます。
サイトは英語版もありますので、分かりやすい方で閲覧して下さい。
②パスポートについて
パスポートの期限が切れていないことをしっかりと確認した上でコピーしましょう。
③住民票について
住民票はオランダの住所を登録しているgemeente(役所)にてアポイントメントを取り、手に入れておきます。
住民票は有料です。支払いはPINカードでの支払いとなります。
④健康保険証のコピーについて
オランダの健康保険証のコピーもビザを更新する家族全員分が必要になります。
⑤最初のビザの更新の際に使用した家族証明書と結婚証明書について
最初のビザ申請で使用した家族証明書と結婚証明書(英訳済み)を使います。
原本をコピーするという形で提出可能です。
⑥直近の会社謄本
KVK(オランダ商工会議所)のホームページの取り寄せのページに必要な会社の情報を入力して、その場でPINカードにて支払いをし、完了です。
あとは自宅に会社謄本が郵送で届くのを待ちます。
⑦1年目、2年目の12月31日時点の会社銀行口座の残高証明書について
こちらはかなり重要書類となります。
オランダの個人事業主ビザの申請条件には、年間の売上高は影響しません(2019年1月現時点)。
そのかわり、銀行のビジネス口座に12月31日の時点で残高が4500ユーロ以上ないと更新ができません。
⑧直近の残高証明書について
直近のビジネス口座の残高証明書も、残高として4500ユーロ以上あるという証明書類が必要です。
⑨1年目、2年目の直近のBSとPL
BSとはBalance Sheetという貸借対照表のこと、PLとはProfit and Loss statementという損益計算書のことです。
こちらの書類は公認会計士のサインが必要な書類ですので、公認会計士事務所に依頼して有料で作成して頂く必要があります。
料金は公認会計士事務所によってさまざまです。
BSとPLはそれぞれ、初年度、2年目、3年目の見通しが必要です。
枚数は各個人事業主によって違うので、それらを全部揃えてビザ更新手続きの申請書に添えて下さい。
⑩Verklaring omtrent inkomen zelfstandig ondernemenという書類について
これは公認会計士と個人事業主の宣言が独立した判断であることを証明する書類です。
こちらも大切な書類です。
IND(法務省移民局)のホームページからPDFでダウンロードすることが可能です。
⑪申請費用について
以下の申請費用が必要になります(申請費用2018年9月時点)。
-
- 個人事業主355ユーロ
- 配偶者240ユーロ
- 子供一人につき51ユーロ
ビザ更新手続きを個人で行なうべきか、移民弁護士に依頼するべきかで悩んだ場合
個人事業主ビザ更新手続きの申請について、筆者が行った一通りの手順について書いていますが、筆者は家族がいる関係などもあり、今回は更新手続き全てを移民弁護士の方に依頼した経緯があります。
個人で行うことはもちろん出来ますが、より確実に遠回りせずに申請手続きを行うために依頼しました。
個人で行うにしても、移民弁護士に依頼するにしても、それぞれにメリット、デメリットがあります。
個人でビザ更新手続きを行なうメリット・デメリット
個人事業主のビザ申請の手続きは、更新手順をしっかりと理解できている方、オランダ語、英語の言語力に問題のない方には、移民弁護士に依頼する費用なども抑えられるため、メリットがあるでしょう。
しかし、個人事業主のビザ更新の場合、それぞれの会社によって内容が変わってくるため、申請書と必要とされる書類の基本は定められているのですが、その他にも追加提出を求められる書類が出てくることもあります。
これは各個人事業の内容によって違うことなので、「これが絶対」ということはできません。
IND(法務省移民局)の担当者とのやり取りを、臨機応変に行うことができるのであれば、個人で必要書類の記入や資料の収集を行い、直接INDにアポイントメントを取って、更新手続きを行うことも可能です。
移民弁護士に更新申請手続きを依頼するメリット・デメリット
申請に必要な資料などは全て指示されますので、依頼者が集めます。
申請書の記入や資料の確認、IND(法務省移民局)への提出は移民弁護士が行ってくれました。
仮滞在許可の印が必要な方は個人でINDにアポイントメントを取って行く必要があります。
また、新しいIDカードの受け取りは当人が行かなくてはなりません。
追加書類のある場合などは的確に指示をもらえたり、分からないことや不安なことなどは質問できるので、心強かったです。
弁護士なので、オランダの法律に詳しいこともあり、申請中に何かあったとしても法に準じて解決策を考えることもできるだろうと言う想定もしていました。
弁護士事務所によって手順は様々でしょうが、簡単に流れを説明します。
弁護士事務所を自分で選んで、個人事業主ビザの更新手続きの申請を代行してもらいたいという用件と共にアポイントメントを取ります。
筆者は初めに家族分のパスポート、IDカードを持って事務所に伺いました。
移民弁護士に会って話したのはそれが最後で、あとはメールでのやり取りになりました。
必要書類なども全て、添付書類としてスキャンしてメールで送りました。
デメリットはあまり思いつきませんが、費用が発生するので、事前に移民弁護士に費用を確認しておくことをお勧めします。
費用のことで話しておくと、依頼費用が安いからというだけで、お願いすることはお勧めできません。
日本人の個人事業主ビザの申請や更新手続きを数多く扱っている弁護士事務所に依頼することが一番です。
移民弁護士に依頼する際の注意点としては、一度自分で申請書類をINDへ提出してしまってからの依頼は、事が難しくなるとのことでした。
状況を考えるならば、INDから質問が来たことにより、自分では答えられなく(又は答えた内容が良くなかった、意味が通じていなかったなど)状況が悪くなってしまったなどのケースだと考えられます。
更新手続きの際に注意するべき点
更新手続きがおりるのは申請からどのくらい?
個人事業主ビザの更新手続きが済んでも、結果が出てくるのはその時々、個人によってまちまちです。
移民が多く来た時期などは更新時期も同じで、移民局の混み具合が影響することもあるようです。
そして、オランダはビザの申請が比較的通りやすいと言われていますが、年々、申請の基準が厳しくなってきていることも確かです。
知人や友達のビザ更新が早くできたなどと聞いても、一例として受け止めておく方が良いでしょう。
申請期間中にIDカードの期限が切れそうな時は
ビザ更新の手続き中に、ビザの期限が切れてしまいそうな場合は、仮滞在許可証をもらうことができます。
その際にはINDへアポイントメントを取って、仮滞在許可証の印をパスポートに押してもらいましょう。
これで延長ができるので、仮にどこかでIDカードを見せなさいと言われても、パスポートのこのページを提示すれば大丈夫です。
仮滞在期間中のビジネスについてですが、この期間は法的に働くことは出来ません。
IDの期限から更新がうまくいった場合は、その期限からまた5年間有効になるので、結論から言えば問題はないのですが、更新が出来なかった場合には、働く権利もないので、その期間に働くことは法的に違法とされています。
個人事業主ビザの更新手続きは期限の3ヶ月前から申請が可能ですから、できる限り早めに取りかかる方が良いと言えるでしょう。
その他の注意点と筆者のできごと
個人事業主ビザ更新手続きの申請費用の支払いが期限を過ぎてしまうと、また最初から申請をし直さなければならなくなります。
申請費用はなるべく早めに支払うようにしましょう。
公認会計士へのアポイントメントは前倒しに行うことをお勧めします。
その理由は、アポイントメントが取りづらいので、時間が掛かることを前提にしておくことが必要だからです。
さらにバカンスの時期などには、こちらが急ぎだろうと関係なくバカンスに入ります。
その間は全く事が動きませんので、更新前にはそれらも考慮しておきましょう。
IDカードを受け取りに行く際には、
- 事前にIND(法務省移民局)から送られてくる更新手続き完了のお知らせ(郵便物)
- パスポート(申請した家族全員分)
- 古いIDカード
を必ず持っていきましょう。
そして、必ず申請者全員が揃って、INDへ行かなければなりません。
余談になりますが、郵便物は家族全員分が一緒に届かない場合もあります。筆者がそうでした。
心配なのでINDに電話で確認をしたところ、「許可は下りているので、そのうち届くはずです。」との返答を頂きました。
しかし、郵便物はIDカード受取りの日までに届くことはありませんでした。
それでも事前に電話で確認をしていたので、当日にその説明をして、事なきを得ました。
おわりに
個人事業主ビザの更新申請手続きについては、個人事業の内容によって、オランダに滞在中の生活の状況などによっても、個々に様々な経緯があるはずです。
流れを押さえておくこと、気を付けなければならない点を知っておくこと、時間に余裕を持って更新手続きに望むことでそれらをカバーし、できる限り手続きをスムーズに進めることができるはずです。
2019年の3月の最新情報
2019年3月20日水曜日、オランダの移民法廷にて日本人のフリーランスビザなど(滞在許可書)の更新後の待遇に関して、新しい判決が下されました。
2017年1月以降にフリーランスビザなど(滞在許可書)の更新をした者に限り、IND(オランダ移民局)にオランダの労働市場に自由にアクセスできる権利を得るため、IDの内容を書き換える再申請ができるというものです。
オランダでは2014年12月に松風館裁判での判決により、日本人はオランダ国内の労働市場において労働許可書が無くても自由にアクセスできるという権利が与えられていました。これは大昔にオランダと日本で交わされた日蘭通商航海条約の内容が生きていることに起因するものでした。
しかしその後、オランダの中で最恵国待遇として同じく扱われているスイスやアメリカ国籍の人々の待遇がオランダの労働市場にアクセスするためには労働許可書が必要であるということから、日本人だけが労働ビザ無しで自由にアクセスできるのはおかしいとIND(オランダ移民局)の働きかけがありました。
そのため2017年1月以降にオランダのフリーランスビザなどの(滞在許可書)を申請した人には、オランダの労働市場において労働許可書が無くても自由に働けるという特権が無くなりました。
申請日が2016年の12月中であった場合はフリーランスビザなどの(滞在許可書)取得の際にIDの裏に「オランダの労働市場に自由にアクセスできます。」という内容の文言が記載されています。2017年1月に入って申請した人のIDにはこの文言は記載されていません。
この自由にアクセスできるという特権を簡単に説明すると、例えばグラフィックデザイナーとしてフリーランスビザ(滞在許可書)の申請をしたとします。ID取得後にデザイナーとしての仕事の収入が少なく生計を立てていけない場合などに、カフェやレストランなどで雇用してもらいながら、グラフィックの仕事もフリーランスとしてできるというものです。
雇用側も日本国籍を持っていて滞在許可書がある人物であれば労働ビザが無くても雇うことができました。
今回の判決では、オランダの移民法内で謳われている「一度労働市場への自由アクセス権を取得した場合、更新をしても、滞在目的が変更された場合においても、自由アクセス権は変更されない」というものを無視したINDの課程が正しくはないということが証明されました。
2017年1月1日以降にフリーランスビザなどの更新手続きをした者のオランダ労働市場への自由アクセス権は継続されることになりましたが、判決日の間までに更新手続きが完了している人々のIDには労働市場へのフリーアクセス権がありません。
ですから判決に伴い、今回再申請ができるということになりました。
まだ判決が下りたばかりですので、再申請によりかかる費用等はIND(オランダ移民局)へ直接問い合わせをする他ありませんが、オランダ労働市場への自由アクセス権はとても有利な権利ですので、再申請をする日本人が増えることが予想されます。
この裁判を勝利に導いた弁護士事務所がADAM&WOLF移民弁護士事務所で、こちらの事務所では早速、INDへの再申請のお手伝いができますということですので、会話などに不安がある方は相談してみるのも良いかもしれません。